ブログ開き・伝説の豪球

新年明けましておめでとうございます。今年もまたブログを開きます。宜しくお願いします。年明けはまたまた閑話のムックものですが、今回はプロ野球です。プロスポーツもサッカーの台頭もあり、かつての様にプロ野球一辺倒ではなくなってきましたが、とくに関西人にとってはやはりプロ野球です。なんと言ってもガンバもヴィッセルも二部に落っこっちゃいましたからね。それと今日は開くだけで今週は書くのかなぁってところです。


プロ投手の条件

アマであってもある程度当てはまるのですが、プロなら特にと思っています。色々考えましたが2つに絞って良いと思います。

  1. 球威
  2. 投球術
この2つの要素の合計があるレベルを越える間はプロとして通用し、下回れば通用しなくなるです。赫々たる大記録を積上げた大投手に多いパターンとして、若い頃は「球威 > 投球術」でぶいぶい投げまくり、球威が衰えだした頃に投球術でそれをカバーして衰えを見せずに勝ち続けるなんてのがあります。それでも投球術で球威の衰えを補えなくなれば引退です。いくら老獪な投球術を駆使しても、余りにも球威が衰えると滅多打ちを喰らうです。

もっと大胆に言い切ってしまえば球威が絶対条件であり、球威の不足を投球術で補っているとしても良いかもしれません。阪急黄金時代を支えた大エースに山田久志がいますが、山田も若い頃は速球派を自負し、速球で押しまくるピッチングをしていました。それがある時期からシンカーを習得し、投球術の向上に努力し、アンダースローで最多の284勝を挙げています。

山田の284勝は「アンダースロー最多」なんて断りをつけなくとも、この上にいるのは、400勝の金田正一、350勝の米田哲也、320勝の小山正明、317勝の鈴木啓司、303勝のビクトル・スタルヒンの400勝と300勝カルテットしかいないのですから、超がつく大記録であり、おそらく二度と近づく者もない記録だと思っています。

この山田が速球派から技巧派に転向した理由の一つが山口高志の存在と言われています。山田はアンダースローながら140km程度は投げていたともされますが、その山田が山口高志を見て「こりゃ、あかん」と悟ったともされます。世の中にはあんな化物がいると心底から驚嘆したと伝えられています。


山口高志の持ち玉はストレートとションベンカーブしかなかったとされます。それも全盛期は8割以上がストレートであったとされ、投手の条件のうち、球威だけでプロで戦った投手として良いかと思います。コントロールも相当怪しくて、とりあえずど真ん中に向かって投げ込めば、適当に荒れてストライクなるみたいな感じです。いや、そうではなくてど真ん中に投げ込んだストレートが3つストライクゾーンに入るかどうかだけで、プロの投手をやっていたと言っても良いかもしれません。

いやいや、ストライクゾーンに入るか否かもさらに怪しくて、高めのボール玉に球威に釣られて打者が振ってくれるのを期待していただけのピッチングだったかもしれません。プロは打者が投手を研究しますが、投手も打者を研究し、お互いに弱点を探りあう面もありますが、山口にはそんな投球術は無縁で、マウンドに立てば全身全霊を込めて投げていただけであったと伝えられています。

投球術に全くと言ってよいほど頼らないピッチングであったため実働期間は短く、通算ではさしたる成績を残していませんが、一方で短い活躍期間の余りの鮮烈さに生きた伝説と化していると言えば大げさでしょうか。


山口高志伝説

山口はスピードガン時代前の投手であるため、何Km投げたの記録は残されていません。そのために残された証言で凄さを推し量る必要があるのですが、証言自体が既に伝説的です。ごく簡便にwikipediaから引用すると、

  • 山本浩二は平成19年時点でも「高志の球が一番速かった」と言い、「初速と終速の差があまりない投手」と指摘している。
  • 1976年の日本シリーズで対戦した巨人の高田繁は「山口は明らかに江夏よりも速かった」と漏らしている。
  • 山口がルーキーの時、キャンプで投球練習の相手をした捕手河村健一郎は、「球を捕るのを初めて怖いと思った」と語った。
  • フレッド・リンはメジャー入り後「ヤマグチほどのスピードボールを投げる投手はメジャーにもそういない」と語っている。
  • ロッテオリオンズ 戦で村田兆治相手に完封勝利を収めた試合の後、当時のロッテ監督金田正一は「兆治より明らかに速い。兆治は永久に山口に勝てない」と語った。
  • パ・リーグ元審判部長の村田康一は「山口が球速No.1」だと断言している(2007年の証言)。

これ以外にも有名なのは、既に故障により全盛期を過ぎていた山口とオールスターで対戦したハル・ブリーデンが試合途中のインタビューで、

    あんな速い投手はメジャーにもいないよ!
と言い切ったと記録されています。もう少し補足しておくと山口が出場した日米大学野球は第1回で、この時の全米チームにはフレッド・リンの他にウォーレン・クロマティ、ロイ・スモーリーらの後のメジャークラスや、ドラフトに選ばれた選手が多数おり、歴代でも最強ではないかと言われています。その全米チームを相手に3勝を上げ、第1戦は13奪三振完投、最終戦は1安打完封です。

山本浩二の証言も貴重で、山本は後に速球派としてならした中日の鈴木孝政小松辰雄とも対戦を重ねています。その山本浩二が鈴木や小松より上に山口を置いています。また金田の証言も貴重で、「マサカリ投法」の村田兆治より上に山口を置いています。さらに審判部長も山口の速球を別格に置いているのも注目しておいて良いかもしれません。


本当に速かったのか

これについては幾つもの疑問が呈されています。山口が活躍した後に、スピードガンが導入されるわけですが、導入された当時に小松が150Km出したのが驚異とされました。当時の投手は150Kmは愚か、140Kmにも届かないものが殆んどだったからです。つまり山口が活躍した当時の周囲の投手の球速はそんなものだったとされる傍証です。

山口は速かったかもしれないが、あくまでも相対的なものであり、周りが遅いが故に速さが実感として強烈だけではなかったかです。伝説にある証言にしても、「昔は・・・」式の美化された部分があるはずではないかも指摘もまたあります。あくまでも当時の投手レベルでは速かっただけで、今のレベルからすれば大した速さではなかったんじゃないかです。

これは数値として残されていない伝説の大投手に常に言われている事で、伝説中の伝説である沢村栄治のストレートも言うほど速くはなかったの指摘も常に存在します。沢村となるともう検証しようがありませんが、山口は少ないとは言え残された映像があります。これとて古い映像なので参考程度にしかなりませんが、新年の趣向として少し分析してみたいと思います。


画像分析1:松坂と菊池

松坂大輔は誰もが知っている名投手です。とくにデビュー当時は頭抜けた速球を投げており、とくにデビュー戦の155Kmは伝説として残されています。この松坂の画像が残されています。もう一つ、菊池の夏の甲子園での155Kmも衝撃的な記録として残っています。この二つの画像を少し分析してみます。

名前 松坂大輔 菊池雄星
球速 155Km 155Km
動画
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ここでスピードガンで表示される球速ですが、これは初速です。つまり投げ出されて一番早い時期の球速になります。プレート本塁までの間は18.44mありますが、この間に球速は必然的に落ちます。並みの投手で10Kmぐらいで、伸びのある速球投手で7Kmぐらいであるとされています。松坂と菊池は初速は同じ155Kmであったと記録上はなっています。

それでも画像の印象からすると松坂の方が早く感じます。これは終速の差ではないかとみています。菊池は150Km台をポンポンと出してはいますが、高校野球クラスでも、それにりに打者は付いていっています。もちろん松坂はストレートだけをビュンビュン投げ込むようなピッチングをしておらず、変化球で緩急をつけているからの理由も付けられます。

ただここでは手間が多すぎて出しませんが、数年前の藤川球児は150Km程度のストレートでプロの強打者を牛耳っています。松坂・藤川と菊池の差は終速にあるんじゃないかと見ています。この差が何故に生れるかの技術的な解説は専門家が必要になりますが、菊池の腕の方が下がっているんじゃないかと思っています。腕が下がればボールに横回転がどうしても発生します。横回転が多いほどボールにブレーキがかかり終速が落ちるんじゃないかです。

腕を真縦に振るほどボールに横回転が生じる率が低下し、終速が落ちにくくなり、いわゆる伸びのある速球が投げられるんじゃないかの仮説です。伸びのある球は俗に「ホップする」と表現されます。ボールがホップする事は物理的に絶対にありえませんが、視覚的にはありえると思っています。打者は投手が自然に落ちるタマを年がら年中見ており、これを「真っ直ぐ」と感じているわけです。

このボールの落ちる率を無意識に予想修正してストレートのボールの軌道を予測しているのですが、終速が通常の投手より落ちないと、打者にはボールが浮き上がる、つまり「ホップ」して見えるです。打者には高めのヒッティング・ボールに見えても、ボールの落下率が少なく、高めのストライク・ゾーンよりさらに上をボールが通過し、かすりもしないと言うわけです。

全盛時の松坂は初速と終速の差が7Km程度であったとされ、初速が155Kmであれば、終速は148Km程度になります。菊池も初速は155Kmですが、並ならば終速は145Km程度、ひょっとするともう少し落ちていた可能性すら考えます。だから150Km台を連発しても、高校野球レベルでも打たれる時は打たれているんじゃないかです。


画像分析2:松坂と山口

山口の動画は殆んど残されていません。とくに中継がバックネット裏から、バックスクリーン横に移動した過渡期であるために松坂と類似の角度のものはこれしかないようです。ではご覧下さい。

名前 松坂大輔 山口高志
球速 155Km 不明
動画
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15 投球終了


山口の投球は画像からすると巨人との後楽園での日本シリーズではないかと考えられます。アングルが微妙に違いますから、松坂と純粋に比較するのは困難ですが、正直なところ無茶苦茶速い様に見えます。松坂の速球が伸びのある快速球なら、山口は豪速球と表現したら良いでしょうか。少なくとも画像で確認する限り、松坂並みの速球を投げているように見えます。

終速の落ちないボールの特徴は、バッターボックスの近くになってもボールが画像で確認しにくくなると思っています。つまり初速の物凄い勢いが、そのままミットに突き刺さる感じです。山口の豪速球はまさにそんな感じで、バッターが球速を予想してバットを振っても、既にボールはミットに納まっている感じです。

ここで山口に加勢しておくと、松坂は山口と違い投球術にも長けています。バッターに緩い変化球もあるぞの意識を常に持たせながらのピッチングです。一方の山口はほぼストレートで押しまくるピッチングです。つまり打者は山口がストレートで勝負に来るのを予想してバットを振り、なおかつ完全に振り遅れる状態になっています。

もう一つですが、山口にはこの動画しかありません。松坂の155Kmも菊池の155Kmも、one of manyのベストピッチです。150Km台の速球は連発していますが、その中のさらにベストピッチのものとも言えます。一方の山口はたまたまの1球だけの動画記録です。山口のベストピッチがこれと限らない事です。もっと速いベストピッチがあった可能性は十分にありえるです。


伝説の豪球とは

たったこれだけの証拠で山口の豪速球は実在したとするのは無理はあります。一方で、これだけの証拠でも実在はしなかったと否定するのは難しいとも思っています。新年ですから私は実在したとしたいと思っています。ただし山口伝説はさらなる色彩が加わる部分はあったんとも思っています。山口は松坂並、いやそれ以上に速かった可能性はありますが、当時の投手はさらに遅かったです。

日本シリーズで対戦した山本浩二、衣笠、さらには王、張本ですが、当時の基準の速球投手を10Km程度も上回る山口と対戦すれば腰が抜けそうに驚いたです。つまり相対性の問題です。同じ150Kmでも、その程度の速球投手が増えた後と、そんな投手が存在しなかった時代では評価は全然違うだろうです。周囲が遅いから山口も遅かったのではなく、現在の基準でも速い投手が当時に存在したからより驚異的であったです。山口のピッチングをもう一つ動画で紹介しておきます。

山口の豪球の秘密は終速の低下の少なさではないかと推測し、その秘密はボールのスピン方向ではないかは上述しました。ここでスピードボールを投げられる要因をまず考えると、これは腕の振りの早さに依存すると考えます。腕を早く振れるのも才能の一つで、これは腕力とはまた別の才能になります。腕力だけなら高校生より、プロ投手の方が上のはずだからです。これに山口は恵まれた素質をまず持っていたです。

ところが同じ球速であっても打者の餌食になるボールとそうでないボールが確実に存在します。プロの打者ならたとえ150Kmであっても打ち砕いてしまうです。しかし限られた数の投手ですが、150Kmでバッタバッタと打者をキリキリ舞させる投手は実在します。最近で記憶に新しいところでは藤川球児です。全盛期の藤川のスピードボールは打てなかったです。

藤川は山口の教えを受けて才能を開花させたとなっていますが、藤川が会得したものは山口の終速が落ちにくいスピードボールであったと考えています。ここでスピンの話に戻りますが、上手から投げ下ろしたボールには上向きのスピンがかかります。真っ直ぐ投げ下ろすほど縦の上向きスピンがかかる事になります。逆のスピンを考えるとわかりやすいのですが、下向きのスピンが強くかかるとドロップ(縦のカーブ)になります。

上向きのスピンが強くかかってもドロップの様に上方向への変化は起しませんが、基本は上方向への変化を起そうとはするはずです。つまりボールは重力により下に落ちようとしますが、それに抵抗する上向きの変化を起しているです。結果として打者に届く頃のボールの落差が小さくなっているです。野球のボールでは不可能ですが、ピンポン玉でやるとボールは本当にホップします。

ただ山口のボールに凄いスピンがかかっていたかどうかは微妙です。つうのも本人自体は

    綺麗なスピンがかかっていない
こうしているからです。謙遜もあるのかもしれませんが、山口の言葉を信じると、スピンはそれほどでなかった可能性が出てきます。う〜んてなところですが、ボールはある程度のスピンが必要です。スピンがなくなるとそれこそシンカー系のボールになるからです。そこで一つの仮説をたてます。ボールは軌道の変化が大きいほど終速が落ちるです。

これは並みの速球投手が打ち込まれる時に起こる現象ですが、シュート回転が強くなると終速が落ちます。たいていは腕が下がって、腕の振りがやや横向きになっているために起こる現象とされます。横でも速度が落ちるのであれば縦でも同様に落ちるのではないかです。投球にスピンは必要ですが、これが強すぎ、軌道に影響を与えるほどに強くなればやはり終速は落ちるです。

山口が言う「綺麗なスピン」とはたとえば松坂が投じているボールです。綺麗な縦回転が見事に入っているボールです。藤川も似たような感じと思っています。縦に強く腕を振りぬけば自然に縦に強いスピンが入り、打者までに落差が小さくなるボールが生れ、これが綺麗なストレートの見本と言うわけです。判り難いと思いますが、

  1. ボールは横回転のスピンが強いと左右の変化を起すがその分の終速は落ちる
  2. 縦回転も同様で、強すぎると上下の変化を起すがその分の球速は落ちる
一番終速が速くなるのは、上下左右に軌道変化を起さないスピンのかかったボールではないかです。つまり山口の球はほぼ純粋の縦回転のスピンがかかっている上に、あれだけ早く腕を振っているのにスピンのかかり方はそれほどではなかったです。


ボールはなぜかとしてもよいかもしれませんが、やや横のスピンがかかった方がコントロールがつきやすくなります。ノーコンの速球投手が、完全なオーバーハンドからスリークォーター気味にしただけでコントロールが良くなり、球速はやや落ちてもコントロールが向上し投手としては物になった話は良く聞きます。プロの一流投手も同様で、コントロールに必要な横のスピンと球速の兼ね合いをどこかで行っているんじゃないかです。

その中で完全なオーバーハンドでコントロールがそこそこつく(もちろん腕を早く振れる素質に恵まれた)投手がプロの速球投手として通用するです。ただし彼らは縦のスピンは振り下ろす腕の早さに比例して強くなり、これが「綺麗なスピン」と表現されるです。しかし実は強すぎる縦のスピンのために球速を殺していたです。

初速と終速の差を決める要因は、横の軌道変化だけではなく縦の軌道変化も要因としてあり、プロでも通用する速球投手は横の軌道変化が生れないスピンのボールを投げているのじゃないかです。大胆にまとめると、

  • 横のスピン要素が混じる投手は初速と終速が10Kmないしそれ以上生じる
  • 縦だけのスピンなら初速と終速の差は7Km程度になる
これに縦のスピンが穏やかならさらに終速がアップする可能性が出てきます。山口の豪球の秘密はそこではなかったかです。縦のスピンが強烈でなかった分だけさらに終速がアップし、5Km程度しか落ちなかったんじゃないかです。もしそうなら驚くべき豪球が誕生します。


縦のスピンが乏しい分だけボールの落差は大きくなるかもしれませんが、同じ初速であっても打者への到達時間が短くなります。時間が短くなれば落差は小さくなります。初速150Kmのボールでホームベースまでの到達時間はおよそ0.4秒とされています。打者は長年の鍛錬により、投手の手からボールが離れた後の0.1秒ぐらいの間にボールの軌道を予測するとされています。

予測しているのは平均的な終速の低下率と、ボールの落下率です。打者とてボールの落下を見極めている訳ではなく、感覚として「真っ直ぐ」です。打者の予測より小さい落下率であれば「ホップ」するであり、終速の低下が小さければ「ノビ」のあるボールになるわけです。「ホップ」に関して強烈な上向きスピンの要素が加わるとも考えます。

一流の速球投手はそれでも「ノビ」に関しては上向きスピンにより終速が殺されている要素があり、これがない山口のスピードボールは怖ろしい速さで打者に襲いかかったと考えます。タダでも初速が速いのに、そこから加速して向かってくる感じでしょうか。それこそ振ろうと思った瞬間にはボールはホームベースに到達しているです。感覚として「速すぎて見えない」「ボールが消えた」と思っても大げさとは思えません。


山口の弟子である藤川が150Km台をポンポンと投げていたのは私も良く覚えています。非常に「ノビ」のあるスピードボールでした。この藤川より山口が速かったかどうかです。藤川のボールも綺麗なスピンがかかっているものですが、スピンが強い分だけ山口より終速は劣ると考えています。山口は藤川よりさらに「ノビ」のあるボールを投げていたんじゃないかです。初速が同じ150Kmでも藤川の終速が143Kmなら山口は145Kmだったです。

もし山口が155Kmを投げていれば終速は150Kmです。終速が初速より10Km落ちる投手が、初速160Kmで投げたのと同じ終速ですが、打者から見ると圧倒的に山口の方が早く感じたとも想像しています。山本浩二以下の証言が傍証になるんじゃないかです。ただなんですが縦のスピンもそれほどでないピッチングはコントロールをかなり犠牲にせざるを得なかったとも考えています。コントロールはスピンの速さにもある程度関係がありそうな気がしています。速球投手は縦のスピンを強烈にかけることにより、感覚的にコントロールを保持しているです。


山口の豪球にはもう一つポイントがあったと思っています。初速と終速の差の小ささが生きるのは初速が十分な速度を持っていないとならないです。あるレベル以上の初速がないと山口の豪球は死んでしまうです。判り難い説明ですが、縦のスピンが強烈に効いたスピードボールは、あるレベル以上の初速の時は山口の豪球に劣りますが、初速がかなり落ちても「ノビ」で通用するです。

一方で山口式の豪球は初速が速ければ速いほど有効ですが、あるレベルから下になると棒球に化す危険性が生じるです。理論的に説明は出来ないのですが、初速が落ちれば終速の減少率が急に大きくなる感じでしょうか。縦の綺麗なスピンにはそういう意味があるのでプロでも重視されているです。

その代わりにあるレベル以上の初速で投げている時には、まさに異次元のスピードボールで、打者にしてみれば「前の晩から振り始めても間に合わない」の伝説が残されるわけです。そういう点から山口はコンスタントに150Km台をビュンビュン投げ込んでいたんじゃないかと推測しています。だから全盛時は誰も打てなかったです。その中のベストピッチは松坂を上回っていたとしても不思議ではないだろうです。


思い込みがパンパンに入った結構な力技ですが、これぐらいのロマンを抱いても良いかと存じます。なんのかんのと言っても、あの山口高志の豪球は二度と見ることが出来ないからです。伝説を信じるのもまた楽しいと思っています。私は山口高志を上回る豪球投手を、あれから見ていないのだけは確かだからです。