本田先生の栗橋病院

ネタモトは5/10付FNNニュース

これよりです。


著書

医療現場の労務管理に対する研究と言う本があります。リンク先を見てもらえればお判りのように済生会栗橋病院の本田宏氏が作成を主導されています。さらにその中に「医療現場の労務管理について The Personnel Management in Medical Workplace」と題する研究報告書が掲載されています。これも筆頭は本田氏です。その報告要旨の一部を引用します。

具体的には、医師の当直業務が実態に反して労働時間としては扱われておらず、割増賃金が支払われていないこと、そして、そのまま日直に入り、32時間を超える連続した長時間勤務が恒常化している実態などが浮かび上がり、憂慮すべき問題であると指摘できる。そのために、当直時間の扱いの見直し等を含めた労働基準法を遵守する姿勢を病院側に強く促すことが必要であると考える。

ここは本田氏自身が書かれた可能性が高く、書かかれていなくとも筆頭著者として内容に責任を負う部分と存じます。さてですが簡単な対照表を作りたいと存じます。

医療現場の労務管理について FNN記事
医師の当直業務が実態に反して労働時間としては扱われておらず、割増賃金が支払われていないこと 該当部分なし、検証その1とします
そのまま日直に入り、32時間を超える連続した長時間勤務が恒常化している実態 当直明けは一睡もせず、通常の勤務に就いていた。
当直時間の扱いの見直し等を含めた労働基準法を遵守する姿勢を病院側に強く促すことが必要 該当部分なし、検証その2とします


3つの部分のうち「長時間勤務が恒常化している実態」は存在しているとして良さそうです。


検証その1

済生会栗橋病院の給与体制を類推するのに済生会HPにある栗橋病院後期臨床研修募集を参考にします。FNN記事に登場する当直医師は医籍検索で該当者1名で平成20年医籍登録となっています。近いところで5年目の栗橋病院の給与は、

分類 金額
a.基本給 53万9480円
b.賞与 237万3712円
c.賞与・当直料等を含む年総額 1200万0000円
当直料(c - a×12 - b) 315万2528円


315万2528円を月額で考えると26万2710円になります。月の当直回数を、そうですねぇ、日勤4回、休日1回の6コマと仮定します。そうなると1コマあたり4万3785円になります。栗橋病院は当直制ですから、院内当直料が2万円程度と考えれば、1回の当直当たり2万3785円の割増賃金であったと考える事も可能です。さて労働実態はFNN記事より、

  • 栗橋病院の「地域救急センター」は、入院や手術を必要とする救急患者に、24時間対応している
  • ここでは基本的に、当直の医師が1人で、救急搬送と夜間の救急外来の両方に対応している
  • 栗橋病院では、この4年間、受け入れ不能は年間900件余り
  • この夜、五十嵐医師が対応したのは、救急搬送9人と、救急外来に訪れた12人。
  • 当直明けは一睡もせず、通常の勤務に就いていた。

当直時間を夕方5時から翌朝9時までの16時間と考えると、少なく見積もっても10時間ぐらいは通常勤務を行っているとして良いかと考えられます。たぶん訴訟になればすべてが認められても「まったく不思議はない」と存じますが、それはあえて置いといて、そうなると時間外の時給は

    2388円
ぐらいになります。

時間外手当の時給の計算はこれも仮に1日7時間労働として労働時間は1ヶ月で151.6時間となる計算があります。時間給は基本給で割る事により求められますから記事の医師の場合は3888円が算出されます。先ほどの当直料の検算ですが、当直時間を16時間とすれば単純時給換算で6万2208円となり、当直料はその1/3ですから2万円ぐらいでも多すぎないと考えられます。

時間外手当は通常の時給に割増が付きますから、

労働分類 基本時給 割増率 時給単価
時間外労働 3888円 25% 4860円
深夜労働 50% 5832円
休日労働 35% 5249円
休日深夜労働 60% 6221円
以上より、
    医師の当直業務が実態に反して労働時間としては扱われておらず、割増賃金が支払われていないこと
これに該当する可能性は高いと考えます。


検証その2

本田宏氏は栗橋病院の院長補佐の地位におられます。病院概要にも掲載されるぐらいですか管理職と言うより立派な幹部職と受け取らせて頂いて良いかと存じます。となると、

    当直時間の扱いの見直し等を含めた労働基準法を遵守する姿勢を病院側に強く促すことが必要
ここについてどうなるかですが、2つの考え方があり、
  1. 本田氏著書の「勤務医」が管理職以外を指すのなら管理職である本田氏は関係しない
  2. 本田氏著書の「勤務医」が管理職も含めた勤務医全体を指すのなら、有言不実行の可能性あり
2.については著書が平成24年刊行となっていますから、この著書に関与するまで労基法については非常に疎かった可能性があります。著書にする過程で労基法と当直の関係を学習され、「現在鋭意努力中」であるかもしれません。ただ鋭意努力中であってもFNNの取材を受けた時点でも改善は行われていない可能性も高そうだと言えます。

以上、甚だ簡単ながら「気になる事」を指摘させて頂きました。