三角食べの思いで

ふとしたはずみで出た学校給食の思い出です。今の学校給食は非常に美味しくなっていると聞きますが、私の小学校時代(ちなみに中学は弁当でした)は必ずしも美味しいと言い難いものがありました。それでも母に言わせると、脱脂粉乳を鼻をつまみながら飲み下していたので「マシになっている」と言われたものです。まあこの辺は世代間の差がかなりあるところと思っています。私の世代の学校給食とは、

  1. アルマイトの食器
  2. 先割れスプーン
  3. アルマイトのバット
これですべての給食を食べるスタイルです。でもって今と大きな違いとしてパン給食であったです。米飯なんて年に数回ぐらいしか出なかったと記憶しています。昭和の香りが漂う時代のお話なります。そういう給食の作法として教えられたのが
    三角食べ
うちの職員にリサーチすると今でもこの作法は学校で指導されているそうです。これも日本人の食事形態として基本としては正しいと言うより、自然にそうなるものです。最近は変わっている部分もあるとは思いますが、日本人の食事の基本的なスタイルは文字通り、
    ご飯を食べる
ご飯とは米の飯です。ですから日本では今でも米の飯を主食と言います。おかずは副食と米の飯の主食を食べるための補助手段に位置付けられます。ここももっと単純化して言えば、米の飯はそれだけを単独で食べるには味が薄すぎるのでオカズの塩気を借りながら食べるのが基本と考えています。三角食べもこれを想定すると理解しやすくなります。一汁一菜のメニューが判りやすいですが、
  1. オカズを口に含む
  2. そこにご飯をさらに含んで食べる
  3. その後に汁もので流し込む、もしくは口直しとする
ここのポイントは1.から2.の過程で口内調味を行う点でしょうか。そういう観念があるのも日本人の食事の特徴の一つと言われています。ここら辺の食事の基本をもう少し煮詰めると
    ご飯と味噌汁
これが基礎の基礎の気がしています。この基礎セットの上に、これに合うオカズを添えるぐらいでしょうか。このご飯と味噌汁の基礎セットですが合う範囲はかなり広いものがあります。和食系はもちろんですが、中華系でも、洋食系でも合う範囲はかなりあります。だから基礎セットとして君臨しているぐらいです。さてなんですが私の世代はパン給食としましたがパンと必ずセットになっているものとして牛乳がありました。つまりパンと牛乳の基礎セットにオカズが付いていたスタイルと言えば良いかと思っています。ただなんですがオカズが少々どころでない問題でした。日本人の子供への給食ですから当然の話ですが和食のオカズも出てきます。パンと牛乳と和食のオカズの相性は、
  1. パンと和食の相性はやはりイマイチ
  2. 牛乳と和食の相性はかなり良くない
日本人の食習慣として口内調味をやろうとしてしまう傾向がありますから、かなりどころではない辛い食事になります。それならせめて別々に食べようと思っても三角食べの指導が出てくるわけです。取り合わせの相性が悪いので、せめて牛乳だけでも食後の口直しに飲むみたいな食べ方は「宜しくない」と言われる事になります。私は幸い、それほど三角食べの指導に血道を挙げる教師に当たった事はありませんが、もし当たっていればヒジキを食べながら牛乳を飲む世界に耐える必要が生じる事になります。パンと牛乳と和食みたいなトンチンカンな組み合わせでも三角食べの指導が行われたのは推測ですが、
    ご飯と味噌汁の組み合わせとパンと牛乳の組み合わせは同じである
こういう定義が教育現場で為されていたからじゃないかと疑っています。ご飯と味噌汁に較べてパンと牛乳は日本人に取って、取り合わせる範囲の狭い基礎セットになります。とくに和食系は相性が非常に悪くなります。ここももう少し煮詰めるとパンと牛乳と言うより
    日本人に取って牛乳は食事との相性(取り合わせ)が悪い
ここも牛乳単品で飲むのなら問題と思いません。好き嫌いは単なる嗜好の違いだけです。牛乳を他の食事と一緒に飲むと取り合わせの幅が一挙に狭くなる感じです。合うものを思い浮かべるのは大変ですが、合わないものは幾らでも浮かんでくるとすれば言いすぎでしょうか。とくに和食系と合わせると悲惨すぎますし、洋食系だって結構合わないものが多い気がします。食事中の飲み物としては非常に扱いが難しいものの一つの気がします。個人的には悲惨な取り合わせの後遺症かすっかり牛乳嫌いになってしまったのは白状しておきます。


給食も時代によって位置づけの変遷があります。私の母の時代ぐらいになると欠食児童なんてのがゴロゴロしていた訳であり、栄養失調から餓死なんてのも現実味のあるお話だった気がします。私の時代はそういう経験のある母親世代が頑張っていますから「食べれるんだから文句を垂れるな」ぐらいでしょうか。そして今は飽食の時代です。私の時代にはまだ「残さず食べる」指導なんてのが幅を利かせていましたが、今は食べられるだけ食べれば良いになっていると聞いて時代の移り変わりを感じたものです。今の子供は牛乳と給食の取り合わせをどう感じているのでしょうねぇ。