新小児科医のつぶやき

2014-06-23 言うても無駄やろなぁ

ブログ「理想の自分と出逢う旅」(河村直子氏)より、

他の日の記事もお時間があればどうぞ。こういうタイプの方は一定数おられる訳で、なおかつネット上では発言力は大きく感じます。いわゆる反ワクチン派(と言うより・・・・・自粛)ですが、言論の自由がありますから発言する事自体は許容されるものとします。もちろん反論もまた言論の自由であり、これもまた保証される関係にあります。さて昨年に風疹の大流行があったのは記憶に新しいところです。ここで風疹ワクチンの接種率ですが厚労省の定期の予防接種実施者数からグラフを作ってみました。

グラフの見方ですが接種率は

対象人口は各年度に新規に予防接種対象者に該当した人口であることに対し、実施人口は各年度における接種対象者全体の中の予防接種を受けた人員であるため、実施率は100%を越える場合がある。

だから100%を超える年度もありますが、ワクチン接種は連年行われていますから大凡の接種率を反映していると見ても良いかと思います。もっともなんですがそのお蔭で140%なんて接種率が出てきてグラフがかえって見にくくなっています。ちなみに2012年データで1期:97.5%、2期:93.7%、3期:88.8%、4期:83.3%です。それと期別の説明ですが2006年度からMRによる定期接種2回が行われています。2008年度からはそれまでに1回接種だった者に対し

    3期:中学1年
    4期:高校3年

こういう経過措置が取られているのを表しています。それと予防接種をされていない者ですが河村氏の様なケースもあるでしょうが、他には

  • 接種前に罹患した
  • 疾患のために接種できない
  • 積極的ワクチン忌避ではなく消極的な理由で、

    1. 家庭事情のためワクチンどころでなかった
    2. 単に失念していた(うっかり、無頓着)

こういう方々も当然含まれます。そうそう厚労省のデータは1995年までしかないので参考までに去年作った年齢別の接種率グラフも提示しておきます。

だいたいこんな感じです。男性のグラフでワクチン接種率の表示がないのは、それ以前は男性には定期接種そのものが存在していなかったからです。そういう事情を踏まえて国立感染症研究所の風疹 発生動向調査の2013年53週の報告から去年の風疹患者数を年齢別のグラフで示します。

グラフからわかる事は

  1. 男性の方が多い(男性10985人、女性3372人)
  2. 男性でも2回接種の可能性が落ちる20歳以上から罹患者が増えている
  3. 子供に少ない

風疹は従来子供の病気のイメージがありましたが2013年は成人中心であった事がわかります。ちなみに小学校未満(0〜6歳児)は464人(3.2%)、小学校(7〜12歳児)で250人(1.7%)です。私は小児科開業医ですが2013年はついに1例も風疹を診る事はありませんでした。ちなみに0〜6歳児のうち予防接種前の0歳児を除くと400人になります。さらにこのうち予防接種を行う年にあたる1歳児が168人含まれています。私の意見としては風疹ワクチンのお蔭で子供への流行はかなり抑えられたと素直に見ます。



ここでワクチンには2つの見方があります。大した話ではないのですが、

  1. 個人防衛
  2. 集団防衛

個人防衛はわかりやすくて、ワクチン接種によりその疾患の罹患を予防する効果です。感染症は罹ってみないとどうなるかは誰にもわかりません。軽症で終わる事も多いのは確かですが、重症化したり重い後遺症が残ったりする事も一定確率で発生します。また自分が軽症であっても、他者に感染させた時に軽症で終わるかどうかは誰にも予想できません。感染症の重症化や後遺症を防ぐためには、そもそも罹らないのが一番効果的です。そのための個人防衛のためのワクチンです。

集団防衛は個人防衛の延長線上に直結します。感染とはヒトからヒトへの連鎖になります。この連鎖の輪が拡大すると流行状態になります。ここで感染の連鎖を断てる人がいれば感染はそこで阻止されます。具体的には既感染者、ワクチン接種者です。そういう人が多数存在すれば感染が発生しても連鎖の輪が広がりにくく、広がりかけても限定された規模で終息します。この集団防衛が守っている人の中には、希望してもワクチン接種が出来ない弱者も含みます。それこそ罹患するだけで重症化どころか命に関わる弱者を守っている事になります。ワクチン接種とは自分を守る事が集団を守る事に連動していると言えます。ラグビーじゃありませんが、

    one for all,all for one

こうやって集団で守っている人の中に河村氏の様な考えでワクチンを忌避される御子息も含んでいる訳です。河村氏は感謝など念頭にもないと存じますが、感謝されない人も守る集団防衛戦に参加するのは本当に格好の良い事だと思っています。そういう集団防衛戦に参加されている人がこれだけ高率におられる事を小児科医として感謝しています。それでも1人でも防衛戦に参加される人が多い方が効果は上がるわけですから、これからも参加者を増やす不断の努力が必要と肝に銘じております。

10年ドロッポ10年ドロッポ 2014/06/23 09:37 そう言う人達も守るのが、自衛隊です。<言ってみたかっただけ

luckdragon2009luckdragon2009 2014/06/23 13:42 諸外国から、風疹流行の警告が出されていることを知らない人が多い模様。
ここら辺、報道すれば外国コンプレックス的な部分で、接種率あげられませんかね。

後は、やはり、企業経営者の協力です。
忙しくて打っていない人も、多い。会社員はここを突けば、接種率上がるような。

BugsyBugsy 2014/06/23 15:04 感染症の場合 本人が信念だの大丈夫だの抜かしても他人に罹患させることになることには無頓着な場合が多い点が困ったものです。

種類は違いますが性行為を通じて感染することが多い感染症は特にそうですね。地雷原を裸足で走り回ってような事をしていて 本人には武勇伝のつもりか吹聴するに至っては釘の刺さったバットで頭を殴ってやりたくなります。女性にだって見かけます。

うろうろドクターうろうろドクター 2014/06/23 16:03 事後承諾ですが、コラボ記事を書きました。
こういうワクチン忌避派は、無人島にでも住んで欲しいものです。

Med_LawMed_Law 2014/06/23 20:02 ワクチン接種していない児童の就学制限、成人の就職制限もあり得る政策と思えます

教育義務は親にあるので、ワクチン接種忌避の親は親権剥奪し罰則を与えるのが適当でしょうね

BugsyBugsy 2014/06/23 21:14 麻疹もそうですが ついでにワクチンを接種していない人間の渡航制限もでしょう。相手国に失礼です。
外国人の入国も同様に願いたいものです。

JSJJSJ 2014/06/24 10:06 >感謝されない人も守る集団防衛戦に参加するのは本当に格好の良い事だと思っています。そういう集団防衛戦に参加されている人がこれだけ高率におられる事を小児科医として感謝しています。それでも1人でも防衛戦に参加される人が多い方が効果は上がるわけですから、これからも参加者を増やす不断の努力が必要と肝に銘じております。

Yosyanさんのバランス感覚が私は好きです。

福笑い福笑い 2014/06/24 11:14 1女の母で自己免疫疾患を患っています。娘に遺伝するものでは無いが「なりやすさはある」と言われています。私が橋本病でもあるので、子宮頸がん等のワクチンで娘の免疫のバランスを崩すのではないかと心配です。ワクチン接種の際に親の病歴等は考慮されているものなのでしょうか?
理解の助けに、何か平易で参考になるものがあればと探しています。ご教授頂ければ幸いです。

名無しさん名無しさん 2014/06/24 14:06 言うても無駄やろなあと決めつけて、われら愚民に対して啓蒙してこなかった国(と医者)が悪いんじゃないかと思いますがいかがでしょうか。
第一20年前に義務でなくなってるのですから、予防接種に対する意識が下がるのは当然かと思います。
不勉強な我々に責任転嫁しているようにも見えます。

10年ドロッポ10年ドロッポ 2014/06/25 09:30 言うても無駄やろなあ、は不勉強なだけで啓蒙しさえすればワクチンの必要性をご理解頂けるような皆様に言ってるワケではなく以下自粛なアレな方々向けのお言葉かと思われます。

医師医師 2014/06/25 14:35 何をおっしゃる名無しさん
マスゴミに踊らされる馬鹿を自覚しておりながら...
医療界は大きくアピールしてきておりますよ

まあまあまあまあ 2014/06/26 13:42 >「ニセ科学」に対して根拠を出して、否定するとか、反論するならいいんです。
>そうではなくて、「ニセ科学」に対して「馬鹿だなー」とか「知的レベルが低い」
>などと罵り、人格までも否定するようなことがマズイんです。

倫理倫理で夜も眠れず倫理倫理で夜も眠れず 2014/06/27 06:17 むかしむかし駆け出しの医者であったころ。
あるご近所の母親(もう現役ではない前世代の方)が、断固とした言い方で、「自然にはしかにかかって死ぬなら諦めもつくけど、親が打たせたワクチンで死なせたら後悔してもしきれない」と私におっしゃいました。
「無知の強さ」というものをひしひしと感じさせられました。
どう説得したものか。
確率という数学?
疫学という医学?
公衆衛生という社会規範・倫理?
すべてにおいて、素人の集団とプロの集団(医師及び行政)双方のレベルアップ教育が必要ということでしょうね。
特に、厚生労働省が任意接種に切り替えてしまった一時期の弱腰医療が、国民のワクチン・リテラシーを著しく低めたことが残念でなりません。医師というプロ集団の踏ん張りが不足していたのです。
「自分が感じる罪悪感」のレベルも個人の力量のうちだとすると、やはり、最大多数の最大幸福のためには強制力が必要です。個人の利益<集団の利益、というのが公衆衛生のドグマであり、その背景には感染症との壮絶な闘いの人類史があることを、義務教育で教えるしかないでしょう。その犠牲者には救済処置を取るというのが、社会からの「集団防衛のために犠牲になった個人」へのせめてもの感謝と慰藉の表明の形である、ということも含めて。

luckdragon2009luckdragon2009 2014/06/27 13:47 そもそも、ワクチンって免疫をつけさせる事に特化した、感染症ウィルスの加工品みたいなものなのに。
何故、安全に作った方を選ばずに、感染のリスクをほったらかしにするのか、理解不能。

感染パーティーに至っては、原種のウィルスなんだから、酷いケースなら、普通に死ぬのに。

どうも、論理構造が破綻しているような。
まあ、論理的に行動していないんでしょうけど。

BugsyBugsy 2014/06/27 22:48 風疹は代表的ですが、子供の頃に罹患しても成人になってふとしたはずみで検査したら抗体が消えているということはあります。だから昔感染していた記憶があるお年寄りも要注意です。
いえ 自分は近所で風疹や麻疹に罹った子供がいるから遊びに行かされたくちらしいのです。

小児科の先生たちと違って自分達はこういったウィルス感染の抗原のブーストは受けて無いですからね。ワクチンは嫌だからといって罹患して いつの間にやら抗体の消え失せた相手に感染させているかもしれません。日和見感染もガン治療をやっていると気になる言葉ではあります。

オイラは数年前に職員検診で抗体が陰性で仰天しました。それまでは陽性だったのに。
免疫不全の病気にでもなったのかと悶々とした覚えがあります。ワクチンを受けずに医療の仕事をやるのは間違ってるし、医療以外でもワクチン接種を受けるのは他人と接するうえでの社会人として当たり前のエチケットだとも思うのです。

10年ドロッポ10年ドロッポ 2014/06/28 10:05 >そうではなくて、「ニセ科学」に対して「馬鹿だなー」とか「知的レベルが低い」
などと罵り、人格までも否定するようなことがマズイんです。

ニセ科学に染まる奴は馬鹿で知的レベルが低い人格まで否定されるべき存在であると広く世間に見做されるようになれば「犠牲者」はかなり減るんじゃないかなあ…。
*一部は却って先鋭化するでしょうけど。

>「自然にはしかにかかって死ぬなら諦めもつくけど、親が打たせたワクチンで死なせたら後悔してもしきれない」

死ぬのはテマエではなくまったく別人格であるお子さんあるいはアカの他人の他所のお子様な件。

JSJJSJ 2014/06/28 10:41 いろいろな前置きは端折りますが、
現状では任意接種については、個々人が自己の損得だけを考えて選択すればよいと思っています。
少なくとも制度はそのように設計されていると、私は考えています。
事故時の補償の定期接種との差を考えれば、社会の側が個人が負うリスクに対して正当に報いているとは思われません。

今回直接話題になっているのは風疹の定期接種対象者ですから、個人の損得とともに社会の損得を論じることに否やはありませんが、
定期接種対象者でない者にもワクチン接種を呼びかけるのであれば、
同時に国に対して、任意接種にたいしても定期接種と同等の補償をするよう働きかけるべきだと考えます。

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