幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ
幽霊列車とこんぺい糖―メモリー・オブ・リガヤ (富士見ミステリー文庫)
- 作者: 木ノ歌詠,尾崎弘宣
- 出版社/メーカー: 富士見書房
- 発売日: 2007/10
- メディア: 文庫
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記念すべき(?)1冊目の感想は、木ノ歌詠先生の『幽霊列車とこんぺい糖 メモリー・オブ・リガヤ』です。この本を読まなければ私がライトノベルにのめり込むようなこともなかったであろう私にとって、とても思い出深い作品です。読んだのだいぶ前なんで的外れなこと言ってるかもしれませんが悪しからず。
大まかなあらすじを書くと、
自身に保険金をかけて電車への飛び込み自殺を計画していた主人公・有賀海幸は、計画実行当日に目的のローカル線の廃線を知る。不貞腐れてレールの上に横になっていた海幸の前にリガヤと名乗る少女が現れて、来るはずもない「幽霊鉄道」を見せてやると宣言するのだった。
という、ガールミーツガールです。
自分を轢き殺す幽霊鉄道の実現を望み、リガヤの鉄道製作を手伝う海幸なんですけど、私この子すごい好きです。設定だけ見ると(一応理由付けはあるにせよ)生きることに嫌になって死にたがってる痛い厨二病の主人公なんですけど、この子絶対心の底から死にたいって思ってないと思いますよ。
宝物のビデオテープがビデオデッキにのまれた時の落胆具合や、それをリガヤが直してくれたと知った時の喜びよう、寒天ゼリーを心から愛しく思ってるところとか。海幸は生に絶望しきれず、常にどこかにリガヤ=幸せを求めてると思う。海幸の中学の時の担任が「心が別の次元に飛んでいる」と指摘するシーンでも、海幸の目に映ってるのは死ではなくて、夢想する幸せな未来なんじゃないかなぁと。だからこそ母親の言葉に傷ついてしまったりもするのでしょうけど、それも含めてすごく人間臭い。そんな海幸がすごくお気に入りです。
逆にヒロインとして描かれているリガヤですが、こちらは物凄く物語的なキャラクターだと思う。リガヤが幽霊鉄道を創作する意味が作品中盤から描かれていき、終盤で彼女の本質が明らかになるのですが、それもあくまで物語を進めるための理由付けに過ぎず、結局は海幸の幸せのために配置されたキャラクターのように見えました。(名前からしてLIGAYA=カダログ語で「幸せ」ですしね。)
そんな人間らしい海幸が「リガヤ」をつかむ物語。死なんてテーマで物語は進みますが、あらかじめハッピーエンドが用意され、全体を通して澄んだ雰囲気が漂うとても甘い物語だと思います。
木ノ歌先生は現在、瑞智士記のPNで『星刻の竜騎士』を執筆中ですが、またこのような作品を書いてくれないかなぁと思ったりしてます。