冴えない彼女の育てかた

冴えない彼女の育てかた (富士見ファンタジア文庫)

冴えない彼女の育てかた (富士見ファンタジア文庫)

今回は丸戸史明先生の『冴えない彼女の育てかた』の感想です。
PCゲームのシナリオライターとして多数の固定ファンを獲得している丸戸史明先生と、同じくゲームやラノベのイラストで人気の深崎暮人先生がタッグを組んだ本作。主人公・安芸倫也が桜舞い散る通学路で運命的な出会いをした少女は、全くキャラの立っていない目立たない女の子・加藤恵。そんな彼女をヒロインにふさわしいキャラとしてプロデュースして、彼女がメインヒロインのギャルゲーを作る!とまぁ、あらすじはそんな話です。表紙は加藤恵じゃないですよ。
丸戸&深崎コンビということで購入決定していた本作ですが、この1巻単品だけ見て無茶苦茶面白い!といったものではないですね。主人公が目立たないメインヒロイン・加藤恵への感情を認識し、同人サークルを結成するところまでが描かれ、1巻丸々一冊でプロローグのようなものなので、キャラクターと物語の方向性を確認する程度で終わったという印象。メインヒロインである加藤恵は目立たないキャラという設定ですが、無駄に要素つけまくりのベタキャラよりも彼女のようなフラットな装飾なしなキャラクターのほうが見ていて安心するといいますか落ち着きますね。大いに好みなキャラクターです。スペンサーさんや詩羽先輩に関しては立ち位置はとても美味しいので、次巻以降の描かれ方に期待ですね。
内容に関してはそんなところですが、文章のほうがゲームライターらしいといいますか、台詞多用の掛け合い主体となっています。その掛け合いのテンポの良さこそが丸戸さんの持ち味であるでしょうし(丸戸作品はNG恋しかやったことないですが)、それは本作でも十分に発揮されているとは思うのですが、これがゲームのスタイルで、立ち絵と背景があって、BGMが流れながら一文ずつテキスト欄に表示されて、そこに声優さんの声がつくという形式をとっていれば更に魅力が増すのだろうなぁというのが、読んできた時に常に感じていたことで私の一番の感想ですかね。ギャルゲやエロゲ、ネット上のネタなどを多用することに抵抗感を覚える人もいるかも知れませんが私は特に気にしませんし、会話パートも軽快、キャラもそこそこ魅力的と全体を見ても悪くはないんですが、「これがゲームならなぁ。Enterキー押しながら映像込みで追いかけられたらなぁ。」という思いは抱かずにはいられなかったです。
「ゲームなら」という思いは残ってしまいましたが、それを差し引いても掛け合いのテンポの良さは心地よかったですし、良く言えば落ち着いた、悪く言えば山場のない展開も私個人は好みだったので、キャラなども含めて今後に期待出来るだけのものはあったかなぁと思います。今後、スペンサーさんと恵さんでNG恋の美都子と麻美先生みたいな修羅場を繰り広げてもらっても一向に構いませんがね。むしろどんどんやってくれといった感じですが。丸戸先生どうぞよろしく。
あと本編とは関係ないですが、ときメモって今のラノベ読者の主要年齢層ではもうわからないんでしょうかね・・・。