クリーンエネルギー研究所(シリコンバレー)

2016-05-30

SunPower社の業績

米国発のシリコン系のPVメーカーで唯一(?)がんばっているSunPower社。

直近の数字は少し悪いが、米国以外での発電所建設が割と順調な模様。

以下、報道記事の私なりの翻訳ですが。

SunPower社の2016年第1四半期は、GAAPによる売上が$384.9Mであり、損失は予想を上回る結果となった。GAAPベースでの2016年予想は、売上が$2.8-3.0B、売上総利益が13-15%、純利益が$0-50Mである。

GAAPでの第2四半期予想は売上が$290-340M、総利益が10-12%、純損失が$65-90Mである。

同社CEOのTom Werner氏によると、発電所レベルの事業では、米国内で多くの主要プロジェクトを抱えおり、そのうち、100MWのNV Energy社向けプロジェクト、102MWのHenrietta発電所、68MWのStanford大学向けプロジェクト、については2016年第2四半期にも完成する見込みである。

加えて、現在8point3 Energy Partnersが保有する50MWのXcel Energy社向けHooperプロジェクトの商業運転を実現した。

SunPower社はまた、第1四半期中にメキシコのオークションにおいて500MW分の電力購入契約を獲得した。これは、採用された太陽光発電の25%、全体の20%にあたる。

さらに同社は、本年後半にもチリに第2の太陽光発電プロジェクトを建設する予定であり、こちらは約100MWの容量となる見込みである。

Baird Equity Research社は、第2四半期において弱気な見方が示されている一方で、SunPower社はチリのプロジェクトやメキシコのオークションなど、確実に成果をあげており、中米・南米において非常に良いポジションをとることができており、継続的な成果が期待できるであろうとみている。

2016-05-27

SolarEdge社は割と順調

モジュール向けエレクトロニクスの主要サプライヤーのうち、enPhaseの赤字幅が拡大したと書いたが、ライバルであるSolarEdge社の業績は順調に推移している模様。

第1四半期

    • $125.2Mの記録的な売上に到達。前期からはほぼ横ばいではあったが、昨年同期比プラス44.9%となり、市場の予測を大きく上回った。
    • GAAPによる売上総利益は32.5%と前期の30.9%よりアップし、前年同期より27.4%増加したが、この値は来年には標準に戻るであろうと同社は見込んでいる。
    • 純利益は$20.8Mであった。
    • インバーターの出荷数は416MW(AC)規模であった。

第2四半期

    • 売上は$125Mから$134Mを見込んでおり、売上総利益は29%から31%の間に落ち着くであろうと予想している。

Oppenheimer Equity Research社は、HD Wave販売開始等に伴って2016年のSolarEdge社の業績は順調に推移すると見込んでいるが、顧客からの値下げ要求等対応しなければならない事項も生じてくる可能性があり、より建設的な運営を目指すためにも利益の安定化を図る必要があると述べている。

f:id:YukioSakaguchi:20160528083324g:image

2016-05-26

アップル社が電気自動車充電インフラ会社に投資

アップル社電気自動車開発(Titan Project)に関する記事は山のように出ているが、この記事もその一つ。

中国系の充電インフラ会社のDidi Chuxingに$1B投資したとのこと。

この記事にあるように、カリフォルニア州には現時点では自宅外(職場+公共)の充電施設8,000箇所しか無いが、2020年にはその13倍(100,000箇所)から25倍(200,000箇所)必要になるという。

Apple has yet to confirm whether it's investing in its own line of electric vehicles, but Reuters is out with more evidence that Project Titan is underway: The tech giant has reportedly been in talks with charging station companies and has hired at least four electric vehicle charging specialists.

Apple has been asking charging station companies about their underlying technology, Reuters reports, for reasons other than providing charging stations for its own employees (which the company already does).

Speculation about Apple's electric vehicle project, dubbed Titan, has gone on for months, with reports indicating the company is aiming to ship its first fleet by 2019.

Earlier this year, it was reported that Apple has registered a handful of car-related domains. In a more concrete illustration of Apple's interest in the auto industry, the company recently announced it's invested $1 billion in China's cab-hailing service Didi Chuxing.

For a company like Apple, known for controlling the whole hardware and software ecosystem around its products, investing in charging stations as part of its electric vehicle project would make sense.

Moreover, as Reuters pointed out, it would fulfill a clear need: California currently has around 8,000 work and public chargers but will need somewhere between 13 to 25 times more by 2020, according to the National Renewable Energy Laboratory.

Reuterの元記事はこちら。

セミナーの様子

下記は5月20日に神田で実施したセミナーの写真。

再生可能エネルギー分散電源の導入について活発な議論ができました。

f:id:YukioSakaguchi:20160520153550j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20160520131346j:image:w360

2016-05-25

SolarCity社の2016年第1四半期、損失拡大

f:id:YukioSakaguchi:20160526141542j:image:w360

以下、報道記事から。

SolarCity社の2016年第1四半期は、売上こそ好調であったが、損失は予想を上回る結果となった。

第1四半期の売上は$122.6Mと予想の$109Mを上回り前年同期比82%のプラスであった。設置ソーラー容量は214MWであり、指針で示されていた180MW を上回り、こちらも前年同期比40%のプラスであった。

しかしながら、規制による不確実要素の増加を受けて予約件数が顕著に減少し、予想よりも150MWマイナスとなった。

第二四半期については、前年同期比2%ダウンの185MWの設置容量を予想している。

販売費用については、80%アップの$0.97/Wと増加し、総じて予想を上回る損失を計上し、これで13期連続の損失計上となった。

5月9日の取引終了後、今年の同社株価は50%以上下落した。

同社は株主に対し、コスト上昇分については本年後半にも回収できる予想であることを示し、また、4月を通して新規プロジェクトファイナンスで$11Bを獲得したことを強調し、今年中にはキャッシュフローを黒字に転換できる見込みであることを説明した。

第1四半期における(1)予約件数の少なさや(2)営業費用の増加を懸念しており、Musk/Reeveコンビへの期待は依然として高いが、(3)同社の信用性は現在のところ低迷している。

また、UBS社は、「2017年中に$2.25/W以下のコストターゲットを達成できる」と予想していたが、「$2.52/W」に修正している。

「販売費用=$0.97/W」「設置コスト合計=$2.52/W」は極めて高いと思うが、今後、新規のルーフトップソーラーを導入したいお客を開拓する難しさをひしひしと感じる。

まだルーフトップソーラーを導入していない我が家にも頻繁にセールスマンの来訪や電話営業が来るが.....

彼らのコストってとても高そう。

成功報酬型」だと思うので必死に営業をかけてくるが。

2016-05-08

定置型エネルギー貯蔵に関するセミナー

定置型エネルギー貯蔵に関するセミナー、まだ定員には少し余裕があるので奮ってご参加ください。

締め切りは、5月17日です。

【概要】

日時:2016年5月20日(金)

会場:エッサム神田ホール1号館 602号室

主催:クリーンエネルギー研究所/株式会社開門

詳細とお申し込みはこちら

RPS50%達成までの第一歩

カリフォルニア州ではSB350が2015年に可決されており、2030年までにRPS50%を達成し、エネルギー効率を倍増させるなど、同州にとって非常に挑戦的な目標が掲げられている。

州知事からのトップダウンの目標設定であるが、行政機関がこれから具体的に動く出す。

4月15日に発行された審判官(Administrative Law Judge)の通達では、このSB350に基づくRPS調達要件の変更に関する意見が募集されており、以下の事項を導入するにあたって既存のRPSプログラムにどのような変更を加えるべきか吟味する際に同意見が考慮されると見込まれる。f:id:YukioSakaguchi:20150108130539p:image:w360:right

  • 2020年以降の目標達成期間の設定(New compliance periods for years after 2020)
  • RPSの対象となる短期・長期の契約に対する新しい要件(New requirements for RPS-eligible short- and long-term contracts)
  • 2020年以降の対応期間において発電所レベルでの発電や他のオーナーシップ契約を利用する際の新しい要件(New requirements for using utility-owned generation or other ownership agreements for compliance periods after 2020)
  • 2021年1月1日以降の全対応期間における調達超過に関するルールの変更(Changes to excess procurement rules for all compliance periods beginning January 1, 2021)
  • 長期契約に関する新しい要件に早期対応した場合の調達超過に関連するルールの変更(Changes to the rules governing excess procurement related to early compliance with the new requirements for long-term contracts)

これらの事項やその他当該通達に記載された事項に関するコメントは5月5日まで受け付けられる。

カリフォルニアの政策の実行方法を見ると、トップダウンボトムアップがうまく組み合わさっていると思う。

まあ、日本とはそもそもの根幹の電力システムや、政策への考え方が違うのでどちらがどうとは言えないが。

2016-05-05

「IoT」と「エネルギー管理」

シリコンバレーに数多あるIoTの会社の中でも1頭身抜け出ている「Ayla Networks社」を訪問。

製品・サービスの特徴やメリットをいろいろ教えていただいた。この会社の製品を組み込んだ家電品がすでに大量に米国中国の家庭に入り込んでいるとのこと。従業員はすでに150人。

エネルギー管理」を「家庭」に持ち込む難しさは色々指摘されている。

「家電品」をどうやってネットワーク(とその先のクラウド)に繋ぐかは、家電品をネットワークに繋ぐことによるメリットをメーカーとエンドユーザーが共有して、そのコストアップ分をどうやって吸収するかにかかっている。

f:id:YukioSakaguchi:20160506080554j:image:w640

2016-05-03

リチウムイオン電池の種類

リチウムイオン電池の調査をしていると、ひたすら略号が出てくる。

とても覚えきれないので、自分のためにまとめておく。(参考資料:WikiPediaこちら)

  1. NCA :
  2. LCO :
  3. LFP : f:id:YukioSakaguchi:20160504080058j:image:medium:right
    • Lithium Iron Phosphate Oxide(LiFePO4)
    • リン酸鉄リチウム
    • 理論電圧 : 3.20, 3.30V nominal;
      • 通常の動作電圧 2.5–3.65V/cell
    • 重量あたりのエネルギー : 90–120Wh/kg
    • 近年、アメリカ中国で採用が増えている。
    • 材料は安いが、製造コストがやや高い。
    • 結晶構造(オリビン構造:右図)が強固なため熱安定性が高い。(燐と酸素が強固に結合しているために異常時における酸素発生がない。)
    • 電気伝導性が低いことが課題とされていたが、活物質の微細化と表面の炭素コートの採用により改良されている。
    • この資料が勉強になる。
  4. LMO : f:id:YukioSakaguchi:20160504075500j:image:medium:right
    • Lithium Manganese Oxide (LiMn2O4) 
    • マンガンリチウム
    • 理論電圧 : 3.70V (3.80V) nominal;
      • 通常の動作電圧 : 3.0–4.2V/cell
    • 重量あたりのエネルギー : : 100–150Wh/kg
    • 1996年に商品化され、近年は特に自動車用として広く普及している。
    • 結晶構造(スピネル構造:右図)が比較的強固なため熱安定性が高い。
    • 材料のマンガンコバルトの1/10以下の価格である。
    • サイクル寿命と高温でのマンガンの溶出が課題だったが、近年は改良されている。
  5. NMC :
  6. LTO :
    • Lithium Titanate Oxide (Li4Ti5O12)
    • チタンリチウム
    • 理論電圧 : 2.40V nominal;
      • 通常の動作電圧: 1.8–2.85V/cell
    • 重量あたりのエネルギー : 70–80Wh/kg
    • 2008年に東芝により商品化された。
    • 東芝SCiBは、外力などで内部短絡が生じても熱暴走が起きにくい、充放電10000回以上の長寿命、6分間での急速充電、キャパシタ並みの入出力密度、寒冷地(-30℃)でも使用可能、などの特徴があるとしている。
    • 電圧が2.4Vと低い。

2016-05-02

EV向けのLiBの動向

5月20日に予定している講演会では、最新の電気自動車用のバッテリーの情報を含めて講義します。

テスラが進めている円筒形バッテリーの容量向上策(18650→2XXXX→2XXXX)や、それに対抗するLGCの車載LiBセルの動向。

GM/Chevy BOLT-EV向けの$145/kWhがさらにどう下がっていくのか。

NMCの素性は今後どう変わっていくか。

ニッケルを増やしても大丈夫か?

等、最新の情報をお届けする予定です。

f:id:YukioSakaguchi:20160503072151p:image

2016-04-30

2025年までに150万台

カリフォルニア州は全米でも自動車排気ガスによる大気汚染がひどい州である。

州政府排気ガスが出ない車(ZEV : Zero Emission Vehicle)の導入を進めている。

ブラウン知事2025年までにZEVを150万台州内で走らせるという目標を掲げている。

下のグラフはNRELによる2025年までのZEVの到達目標である(カリフォルニア)。

f:id:YukioSakaguchi:20160501035440j:image

かなり弓なりではあるが、「充電インフラの整備」「価格の低下」「走行距離の伸び」が3点セットでこれから10年かけて進むと思われるので、まあ実現可能な数字かなとは思う。

なお、テスラのModel 3は3週間で40万台の予約を集めたとのこと。このうち2/3以上はカリフォルニア州かと思われるが仮に30万台のModel 3が2018年から2年かけて(15万台/年)納車され、このペースが2025年まで8年間続くとすると、15万台x8年=120万台となる。

「取らぬ狸」ではあるが。

こちらは、年間ZEV販売台数予測(カリフォルニア)。2025年には年間40万台のZEVが販売されるという予想になっている。

f:id:YukioSakaguchi:20160501065502j:image

2016-04-27

定置型エネルギー貯蔵に関する講演会

下記の通り、日本(神田)で定置型エネルギー貯蔵に関する講演会を開催します。

奮ってご参加ください。

【概要】

日時:2016年5月20日(金)

会場:エッサム神田ホール1号館 602号室

主催:クリーンエネルギー研究所/株式会社開門

詳細はこちら

再生可能エネルギーによる発電容量の設置

米国では再生可能エネルギーによる発電容量の設置が進んでいるが、2000年から2015年の15年間の推移を纏めたのが下記のグラフ。

f:id:YukioSakaguchi:20160428111046j:image

太陽光発電は2013年から急増している。

対して、風力発電は2012年に8GWを設置したのをピークに2013年にガクンと下がり、その後じわじわと増えてきている。

15年間の累計で言えば、風力発電が全体の64%と3分の2を占める。

2016-04-26

カリフォルニアの直流高速充電ステーション

カリフォルニアの直流高速充電ステーションの推移のグラフ。去年の2月とちょっと古いが。

f:id:YukioSakaguchi:20150419125750j:image

この時点ではCHAdeMOが324ヶ所とトップ。

TeslaのSuper Chargerが224ヶ所で2位。

Comboが104ヶ所と出遅れ。

来年リリースの予定のChevrolet/Voltは、廉価($35,000?)で航続距離が長い(200 miles?)ので、そこそこ売れると思われるが、直流高速充電としてはComboしかサポートしていない。

もしVoltが売れだすとComboが増え出すと思われる。

Model 3が来年末に出てくるTeslaのSuper Chargerは、基本的にTesla直営(?)のステーションだけなので公共の場所にはそんなに増えないのでは...

2016-04-22

PEV車の伸び予想

Long Beachで開かれた3日間のV2Gのカンファレンスから帰ってきた。

いろいろ考えさせられる内容が多かったが、これらは来週時間をとってレポートに纏める予定。

Interoperablityと標準化と政策に関する議論が非常に多かった。

まあ、毎度のことで「Chiken or Egg」の関係になるが。

下図は2022年までのPEVの伸びの予想(Navigant)。米国の5州だけだがなかなか面白い。

f:id:YukioSakaguchi:20160423031541j:image

カリフォルニアが多いといいながら、2022年時点で12万台程度。

これでは、州の目標の「2025年に150万台のZEVが州内を走っている」に全く届かない......

2016-04-20

Conferenceの2日目

Long Beachで参加中のV2G Conferenceの2日目。

f:id:YukioSakaguchi:20160420092447j:image:w360

2016-04-19

V2G

Long Beachで、プラグイン車(PEV)とグリッドの双方向の電力のやりとり(V2G)に関する少人数のワークショップに参加中。

非常に興味深いデータと、V2Gの新しい方向が電力会社や系統運用者や企業から示されている。

f:id:YukioSakaguchi:20160419115210j:image:w360

定置型エネルギー貯蔵に関する講演会開催

下記の通り、日本(神田)で定置型エネルギー貯蔵に関する講演会を開催します。

奮ってご参加ください。

【概要】

日時:2016年5月20日(金)

会場:エッサム神田ホール1号館 602号室

主催:クリーンエネルギー研究所/株式会社開門

詳細はこちら

【講演主旨】

米国にとって「エネルギー政策」は「国家安全保障上の問題」であり、また「雇用創出」でもある。 オバマ政権は「グリーン・ニューディール政策」を掲げ、研究開発や事業化の支援を強化しており、政府の後押しを受けて、シリコンバレーだけでは無く、東海岸他でも多数のベンチャー企業が登場し、新しい技術やビジネスモデル提案が行われている。

これらの追い風を受けて、再生可能エネルギーはここ数年で大きく伸びた。

また、昨年連邦議会で決まったITCの5年間の延長は、太陽光発電をビジネスとする者にとって大きな追い風になる。

しかし、電気料金の上昇、電力網(特にPV率の高いFeader線)の不安定化、NEMのもたらす不平等感、ダックカーブ等、弊害も指摘されだした。

こういう状況の中で、カリフォルニア州は、2030年までに再生可能エネルギー発電比率を50%に、ハワイ州2045年までに100%にするというきわめて挑戦的な目標を昨年、州法化した。

これらの再生可能エネルギー発電比率の急激な上昇に伴う電力網の不安定化を補うための施策として、(1)スマートインバーターの必須化(Rule21/Rile17H)、(2)大型のエネルギー貯蔵装置の導入(3)変電所の自動化(IEC61850)(4)家庭用バッテリーハイブリッドインバーターの推奨(5)家庭向けTOU(Time Of Use)の導入(6)家庭向けデマンドチャージの導入(7)プラグイン車を用いた双方向の電力融通の試行(8)高精度センサーや次世代AMIの導入(9)ハワイにおけるIPRの試行(10)家庭や商業施設エネルギーをシェアするアグリゲーションやマイクログリッド(11)DOE/SunShotが推進するSEAMSアーキテクチャー(12)DERと系統運用者間の通信プロトコル標準化(IEEE2030.5)等がここ数年矢継ぎ早に打ち出されている。

残念ながら日本メーカーは周回遅れの様相を呈しており、これらの施策の意義やビジネスインパクトはおろか、そもそも米国エネルギー事情がどういう方向に進もうとしているかさえ把握できていない。

この講演会では、株式会社開門の協力を得て、クリーンエネルギー研究所(シリコンバレーが本拠)が集めた最新の情報を元に、これらのエネルギー関連で矢継ぎ早に出される目標や施策の成算及びビジネスに与えるインパクトをシリーズで解説する。

第1回目の今回は、ここ数年大きな注目を集めている「定置型エネルギー貯蔵(定置型バッテリー)」に焦点を当てる。

4時間という短い時間であるが、下記の内容について少人数で質疑応答を入れながら当社代表の阪口幸雄が解説する。

(1)コストトレンドはどうなっているのか(2)カリフォルニア州が電力会社に義務化した1.3GW相当の蓄電施設設置はこれらの課題に答えられるのか(3)定置型蓄電ビジネスは本当に利益が出るのか(4)定置型蓄電を用いたアンシラリーサービスマーケットはどれぐらいの利益が見込めるのか(5)そもそもアンシラリーサービスマーケットは各地域(州)でどのような体系になっているのか(6)Frequency Responseとはどのようなサービスで同期型発電施設がGoverner Freeが行っていた調整の置き換えは可能なのか(7)米国ではどのような蓄電関連のベンチャー企業が出て来ているのか(8)日本の会社はこの波に乗るためには何をすればいいのか、等。

---

2016-03-30

リチウムイオン電池の持つエネルギー

数日前に、シリコンバレーの某社を訪ねたときに、そこの倉庫も見学させてもらった。

その倉庫のさらに奥の特別管理倉庫には、家庭向けの「リチウムイオン電池」が100台ほど出荷待ちで鎮座していた。

その会社の方との会話で、安全に並々ならぬ配慮をなされていることが分かった。

この家庭向けの「リチウムイオン電池」の容量は10kWhだそうだが、通常、工場出荷時には半分(5kWh)まで充電する。「リチウムイオン電池」は過充電・過放電を嫌うので。

5kWhの「リチウムイオン電池」が100台あると、その総エネルギーがどれぐらいかを計算してみる。

筆者は物理屋なので、エネルギーの単位はジュール[ J ]に換算します。

1kWhは3.6 MJ (メガジュール)なので、5kWhが100台(=500kWh)あると

  3.6 MJ/kWh x 5 kWh/台 x 100台= 1.8 GJ (ギガジュール)

となる。

何らかの原因でこのバッテリーの「カソード(陽極)」と「アノード(陰極)」がセル内部で短絡(ショート)し、内部に蓄積されていた1.8 GJエネルギーがすべて「熱」になったと仮定する。

その際にどれだけのエネルギーを放出するかを、何キロの鉄の塊を溶かすことができるかで考えてみる。

鉄の「比熱」は0.4[J/g・K]、融点は1,535℃である。

通常時の鉄の温度を20℃とすると、鉄が溶けるためには温度が1,515℃上昇する必要がある。

物質の「比熱」とは「1gあたりの物質の温度を1度あげるのに必要な熱量」で下記の式が成り立つ。

 熱容量 [ J/K]= 質量 [g] x 比熱 [ J/g・K]

温度上昇分を1,515℃、溶かすことのできる鉄の塊の重量をX[g] とし、バッテリーの全エネルギー(1.8 GJ)がこの鉄に吸収されるとする。

 1,800,000,000 [J] / 1,515 [K] = X [g] x 0.4 [J/g・K]

 X [g] = 1,800,000,000 [J] / (1,515 [K] x 0.4 [J/g・K] )

 X [g] = 2,972,000 [g]

となり、約3トンの鉄をドロドロに溶かすことができるエネルギー量となる。

う〜む、膨大なエネルギーです。

リチウムイオン電池の保管場所がその管理に気を使うのがよくわかる。

ちなみに、WikiPediaより、1.8GJ近辺のエネルギーが大体どういうエネルギーであるかを調べると下表のようになる。

1.5 GJ    雷の平均のエネルギー

1.53 GJ  インドの人口1人あたりの年間消費電力量(2002年)(421 kWh)

1.6 GJ   45リットル(平均の燃量タンクの容量)のガソリンエネルギー

1.77 GJ  質量1kgの物体が木星の引力圏から脱出するために必要な運動エネルギー

1.956 GJ  プランクエネルギー

2.00 GJ  マグニチュード 3の地震エネルギー

3.2 GJ   一般的な衣類乾燥機の年間の消費電力量 (900 kWh)

4.184 GJ  TNT火薬1トンの爆発のエネルギー

こうやって、ジュールで比較すると色々面白い。「雷の平均のエネルギー」とか「インドの人口1人あたりの年間消費電力量」とか「マグニチュード 3の地震エネルギー」とかが、同じぐらいのエネルギー量で横並びになる。

2016-03-26

フローバッテリー

先週の木曜日は、つい先日までCPUC(California Public Utilities Commission)で、エネルギー貯蔵担当だった某氏をFremontに尋ねた。

ちなみにCPUC(カリフォルニア州公益事業委員会)はカリフォルニア州におけるエネルギー政策を決めるトップ機関であるが、彼は今は某フローバッテリーの会社の幹部である。

米国では、こういう風に「州政府」→「民間企業」→「電力会社」→「連邦政府エネルギー機関」→「?」とかの前向きな移動が多い。

彼とは、あちこちのカンファレンスで話をしたり、カンファレンス会場から空港までタクシーを相乗りしたりして仲が良い。

続きを読む

2016-03-25

カリフォルニア州でのネットメータリング制度(NEM)の変更

今、米国では住宅向け太陽光発電の売電・買電の仕組みであるネットメータリング(NEM)の制度変更の議論が色々な州で起こっている。

日本ではFITを用いているが、米国ではネットメータリング(NEM)を用いている州が多い。

このネットメータリング(NEM)制度は、良い面も悪い面もあるが、その制度変更をうまくやらないと、折角順調に増えてきたルーフトップソーラーに一気に冷や水をかけることになる。今回のカリフォルニア州の決定は、PV業者にとっては朗報ではあるが、不平等感があるのは否めない。

なお、下記の議論に出てくる「小売レート」はだいたい15-18セント/kWhで、「卸売レート」ははだいたい7~8セント/kWh。

f:id:YukioSakaguchi:20160326132103j:image

続きを読む

2016-03-23

水素ステーション

日本で半月うろうろして、3月13日にアメリカに帰ってきた。

日本にいる間も、帰ってからも、ブログを思い切りサボりまくっています。

見に来てくれた人、ゴメンなさい m(_ _)m。

ということで、今日は最近色々考えている「水素ステーション」とFuel Cell Electric Viecle(FCEV)について。

ーーーーーーーーーーーー

FCEVがまだ一般的に走行していない現在(2016年)においては、水素ステーションの建設とFCEVの普及は「鶏と卵の関係」になっている。

FCEVに関しては、カリフォルニア州温暖化ガス削減シナリオの一つでは、「2035年に300万台のFCEVと300万台のPEV(BEV+Plug In HV)が走行している事」を想定している。

20年後の事なのでなんとも言えないが、水素の持つエネルギー貯蔵能力を考えると、一概に「ありえない」とは言えない。

で、その水素供給インフラの整備は今後急速に進む可能性があるので、基本的な数字をおさらいする。(水素の比重は約90g/Nm3)

(1) FCEV 1台が1日に必要とする水素の量。

MIRAIの場合、122.4Lのタンクに70MPa(713.79気圧)で水素を満タンにすると、その水素の量は

   122.4L x 713.79 = 87.4 Nm3 (約7,900g) (Nm3は「ノルマルリューベ」と読んでください)

となる。MIRAIはこの水素で650km走行が可能(JC08モード)なので、1kmあたりに必要な水素

   87.4 Nm3 / 650km = 0.13 Nm3/km (11.7g/km)

仮に1日に50km走行すると仮定すると、FCEV1台あたり

   0.13 Nm3/km x 50 km/台・日 = 6.5 Nm3/台・日 (585 g/台・日)

水素を充填することになる。

続きを読む

2016-02-26

技術情報センタ様のセミナー

昨日は、当社代表が、技術情報センタ様のセミナーで講師を務めました。

http://www.tic-co.com/seminar/20160207.html

f:id:YukioSakaguchi:20160226135643j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20160226134259j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20160226134116j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20160226134012j:image:w360

2016-02-10

DistribuTECH

DistribuTECHでの今日のパーティー(?)です。うるさいだけで、食事はイマイチ。まあそんなものだ。

f:id:YukioSakaguchi:20160210181852j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20160210181425j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20160210173523j:image:w360

2016-02-09

IEEE2030.5 (SEP 2)

カンファレンス2日目。

Electric Power Research Institute (EPRI)の少人数ミーティングに参加。

電力網向けの通信プロトコル(IEEE2030.5 (SEP 2) )についてのヘビーな議論

数年後には何十万箇所の分散電源が通信網を経由して繋がるようになる。セキュリティが大きな問題になる。SEP 2(Smart Energy Profile)がこの問題を解決できるかどうか...

f:id:YukioSakaguchi:20160210085814j:image:w360

フロリダでのDistribuTECH

フロリダでのDistribuTECHの1日目。写真は展示場の風景。

今まで、電力には関係のなかった会社が一斉に進出

とても混雑する市場になってきた。

出展している会社だけで500社。

5年後には、半分の250社が脱落し、しかし新たに500社が進出するとかがあり得るシナリオ。

f:id:YukioSakaguchi:20160209165616j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20160209165410j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20160209165357j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20160209165326j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20160209165317j:image:w360

配電網の自動化とか、エネルギー貯蔵とか、デマンドレスポンスとか、アグリゲータービジネスとかが、相変わらず注目を集めている。

Oracle Utility、IBMGESESIEMENS、ITORN、ABB、EATONが広いブースを構える。

2016-02-02

早稲田大学で講演

1月20日(水)午後、早稲田大学スマート社会技術融合研究機構(ACROSS)で講演。

80名程度のメンバー会社の方を前に、米国最先端エネルギー状況を。

活発な質問をいただきました。

f:id:YukioSakaguchi:20160120170505j:image

f:id:YukioSakaguchi:20160120153611j:image

f:id:YukioSakaguchi:20160120153537j:image

f:id:YukioSakaguchi:20160120144559j:image

2015-12-26

「(株)技術情報センター」でのセミナー

まだだいぶ先ですが、「(株)技術情報センター」のセミナー米国エネルギー事情を解説することになりました。

http://www.tic-co.com/seminar/20160207.html

ブログから申し込まれると、「講師紹介割引」があるそうです。

ご興味のある方は是非どうぞ。

2015-12-24

送電線工事が要らない、オフグリッドのEV充電駐車場

「Envision Solar」社が開発した「EV ARC」がなかなか面白いと思う。災害時とかには重宝しそう。

f:id:YukioSakaguchi:20151225131203j:image:w360

f:id:YukioSakaguchi:20151225131202j:image:w360

続きを読む

2015-12-23

家庭用の太陽光発電パネル向けのインバータ

ここ数年間で家庭用インバータの市場は激変していると感じる。

集中型ではなく、「モジュールレベルのパワーエレクトロニクス(MLPE)」は、米国の家庭用太陽光発電市場全体の成長を上回る勢いで台頭しており、米では、2015年に1.5GW以上(!?)のMLPEが設置される見込みである。

この勢いは、MLPEのパフォーマンス向上や運用効率の改善に後押しされている一方で、2014年バージョンのNEC米国電気規定:National Electrical Code)もまた、この成長を大きく支えていると思う。

北東部で採用されたこのNECは、瞬時のシャットダウンを義務付けるものであるが、この要件はMLPEによって簡単にクリアすることが可能となる。このNEC2014を導入する州では、MLPEのベンダーが優位に立っている。

確かに、火事があって消防士が屋根の上に登る必要があるときに、太陽光発電パネルが10kWとかで直流でバンバン発電を続けていて、そこに消防士が来てケーブルとかに触って感電する危険は非常に高いと思う。(火事だろうがなんだろうが太陽光発電パネルは発電を続けるので。)

今回のNEC2014が大幅な戦略変更や市場変化をもたらす場合、NEC2017においては、さらなる影響をもたらすことを見込まれると思う。

この絵はNEC2014での、瞬時のシャットダウン。

f:id:YukioSakaguchi:20151224145747p:image:w360

この絵はNEC2017での、瞬時のシャットダウン。

f:id:YukioSakaguchi:20151224145746p:image:w360

続きを読む

2015-12-22

電気自動車用のリチウムイオン電池コスト

少し古いニュースですが。

11月6日に開催されたBarronの投資会議において、Tesla社のCEOであるElon Musk氏は、この先10年で航続距離500マイルを達成する電気自動車を市場に送り込む見込みであると語った。また、この目標を達成するためには、更なる組み立て工場やギガファクトリーが必要になるとも述べた。

カギとなるのはバッテリー価格の低下である。商業用の小さいリチウムバッテリーコストパフォーマンスは、1990年代前半より年7%の割合で改善されてきた。

GM社の担当者によると、2016年後半又は2017年初めに送り込まれる同社の2017 Chevrolet Bolt EV車向けリチウムイオン電池の価格は$145/kWh(!?)になるという。これは、販売台数の増大(初年度年間25,000台)、及びパートナーであるLG Chem社との6年にもわたる取組みの結果だそうである。(ところでLG Chemは、最近あちこちで極めて安い値段で注文をかっさらっている模様。)

Tesla社は過去に、ギガファクトリーの稼働開始後は、バッテリーのコストが30%削減できるであろうと述べていた。現在の価格は$200/kWhであり、単純に年7%の割合で今後も値段が下がると考えると、2025年には$96/kWhまで引き下げられることとなる。

もし2025年に航続距離500マイルの電気自動車が実現した場合、その価格は現在(2015年)市場に出ている航続距離250マイルの車よりも安価で販売することが可能となる。

GMの$145/kWhは、ちょっとショッキングな数字ではある。

あと、kWhあたりの単価も大事だが、たくさんバッテリーを積むとその分、車両が重くなるので(当たり前)、やはり重量当たりのエネルギー(=kWh/kg)をかなりよくする必要が出てくる。安全性との兼ね合いではあるが。

テスラのModel Sの85kWhのバージョンは、おそらくバッテリーだけで1tonとかを超えているのではないだろうか。

CODAが倒産

カリフォルニアを中心に、コマーシャルビル向けのエネルギー貯蔵装置を販売していたCODAは、運転資金を集められずに苦労しており、先月レイオフを発表したが、ついに倒産してしまった。

う〜〜ん、という感じ。

続きを読む

2015-12-11

Energy Storage Summit

今週参加したカンファレンス(Energy Storage Summit)のレポートをやっと書き終えた。

感想 

  • ほとんどのセッションがパネルディスカッションであったが、パネラーのプレゼンなしで、ひたすら壇上でだらだら喋り続けるというパターンが多かった(雑談を聞かされている感じ)。
  • バッテリー用のBOSに関する解説等の、ちゃんとスライドを使ったプレゼンは極めた分かりやすかった。

続きを読む

2015-12-07

分散電源絡みの暗号(!?)

CAISOとかNYISOとかERCOTとかの、今後の「分散電源」や「デマンドレスポンス」絡みの文章を読むとやたらめったら略号(筆者にとっては暗号!?)が出てくる。

自分の忘備のためにリストアップ:

DADRP : Day-Ahead Demand Response Program

DER : Distributed Energy Resources

DERP : Distributed Energy Resource Provider

DRP : Distributed Resource Planning

DRAM : Demand Response Auction Mechanism

DREAM : Distributed Resource Energy and Ancillaries Market

DSASP : Demand Side Ancillary Service Program

DSP : Distributed System Platform

EDRP : Emerging Demand Response Program

IDSM : Integrated Demand Side Management

IDSR : Integrated Demand Side Resources

LSE : Load Serving Entity

LMR : Load Modifying Resource

LZ SPP : Load Zone Settlement Point Prices

PDR : Proxy Demand Resource

RDRR : Reliability Demand Response Resource

SCR : Special Case Resources

f:id:YukioSakaguchi:20151208040405j:image

続きを読む

2015-12-03

フェースブックページ

遅まきながら、フェースブックページも開設しました。

https://www.facebook.com/CleanEnergyResearchLab

宜しかったら、「いいね」してください。

2015-12-02

Tesla社CEOのElon Musk氏、2025年までに航続距離500マイル達成を明言

ちょっと前の話ではあるが、11月6日に開催されたBarronの投資会議において、Tesla社のCEOであるElon Musk氏は、この先10年で航続距離500マイルを達成する電気自動車を市場に送り込む見込みであると語った。

また、この目標を達成するためには、更なる組み立て工場やギガファクトリーが必要になるとも述べた。

カギとなるのはバッテリー価格の低下である。商業用の小さいリチウムバッテリーコストパフォーマンスは、1990年代前半より年7%の割合で改善されてきた。

GM社の担当者によると、2016年後半又は2017年初めに送り込まれる同社の2017Chevrolet Bolt EV車向けリチウムイオン電池の価格は$145/kWhになるという。

これは、販売台数の増大(初年度年間25,000台)、及びパートナーであるLG Chem社との6年にもわたる取組みの結果といえる。

Tesla社は過去に、ギガファクトリーの稼働開始後は、バッテリーのコストが30%削減できるであろうと述べていた。

現在の価格は$200/kWhであり、単純に年7%の割合で今後も値段が下がると考えると、2025年には$96/kWhまで引き下げられることとなる。

もし2025年に航続距離500マイルの電気自動車が実現した場合、その価格は現在市場に出ている航続距離250マイルの車よりも安価で販売することが可能となる。