Farmer's Talk Pop

(2018年12月末、はてなダイアリー「夢男のファーマーズ・トーク」を統合しました)

天国の日々 -No.12 -p645

BS録画(2回目。初見は平成3〜5年頃、深夜TV?)、☆4

最も畑が美しい映画。蒸気トラクター出てくる映画。麦畑の農作業と四季を描いた映画。リチャード・ギアが"若くて青い"映画。

20世紀初頭、ビル(リチャード・ギア)とリンダ(リンダ・マンズ)の兄妹とビルの恋人のアビー(ブルック・アダムズ)は、シカゴでの貧しい生活でその日その日を生きるのがやっとだった。新天地を求めてテキサスに貨物列車に乗る。着いた先では麦刈りの労働者を募集していた。そこでアビーも妹と偽って3人で働く。農場での作業は辛く、ここでも彼らは貧しかった。そんな時、病弱で一人暮らしの農場主チャック(サム・シェパード)がアビーに心を寄せる。麦の収穫が終わり、農場を去る労働者たち。チャックに求愛されたアビーは、3人皆で残る条件でプロポーズを受ける。これまでの貧しかった生活と違い、新たな生活は3人にとって天国のような日々の始まり。しかし、その生活に変化が訪れる…。

この映画は正直難しい。青春映画のようだが、実は芸術的でもあるし、絵画的でもあるし、20世紀初頭を記録した映画のようでもある。でも、基本的にはリチャード・ギアとブルック・アダムズとサム・シェパードの三角関係が軸になっている。

でも、あえてこの映画は農業映画といいたい。それはなぜか。延々と広がる麦畑が出てくるし、その作業の様子を延々と映しているからだ。出てくる麦畑はよく見る麦畑ではない。区画もなく雑草も生えている無農薬で育てたような麦畑だからだ。20世紀の初めなのだから当然だと思うのだが、それが今の時代、逆に驚く。労働者が麦狩りをするシーンでは、馬が引く麦刈器(っていっていいのか)や蒸気機関式トラクターを使っている。なんと、その蒸気トラクターの車輪は金属だ。ゴムタイヤは無い時代なのだ。wikipediaによるとテキサスが舞台の映画だが、カナダのロケらしい。「目撃者」でハリソン・フォードが逃げ込んだ村がアーミッシュの村だったが、そんな風にカナダにも暮らしている人たちがいるということだ。だから、昔風な麦畑なのだ。ちなみに、その人たちはエキストラとしてこの映画にも参加しているそうだ。

この映画のように、農業を正面からとらえた映画はそれほど多くはない(と思う)。これまで観たのは、この映画の農場主チャックを演じるサム・シェパードジェシカ・ラングの夫を演じた(二人は実生活でも夫婦)現代農民映画「カントリー」。同じく、ジェシカ・ラング主演のジェーン・スマイリーの小説「大農場」の映画化「シークレット/嵐の夜に」ぐらいか。スタインベック原作「怒りの葡萄」はDVDはあるがまだ半分までしか観ていない。暗いとわかっている結末に向かう映画はどうしてもためらってしまうのだ。農業だけに…。

印象的なのは、19世紀アメリカの生活イメージ。移民があふれる東部都市のみじめさと不潔さが、広大な平原の空間と対比され、ふたつの背景は階級という逃れられない事実によってつながっている。(RBP)(『死ぬまでに観たい映画1001本』)

若いリチャード・ギアが出ているこの映画を観ていて、独身時代、寮の部屋で眠れなくて明け方までテレビ東京の深夜の洋画劇場を観ていたことを思い出した。青春は青く柔らかく、そして苦い。きっと、この映画に出てくる青い麦のようなものなのだ。

天国の日々 [DVD]

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