カンヅメになること。

http://d.hatena.ne.jp/jkondo/20050223
上記、近藤さんの日記を拝見しながら(はてなブックマークのために、わざわざ開発合宿してきたんだそうな)パソコンに向かいっぱなしのソフトウェア開発者って、息抜きが必要なのかな? としばし想像した。


そういえば、アップルコンピュータの本社とか、googleの本社とか、IT系でベンチャーっぽいところから上がって行ったような感じな企業って、すごく遊び場が充実しているという共通点があるような気がする。きっと、詰まった時はプログラミングからしばらく離れて、ビリアードなんかに興じている間に、ボールがぶつかってぶつかって意外な所のボールを穴に入れることができるように、プログラミングの裏技なんか考えついてしまうんだろうなあ。


はてなの場合はひたすらプログラムを組んでいたらしいので、息抜きというよりは漫画家さんのカンヅメ*1に近いようなイメージをした。多分ソフト開発するのって、開発用のソフトがあればインターネットが無くてもできるんじゃないかと。だとすれば優秀なノートパソコン1台で、仕事やれてしまうんだろうなあ。(いや、ネット環境くらいはある合宿所を借りたのかもしれないけれど)


カンヅメというのは結構能率が上がるものだ。大学受験の時、予備校の合宿(と言うものがあったんですよ)で、2週間日本史漬けになって1日12時間位勉強したときは、海の近くの宿舎で良かったと思った。寝るときのBGMに波の音がちょうど良くて、結構良く眠れた覚えがある。それ以来、不眠の時は波の音のMDが友人だ。


結局、日本史を必要としない大学に受かった&通ったわけだけれども。あの時は結構勉強が愉しかった。一気にまとめて勉強すると歴史の流れが良く分かる。受験勉強で愉しかった科目は日本史と現代文だった。特に日本史は、ここは出るとか出ないとか、そういう勝負をあまりしなくて良かった。(試験に出るところは必然的に歴史上の重大事件なわけだから、あまりそういう意識をして勉強しなかった。先生も受験の講師のわりに、出るから勉強しろっていうようなスタンスではなかった。歴史のターニングポイントと全体の流れを押さえて行けば結果的に受験にも強くなる、そういう教え方、捉え方がうまい先生だったと記憶している)もともとはセンター試験対策のつもりだったけれど、自分の国を知ることの大切さをこの授業と、何冊かの受験参考書で学んだように思う。


ちなみに、日本史の中でもっとも好きなエピソードと聞かれたら、今なら気分的に「山城国一揆」と答えると思う。いろいろ魅力的な人物やエピソードはあるけれど。*2
山城国一揆」とは、室町時代の1485年、京都南部で起きた一揆のことだ。応仁の乱という大規模&長期的な政争&戦争で、都も、日本の国も荒れてしまった。大きな争乱の後の国力回復など、そうそうできるもんじゃない。国に力が無ければ争いが起こる。南山城地域の守護大名・畠山氏の跡目争いに疲れ切った国人(その地域に住まう領主)と農民が協力して一揆を起こし、結果、あの武力闘争的な時代に8年間もの自治を行った。500年以上も前にあった日本のデモクラシーとして、非常に印象深いエピソードだ。


それから、さらに話は脱線してしまうのだけれど、歴史の中に「もしも」を入れてはいけない、とは良く言うことだが。漫画の世界なら、「もしも」を唱えることができる。
その意味で赤石路代の「AMAKUSA1637」は面白い。コミックスでもう一つの「島原の乱」を追うことができる。現代の高校生達がタイムスリップにより江戸時代へ。ちょっとした偶然から天草四郎として、またその仲間として生きることになる。民衆が「幸せに生きのびる」ために闘う智慧と勇気の物語だ。歴史ファンタジーが好きな方にお勧めしたい。

AMAKUSA 1637 1 (フラワーコミックス)

AMAKUSA 1637 1 (フラワーコミックス)


カンヅメの話から大幅に脱線してしまった。
そういえば、今、仕事でも半カンヅメ状態だ。授業用の英語教材制作の補助を行っていて、午前中は一人でマックの教室で、午後は英語研究室に詰めているが、はっきりいって英語研究室での方がはるかに仕事をしている。今日は先生が不在だったので、昨日持ち帰ったデータでマックの教室で作っていたけど、誰かと一緒にやった方が緊張感もできるし、相談もすぐできるからはかどるのだ。自分一人で仕事ができないのは甘えだとは思うのだが……。


それから、カンヅメ、というつもりではなかったが、勉強がはかどるには環境を変えるのは有効なようだ。もう何年も前のことだが、大学4年の学芸員実習のため、2週間ほどウイークリーマンションに住んで毎日博物館に通ったことがある。持ち込んだのは衣服、若干の調味料など生活雑貨と、iBookとポータブルプリンタ、あとは実習用資料くらいのもの。
そのマンションはネットに対応していなかったので、毎日の日記と卒業研究のための下原稿を書く以外にはマックを使わず、あとは実習ノートを書いたり少しテレビを見たりしていた。ネットを使うには近くのISDN公衆電話にiBookを連れて行って、電話線でつながなくてはならなかったのだった。結果、ポストペットのちょっとした世話位しかしなかった。
でも、あの時はかなり勉強したと思う。参考書がなくても、実地見聞から学び、頭の中を整理して行く勉強をじっくりと行った。毎回実習で課題が出て、それも「調べる」というよりは「考える」が中心のものだったので、ネットがあるとかえって邪魔だっただろうと思う。とにかく有意義な実習にすることだけを考えて過ごさせていただいた、無心なる2週間だった。
いまでも時々、ウイークリーマンションに一時避難しようか、と思うことがある。お金がなくて果たせないでいるが……。


と、ここまで書いて読み直してみて、2週間のカンヅメ、というのは一つのまとまった大きな課題をこなすことができるのかもしれないと気が付いた。予備校の合宿も2週間。学芸員実習も2週間。2週間の環境変更。
今、来年の今ごろ新しいことをはじめるために、いろいろと考えを詰めているところだが、
2週間でできること、という時間軸の捉え方は一つの計画単位系として面白いものがありそうだ。


ともあれ、はてなのように、チームメイトと缶詰めして効率を上げると言うのは、部活の合宿に近い雰囲気がある。合宿することで短期間で上手くなれるのは吹奏楽で散々経験した。正直、プロジェクトの進め方として、かなりうらやましい感じを受けたのは、私だけではないであろう。「一人じゃできないやりたいこと」が決まっているとき、日常をオミットしてそれだけに集中することへのあこがれは、今の自分の中でとても強い。*3


以前、大学時代の友人と音楽系のサイトを作っていたとき、たまたまお互い時間だけはあったので、10日位泊まり込みでサイトのデザインやシステム構築をやった。コンセプトからデザインを起こし、更新を回せる形にするまで、大変だが愉しかった。一通り固まって自宅に一時帰国のような感じで帰ってきた夜は、かなりの充実感と解放感があった。その友人とは結局ケンカ別れのような形になってしまったが、あのとき一緒に闘ったことは多分お互い忘れていないだろう。失ったものも、得たものも、代えがたいモノだった。


長々と書いて来たが、結局何が書きたいのかというと、カンヅメとか、合宿っていいなあ、ということなのだ。それだけ、今の自分に迷いが多すぎることの裏返しではあるのだけれど。自分を常に客観的にコントロールできていれば、こんなニーズを感じないはずなのだから。

*1:漫画原稿用紙他Gペン、インク、トーンなど画材一式のみ旅館に持参し、担当編集者氏が張り付いててひたすら描きまくるというイベント(?)らしい。聞いたことはあるけど見たことは無い。というか私は漫画家じゃないし。

*2:江戸時代の青木昆陽華岡青洲、平賀源内など、発明家や学者さんたちのストーリーも面白いですよね。

*3:というか、現実の友人に自分と同じレベルでITに詳しい人が誰もいないので、結果として色々なプロジェクトをしょい込んでしまう羽目になるのだった……。任され切りにならずに分業したい気持ちが強いのだが。まあ、一緒にやっている人たちみんな忙しいみたいだし……。