【数十年前の話ですが】
「二日酔いなのでお休みにさせてください」。
今どき、社会人だってこんな電話を入れることはないでしょう。でも数十年前の浅草では三社祭が終わった月曜日、小学校にはこんな電話が何本も入っていたようなのです。
念のためお断りしておきますが、すべて噂が流れたというレベルだと思ってください。なにしろ、小学生が当事者ですから。
祭で水を飲むのは神輿を担いでいる間の休憩時間だけ。あとは日本酒だ、というなんとも豪快と言うか、おおらかな雰囲気になるのが祭だと誰もが思っていた時代、子供だって子供神輿を担ぎ終わって、町会から山ほどおかしをもらって帰ったら「飲め」と言われて当然でした。(くどいようですが、あくまでも噂ですよ)。
そんな電話に出た先生は「体調が悪いんですね」と言い直してくれました。親が正直に申告したことを先生がたしなめて訂正してくれていたわけです。なかには子供神輿の担ぎ過ぎで肩が腫れ上がってしまった男子もいましたが、肩が腫れたより二日酔いのほうがイキだと思っていた親のほうが多かったので、どうしても二日酔いが増えてしまったのかもしれません。
もちろん土曜日はお休みです。休んだはずの生徒が半纏姿で走り回っているのが当たり前。先生の立場はどうすればいいのか、きっと悩んでいられたのではないでしょうか。
そんな風潮がすっかりなくなり、全国レベルの規律が浸透して、学校優先、飲酒厳禁が当たり前になった今日このごろ「子供たちから元気がなくなった」と未だに言っている古老もいないわけではありませんが、親世代は「子供は子供」と考えるようになっています。それでも少なくなってしまった子供たちは祭を存分に楽しんだはずです。そして観音さまや三社さまの大切さを体感したはず。
時代は変わっても祭は祭。心の拠り所を楽しみながら身につけているのが浅草をはじめとした下町の子供たちです。ちなみに今日の浅草にはいつもどおりランドセルを背負った子供たちがいっぱいいました。ご心配なく。
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