大人になってからの再学習

2013-11-28 なぜWikipediaの説明はわかりにくいのか(数学とか)

なぜWikipediaの説明はわかりにくいのか(数学とか)


調べ物をするときにWikipediaの存在は絶大だ。どんな些細なものに対しても詳しい説明が載っている。

だけど、数学、物理などの理工系の教科書に登場するキーワードについては、Wikipediaの説明はほとんど役に立たない。

具体例をいくつか。

■ フーリエ変換

数学においてフーリエ変換(フーリエへんかん、英語: Fourier transform; FT)は実変数の複素または実数値函数を別の同種の函数に写す変換である。変換後の函数はもとの函数に含まれる周波数を記述し、しばしばもとの函数の周波数領域表現 (frequency domain representation) と呼ばれる。・・

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%82%A8%E5%A4%89%E6%8F%9B

■ NP困難

NP困難(-こんなん、NP-hard)とは計算量理論において、問題が「NPに属する任意の問題と比べて、少なくとも同等以上に難しい」ことである。正確にいうと問題 H がNP困難であるとは、「NPに属する任意の問題 L が H へ帰着可能である」と定義される。この「帰着」の定義として何を用いるかにより微妙に定義が異なることになるが、例えば多項式時間多対一帰着や多項式時間チューリング帰着を用いる。・・

http://ja.wikipedia.org/wiki/NP%E5%9B%B0%E9%9B%A3

一読しただけで、ダーメだこりゃ。とサジを投げるレベル。
「フーリエ変換」や「NP困難」ってなあに? と思うようなレベルの人が読んで理解できる内容になっていない。

Wikipediaに記載されている説明文は、多数の優秀なボランティアの方々の手によって日々改善が重ねられているのに、なぜこんな風に理解できない説明になってしまうのだろう。


その理由の1つに、説明する側と、調べる側の視点が異なることが挙げられる。

この「説明する側と、調べる側の視点の違い」を理解するために、もう少し身近なものを挙げてみよう。

例として、木材を切るときに使う「のこぎり」をWikipediaで調べてみよう。

■ のこぎり

鋸(のこぎり、のこ)とは、一枚の金属板の側面、一辺あるいは二辺にジグザグにした多くの刃をつけた工具である。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%AE%E3%81%93%E3%81%8E%E3%82%8A

この例は、まさにWikipediaの思想と、調べる側の人間が求める説明とのギャップを端的に示している。

子供との会話の中で

「のこぎりってなあに?」

と質問されたら

「木を切る道具だよ。」

と、答えるだろう。
そして子供は納得し、さらに

「どうやって使うの?」

と質問することだろう。

「こうやって使うんだよ。」

と、身振り手振りで説明すれば、子供なりに「のこぎりとは何か」を理解するだろう。

つまり、我々は、知らない道具を見せられた時に、
「それは何をするための道具なのか?」
ということをまず知りたい。
そしてそれから
「では、どうやって使うのか」
ということを知りたい。

これが一般的な考えだろう。

一方 Wikipediaでは、そもそも「のこぎり」と定義される道具は、どのような性質を備えたものであるかを延々と説明する。
これが、Wikipediaの説明が「わからない」理由だ。


以上は、理工系の大学生などが勉強中に「これは何だろう?」というキーワードをWikipediaで調べても理解できない理由を考察してみたのであって、
だからWikipediaが悪い、と言いたいわけではない。そもそもの目的が違うのだから。

したがって、Wikipediaとは別の視点、もっと調べる側に近い視点からの解説があってもよいだろう。

理工系の分野で出てくる用語の多くは「問題を解くために先人が開発してきた便利なツールの名前」なのだから、先ほどの「のこぎり」の例が良い喩えとなる。

このブログでは、私自身が「調べる側」の立場であることが多いので、その立場から理工系の内容をなるべくわかりやすく説明してきたつもりだ。
例:フーリエ変換 http://d.hatena.ne.jp/Zellij/20120612/p1
例:PとNPとNP完全とNP困難 http://d.hatena.ne.jp/Zellij/20110529/p1

たまたまキーワード検索で、このブログを見つけたような人たちにとって、このブログが勉強を進めるうえで役に立つようであればうれしい限りだ。


ところで、次のような図が1つあれば、目的も使い方も一目で理解できる。
f:id:Zellij:20131127100224p:image
(図出典:http://www.fpri.hro.or.jp/kids/asobu/kousaku/kousaku2.html

フーリエ変換も、次のような図を見るだけで、どのようなものか理解できてしまう。

f:id:Zellij:20120612162617p:image

図の力は偉大だ。

■ 関連エントリ
Wikipediaがわかりにくいので(数学とか)、わかりやすいサイトを作ってみた
http://d.hatena.ne.jp/Zellij/20131129

図解「物理」は図で考えると面白い

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