吉葦有梨 よのなかのこといろいろ

よしとあし、ありとなし

第百八十一話目 ブタのサラダ

毎年五月の終わりごろ、
ハイウェイの高架下に
黄色の目立つ花が咲く。


その花容は「タンポポみたいな」が
ぴったりはまるのだが、
茎が細くて長くて、なんと50cmくらいある。


その50cmの細い茎の先に
タンポポに色も形も大きさも
そっくりな花が風に揺れる。


タンポポ咲く野原は平和だが、
この光景はなんだかシュールだ。
いや、タンポポを知らなければ
これはこれで平和で美しいに違いない。


一体これはなんという花なのだろう?
ググった。
「茎が長い タンポポ」で一発で出た。
その名は「ブタナ」。


なんでブタ?
フランス語の「ブタのサラダ」を和訳したそうな。
なんでブタナ?


私なら、セイタカタンポポとか
クビナガタンポポってつけるがな〜。


wikipedia:ブタナ によると
ブタナの一年前に
タンポポモドキと命名されていたそうで
そっちの方が納得できるのに、
ちょっとフランス語も知ってると自惚れやがって誰だよ、
などとブタナに義憤を感じたのだった。

第百八十話目 ジョウビタキ

昨日は何やら見慣れぬ小鳥が二羽、
お向かいのエゴの木でじゃれている。
うぐいす色の地味な鳥だけど後ろ向いた時に
白い斑が二つ、紋付の石持(こくもち)紋のようだ。


「うぐいす色 スズメ大 翼に白い紋」と検索をかけると
ジョウビタキ メス」と答えが出てきた。


オスはもっと派手な色合いだそうなので、
私の見た二羽はどちらもメス、つがいじゃなかったんだ。
普通日本では繁殖しない冬鳥という。


ナワバリ意識も強いらしいが、
メジロと同じように楽しそうに枝々を
ぴょんぴょん飛んで回っていた。
あんな小さいのに、海を渡ってきたんだものね、
仲良しさんいてもいいよね。

第百七十九話 つばめの学校

今朝は天気が悪い。


近所の四つ辻、店が集まっているエリアで、
今年の初燕もここで見た。ツバメの巣があるらしい。


今日も目の前をツバメがかすめた。
低い、お天気悪くなるのか。


また飛んでいった。
さっきのがお母さんで、今のがお父さん?


また飛んだ。
あれ?何羽いるの?


電線に五羽ほど並んでいる。
渡りの季節にはまだ早い。


また一羽飛んできた。
壁にぶつかりそうになってホバリングして戻ってきた。
やっととまったが、
次のツバメはホバリングし続けて行きつ戻りつ。


ひな鳥が飛ぶ練習をしているのか。
あの電線は差詰めつばめの学校。


上手に飛べないと自分で餌が取れない。
あの下手くそな子はちゃんと飛べるようになれるかな。


秋には海の上を飛んで南の国にわたって
また春に帰ってこなくっちゃならない。


あの中で帰ってくるのは二羽か三羽。
それが自然か、がんばって練習して、どうぞ帰っておいで。

第百七十八話 円山応挙と

昨日NHKEテレの『日曜美術館』「夢の応挙 傑作10選」を見た。
応挙はいつ見ても素晴らしい。


彼が始めた革新的な技術
 (描かないことで表現する、屏風やふすまの折れ曲がりも構図に利用)、
写生を始めたこと、などなど、
それ以降は主流派になって当たり前なので大して評価されない、
というか、けなした方がわかってるように思われる。


2004年に東京江戸博物館で「円山応挙展」を見た。
圓満院門跡の「大瀑布図」を折れ曲がった状態見せたり、
大乗寺の金襖が元の部屋通りの空間に展示されていたり、
応挙のスケッチ帳の展示もあったし、
かわいいワンコも虎さんも優美な幽霊もたくさん見られて、
大変に充実したものだった。


ものすごくうまい。 
端正で品がある。
それでいてユーモアあふれているものや「カワイイ」ものもたくさん。
才能に加えて絶えず努力を重ねている。
今までになかった技法や構図。
繊細だがスケールが大きい。
弟子の慕い方を見ても温厚で円満な人格。


なのにあまりにも欠点がなく主流になったため、
ほめるとシロウトみたいに扱われる。
「うまいけどおもしろみがないんだよね」とかなんとか、
わかった風に言うとかっこいいような気がするんだろう。


見ているうちに憤ってきちゃってね、
片岡仁左衛門みたいだって。
できるから、美しいからけなしたらカッコいいってなんなのよ。
人をけなして自分が偉くなったような気になるなんて最低だよ。


仁左衛門を襲名してからはそうでもなくなったけど、
それは名前の力、すなわち権威もあるんでしょ。
人をけなしていい気になるヤツって、
要するに自己評価が低いから、権威には簡単にへつらうんだよね。


片岡孝夫時代はずいぶんひどい扱いも受けていた。
私もファンだと言うと「お嬢ちゃんミーハーだね」な態度で接する年配男性もいた。
だが、仁左衛門の始めた演技が今の歌舞伎で主流になったのも多いのだ。


たとえば『七段目』の平右衛門、以前は全然無邪気にやっていた。
片岡孝夫の演技だと平右衛門の置かれた微妙な立場、胸の内がよくわかった。
今の若手はそれを踏まえた演技をしている。


孝夫時代は三男の彼に大きな名前が来ることはないだろうと私は思っていた。
いくら上手くて、歌舞伎全体の演技を変えるほどのことをしていても
人間国宝なんて夢のまた夢。
いいよ、歌舞伎界の人間国宝は家柄で指定される人が決まってるんだから
と自分を慰め、あきらめていた。


でも、指定を受けた。
ちゃんと見てる人は見てるんだとうれしくなった。


仁左衛門が重要無形文化財保持者各個認定(人間国宝)の喜びを語る

第百七十七話 リップバウム

リップバウムを買いました。
ハチミツの成分が入ったやつで、
もよりのスーパーにいっぱいならんでいたのです。
テスターのフタをあけてみるとハチミツのかおり。
口にぬるものなので
さすがに自分のクチビルにはつけませんが、
手の甲にすこしおくととつやつやしてきれいです。
さっそく買ってぬってみました。
べたべたぬるぬる。
ちょっとなめてみました。
あれ?あまくはありません。
ざんねん。
でもしばらくするとガサガサが自然とめくれて
クチビルはツルツルです。
これはいいかも。
しばらく毎日ぬっていました。
このあいだ一日わすれていました。
その日ニッコリわらうと
クチビルのまんなかがピキッとさけました。
なんだかおそろしいワナにはまったような気がしてきました。

第百七十五話 国境に近い島にて

去年も石垣島に行ったが、今年の夏も行ってきた。
八重山諸島はなんだか好きだ。
星も見られたし、船にも乗れたし。


行ったのは16日から19日。
その前日に尖閣諸島に香港の運動化が上陸した。
くだんの船は石垣港に曳航されていたらしい。


さぁて、私は「固有の領土」なんてもんはないと思っている。
日本が1895年に領土と宣言する以前の
尖閣諸島はどこの領土かっていうとまぁ琉球王国のものだろう。
でも、その琉球八重山を戦争で取ったんであった。
石垣島には石垣島を治めるものがいたのである。


1895年というのはハワイ王国アメリカによって滅ぼされた年である。
帝国主義国家はどこでも鵜の目鷹の目で
自分の領土を増やしていた時代なんだろう。


国境なんてものはそもそも人間が引いたものに過ぎない。
「固有の領土」というのなら、アメリカはハワイはもちろんのこと、
アメリカ本土全体をネイティブアメリカンにお返ししなければならないだろう。
フン族ゲルマン人もお帰り願って、日本人も弥生人系は中国大陸に戻って…
ってやっていったら、ホモ・サピエンスはみんな滅びて、
ネアンデルタール人にもどったらええやん。



まぁ、そんなことを考えていたのだが、
石垣島で乗ったタクシーの運転手さんは、
以前は海底調査をして世界を回っていたのだそうで、大変話が面白かった。
引退前はシンガポールに住んでいたが、奥さんが
日本語が通じて和食が食べられるとこでないと永住はイヤと主張するので
二人の妥協点が石垣島だったのだそうな。


1969年の国際連合アジア極東経済委員会による海洋調査にもたずさわったんだそう。
これで「大量の石油埋蔵量の可能性が報告」されちゃって、
パンドラの箱を開けちゃったんですわな」と。
それまでは全然興味を示さなかった中国が領有権を主張しだしたという。
「さっさと区画を分けてアメリカのメジャー石油会社に権利を売って置いたらよかったのに。
 そうしたら、日中が紛争になったら、アメリカの国益に反するから口出しするだろうが、
 日本の利益のためにはアメリカは動かないから」


それから一ヶ月、日中関係、どんどん話はきな臭くなっている。
日本も中国も内政が行き詰まっている。


行き詰まったときはどの国もよその国が不当なことをしていると言い出し、
国民の不満をそちらに向けようとする。


第二次大戦前の日本やドイツは言うまでもないし、
アメリカも大恐慌から経済的に立ち直ったのは、
教科書で習ったニューディール政策などではなく、
第二次大戦の戦争特需であるという。リメンバー・パールハーバーというが、
アメリカ政府も戦争したくてたまらなかったのだ。


戦争すればいいと言う人さえいる。戦争すれば中国に勝つと。
勝てるだろうか?勝てない喧嘩を始めるのはお馬鹿さんだ。
太平洋戦争をしたときも最初ちょっと勝って、講和すれば損はしないと思っていたと。
それはお馬鹿さんだよね。今も同じことじゃないのだろうか。


それでなくても世界は早晩食糧危機が来るだろう。
石垣島のタクシーの運転手、山口さんも言っていた。
自分は昆虫を食べるのがいいと思う。養殖が簡単で高蛋白低脂肪だと。


確かにね、以前所ジョージ
「エビやカニなんて地上を這っていたら誰も食べないゼ」と発言していた。
所ジョージはエビやカニが好きじゃないんだろう、アレルギーがあるか。
だったら、エビやカニが大好きな人は、
昆虫をエビやカニの一種だと思い込めば食べられるはずだ。
味も似ているらしい。


先日、『探偵!ナイトスクープ』で中国出身の奥さんが
セミが食べたい、捕まえて、あぶるとおいしかったのに」という依頼があった。
探偵がイヤイヤ食べて、そのおいしさにビックリ!
食文化は世界でいろいろだけど、昆虫食文化は世界に結構ある。


戦争すればいいという人はどこまで考えているんだろうか。中国の人は虫も食べるよ。
 ウィキペディア:昆虫食
戦争がしたいのなら、虫を食べるくらいの覚悟は最低必要だよね。