須永朝彦の埴科便り

2016-07-28

「ユリイカ」8月号▽特集《新しい短歌、ここにあります》

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 久しぶりに短歌に就いて記しました。
 題して「歌文半世紀〜幻の夢をうつゝに見る人は☆序章」
 イケメン特集の時に聲をかけて下さつた、それこそイケメン藝能人のやうな
お名前の明石陽介さんから「須永さまご自身のご経験としての短歌と時代との
関係、そこからさらに幻想文学とのかかわり、絢爛にしてしかし、そればかり
ではない短歌の時代についてお書きいただけないかと考えております。特に幻
文学短歌、あるいは創作それ自体のつながりには、個人的にも大いに興味
を惹かれるところでもありますし、ご助力いただければうれしく存じます。」
といふメールをいたゞきました。
「お申し越しの件、何とか書いてみませう。私も到頭七十歳に達し、強靱と思
つてゐた記憶の帶の其處此處に蟲喰ひの痕が目立つやうになりましたので、
此の邊で確認しておかうと考へる次第であります。私は1966年、廿歳の春に
塚本邦雄先生から師事する事を許され、以後六年間、短歌のみならず文藝全般、
また音樂・映畫・美術等々に亙つて筆舌に盡せぬほどの教へを賜はりました。
結局私は歌壇なるものに馴染めず、先生の許を去り、散文に途を求めて今日に
至つた譯ですが、先生の御紹介で識ることを得た先輩、歌人俳人詩人・作
家・畫家たちも、今や皆さん逝かれて、お元氣なのは四谷シモンさん、相澤啓
三さん、高橋睦郎さんぐらゐでせうか。金子國義さんや中井英夫さんに就いて
は機會を得て記すことを得ましたが、個々にではなく一つの時代(1965〜75年)
群像として捉へてみたいですね」云々といふ返信を送りました。
 冷靜に考へれば、今の私の能力では斯樣な事を僅か十數枚に纏めるなどは
出來ない相談であり、此の時は恐らく正氣を失つてゐたのだらうと思はれます。
押入にぎつしりと詰まつた段ボール箱を片端から開けて其の昔の資料を捜して
ゐたら熱中症に罹つてしまひ、締切を前にして焦りも加はつて、兎も角も打ち
始めたのですが、案の定、發端から幾程も進まぬところで指定枚數に達して
しまつたのであります。打ち直す時間は無いので、タイトルの末に「序章」と
附すことで明石さんに収めていたゞきました。
 續きは此のブログにでも連載するか、または書き下ろし(現在6點も抱へて
ゐるのによく言ふよ)で纏めるか、自信はありませんが、左樣なことも考へて
をります。

 己の事ばかり記しましたが、特集の内容は下にコピペして御覽に供します。
 執筆者は殆ど面識の無い方ばかり、岡井さんには一度お目にかゝつた記憶が
あります。井辻さんには舊著『ルートヴィヒ鏡ぁ拏紘の折に御助力をいたゞ
きましたが、當時から大変な才媛でいらつしやいました。
 黒瀬さんには『黒耀宮』を上梓された頃に何度か會つてをります。築地明石
町の舊居に見えたこともありました。お召しになるものも獨得で、美しい方で
したね。特にプロフィールが素敵で後に
「所在なき夜に偶(ふ)と憶ふ横貌の美しかりし珂爛よいづこ」
などと詠んだことがございます。

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ユリイカ2016年8月号 特集=あたらしい短歌、ここにあります
定価本体1300円+税/発売日2016年7月27日/ISBN978-4-7917-0312-8

■対談
ささやかな人生と不自由なことば/穂村 弘 最果タヒ

短歌/イラスト
愛たいとれいん/雪舟えま

■新作5首
舟の尾/俵 万智
あんぐり五首/巻上公一
平成私事/戸川 純
ミヤネ屋を見る/斉藤斎藤
解散主義/瀬戸夏子
蕩児/結崎 剛
共喰いする鳩/井上敏樹
書物物語/福永
胸ときめいて/木下古栗
記憶を浚うとふと底にざらつく、日々の澱/ミムラ
世田谷の善き友たち/壇蜜
片目で語れ/DARTHREIDER a.k.a.Rei Wordup
花を枯らさないための暮らし/澤部 渡
生きていないわたし雨宮まみ
双極卍解わたしはくたばりたくない/ルネッサンス吉田

■共作
あの声とあの恋/木下龍也+尾崎世界観

■ある歳月の記憶
短歌と非短歌の歌合 詠むことの永遠と新しさについて/
  岡井 隆 聞き手=東直子
歌文半世紀 幻の夢をうつゝに見る人は☆序章/須永朝彦
マルシェとしての『かばん』 遊びをせんとや/井辻朱美
短歌の新しさ/加藤治郎
インターネット短歌荻原裕幸

■うたびとたちの現在地
共感は時空を超えて/鳥居 聞き手=編集部
比較の詩型 そして比較できないもの/吉川宏志
カラスウリの花と顕微鏡/永田 紅
〈それ以後〉の空/井上法子
またいつかはるかかなたですれちがうだれかの歌を僕が歌った/
 枡野浩一 佐々木あらら
そのオモチャ箱には念力家族が入っていた/佐東みどり
僕が「君」のことを詠う理由/鈴掛 真
純粋病者のための韻律/梅実奈

■受肉する詩歌
□街のみる夢 『月に吠えらんねえ』の世界/清家雪子 聞き手=黒瀬珂瀾

■三十一文字のポエティクス
タブーのない短歌の世界を 「歌会始」を通して考える/内野光子
現代詩と短歌 翡翠少年/藤井貞和
《教養》としての《性愛》/石井辰彦
文体は、あなたである。  主に正漢字を巡って/黒瀬珂瀾
現代短歌フランス文学 抒情詩の〈私〉をめぐって/吉田隼人
たたたたたたた魂の走る部屋 歌会とコミュニケーションについて/石井僚一

■資料
あたらしい短歌キーワード15/石川美南+山田 航

2016-07-21

受贈本紹介

 頂戴した書籍はもつと澤山あつたと思ふのですが、何處に隱れたのか、
見つかりません。 取り敢へず、目についたものだけでも紹介しておきます。

★ヴァーノン・リー幻想小説集『教皇ヒュアキントス』中野善夫:譯*国書刊行会
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 一年以上も前のものなので、最早新刊とは申せませんが、佳き書ゆゑ載せて
おきます。 柳川貴代さんの裝丁、林由紀子さんの裝畫、美しき書物であります。

★相澤啓三歌集『音叉の森』書肆山田
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 詩人の三冊目の歌集、大患を乘り越えられた前後の詠草が収められてゐます。
相澤さんが此れまでに詠まれた首數は、歌人と稱へ乍ら長らく無詠の私の其れを
はるかに上囘るのではないかと思ひます。
  〇ぬばたまの他界にわたる貌鳥は音なく来居てわれに見入れり
  〇シャルリスに拐されてオー・シャルのクロークにわが預けし時間
  〇美しき星滅びむといたまざれ若きらになほ美しき時
  〇わが性(さが)を手鎖にして書かざりし重きことども闇に沈めり

大井学歌集『サンクチュアリ角川書店
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  〇十本の指ににほんの名無し指ありて冷たき水掬ぶかな
  〇楽器持つひとを眼で追うわが癖のとりわけバイオリン背負う少年
  〇死ののちも聴覚しばし活きいるとわれならぬもの音をきくもの

★「Fukujin」No18*特集:追悼 松山俊太郎
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 松山さんに初めてお目にかゝつたのは新宿花園神社社務所にて催された
加藤郁乎さんの出版記念會(1971年頃)であつたと思ひます。其の後、
相澤啓三さんのお宅で偶々同席の折、俳句の雜誌に執筆してゐた連作小説を
指して「文章に妖氣がある」と仰つて下さいましたが、まさか松山さんに
褒められるなど思ひもよらなかつたので、其の時は揶揄(からか)はれた
のだと思ふことにして、遣り過しました。然し其の後は一種gallantlyを
以て應接をたまはるやうになり、「藏書を見たい」とか仰つて築地明石町
舊居に見えられた時は膽を冷やしたといふ想ひ出があります。
 此の特集號では寄稿者が敬愛の念を以て稀世の梵文學者の〈人となり〉を
語つてをられ、拜讀してゐて目頭が熱くなりました。殊に、松山さんの
最期を看取られた丹羽蒼一郎さんの「蓮の臺に乗るまでに――(病院での
日々)」と「松山俊太郎年譜」には感銘を受けました。
「Fukujin」は日蓮宗系の先鋭的かつ甚だユニックな佛教研究誌にて、
表紙誌名の下に〈漬物から憑物まで〉と謳つてゐます。バックナンバーの
問ひ合せ先は下記の通りです。
 ◎福神研究所『福神』編集部=Tel:0545-52-0059

★「パルナッソス」創刊號
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 池袋池三商店街の古本屋さんの創刊になる同人誌同人の益岡和郎さんが
送つて下さいました。創作欄もありますが、巻頭の座談會《池袋書店今昔 
書店文化の発信地としての池袋》が面白い。私は若かりし頃、新宿牛込の
矢來下、すぐ傍の神田川江戸川橋を渡つた文京區側の水道二丁目に15年間ほど
住んだことがあります。有樂町線が通じてからは時々買物に出かけましたが、
たいていの用事は二つの百貨店パルコで濟ませて町中には殆ど出なかつた
ので、此の座談會記録を讀んで些か悔んでをります。
 ◎千年画廊=Tel:03-5956-8186、Meil:shion_kanzaki@yahoo.co.jp

★「幽」yoo/Vol.24
 特集:リアルか、フェイクか
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★「幽」yoo/Vol.25
 特集:人形/ヒトカタ
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音叉の森

音叉の森

歌集 サンクチュアリ (新かりん百番 86)

歌集 サンクチュアリ (新かりん百番 86)

2016-07-20

 金子國義生誕80年記念展

御存命ならば今年傘壽をお迎へになる筈であつた金子さんの【生誕80年記念展】が
今週末からほゞ一箇月に亙つて開催されます。
此れに合せて『金子國義スタイルブック』も刊行されます。
開催データは下記の通り、是非お運びのほどを。

期間:7月23日(土)〜8月21日(日):12時〜19時(日曜/祝日は18時)、
月曜/火曜は休館。
場所:LIBRAIRIE6=渋谷区恵比寿南1−12−2 南ビル3F
Tel:03-6452-3345 Http://www.librairie6.com
   東京メトロ日比谷線恵比寿駅1番出口より徒歩2分/
JR山手線恵比寿駅西口改札より徒歩2分
★初日17時よりオープニングパーティが開催されます。
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2016-06-22

【新編日本幻想文学集成】刊行開始

 国書刊行会の【新編日本幻想文学集成】が愈々刊行開始を迎へ、明日第一巻
「幻戯の時空」が配本されます。

  安部公房集☆編集解説:安藤礼二
  倉橋由美子集☆編集解説:山尾悠子
  中井英夫集☆編集解説:高原英理
  日影丈吉集☆編集解説:諏訪哲史

  裝畫:梅木英治  裝丁:柳川貴代

 *760頁の大冊、本巻に限り《刊行記念特別価格》5000円(税別)
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 ◇因みに私が擔當した作家の収録巻は下記の通りです。
   円地文子集:第三巻「幻花の物語」
   泉鏡花集:第四巻「語りの狂宴」
   佐藤春夫集:第五巻「大正夢幻派」
   森鴎外集:第九巻「鴎外の系譜」

2016-06-19

百合開花

 此の邊りでも田植ゑが始まりましたが、雨は餘り降りません。空梅雨ですね。
 山百合・鬼百合など野生の百合が咲き始めるのは、いま少し夏めいてからですが、
園藝品種の透かし百合には早咲きのものが多いやうで、私の露臺でも鉢植の透かし
百合が開花しました。
 カサブランカといふ白色大輪の人氣園藝品種がありますが、10年くらゐ前に
臙脂色(赤紫色)咲きの新品種が賣り出された時、此の系統の色に弱い私は早速
球根を購入して培てましたが、年ごとに花附が惡くなり、東京を離れる頃には
球根が溶けてしまひました。

 透かし百合
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 築地明石町で培てゝゐた赤紫咲きカサブランカ
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