須永朝彦の埴科便り

2017-11-05

受贈本紹介

★G・K・チェスタトン南條竹則譯『ポンド氏の逆説』 創元推理文庫
 光文社古典新訳文庫『木曜日だった男』、創元推理文庫詩人と狂人たち』に續いての新譯、
また南條さんの譯でチェスタトンが讀めるのは寔に嬉しき限りであります。中村保男譯か福田
恆存譯か、昔讀んだ筈ですが、どのやうなお話であつたか、全く思ひ出せません。
 巻末に附された西崎憲さんの解説が要領を得た結構なものであります。
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★グスタフ・マイリンク幻想小説集/垂野創一郎譯『ワルプルギスの夜』 国書刊行会
 45年くらゐ前のこと、河出書房新社から《モダン・クラシックス》という歐米小説の叢書
刊行されてゐました。其の中に今村孝さん譯の長篇『ゴーレム』があり、此れがマイリンクに
接した初めであります。前後して種村季弘さんも次々に傑れた短篇を譯出されたので、マイリ
ンクは同じ頃に邦譯が出始めたハンス・ヘニ・ヤーンと共に私の愛讀獨逸作家となりました。
モダン・クラシックス》には獨・佛・英・米・露などの興趣に富んだ作品が澤山入つてゐま
したが、手許に殘つてゐるのは『ゴーレム』とバロウズの『裸のランチ』、あと波蘭(ポーラ
ンド)の作家イェージイ・アンジェイェフスキの少年十字軍を扱つた傑作『天国の門』だけで
す。『ゴーレム』と『天国の門』は何度も讀み返した爲だいぶ傷んでゐます。
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ワルプルギスの夜』は全15篇(長篇2篇、短篇8篇、エッセイ5篇)すべてが本邦初譯の由、
寔に以て近來の快擧と申すべきかと。時間をかけて味讀致さねば。
 譯者の垂野(たるの)さんは夙にレオ・ペルッツの邦譯者として知られ、最初に刊行された
ペルッツの譯書をいたゞいた覺えがあります。當時原稿の督促か何かで來訪された国書刊行会
編集長の礒崎さん(現在は出版局長)が偶々座卓の端に置いてあつた垂野さんの譯書に興味を
示されたので、其の場で差し上げたことを、いま思ひ出しました。
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大室ゆらぎ歌集『夏野』 青磁
 歴史的假名遣が採用されてゐますが、其れが獨得の口語的修辞と融合してゐるかどうか、
評價が分かれるかも知れませんね。また字餘りと申すには饒舌に過ぎる下(しも)七七が少な
からず見受けられるのは、定型の埒を冒す擧と見えぬでもない……かと。
 長野まゆみさんの秀逸小説『あめふらし』の世界を連想させる、幽明の境に遊ぶ趣の歌が
何首かあり、「おゝ!」と思ひました。
*かなむぐらががいもひるがほ蔓草をたぐれば出づる根の国の声
*蔓草に口のうつろを探らせて喉の奥まで藪を引き込む
*晩年の「雪後庵夜話」を読むときにいよよ興ある「細雪」かも
*これほどにおたまじやくしがゐるからはその四倍は出づる手と足
*日本語に訳されたときホメロスに軍記物語の文体は顕つ
*おほぞらにひかりの展翅あるときは十字をなしてさへづる雲雀
*ひとつならず馬の墓あり土手の道、葛の葉むらは左右(さう)より及ぶ
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