イタリア優勝

ああ…、パオロ・マルディーニが居るうちに成し遂げて欲しかった。


一日遅れだけど、2006ワールドカップドイツ決勝の感想をば

やっぱり低調

予想していたことだけど、決勝戦はどちらのチームも疲弊していて、試合全体が低調。
まだ、準決勝、イタリア対ドイツ、フランス対ポルトガルの方が見ごたえがあった。

バイタルエリアを使わせない。

イタリアは「伝統の堅守」と言われているが、どこが他のチームと違うか。
言葉では説明しにくいけれど、イタリアの試合を楽しむためのヒントは、「バイタルエリアでのイタリア人ディフェンダーの動きは、他の国のディフェンダーとどう違うか」。
バイタルエリアってのは、ペナルティエリアの前数メートルのところ。


たとえば、ポルトガル対ドイツの試合で、シュバインシュタイガーバイタルエリアから2本のシュートを決めているけど、対イタリア戦ではそのシュート自体が果たして出来たかどうか。
あのとき、ポルトガルの守備陣は確かに集中力を欠いていた。

グロッソは完全なラッキーボーイ

オーストラリア戦で起死回生のPKを獲得し、ドイツ戦で119分の先制弾を打ち込んだファビオ・グロッソが今大会のラッキーフェアリー。
もともと、イタリアの左サイドはジャンルカ・ザンプロッタで、右サイドにクリスティアン・ザッカルドのはずだった。
けれども、グループリーグ第2戦でザッカルドオウンゴールやってしまってから、急遽ザンブロッタを右サイドに移して、左サイドでファビオ・グロッソが緊急発進。
まさか、これがラッキーフェアリーを呼び込むことになろうとは。
かつてのスキラッチみたいだ。


勝戦でPKになったとき、今イタリアで一番PKが上手いのはピルロだと思うので、「ピルロが5人目だろう」と予測したけど、意外にも1番目で来た。
となると、5人目はカピタン(キャプテン)のカンナバロかなと思ったけど、なるほど、グロッソでした。
グロッソも、クラブではフリーキックを担当しているのでプレースキック能力は高いんだろうけど、あの場面は度胸が必要な場面。
度胸という点では、2番目に蹴ったマテラッツィがヤ○ザ並みの度胸もちだろうけど、すべてのツキを身にまとったグロッソこそ、5人目には最適かもね。


グロッソがPKに出てきたとき、「ああ、彼なら外すはずがない」っていうオーラが見えたような気がした。

レジスタは流行るか!?

イタリアは、もちろん一人一人の能力は低くは無いのだけれど、世界最高の11人を集めたチームじゃない。
たとえば、優勝したイタリアチームを全員フランスに移籍させたとして、すぐにスタメンで使われそうなのはザンブロッタくらいだろう。
FWトニはアンリに劣り、トレクァルティスタのトッティも不調でジダンと比べ物にならない。
サイドハーフカモラネージとリベリならやっぱリベリだし、左サイドのペロッタは実は左サイドが本職じゃない。
ガットゥーゾは守備固めが必要なときにビエラの交代要員にされちゃうだろう。


イタリアの白眉はレジスタピルロの存在だと思う。

ドプル・ピボーテ

スペインではこう言うのかな。
中盤の底で、バイタルエリアをカバーするタイプのミッドフィルダーを、日本では「ボランチ」と読んでいるけど、ヨーロッパの守備的中盤は、日本の「ボランチ」ほど前に出て行かない。
スペインの「ピボーテ」(英語のピボット=窪みのこと)が一番良く、このポジションのことを現していると思うけど、要は、バイタルエリアにピボットを作って、ボールをゴール前に持っていこうとすると、穴に引っかかって止まってしまう、というのが狙いのポジション。


ピボーテ」が上がってしまってバイタルエリアを空けてしまうなんてありえない。


この「ピボーテ」を2人準備して、1人は完全に守備専門(センターバックからコンバートされたりする)、もう一人はプレースキック精度も高い選手を置くのがドプル・ピボーテ


ピボーテの位置で、ボールを奪ったとき、選手はボールを持って相手ゴールの方を向いている。
いわゆる「トップ下」の選手が、ボールを取ったとき、相手ゴールに背を向けているのとは大違い。
「トップ下」の選手は、そのすばらしいパスセンスを披露するまえに「振り向く」作業が必要になるけど、ピボーテならその必要はなく、いきなり前を向いてプレーできる。


なら、振り向こうとしても体格が劣って振り向けない「か細いトップ下」に守備練習をさせて、ピボーテをさせたらどうだろう?
これが、欧州サッカーを見てて最近良く見かける、「レジスタ」という奴になる。


レジスタ」自体は別段新しい役割じゃなくて、結構、昔から居る。
セリエAでもピルロより前に、アルゼンチン代表のファン・セバスチャン・ヴェロンとか、元イタリア代表のアレッシオ・タッキナルディデメトリオ・アルベルティーニなど、パスセンスを備えた守備的中盤=「レジスタ」は居た訳で。


ただ、ちょっと前までは、守備的中盤にプレスをかける仕事が期待されていたため、走って動きまわるタイプの方が重宝されていた。日本で言う「ボランチ」のことかな。
現在では、プレスをかけるのは守備的中盤だけの仕事ではなく、両ウィンガーもサイドバックもプレスに参加するのが常識だ。


さらに、守備的中盤を「ドプル・ピボーテ」の形にしてプレスを担当するピボーテを置くことで、一人の守備的中盤はプレスのために走り回ることから開放されて、その豊かなパスセンスを大いに発揮出るようになる。


イタリアチックに言うなら、「レジスタ(指揮者)」と「インコントリスタ(壊し屋)」の組み合わせだ。


今回イタリアには「インコントリスタ」としてなら世界最高峰のガットゥーゾが居て(ただしパスは死ぬほど下手)、パスセンスなら世界最高峰のピルロが居て(ただし振り向くだけのパワーはないし、走り回れるだけの体力も無い)、この組み合わせが絶妙に利いていたと思う。


従来のパターンなら、「トップ下」のトッティがゲームを作る。
パスセンスのみならず、体格にも恵まれたトッティが居れば、それだけで多彩な戦術が組める。
もはや「トップ下」はかつてのロベルト・バッジョマンチーニといった小さな選手がやる仕事ではなく、トッティバラックのような大柄な「現代型10番」がやる仕事だ。


そうしてのトップ下がマークによって消されたとしても、その後ろに「レジスタ」というもう一人のプレイメーカーが居れば、なおも攻撃の戦術は尽きてしまわない…。


日本代表で言うなら、振り向くだけのフィジカルがある、中田が前。
フリーキックが上手いけど線の細い、中村が後ろ。
というのが、欧州では流行りつつあって、イタリア代表の優勝で、この流れが加速するんじゃないかと疑っています。

今後の日本代表の「ドプル・ピボーテ

まず、ジーコジャパンに「ボランチ」は居ても「ピボーテ」は居なかった。
しかし、オシムジャパンには適任者が居る。
精密なプレースキッカーでありかつ守備もそこそこいける阿部勇樹と守備に関しては余人を持って変えがたい今野泰幸の2人だ。


個人的にはバックパスの多い小笠原満夫なんかも、前を向いてプレーしやすい「レジスタ」の位置に入ってほしいと思っている。


じゃあ、攻撃的中盤は誰がやるのか。


…居ないなぁ。