
2006-07-16-Sun
■[review]彼女たちの流儀(130cm)
総合評価 83点(21位/84作品)*1
登場人物の真意を隠し、そして効果的に表すための人物・舞台設定が上手くなされていると思う。
共通部分の展開を存分に使ってメインヒロインを引き立てる構成も気に入った。
素材は定番にも思えるが、一歩進んだプロットができていたようにも見えるので、メインの創りこみ、あるいは他ルートでの対立項の確立によって、より素晴らしいものになったのではないかと高望みしたくなる作品であった。
項目別評価(10点満点:標準点7.0)
| 項目 | 評価 | コメント |
|---|---|---|
| 引き込み | 7.5 | 共通部分に1つの流れがあって、その辿り付く先に興味が持てた |
| 感動 | 7.5 | 鳥羽莉・朱音に絡むところでは、見せ場がそこそこ創られていると思う |
| エンド | 7.0 | 力の入っている鳥羽莉ルートもベタ誉めというわけにはいかない。他のルートは軽い |
| 雰囲気 | 7.0 | 姉妹の設定や主人公と鳥羽莉の関係、部活動によって独特の雰囲気に惹かれる |
| ヒロイン | 7.5 | 個性がきちんとあって、日常描写を盛り上げる。攻略時に魅力を発揮できていないキャラが何人かいる |
| 音楽 | 9.0 | OP曲は歌詞もムービーも使われ方も素晴らしい。鈴月のテーマ、孤独、贖罪がお気に入り |
| 画像 | 8.0 | 枚数(差分)が多く、表情の微妙な変化がしっかりと描写されている。 |
| Hシーン | 8.0 | 回数が多い。特に姉妹は設定を活かした特殊なシチュエーションが多数 |
| システム | 8.0 | スキップが速く、長い共通部分があまり苦にならない |
| 主人公 | 7.5 | 人当たりがよい。不自然なことを自らする度合いは低め |
| コンセプト | 7.5 | 鳥羽莉中心の構成で、狙い(下記)は達成されていると思う。 |
「初めから70〜80点を狙った、守備とカウンター攻撃の作品」
とライターのまやせろみ氏は書いていて、リソース面での制限を感じていたようです。その点から見れば、作品の見所を1人に集めるというのは良作を創るのに効率的であったと思います。ただ、直前で何日か飛ぶのは、完成度という面からは印象を下げたでしょう。
プレイ日記は↓
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(ネタバレ度最高なので注意)
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鳥羽莉は主人公に↑のような演技指導をします。
これを読んだとき、(真に受けていいなら)今作のポテンシャルは高いと思いました。
OP曲の初めのサビは鳥羽莉のことでしょうし、鳥羽莉は常に「演じている」わけで、その真意は彼女のシナリオを最後まで理解しないとわからないということになるからです。
(ほぼ全部の歌詞が当てはまるかもしれないし、逆に深読みしすぎかもしれない)
このルートでも祭文化直前で日が飛びすぎるので、その時は不安一杯でしたが…
結果的には鳥羽莉シナリオだけで高得点になるくらいに楽しめました。
ただし、「永遠」との対比にこだわりがあると、物足りなく感じるかもしれません。
私は「主人公を思い通りに動かす」人には、(主人公シンクロ状態で色々やられてしまうので)あまり良い印象を抱かないことが多いのですが、シンクロ状態でどうこうとなる前に、鳥羽莉を気に入ることができました。ポイントは↓のあたりです。
- 華奢で幼い風貌と尊大な態度の組み合わせ
- 私服やパジャマなど、服装もかわいらしい
- 主人公に対して配慮しているし、実は葛藤がある
- 「ご褒美」の場面のしおらしさ
シナリオで気に入ったのは、鳥羽莉の真意が明らかになるところと、それを再び意識させるところです。
文化祭の本番で「アドリブで本音を出す」こと自体は、劇中劇の手法としてはよく用いられるものですが、鳥羽莉は作品全体に渡って「演じて」いたわけで、その理由と中身が文化祭の演技で判明することが大きいです。主人公のことがずっと好きだとか、留学することとかは他ルートでわかっているとして、
- 再会した主人公につれない態度をとっていた理由
- 「好き」と言えない
- 留学の話をしない
- 劇のヒロイン役に主人公を選んで、何をやりたかったのか
- 「吸血」することについてどう思っているか
あたりについて、鳥羽莉の真意を読むことができました。舞台のシーンには迫力があり、とても良かったと思います。
もちろん、劇本番以外に前日夜の火乃香の話で判明する部分もありますし、
- 主人公と母が家を離れたこと
- 主人公は帰る機会どころか、姉達と連絡すらとれなかったこと
- 鳥羽莉が母を嫌っていること
- 主人公達の父のこと
といったことについても、ルート中で少しずつ真相(理由)が明かされていき、劇本番で感じ取ることの下地になっていると思います。
また、鳥羽莉の真意を引き出し、それに応える主人公のセリフもなかなかよかったです。ベタなところでは「本当の想いを聞かせて」というのもありましたし、鳥羽莉に囚われずに対等に、というのにも共感できました。
- 少しの間であっても想いを通じ合いたい
- 一瞬が永遠に勝ることがある。その一瞬を大切にして欲しい
というところも気に入りました。
そして、エピローグでは鳥羽莉視点での描写により、彼女が(主人公達といた頃に)考えていたことを意識させます。極めつけは、Redがロングバージョンでかかるところで、彼女のことを歌っているような曲の中、数々の場面とセリフが流れます。特に、再会の場面やHシーン、鳥羽莉が主人公に想いを偽る場面は、真意を意識して見直すと感慨深かったです。
(注文をつけるなら…)
- 最後の朝の「誰だってメインキャストで生きている(後略)」というのを鳥羽莉から教わった、というのがピンとこないこと。
- デートが途中までしか書かれないこと。
- 第3の選択肢をとるために、ご都合主義を1つ増やしていること。
というところですが、「このシナリオ1本が勝負」と読んでいた期待に応えるものであったことには変わりありません。
<月の箱庭>
「可能性」と「ご都合主義」だと作品内に書かれては突っ込みにくいですが…
鳥羽莉を(主人公視点でなく)気に入っている私としては、彼女視点で振り返る部分があるのは基本的にプラスでした。前周で理解した(つもりになっていた)、彼女の真意を確認することもできましたし。
結末についても、もう1つ用意するのであれば、あの状況には納得できますし、「心だけは永遠ではないかも」というのが押さえられているのも良かったです。
*1:2006発売作品中 3位/11作品
