
2011-09-23-Fri
■[review]未来ノスタルジア (Purple software)
総合評価 79点(65位くらい/184作品)
杏奈がやってきた目的に関係するところは面白かったし、感動したところもある。一方で、それ以外の部分は、本筋への絡み度合いで見ても、あるいは、全く別の面白さという点で見てもイマイチな感があった。
(項目別評価 標準点7.0)
| 引き込み | 感動 | end | 雰囲気 | キャラ | 音楽 | 画像 | シーン | システム | 主人公 | コンセプト |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 6.5 | 6.5 | 7.5 | 8.0 | 7.5 | 8.5 | 8.5 | 7.5 | 9.0 | 6.0 | 7.0 |
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(ネタバレ度が高いので注意。)
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シナリオ別評価(クリア順)
10点満点(標準点は5.0-5.5 ★は0.5) | E |D|C|B|A|S| 共通 ☆☆☆☆☆★ 5.5 ヒナ ☆☆☆☆☆ 5.0 ノノ ☆☆☆☆☆ 5.0 詩 ☆☆☆☆☆ 5.0 伊織 ☆☆☆☆☆★ 5.5 杏奈 ☆☆☆☆☆☆☆ 7.0
読み終えてみて、構成は、
■杏奈が主人公と結ばれる、ある意味、裏ルート
■別の女の子と結ばれることによる、表ルートとは別のハッピーエンド
なのだと、自分の中では整理。
【この子が(おもての)メインヒロインなんだ】
【杏奈が飛んでくる元の未来の世界では、主人公は伊織と結ばれたのだ】
と気付いた。杏奈は、あの悲劇を変えるために未来から飛んできたのだ。
*最短であれば、共通の4/8の杏奈「もう……始まってしまっているのね……」で、
【】については、ピンとくるのかもしれませんが。
ただ、それと同時に、とてももったいないと思った。
伊織は、共通序盤からの主人公に対する態度(エアガン突きつけ)が強烈すぎて、
どうしてもギャグキャラに見えてしまっていたのだ。
個別ルート序盤のバカ騒ぎ的展開も、その印象を強めていたと思う。
その行動の理由は、十分に説明されていて、
「知っているのは、わたしだけですから」(4/2 超能力に関して)
「なぜ、今になって、わたしの前に現れたんですか?」
「そう、あなたは、秘密を守り続けているんですね。」(4/8 時計塔)
「伊織ちゃん……」(4/12)
など、伏線は序盤から十分過ぎるくらいにあることから、
早い時期に推測可能と思われ、想いの強さも伝わってくるのだが、
さすがに、少々バランスを欠く気がした。
キャラ的には、素直になかなかなれないけど、デレると可愛いツンデレで、
魅力的なところも十分にあると思う。
昔から主人公のことを想っていて、超能力の秘密を共有した相手と再開して結ばれる。
だけど、それによって、力が抑えきれなくなって・・・というところを
未来から来た杏奈が、自身を犠牲にして救う。
そうまでしてでも、主人公(と伊織)を救いたかった、杏奈の想いが伝わってくる話だった。
あのエンドの後は、あの世界にいる杏奈を見つけて、
力の使い方を教えてあげる未来が待っていると勝手に想像している。
もう1つ欲を言えば、力の暴発を抑えるところは、杏奈の目的に直接結びつくので、
もっと作り込んでも良かったのではないかと。
例えば、1プレイ目は強制失敗で、悲劇の結末→未来編でも良かったのではないかと思う。
そして、最終の杏奈ルート。
その見所は、何と言っても、杏奈が、飛んでくる決意をするに至った、未来編の描写だろう。
杏奈が、主人公や詩、ハル、クロとどのようなことを経験し、
どのようなことを想って、過去の主人公を助けようと決意したのか、
飛んできてからの杏奈が、どれだけの決意を持って過ごしてきたのか、
十分に伝わってくる話だった。
未来編のラストは、やや駆け足気味であり、予想できるところも多い展開であったが、
本作で一番感動したところだった。
未来編で見られる、詩の成長した姿も感慨深い。
それぞれ別々の道を進んでいて、あれだけ賑やかだった学園生活とは一変した寂しさがある中で、というのが響いてくる。
そうした、杏奈が抱えてきたものを知り、居られる期間が残り少ないことを知った上での、
2人の生活や、周囲の暖かさ(結婚式イベント等)も好印象。
エンディング。もちろん個人的な好みであるが、あれで良かったと思う。
「未来から来た」設定、「未来を変えようとする」行動、ヒロイン分岐によるマルチシナリオ。
これらと、「杏奈には、もう飛んで戻る力がない」という状況を組み合わせると、
という問題はどうしても残ってしまうと思う。これは、相当なご都合主義でも回避しづらい。
あの悲劇が起こってしまった世界は消えない。それは、他の4ルートの世界と同様に、
並行世界として存在しうるんだろうな、ということ。
あらゆる可能性の世界がありうる、というのではなく、
プレイヤーが認識した分岐の分だけは存在する、という感覚。
あのエンディングは、そんな中での(予想した中では最高の)ハッピーエンドだと思う。
「あの人はここにいる。あたしと一つになったんだから」
「いつまでもここにいて……あたしの希望であり続けている」
「彼女がいたから、あたしはあなたに会うことが出来た」
「彼女の強さに近づくために。あなたと、まっすぐに向き合うために」
「そして……二人分の気持ち。あなたへの想いを、毎日育ててきたんだから」
これが、ストーンと入ってくるかどうか、によるとは思いますが。
(この二人にとって別世界や未来を含む)今まで積み重ねた記憶と想いが残っていて、
新たに、進んでいけるわけだから。
日常描写について。
日常については、1周目は、大勢で和気あいあいとして、楽しそうな良い雰囲気だと思っていたが、プレイを続けるうちに、似たような会話(同じネタでのボケとツッコミ、イジリ役とイジラレ役など)が目立ち、マンネリ感が強かった。
残りの3ルートについて。
本作は、共通序盤から、「杏奈の目的」をたっぷりと見せて、話の中心と印象付けている。
だから、それ以外の話を、引き込むような展開にするのは、困難であると思う。
*杏奈を単なる「転校生」設定にしておいて、伏線を張り巡らしておいて、
3人をクリアした後、伊織ルートの途中で、未来人設定をバラすならば、
このクリア順でも「待ちぼうけ」にはならなかったのだが。
これらの3ルートは、あの内容ならば、「明日の君と逢うために」の七海姉妹ルートのように、伊織・杏奈関係の本筋の後に、追加されたルート、という位置づけで良かったのでは、と思う。(別売りにして欲しいという意味ではない)
かなたや雫のルートは、あってほしいと思うが、
3人の誰かとの入れ替えで存在していたら、同じ印象になったと思う。
伊織→杏奈と本筋を見た上で、こういうハッピーエンドもあるよね、という位置づけでないと、杏奈の想いが弱くなってしまう感じがするのだ。
「とりあえず、陽一が伊織以外の誰かを、誰でもいいから選べばいいのよ」みたいな考えで、杏奈がやってきたとは、個人的には、あまり思いたくない。
(後述のように、未来で仲良くしていた詩については、若干異なる。)
*どうせ、本筋に絡めるなら、主人公が詩・ノノ・ヒナを選択した場合も、
伊織の時と同様に何らかの(杏奈が飛んで来たくなるくらいの)事情が発生して…
となるが、その場合は、悲劇の主要因が伊織ではなく、主人公でないと厳しいか。
<詩ルート>
キャラ的には、なかなか見ないタイプの幼馴染で面白かった。
みんなに愛されるのんびりキャラで、ゲームをすると変わるところとか。
展開が必要以上に超常現象設定に占有されている気がする。
(本筋と絡ませることと、超能力や超常現象が起きないと話が進まないことは、ちょっと違うと思う。)
引き起こした現象は、「みんなでいることの大切さ・楽しさ」を
伝えようとしているのだとは思うのだが。
あとは、もし、杏奈があの未来の回避手段として、
危険度の低い選択をするなら、主人公と詩をくっつけるんだろうな、
と。そういう意味では、このルートは本筋に(まだ)近いのかもしれない。
(このルートのプレイ時点では、そんなこと考えていなかったが。)
<ノノルート>
さすがに設定を都合よく使いすぎだと思った。
単発で見れば、「上手い使い方・つなげ方」とも思えなくはないのだが、
ルート全体的に見れば、設定に占有されすぎていると感じた。
最大の盛り上がりの場面が唐突で、他ルートでの陸上部のバス合宿が心配になってしまう。
あと、昔の事故の話は、彼女のルートだけの解決で良かったのか、という違和感がある。
こういう、クールな振る舞いの奥に強くて一途な想いがある妹は好み。
特に(義)兄妹であることからくる部分を上手く引き出せていると思う。
「妹として、家族として、それに女の子として、全部合わせれば、一番になれるかしら?」
超能力が、カメラ小僧撃退だったり、CM撮影時の桜に舞ったりと、
そんな使われ方しかしていませんが、本筋以外では、そんなアクセント程度でちょうどいいと思う。
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プレイ時間 22時間(共通、ヒナ、ノノ、詩→各3、伊織4.5、杏奈5.5)
BGM:未来ノスタルジアinst(特にイントロ)、待ち人来たりて
システム:カレンダーのあらすじ機能、バックログによるジャンプ機能
(余談)
もうプレイ作品数が10本を超えた、パープルの新作です。
シナリオライター関係では、何が真実なのか、よくわからないことが起きていたようですが、そもそも、プレイヤーに見えるところで、そういうのがあるのが、望ましいことではないのでしょう。
一方、プレイヤーとしては、楽しめるものが出れば、というところが大きいのも確かです。
(私は、何らかの印象を持っているライターはそう多くなく、その中でも、鏡遊氏は、好印象の方なので、残念ではありますが。)
私のプレイ開始時点で、ErogameScapeでは中央値平均値82と高評価でした。
当たりのルートがあって、魅力的なヒロインをサブに回せる余力(FD商法)がある作品というところで期待が高まりました。
何しろ、長年プレイしてきた(しかも、ここ何年かの評判がイマイチの)パープルがこんな快挙を(まだわからんが)、という状況にちょっと感慨深いものがありました。
ところが、1周目(ヒナ)を終えて、
「評判通りの印象まではいかないかな」「最終ルートのみ良いということかな」という印象に。
この時点で、雰囲気も悪くなく、無難な展開という印象を持っていたのですが、これだと、キャラと主題歌加点があって、75点程度かな、というところでした。
まあ、このレベルが5本なのが、いつものパープルなので、過剰な期待をしない限りは、全く問題ないのですが。
そして、レビューに書いた通り、4周16時間のプレイを経て、杏奈ルート、特に未来編の当たりを迎えるわけです。
それでも、80点台に至るほどの好印象とならなかった要因としては、やはり「大きなネタを最初(体験版というか、キャラ紹介)でバラしている」ことかなと。超能力はともかく、あっちの方は伏線から「何かあるな」と思わせる程度で良かったのではと思います。
まあ、でもあのネタを見せておかないと、最後まで物語への引き込みが持たない感じや、そもそも何の話かがわからなくて退屈しそうなところはあるので、匙加減は難しいのでしょうね。
