
2012-01-22-Sun
■[review]WHITE ALBUM2 -closing chapter- (5)
今回の記事で、前回の続きから本作のラストまでです。
注意: ↑については、前回と同様、ネタバレに配慮した書き方のつもりです。
(あと、「まとめ」の1回で本作の感想は終了です。点数とES投稿もその時にします。)
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(ネタバレ注意。エンディングまで言及しているので、クリアした方のみご覧ください)
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■シナリオ展開
ようやく本番、といったところでした。
五年間の物語を積み上げてきた雪菜と、五年ぶりに再会したかずさのマッチレースが始まります。
三人の関係は、雪菜がかずさに
「それでも、彼の中の一番はずっと変わらなかった。
…途中からだけど、ずっと彼を見てるわたしならわかる」
そんなコを、追い抜けるわけなんかなかった。
どれだけ頑張っても、肩を並べるのが精いっぱい」
と言っている通りでしょう。そんな雪菜が、
「わたしが一番頑張ったんだよ!
とっても辛い思いをしたんだよ!
だからいいよね? 幸せになってもいいよねぇっ!?」
と最後に本音を出すように、みんなが幸せになるために頑張り続けるのが雪菜ルート。全部を捨てて、かずさを選ぶのが、かずさルートという構成です。
どんな話か、どこが良かったかを書いていくと、(長い)あらすじのようになってしまいますが、以下、記述していきます。
物語は、closing chapter雪菜ルートのエピローグ(ストラスブールのクリスマス)より少し前から始まります。
ずっと、こんな幸せに浸っていたい。
これからも、一生…
だから俺は…
もう雪菜から、
二度と離れられない。
前回の記事でも、クリスマスにプロポーズしようとする場面までのお膳立てについて書きましたが、codaに入っても、そのようなテキストが多数見られます。「1週間ルール」は、あれから2年、社会人になっても続いていたり、絆を認識したりと。
それでも、かずさと再会した瞬間に、状況は一変してしまいます。プロポーズどころか、ミサにも行けず、かずさと会っていることを雪菜に言うこともできずにその日を終えます。これが原因*1で、プロポーズ直前だった二人の関係は、またギクシャクしてしまうのです。「かずさへの取材(記事)」というのは、closing chapter共通部分と同様のパターンで、雪菜が「かずさを意識しすぎてる春希」を許せないことが発端となります。
そんな、春希と雪菜の関係を妨げる「取材」が毎日続く、しかも、春希の隣の部屋にかずさが住むことになるという、微妙な時期が続きます。お互いのことを話すたびに、どうしても現れてしまう反応に、昔からの想いが感じられます。
「…何度突き放しても近づいてくる男なんか、
といった、本音も時折飛び出していました。
そして、学校での昔話で、
「あたしが、先だった…
先だったんだ」
「キスしたのも、抱き合ったのも。
…そいつのこと好きになったのも」
という、introductory chapterの頃から、三人の中で春希だけが知らなかった事実が明かされます。『一度だけ』『今日限り』…そんな限定でのやりとりも印象的でした。
そして、1月の凱旋コンサート*2に、春希は現れず、春希に聴かせるためだけに日本に帰ってきたかずさは、大きなショックを受け、コンサート後に疾走し、地下スタジオで春希に見つかり、ついに、五年間の想いを告白します。
【雪菜ルート(coda1周目)】
ちょっと脇道にそれますが、1周目の結末には、別の決着が見られます。
まず、雪菜。春希は、かずさとの(取材の)日々を隠したまま、思いを隠したまま、かずさのコンサートの日に、雪菜のところへ「逃げて」きて、プロポーズします。この、「三年かかってやっと手に入れた幸せを、絶対に失いたくない」という春希の想いと、
「絶対に、最後まで騙し通して。
わたしにこれ以上、辛い思いをさせないで」
「ずっとずっと隠し通して、全部秘密にして…
最後の最後にわたしを選んでくれたらそれでいい…」
という雪菜の想いは、完全な解決ではないけれども、一つの決着だと思います。
【各ルート2周目】
2周目になると、曜子の意外な真実(「見所と思った場面など」の項で後述)が判明し、春希とかずさの決着は一層難しくなります。これは、今までの彼女の態度に全く別の意味合いを持たせ、追加公演後のかずさの身の振り方にまで影響する、codaで一番大きな伏線でした。「今のかずさは、もう俺一人では背負えない。」と思っていた春希は、驚きながらも曜子とともにかずさを支えようとし、コンサートが終わるまで、これをかずさに隠そうとします。
ところが、その隠し事は、かずさの知る所となってしまいます。かずさの目標も世界も消えてしまった今、かずさを守るにはどうすればいいのか、自分は何を選ぶのか、春希は、脳裏に、今まで触れあってきた沢山の人たちの暖かい表情を浮かべて、雪の中、考えます。
今日が、俺の人生の…
そして、三人の分岐点なんだ。
もう、逃げられないって。
二つのうちの一つを選ぶしかないって。
…それも、一度選んだはずの選択肢を、もう一度。
これが最後…
もう二度と引き返せない、最後の決断。
【雪菜ルート(coda2周目)】
決断の場面、春希は、自分ではかずさを助けられないと考え、「たった一人認めた"親友"」であり、「一度は、永遠の友情を誓い合った相手」である雪菜に助けてもらうことにします。
その後は、「昔のやり直し」。そのための場面の連続でした。それは、コンサート(追加公演)の後、春希が雪菜に決意を話すとき、彼が、
決まってる…
あの、学園祭の夜をやり直すためだ。
雪菜からの告白を、
戸惑いながら受け入れる俺じゃなく。
かずさへの未練を、
なにも知らずに振り切ろうとする俺じゃなく。
ただ雪菜を、雪菜のことだけを求める俺を、
やり直さなくちゃいけないと思ったから。
と考えていたとおりで、雪菜による連日の説得(と喧嘩?)により、かずさは、自分の周りの世界に、曜子以外がいることを受け入れ、コンサートに向けた活動を再開し、アルバムの作成の流れから、春希が作詞し、かずさが作曲し、雪菜が歌う─峰城大付属軽音楽同好会の完全再結成─へと、あの日の3人が戻ってくるわけです。完璧なハッピーエンドがそこにはありました。
【かずさルート(1周目)】
この決着にも「分岐の一つとしては、アリかな」と思うところがあります。
かずさとずっと一緒にいることを決めた春希は、かずさと旅行(五年前の思い出の場所)に行きます。しかし、かずさは、二人だけの幸せな日々を終わらせます。壊れていく春希のことを見て。
「あたしのために、何もかも捨ててくれてありがとう。
ひとときだけでも雪菜を忘れてくれてありがとう。
…壊れてくれて、ありがとう」
雪菜と一緒に聴く、かずさのコンサートで、曲間に回想する、旅行最終日のかずさとのやりとりが好演出です。
【かずさルート(2周目)】
1周目より、さらに踏み込むことで、ここまで積み上げたものが全部崩れていきます。それは、冬馬曜子が、
「だから、もしもあの子が、
あなたを手に入れようとしたら、
といったとおり。しかも、読むのは、前述のように、積み上がり切った後(雪菜ルート完結後)という状況というのが辛いところでした。
かずさが追い詰められてしまった本当の理由を…
曜子さんのことを、雪菜に告白する。
そうしたら雪菜は、力になってくれるかもしれない。
三人で一緒に背負っていくこともできるかもしれない。
そんな未来も、何度だって考えた。
決断の場面で、春希は「雪菜ルートの道」を認識しながらも、かずさを選び、全てを捨てることになっても側にいる、どこまででもついていくと告げます。
ここからは、崩壊の日々、辛い場面の連続*3です。かずさの答えを聞く前も、雪菜に別れを告げる前も、春希は深く悩みますし、その後は、職場でも、友人からも、小木曽家でも、あらゆる場所で、春希の「全てを捨てる行動」は非難されます。雪菜も精神状態が危うくなってしまいます。こうして、かずさ以外の全てを捨てて、二人は結ばれます。
もちろん、悲しみや、辛さだけではありませんでした。それは、かずさが、飛行機の中で、
「あたしの今の悲しみや、辛さや、後ろめたさは、
どんな嬉しさや、楽しさや、前向きな気持ちでも
絶対に和らげることはできない」
「けど、けどね、それはね…」
「今のこの幸福感は、
どんな悲しみや、辛さや、後ろめたさでも
絶対に消すことはできないってことなんだよ」
と振り返るとおりであり、大きな犠牲を払っても手に入れた、幸福感にも包まれたものであり、エピローグの「手紙」は、心に響くものがありました。
■見所と思った場面など
【曜子の真実<coda 雪菜・かずさ2周目共通>】
これは周到でした。これまで描写されていた曜子の性格からすれば、当然、奔放な活動をし、かずさの売り込みを考えての言動だと思っていたのに、別の意味が含まれていたとは驚きでした。
しかも、ちょうど、かずさがコンサートで失敗(?)し、告白は春希に拒絶され、頼るのは曜子だけと、
「仕方ないだろ…
今までのあたしの世界、半分滅んだんだから」
「あたしの進むべき道は、冬馬曜子が示してくれる。
…子供の頃から、ずっと、そうやってきたんだ」
(中略)
「だって、あたしにとって冬馬曜子は、
目標で、先生で、ライバルで…全てなんだから」
こう言っていた、かずさだけでがなく、春希すらも思っていたタイミングでの発覚です。
今のかずさは、もう俺一人では背負えない。
(中略)
だから、今のかずさに一番必要な人を頼るしかない。
(中略)
今のところ、世界でただ一人、
いつまでもあいつを支えていける人を…
コンサート前日の「なんとか、もってよね…」や、コンサート後の「わたしが乗るのよ」はもちろんのこと、もっと前の
「あ、そうそう。
わたし、今夜は用事があるからホテルに帰らないわよ。
多分、携帯も切ってるから」
とか、
「実はね、かずさ。
わたし、これから少し忙しくなるの。
コンサートのこととか、今後の活動のこととか」
とか、
「プロモーターとしては、どんな話題でもいいから、
今のうちに知名度を上げておきたいのよね」
「みんなに、素顔の冬馬かずさを知ってもらいたいから」
「だから、みんなに見せてあげて欲しいのよ。
と言っていたのも、全て、別の意味だったわけで、彼女がどれだけ、かずさのことを想っていたかが、特に最後のから感じ取れます。
introductory chapterの頃の話を思い出させる話が続く中、特に、最終日は、印象的な場面が多いです。かずさが日本に残るという話、かずさとの「さよなら」の話、プロポーズ時の雪菜の本音、連続メール、婚約者特権として言い出したこと・・・など。
かずさの特集号・ミニアルバムが発売される日(実際の描写はないが、かずさと春希が小木曽家にやってくることになっている。その時点で、「3人」の関係ができている。)。そして、エンディングテーマが流れる中、「絵」で示される場面。皆が幸せな、完璧なハッピーエンドでした。
「本当は、本当はさ…
もっと違う、一番幸せな道、あったんだよ」
「教会の祭壇で雪菜が泣いてて、春希が照れてて、
そしてあたしが、祝いのオルガンを弾く」
「そんな未来が、三人にとって一番幸せだったんだ。
………三人の平均を取れば、だけどな」
と言っていた場面でした。
これを春希が聞くのは、コンサートの翌日、雪菜の出張先から戻る新幹線の中です。
春希がコンサートに行けなかったわけですし、プレイヤーは、そのことによってどうなったかも(他ルートによってですが、)知っている状態で、これを聞くことになります。今でも春希のことを想っていること、五年間想い続けていたこと、コンサートに来てほしいということ、諦めること・・・取材の場面を含む数々の場面から、かずさの想いは伝わってくるのですが、この録音が(春希がかずさに本気で傾くまでの中で)一番、強く伝わってきました。
(前略)
『あたし、さ…
今からお前に、告白する。
そして、玉砕すると思う』
『わかってるんだ、お前には雪菜がいるって。
だから、あたしを受け入れられないって、
そんなこと最初からわかってるんだ』
『けどさ、けど…
それでも、もう一度だけ、あたしは雪菜を裏切る』
『春希に、今の本当の想いを伝えられたらって…
あたしの五年間、わかってもらえたらって…
そんあ都合のいい夢が、まだ捨てられないんだ』
『雪菜にとっては酷い話だけどな…
後で謝っておいてくれよな? 春希』
(中略)
『だから、だからさ、春希…』
『その時のあたしもそう言ったと思うけどさ…
コンサート、絶対に来てくれよな?』
『雪菜と、一緒でもいい。
いや、是非雪菜と一緒に来てくれよ』
『そしたらあたしは、お前の…
お前たちのためだけに、一生懸命弾いてみせるから。
自分でも、最高の演奏ができるって自信があるから』
『だってあたしは、お前たちの結婚式には行けない。
…距離も、心も、行くには辛すぎるから』
『だから明日のコンサートが、
お前たちへの、最後のプレゼントになる』
『来てくれる、だけでいい。
そしたらあたしはもう、お前のこと諦めるから。
その日限りで、お前への想いを昇華するから』
(後略)
2年後、ウィーンで、かずさは、曜子からメールを受け取ります。小木曽家に集まった人たちからの手紙をつけて。
『もう二年にもなるし、
そろそろかと思ってね』
『小木曽雪菜さんの、こと。
あの後の、彼女のこと』
『あなたたちにとって、
いずれは受け止めなければならないことだから』
『覚悟して、確かめなさい』
そう曜子が書いた手紙です。
今でも覚えている あの日見た雪の白さ
初めて触れた唇の温もりも忘れない
(このために創られた曲ではないが、)これほど、雪菜に歌われて、聞いた者が心を揺さぶられるフレーズはあるだろうか、という詩。そして、雪菜にとって「歌う」ということが、どれだけの意味を持つか、それを知っているはずの、春希に投げかけられたメッセージだったと思います。
かずさと一緒になるために、全てを捨て、周りの人たちの関係や、雪菜自身の状態にまで影響を与えてしまった・・・でも、こうやって、集まって、雪菜はギターを弾いて歌っている、「余韻」「心に響く」では言い表せない感情がありました。
