
2012-01-25-Wed 「冬が終わる 君のいない春が来る」ですか・・・
■[review]WHITE ALBUM2 -closing chapter- (6)
総合評価 96点(4位/188作品)*2006年以降の作品(リメイク除く)で最高点
これまで、5回に分けて、各ルートの感想を書いてきましたが、
今日は、全体を通して良かったと思うことを中心に書き、
まとめとしたいと思います。
(各ルートの感想はこちら。)
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(ネタバレ注意。ネタバレ度:高。クリアした方のみご覧ください)
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introductory chapterの時に抱いた期待に十分に応えてくれた作品。 「私が今までにプレイした全作品」の中で、 最も、積み上げ、盛り込み、つながりがあり、 (私が耐えられる)ギリギリまで攻めていた作品です。
1ルート目の感想の前に、↑のように書きましたが、その思いは変わりませんでした。
付属時代(introductory chapter「以下、IC」)の3人の関係を元に、
3年後の大学時代(closing chapter「以下、CC」)、
さらに2年後の社会人(coda)と続いていく物語。
つながりとしては、ICでの3人の思い出に関係する場面の多さ。
限られた時間の中で、練習して、徹夜して、曲作って、
喧嘩して、仲直りして、風邪ひいて、看病して、
怖じ気づいて、克服して、そして今日を迎えた。
そして、雪菜を裏切った日の話・・・
ことあるごとに、春希も雪菜もかずさも、昔を思い出します。
その中でも、一番印象的であったのは「歌」。
──3人の出逢いのきっかけ、雪菜が「歌」が大好きであること、
3人が「もっとも近くて楽しくて、もっとも嬉しかった」付属祭──
CC雪菜ルートでは、春希と二人で、雪菜はまた、歌えるようになり、
coda雪菜ルートでは三人で、昔の三人を取り戻します。
そして、codaかずさルートで、「歌っている」雪菜。
その曲の中では、付属祭のラストナンバー、「届かない恋」
──春希が、かずさのことを想って書いた詩に、
かずさが曲をつけ、雪菜が歌った──
が、上手く使われていたと思います。
思い出の曲として。千晶が三人を、朋が雪菜を好きになるきっかけの曲として。
雪菜に、楽しいことも辛いことも思い出させる曲として。
かずさに、コンサートに臨み、また三人で演奏することを決意させる曲として。
積み上げという点では、CCの小春・千晶・麻理のルート、そして、CCの雪菜ルート、
これら(+同梱の小説による、3年間の描写)をかけて、
春希と雪菜のお互いの想いの強さ、そして、結ばれるまでのすれ違いと遠回り、
ICの思い出との関係を「これでもか」というほどに描いています。
そして、それがどれだけ積み上がっても、
春希やプレイヤーを揺さぶるのが、あの、codaへ入る一瞬です。
そこまで、ハッピーエンドを演出する、場面と言葉が重なっています。
2週間遅れの誕生日会、そして、3年前
──雪菜が家族に嘘をついて一人で待ち、春希が来なかった──
とは違う誕生日会。
冬が、三人の季節が、『WHITE ALBUM』の季節が終わり、
二人だけの季節が始まる、という流れでエピローグに入り、
プロポーズのお膳立てが整ったところで・・・
そんな状況を一変させる、させても全くおかしくないと思わせる人物の登場となり、
三人の物語が再会することになります。
こういった、驚きの展開、伏線といったものについては、
前述のcoda導入以外にもいくつか効果的なものがありました。
一つは、coda(雪菜2周目・かずさ2周目)での、冬馬曜子の真実。
これは周到でした。これまで描写されていた曜子から想像できる、言動の意図に、
別の意味が含まれていたとは驚きでした。
告白は春希に拒絶され、頼るのは曜子だけというタイミングでの発覚。
春希ですら、かずさを支えられるのは曜子しかいないと頼ろうとしていた時でした。
かずさにとって、進むべき道を示し、目標で、先生で、ライバルで、全てであった、
曜子がピアニストとしての活動を終え、かずさの側からもいなくなるかもしれない、
そんな事態は、かずさが大好きで、お節介焼きの春希を中心とした
三角関係に大きな影響を与えていく、という流れは見事でした。
もう一つ挙げるとすれば、これも2周構成で段階的に見せた、
和泉千晶の「正体と企んでいたこと」だと思います。
これは、「何が起きたんだ?」という謎に始まり、
騙していたこと、何者であるか、というのがわかってきても、
「なぜ?」という疑問が残り続けた後に、
予想もしなかった真意が出てくるというのが素晴らしかったと思います。
これらの伏線を張る過程でもそうでしたが、
本作では、春希以外の視点による情報もプレイヤーには伝えていて、
色々ちらつかせておいて、プレイヤーに想像させた上で、
予想を外す(超える)真実を出す、という手法が良く取られていたと思います。
一方で、敢えてその時点で会話(の一部)を見せずに、後の場面で回想させて、
「あの時あんな会話をしていたんだ」と感動を導く場面も目立ちました。
例えば、CC雪菜ルートのクリスマスコンサートで、
コンサートの後にどうするか、という約束の場面をプレイヤーに隠したり、
codaの雪菜ルートでは、かずさを説得に行く場面で、
それまでに春希や曜子と接した場面を後から小出しに見せたり、
かずさルート(1周目)では、旅行の最後に別れを告げられた会話を、
コンサートの幕間に回想したりと、
その他にもありましたが、効果的なカットがされていたと思います。
こうした、場面構成の工夫に加えて、いつもながらの韻を踏んだテキストで、
単なるオマケや数合わせになりそうなところにも関わらず、良くできていたと思います。
「真面目で堅実で親身な世話と的確な助言が心地良いという、
言い方を変えれば誰かとそっくりな性格の少女」(←公式の紹介)
とされる小春。
といったところで、この舞台に馴染めていたと思います。
単なるゼミの同級生をどこまで絡ませられるのか、と思っていたら、
実は付属の3人を知っている、3人の物語に強い興味を持っている人という、
序章と関係性の強い人物であった千晶。
しかも、その演劇の才能からか、
春希や雪菜がどういう人物であるかに深く迫ることができた、
という面でも物語全体の中で十分な役割を持てたと思います。
そして、麻理。これがまた、面白いポジションの人物。
春希が、開桜社という出版社のアルバイトをしていて、そこでの有能な上司で、
春希のことを高く買っている、春希も彼女を頼れる存在として認識している、
そして、その社の記事で、冬馬かずさのことを扱っているというつながりです。
麻理の性格面が冬馬かずさと似ている、というのもポイントで、
この、かずさに似ているということは、
春希がどれだけ、相手のことを「好き」「大事」と感じるかという点で、
麻理がメインヒロインの雪菜と拮抗していくに当たり、
説得力を持たせる描写の一つとなっていたと思います。
加えて、麻理が外国に行ってしまうところでは、
冬馬かずさとの三年前の別れを連想させています。
設定という点では、春希と雪菜が社会人になって選んだ道も、
codaでの三人のつながりとすれ違いの場面を作りやすくしていたと思います。
CC雪菜ルート以降の朋(IC当初の軽音楽同好会を崩壊させただけじゃなかった)や、
麻理ルートでの佐和子(旅行代理店)も、上手いやり方だと思いましたね。
また、それぞれの「家族の関係」も対比されて、話のネタに、
感動させる要因になっていたと思います。
家族全員が仲良しで、干渉して、家族会議があるような小木曽家、
一時期、互いが互いを見失い、すれ違ったこともあったけれど、
相手を想い続け、娘が親を目標として育ってきた、曜子とかずさ、
そして、
これは、春希が小木曽家を訪れる時など、様々な場面で比較され、
かずさにおいては、進路の話、今後の活動場所の話、
曜子(coda)の抱えている事情の話など、様々なところで物語を動かします。
(小春や千晶の話でも若干登場します。)
もう一つ、印象に残っている点を。
わざとらしくても綺麗な演出として、「雪」がありました。
物語中「とうとう、降ってきた。」に始まる数々の場面。
いつも、大事な場面で「雪」が降っていました。
「最後の決断」をするとき、春希が、以下のように、思い出すように。
とうとう、降ってきた。
ずっと三人でいることを誓い合った日にも。
三人から二人が抜け出してしまった日にも。
二人から一人が去り、
一人と一人が残されてしまった日にも。
一人と一人が、もう一度二人になろうとして、
けれどどうしても許しあうことができなかった日にも。
一人と一人が何度もお互いを傷つけあった末に、
今度こそ、心の底から二人になろうと誓った日にも。
………二人が、再び三人になった日にも。
そして今日…
ああ、そうなんだ。
やっぱり、今日なんだ。
今日が、俺の人生の…
そして、三人の分岐点なんだ。
もう、逃げられないって。
二つのうちの一つを選ぶしかないって。
…それも、一度選んだはずの選択肢を、もう一度。
これが最後…
もう二度と引き返せない、最後の決断。
それでは、最後に、雪菜とかずさが、正面からぶつかる場面を挙げて、
締めくくりとしたいと思います。
ここで、二人が言い合うことは、とても単純なこと。
これまでの場面で何度だってでてきた、わかりきっていること。
春希が、ずっとかずさのことを想ってきたこと、
そのせいで、雪菜はずっと、悩んで、苦しんできたこと、
それでも、五年間の絆で、愛し合うことができていること、
かずさが、今でも、春希のことを想っていること、
雪菜もかずさも、罪悪感と嫉妬を持っていること。
それでも、雪菜との長い物語と、再開してからのかずさとの日々の
後にくるこの場面は、強く心に残りました。
「かずさだって、かずさだって…わかってないくせに。
あの日から、わたしがどんな思いをしてきたか、
全然わかってないくせに!」
「あなたがいなくなってから…
あなたがわたしたちの決着を先延ばしにしてから…
どれだけもがいて、悩んで、苦しんで、泣いたか…っ」
「勝手なこと言うな…そんなのあたしのせいじゃない。
その証拠に今、お前たち愛し合ってるじゃないか!」
「ここに来るまでに何度すれ違ったと思ってるのよ!
何度離れそうになったと思ってるのよ!
何度諦めかけたと思ってるのよ!?」
「でも愛し合ってる!
あたしのことなんかすっかり忘れて!」
「違う! 春希くんは全然忘れなかった!
かずさのこと、一度たりとも忘れてはくれなかった!」
「だったらどうしてふられるんだよあたし!?」
「あなたが彼を五年も放っておくからじゃない!」
「なんだよ!
あたしのせいだってのかよ!」
「それ以外に理由なんかある訳ないじゃない!
全部あなたが臆病なのが悪いんじゃない!」
「っ…雪菜…そこまで言うか?
何もかも手に入れたお前が、
何もかも失ったあたしに、そこまで言うのか?」
「そっちこそ勝手なこと言わないで。
彼の気持ちをずっと独り占めしてきたくせに、
今さら被害者みたいな顔しないでよ!」
「どうしてすぐ奪いに来なかったのよ…」
「かずさが日本に残ってれば、
春希くんはあなたのものだった。
なのに、どうして逃げちゃったのよ…」
「だってお前がっ!
お前が、あいつを…」
「そうだよ。わたしが彼を奪った。
…でもあなたはわたしに何も言わなかった。
戦おうとせずに逃げちゃった」
「あの時かずさはわたしに春希くんを譲ったんだよ。
春希くんのこと、諦めたはずなんだよ」
「なのに、五年ぶりに再会した途端にこんな…
今さら気が変わったなんて言われても知らないよ!」
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プレイ時間:コンプリートまで33時間
(closing chapter:共通4 個別3〜3.5×4)
(coda:共通4 雪菜6 かずさ5.5)
(項目別評価 標準点7.0)
| 引き込み | 感動 | end | 雰囲気 | キャラ | 音楽 | 画像 | シーン | システム | 主人公 | コンセプト |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 9.5 | 9.0 | 9.0 | 8.0 | 8.0 | 8.5 | 7.5 | 8.0 | 8.0 | 6.5 | 9.5 |
シナリオ別評価(クリア順)
10点満点(標準点は5.0-5.5 ★は0.5) | E |D|C|B|A|S| (序章 ☆☆☆☆☆☆☆☆ 8.0) 小春 ☆☆☆☆☆☆★ 6.5 千晶 ☆☆☆☆☆☆☆★ 7.5 麻理 ☆☆☆☆☆☆☆★ 7.5 雪菜 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 9.0 かずさ ☆☆☆☆☆☆☆☆★ 8.5
(余談:あとがき)
ようやく書き終わりました。
好きな場面・台詞の羅列になりそうなところを何とか抑えながら、
自分が思ったことに関する文言を入れていたら、
時間も文字数もかかってしまいました。
丸戸氏の文章が好きである私としては、
ICのプレイ後には、「序章でこれだと、どうなってしまうのだろう」と、
さらに期待が高まり、CCの発売日を心待ちにしていました。
期待点は95点。
なぜ、こんなに高くしていたかというと、
序章であれだけのネタを見せる、ということは、
過去の作品(ショコラ・パルフェ・この青空に約束を─ 等)の傾向からして、
「すでに出した札と、予想のつく札以上の切り札が残っているのでは」と、
信じていたからです。
後から見せる(明かす)方が効果的なわけです。
でも、雑誌情報(?)では、CCのプレイ前に読むのが推奨順であると。
実際、小説を読むと、CCにおける雪菜の「三年間の想い」の深さが
より伝わってくるようになっていたわけです。
実際につけた点数は96点。期待通り、いや、期待を超えたと言えます。
来るとわかっている三角関係の話を含めて、
「わざとらしさ」を感じるほど(褒め言葉)の、
つながりや盛り上げのための仕掛けがあり、「お膳立て」のされた話に、
引き込まれ、感動しました。
おそらく、
これほどの時間をかけてプレイすることも、
これほどの文字数をかけて感想を書くことも、
これほどの高得点をつけることも、
これから先、そうないのではないかと思います。
では、なぜ100点ではないのか。
いわゆる「自分ルール」の解説に、興味がある方などいないでしょうが、
一応書いておきます。
- A1:私にとって、「一番思い入れのある作品」には、「まだ」なっていないから。
- A2:ダブルメインヒロインのどちらも、「大当たり」ではないから。
- A3:「とても楽しめたゲーム」ではあるが、それ以上の何かでは、「まだ」ないから。
長文、お読みいただき、ありがとうございました。
12/29以降の記事を紹介いただいた、
finalion様(Faxia様)、Eroge RSS Checker様、Game Leader様、
ありがとうございました。
