VESTIGIAL TAILS/TALES : akihito aoi’s blog

2016/09/14

大学院設計スタジオ2 「神山スタジオ」:0829プレゼミ+0904-10神山合宿(中間報告)

 神山スタジオ2年目。伊藤暁さんと青井、そして門脇耕三さんの3人が担当。M1が13人履修し、アシスタント(M2)3名が運営補助。

 昨年度に引き続き「ヴァナキュラーなもののテクトニクス」とその現代的再編がテーマ。去年は民家(建物)を実測して分散公共図書館に改修する提案を求めたが、今年は視野を広げ、人が環境に取りつき、自らの生きる場所へと改変する、そういった工作者と環境との生きた造形上の関係に迫りたいと考えた。具体的にリサーチしたいと思ったのは石積み。

R9289014* 石積みは資材の再配置である。山の土壌を「資材」とみなし、土と石とに選り分け、それらを平場(土の耕作面)と土留(石積み)とに再配置するのである。

千枚田」などと呼ばれる、みわたすかぎりの山の地表を覆い尽くしている見事な棚田や段々畑の風景は、こうした再配置の行為を小さな単位で反復し、平場の面積を最大化した状態に他ならない[写真は1964撮影/神山町郷土資料館蔵]。

 ちなみにこの地域では近世まで人々は山のかなり高い位置に屋敷を構えていた。つまり棚田や段畑とともに斜面に暮らした。それが近代の治水・道路建設や学校等の社会インフラの配置に伴って低地に下り、凝集するようになったという。

agawa_jingi この写真は同じ場所の現在の姿。かつて、こうした中山間地域の畑は大半が自給用のイモやムギをつくっていたが、戦後は高所に建材用樹種(杉・檜)、中腹以下には果樹(梅・スダチ等)が、競うように植えられていった。工作者と環境との関係に、貨幣と市場が割って入り、そうして段畑の先行形態(F)とその利用(S)の組み合わせが書き換えられることになった。

 植林された山は水を失うという。低地への家屋の移動も促される。他方で教育・就業環境も激変して、息子・娘たちが町外・県外へ出ていくのも普通になった。

 そして今や、果樹・林業(S)は商売になりにくいため耕作や施業の放棄が増え、それゆえ先人(工作者)がつくり維持してきた段畑(F)も崩壊が進みつつある。近代というプロセスの凄まじさを考えざるをえない。

 先走りすぎた。上に書いたことが事前に分かっていたわけではない。以下ではスタジオの実際の進行に沿って諸々ノートし、備忘録としたい。

まずは8月29日(月)にプレゼミ実施。課題図書は下記のとおり。

[A] テクトニクス×機能・・・建築の躯体・部位が何らかの機能(生産・環境制御etc)をそなえる
 -後藤治ほか『食と建築土木』(LIXIL出版、2013)
 -安藤 邦廣『小屋と倉 干す・仕舞う・守る 木組みのかたち』(建築資料研究社、2010)
[B] テクトニクス×構成・・・テクトニクスが空間の分節や拡がりの編成と連関する
 -山本学治『造型と構造と』(SD選書244、鹿島出版会、2007)
 -山本学治『素材と造形の歴史』(SD選書009、鹿島出版会、1966)
[C]テクトニクス×類型・・・テクトニクスのいくつかの類型とその複合
 -太田邦夫『工匠たちの技と知恵:世界の住まいにみる』(学芸出版社、2007)
[D]テクトニクス×時間・・・地形・構築物などの先行形態と次なる介入とのテクトニックな関係性
 -中谷礼仁宮本佳明ほか 特集「先行デザイン宣言」(『10+1』no.37、2004年12月)

 3〜4人のグループを自由につくり、上記A〜Dのいずれかを選んでレジュメを切り発表。加えて、読書から得られた知見(論理)を応用するために参考となる現代建築の事例を選んで紹介せよ、という難題。多くの班が現代建築の潮流にとらわれて課題図書を置き去りに。これ、たぶん出題が悪かった。むしろヴァナキュラーなテクトニクスにみられる論理をなぞる(復習する)ことができる現代建築を探せ、という感じにすべきだったかな(そもそもよい事例がほんとに少ないとは福島加津也さんの言)。

 実はこのプレゼミ、何とゲスト講師に福島加津也さんをお招きし、馬場兼伸さんも参加されて、なかなかハイブロウ議論になった。福島さんは瀝青会の「〈日本の民家〉再訪」の活動を紹介してくださったが、ほとんど狭義のテクトニクスにふれなかったのが印象的。むしろその建物にまつわる社会的・生産的・信仰的な意味を強調し、いわゆる構法・技術はそれらとの関連において建築の「建築性」あるいは「世界性」「象徴性」のようなものを組み立てる道具立てにすぎないのだと強調されたように思う。というわけで夜の飲み会はそのあたりに議論が集中。(福島さんは美学的判断の重要性を説く。たしかに構法的・技術的判断だけを合理的に走らせる、などということはそもそもあえりない。かといって、建築多元性を、分裂症的・コラージュ的に肯定するやり方もまた福島さんの良しとするところではない。何らかの統合性がなくてはならない。そこに、広義のテクトニクス、あるいは「テクトニックであらんとすること」がアクチュアルな意味を持ってくるのではなかろうか)

 現地合宿は9月4日(日)スタート。サテライトオフィス・コンプレクスに明大理工学部サテライトオフィスを開所し、宿泊先である上分川又の民宿「田中屋」さんにて夕食。以後一週間、合宿最終日前夜のオロナミンCの差し入れに至るまで、田中屋さんは我々のスケジュールの一切をお見通しなのであった。ありがたや(まじめに神山合宿ならイチオシの宿)。

 2日目の9月5日(月)はそぼふる雨のなか神山町内見学ツアー。対象地である阿川の神木(じんぎ)集落もざっと確認。午後は真田純子先生(東京工業大学)と金子玲大さん(上勝町地域おこし協力隊/石積み学校)にレクチャーをしていただく。今回のテーマは、建築分野の人間には(なぜか)とんと馴染みのない石積みなもんだから、謙虚にその道のプロに学ばせていただこうというわけ。真田先生は土木分野で日本の近代都市計画史の研究をなさっているが、実は徳島大学におられた時期に石積みの修復と技能継承の活動をやってこられた(今もやっている)。真田先生は『棚田・段畑の石積み:石積み修復の基礎』という自作テキスト(よい!)に沿って講義をしてくださり、お弟子さんの金子さんは実測方法の講義と野外での実地講習をしてくださった。お二人のおかげで、我々の石積み観察の解像度は700%ほども高まり、翌日以降は自分たちの観察と聞き取りだけでもかなり相乗的に知見をふくらませていくことができるようになったのであった。ありがとうございました!!

 9月6日(火)は、対象エリアの石積みの実測と、加えて3棟の民家の実測を行った。田畑の持主や民家にお住まいの方々への連絡は、神山町役場の高橋成文さんが東京営業から帰られたばかりなのにフットワーク軽く対応してくださる。ありがたい。以後最終日まで、我々の実習に(普通ではあえりない)機動性を与えてくださったのは他ならぬ高橋さんであった。学生たちはといえば、やはり建物に向き合って実測するのは楽しいらしい。ただしモノの組み立てをその基本的な理屈を考えながら見る、測る、描く、という作業がちゃんとできる人は存外少ない。となれば門脇先生の出番というわけで、どこでも滔々たる講義と推理がはじまるのであった。

 9月7日(水)午前中も実測を継続。午後はNPOグリーンバレー理事長・大南信也さんのレクチャーと質疑応答、つづいて神山町長の後藤正和さんにもレクチャーをしていただいた。大南さんからは一連の「神山プロジェクト」の組み立てと行動原理、そして後藤町長からは神山の産業や歴史について学んだ。このあたりで門脇先生は東京帰還。学生たちはこの日までに「えんがわオフィス」「WEEK神山」はじめ、いくつかのサテライトオフィスや移住者のショップなども見学させていただいていた。こうしたインプットを踏まえて、夜はいよいよ提案すべきプログラム(つまり新たなF-S結合をつくる「S」の提案)についてのファーストMTG

 9月8日(木)。石積みの実測はこの日の15時くらいまでで完了。神木集落あたりでは明大の学生が何やら石積みの測量をしているらしいというのはすっかり知れ渡っている。V字谷に男子学生どもの奇声が響き渡る。あとで聞くとスズメバチだという(被害なくてよかった・・)。皆さんご苦労さん。そしてこの日、学生たちが実測するフィールドにふらりと寄ってきたある男性が、我々の眼前にひろがる環境のテクトニックな成り立ちについて決定的に重要かつ高解像度の情報を提供してくださったのだが、このあたりは伊藤さんのFBを参照されたい。あの話は興奮したねえ。

 伊藤暁Facebook 9月8日の記事
 伊藤暁Facebookアルバム「明治大学神山スタジオ2016」

 夜のMTGでは、3班がそれぞれプログラム提案=設計要項の作成に取り組む。2班は方向性が見えた。1班は昏迷MTGには高橋成文さんにも参加いただいたが、高橋さんがあまりに的確に助言くださるのでもう次第に頭が上がらなくなる。なおかつ、方向性見えた2班には、ならば明日はあの地へ行くがよい、あの者に会うがよい、と賢者の導き(というかその筋に連絡してセットしてくださる)。

 9月9日(金)プログラム提案=設計要項作成の作業を継続。C班は鬼籠野の神山町郷土資料館へ取材。ここが思いのほかと言っては失礼なほど面白く、ヒント満載なのであった。昼には川又郵便局長の塩本さんが改修中のご自宅(昭和初期)を見せてくだった(これは知的ヨダレ止まらぬ逸品であった!)。A班は夕方、神山フードハブ・プロジェクトの白桃薫さんのお話をうかがい、勉強させていただき、自分たちの方向性を定める。賢者ありがたや。B班は昏迷深まり・・・いや何とか行けそうだ。

 9月10日(土)はサテライトにて1週間の合宿の報告会(スタジオ中間発表会)を行って12:30頃全日程終了。写真(↓)は阿波踊りのポーズ。中央のホンモノが高橋さん。

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 いやはや、学生たちには折りにふれ吐露していたとおり、このスタジオ、教員もどこへ進むか分からないまま、フィールドを共有し、一緒に競うように学んでいるつもりだったが、多くの方々のご協力とご教示のおかげで対象地の広い意味でのテクトニックな成り立ちを知ることができ、学生たちもよく頑張り、まずまずリアリティある提案(設計要項)ができてきた。続く東京編では、これまで実測+要項作成を行ってきた班のメンバーはそのまま維持し、他の班がつくった要項に対して具体的な建築設計を進めていくことになる。というわけでまだまだ続くよ。4単位とは思えぬタフな授業。多方面に迷惑をおかけしています!(感謝の意) 学生諸君、プレゼミの本、福島さんの言葉を思い出そう。12月には昨年同様、神山町での成果発表会やるよ。

 さて、これ(↓)が今回、神木集落を対象地に選ぶ理由となったブツ。わずかな地形の特徴によってつくられる、「風玉」と呼ばれる極度に強い風の通り道となる5〜6軒の家だけが、こうした石積みの自立壁によって家を守ってきたのだという(伊藤さんのFB参照)。写真のケースでもこのL字の壁に守られる位置にもともと屋敷があったそうだ。

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↓同じ壁を、川を挟んで対岸から見た立面。壁の向こう、中腹までは果樹園、それ以上は杉林(ほぼ放棄)。これは比較的新しい風景であり、1960年頃に遡ればほとんど尾根に至るまで自給的な段畑だった。

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↓下の写真も暴風石垣だが、やはり家がなくなっている(これは2015年12月撮影)。

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 M1およびM2諸君の報告によると、一般的な観察結果としては、田畑の奥行きは概して小さく、石積みの高さは2m内外で大きなばらつきはないという。つまり、石積みの労力と強度から石積み高さに一定の目安があり、そこから平面奥行きが決められていると考えられる。対して屋敷の場合は一定の奥行き(広さ)が必要なので、逆に石積みが5〜6mと非常に高くなることがある。つまり田畑とは逆に、平面から高さが決まっているのだろう。加えて、それらとはまったく異質なこの防風の石積みがあって、これは民家の軒高と風の向きが形態を決めている。いや、ここを選んだのは正解だったなあ。上一宮大粟神社のお導きじゃ。

 ちなみに大粟神社神山町神領字西上角)のご祭神は、町長が紹介してくださったとおり大宜都比売命オオゲツヒメノミコト)。『古事記』に次のようにある。《高天原追放されたスサノオは、空腹を覚えてオオゲツヒメに食物を求め、オオゲツヒメはおもむろに様々な食物をスサノオに与えた。それを不審に思ったスサノオ食事の用意をするオオゲツヒメの様子を覗いてみると、オオゲツヒメは鼻や口、尻から食材を取り出し、それを調理していた。スサノオは、そんな汚い物を食べさせていたのかと怒り、オオゲツヒメを斬り殺してしまった。すると、オオゲツヒメの頭から蚕が生まれ、目から稲が生まれ、耳から粟が生まれ、鼻から小豆が生まれ、陰部から麦が生まれ、尻から大豆が生まれた。》(wikipediaより)・・これもまた、古代に起きた資材再配置の物語なのであろう。

2015/09/14

大学院設計スタジオ2 「神山スタジオ」:9/3プレゼミ+9/8〜12神山合宿(中間報告)

 大学院建築学専攻(生田)の実習「設計スタジオ2」は、2015-16年度の2年にわたり「神山スタジオ」とすることになった。担当教員は、青井哲人(専任准教授/科目幹事)+伊藤暁(兼任講師)がコアだが、今年は園田眞理子(専任教授)先生にも指導いただく。伊藤さんとはSDレビュー2013で知り合い、以後も色々お世話になっているのだが、この授業については青井から伊藤さんにお願いをして兼任講師としてお迎えした。

 神山スタジオ2015年度の主題は、「ヴァナキュラーなもののテクトニクス」。ちょっとタイトルいまいちだったかなという気もするが(いやそんなことない!)、要するに民家とそれを取り巻くヴァナキュラーな環境世界の組み立て(=織り上がり方)を実測を通して観察・分析し、そこに介入する設計方法の今日的な可能性を考えていこうというもの。

 神山町はこんな課題に一定の現実味をもって、なおかつステロタイプに陥らない開放的な自由を失わずに取り組むことのできる稀有なフィールドだ。順調に進む過疎(高齢化率はすでに46%、現在の人口6,000人は2040年には半減の予測)と、多様なタレントのもたらす創発性のレイヤーとが、ともに不思議な明るい包容力をもって共存している。

9月3日:丸一日プレゼミ。履修者と教員との最初の顔合わせは猛烈な勉強と議論。これもSDレビュー2013のひそみにならったもの(入選者の皆さんと塚本由晴さんと青井とで12時間くらいゼミをやったのが本になっている)。履修者19名には以下の4冊を課題図書として事前に指示していた(青井と伊藤さんとで選書)。

 これらを4〜5人1チームで分担して読み、レジュメを切って45分間で発表し、約1時間かけて教員・学生間で不明点を明らかにしつつ展開可能性をさぐるディスカッションを行う。これで、「テクトニクス」「タイポロジー」「コンテクスト」「ミューテーション」の4つを凝縮して学び、これら鍵概念の周囲に広がる様々な言葉とともにいちおう全員で共有したわけだ。よいゼミだった。

 というわけでいよいよ合宿。

9月8日:神山合宿第1日

 前日夜に全メンバーが合宿先のキャンプ場コットンフィールドに集結。教員2名(翌日1名合流)、アシスタント3名(M2)、履修者19名(M1)の計25名。

R9284342 朝8:30に出発して「神山バレーサテライトオフィス・コンプレクス」へ。これは町の施設だが、グリーンバレーが運営。諸方面の協力のおかげで、今回、明治大学理工学部としてこのシェアオフィスにサテライトオフィスを置き、そこでの活動について徳島県から補助を頂くかたちをとることができた。この広々とした24時間使用可能なオフィスが我々のスタジオとなったのである。さっそく、新聞各社とTVの取材が入った(おかげで翌日以降、明大といえば神山ではちょっと知られた存在になった)。

 1日目は翌日以降実測させていただく民家4軒への挨拶と下見。その間に伊藤さんのお仕事である「えんがわオフィス」や「WEEK神山」(近作しかも傑作!)などを見学させていただいた。全行程を全員で共有。

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 夜はコットンフィールドにてバーベキュー。いまや全国に名を馳せるグリーンバレーの理事長大南信也さんや町役場の高橋さん、そして実測させていただく民家にお住まいの方々が来てくださり盛り上がる。

 そして課題発表。「神山町×図書館」。神山のユニークきわまりない動きのほとんどすべては民間ベースで、つまりビジネス(=ライフスタイル)の新しい展開が創発的につくり出してきたものであったが、過疎地における公共サーヴィスの維持といった問題は実は手付かず。そこでこれまでの動きを捉えつつ、いまだ神山町がもったことのない公共施設である図書館をもし整備するとしたらどのようなかたちがありうるのか、そのスキーム提案する。町域は広く、高齢化が進む以上、その図書館分散型となるだろう。ならば、その具体的なケーススタディとして実測対象の民家(とその環境)を図書館(の一部)に再編するための建築的介入の方法を提案する    こういった課題である。さっそく4つの班が編成され、翌日以降は班別に調査・提案・設計を進めていくことに。

9月9日:神山合宿第2日

 心配された台風四国からはそれた(が、東海関東地方等に甚大な被害をもたらしたことを私たちも次第に報道で知ることになった)。学生たちは班別に朝から町内に散り、民家の実測調査。

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↑民家A:農家(寺田さん宅)茅葺き屋根、伝統的な型(寺田さんの手で改修中)

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↑民家B:農家(本橋さん宅)瓦葺き屋根、やや近代的な型(右の写真は納屋+車庫)

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↑民家C:町屋(山口さん宅)川沿い斜面地に立体的に展開する型

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↑民家D:町屋(岩丸さん宅)長屋建ての借家の型

 いずれもタイポロジーの観点でみれば町内に類例をたくさん持っているのがポイント。学生たちは7月に江戸東京たてもの園で実測練習会は行ったものの経験不足だろうと思っていたが、実測図は全般に水準に達しているし、とてもよく描けているものも少なくない。誤りも指摘すればすぐ理解する。また実測に没頭しつつも建物の構造、増築プロセスの読み取りに格闘。そのためには、建物そのものの読解と、他例を含めたタイポロジカルな合理性にもとづく判断が必要と示唆。

 建物・環境の成り立ちにもっと迫りたいという学生たちの欲求は3日目以降もほとんど止むことはなかった。

 この日は役場の高橋さんが教員・アシスタントの6名に実家を案内してくださる。堂々たる構えの農家だ。明後日に実測させていただくことに。

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9月10日:神山合宿第3日

 3日目は、ほぼ実測を終えた学生たちの頭に、こんどは提案に向けた背景的知識をインプットする日。

 10:00〜12:10 大南信也氏(グリーンバレー理事長)レクチャー。軽妙な語り口でずしんと響く素晴らしいレクチャーをしてくださった。人間の専門性・関係性・寛容性・ネットワークや制度突破のスキルといったソフトウェアを初期の様々な試行錯誤を通して構築。今日ではこうしたソフトウェアが次々に創発的に小さな出来事や事業を増殖させ、さらに新たな人間を巻き込んでいくような段階に至っている。情緒・感傷を含まないドライで幅広い視野を持ち、その視野のなかに描かれる無数の潜在的可能性のどれかが次々に実を結んで新たなパスをつくり出していくのを楽しんでおられる。弧を広げ百本の垂線(オプション)を描き、それらをアミダクジ状に結合したり横断したりしながら進み、最終的に円の中心(ゴール)に至る、というイメージには恐るべき喚起力がある。

 13:30〜14:45 駒形良介氏(神山町教育委員会)レクチャー。神山町の人口や公共施設等の概要と、地方図書館の可能性と事例、そしてご自身の神山町図書館の「空想」についてお話をうかがう。過疎化の進む中山間地域における図書館の展開可能性とその困難など、貴重な視点をいただいた。

 いずれのレクチャーでも学生たちはよい質問をぶつけ、豊富なヒントを得たはず・・・だが、学生たちは再びフィールドに向かう。

R9284485 夜のミーティング(@サテライト)は班別に教員とのディスカッションとした。どの班も、サイトとアクターの強い個性に引きずられ、ナラティブプログラムに直訳したというべき提案が目立つ。上位の階層(ジェネラルなレベル)から落としていく発想が弱い。ひとつは神山町×図書館という課題をどう解くかのスキームの検討、もうひとつは民家(と環境)のタイポロジーへの観点がいずれも甘いのである。「テクトニクス」「タイポロジー」「コンテクスト」「ミューテーション」の4語を思い出させる。要は一般性と特殊性、全体スキームとケース・スタディ、さらには観察された知見の反復・延長とその変異・変形といった、異なるレベルを立体的につかまえることができていない。

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3日目の食事は農村環境改善センターの調理実習室にて自炊。生姜焼きと味噌汁、うまかった。

9月11日:神山合宿第4日

 学生たちは今日も朝からフィールドに散った。よほど現場が楽しいのだろうか。焦りながらも実測やらタイポロジー調査やらにズブズブはまっている。まあ面白いものは面白いのだから仕方がない。教員は午前中にHidden Library、寄井座、寄井長屋を見学。

R9284516 13:00よりアシスタントのM2女子3名が高橋邸の実測に向かう。教員はサテライトにて班別のディスカッション。学生たちはタイムテーブルに従ってフィールドから戻ってくる。提案内容についていえば、依然として敷地と住人のナラティブプログラム混同している班が多い。明日の中間講評会が心配だが、しかし皆よい顔をしてるなー。

9月12日:神山合宿第5日(合宿最終日)

10:00、いよいよ神山スタジオ中間講評会。合宿編の成果が問われる。1) 神山町×図書館プログラム提案(鍵を握るポイントと説得的なスキーム)、2) そのケーススタディとしての実測対象民家への建築提案、3) そこにフィールドワークから得られたことがどう絡むか。これらの要点をはっきり説明するように指示。

 県・町の方々の出席および新聞・TVの取材あり。寝ていない学生も多いが皆しっかり発表した。伊藤さんと青井とでコメント。以下僕なりの要約。

A班:マイクロライブラリー分散型。全体スキームは視野の中心には置いていないが今後検討すること。農家の建物構成のタイポロジカルなリサーチは優れているので、そこにプログラムを被せて変異させる検討を多数行う必要あり。多数の案を練る(走らせてみる)ことで進むべき道が見えるはず。

B班:階層ネットワーク型。県立図書館ニッチ分野を肥大させたスペシフィックな図書館を考え、中心都市と中山間地域とで公共施設経営を連携・分担する構想は面白い。このスキームの検討から説得的なプログラムを導くことが重要。家屋の縁から着想されたアノニマスな廻廊が複数の棟を巻きつけるようにつなぐ方法も明快。環境を広く意識するとさらによくなる。

C班:コミュニティ型。町中心部から離れた上分地区の特性に着目。人口に見合ったスペックを検討してプログラム(仕様)を定めること。テクトニクス、タイポロジー、コンテクストのリサーチはよくできているので、論理的なプログラムをそれらに合理的に重ねたときに生じる緊張を大切にすること。

D班:センター展開型:寄井という小中学校の立地する町中心部の立地であるためセンター(ゲート)と位置づけるが規模貧弱。ゲートとしての位置付けは町民には不要だし、来町者からすればゲートから各地区図書館に行く動機が不明で、全体スキームの検討が弱い。長屋は断面のレイヤー状構成が特徴的であり、これを広い視野で捉え、活かしきる設計を進めるべき。方向性はいくつかありうるので複数案のスタディを。

M2(アシスタント):ツーリズム型。町内に存在する業界団体やその他の民間団体が行政と連携して図書館ツーリズム拠点として展開するといった発想。ここまではドライだが、そこから先は徹底的に利用者に物語を提供する設計にシフトするというのも興味深い。

R9284523 講評終了後、県・町の方々からコメントいただき、総評を終えて、12:20に解散。合宿(神山スタジオ前半戦)終了。夕方まで残る伊藤さんに手を振ってサテライトを出発。レンタカー返却後はそれぞれ家路もしくは旅路についた。

 まずは大変楽しく、有意義な合宿だった。実測をさせていただいた方々、町の方、県の方、グリーンバレーの大南さん、宿泊先のコットンフィールドさんはじめ実に多くの方々にお世話になり、感謝の言葉もないが、こうした諸関係を少なくとも数日かけて経験しないかぎり、神山で起こっている一見不思議なことどものリアリティはつかめないだろう。かくいう私も、いまだにすべてが腑に落ちたわけではないが、その不思議さはそのままにかの地のリアリティと我々とがすでに互いを巻き込む関係にあることは事実であり、その関係のなかからでなければ神山は理解できないのだろういうことが少し分かってきた。

 神山と徳島のみなさん、伊藤さん、アシスタントのみなさん、ありがとう。

 学生の皆さん、後半の設計編もごりごり楽しくがんばっていきましょう。

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2010/08/13

デザインWS台南2010・結

8月5〜10日のスタジオ(デザイン・ワークショップ)が無事に終了しました。写真は最終講評会の様子。会場は対象地のなかにある台湾文学館・文化財保存研究中心(旧・台南州庁舎)の一室。台南市政府都市発展局の方、対象地および周辺地区の里長(町内会長)さん、社区(コミュニティ)のリーダーの方々、建築家の張瑪龍さん、山本俊哉先生(明治大学)といった方々がゲスト・クリティックとして参加くださり、活発な意見交換もできました。成功大学・南華大学・明治大学の3校の学生たちもよく頑張り、全体として非常に有意義なワークショップになったのではないかと思います。張瑪龍さんが言っていたように、短期間でしたがみんな台湾のダウンタウンに関して「間違っていない理解」に達し、「間違っていない提案」を導いたと思います。この表現を是非ポジティブに捉えてください。何が足りなかったかは、参加者がそれぞれにきちんとリストアップして反芻しておいてほしい。実は南華大学のメンバーとはその後の調査でも接触がありまして昨夜は彼らと飲みました。彼らも生き生きとしてましたよ。皆さんお疲れさま。

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そうそう、最終講評会当日はこんなサプライズもありました。

この間、台南市内で精力的なサーヴェイを展開していた別働隊が、突如ワークショップの懇親会場に出現し、プレゼンをはじめました(まあそんなに劇的な登場でもなかったのですが)。真剣に耳を傾けてくださった方、パネルに見入っていた台湾の学生さんたち、本当にありがとうございました。こっちもお疲れ。帰国したらカッチリまとめ直し、テキスト化してください。

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2010/08/09

デザインWS台南2010・続続

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7日午後に行われた中間報告会の様子です。建築家の張瑪龍さんがゲスト・クリティックとして参加。学生の意図を最大限に受け取めつつ、ゆっくり、段階的に、批判的かつ建設的な助言をされていく講評は見事のひとことでした。張さんありがとうございました。

中間発表後は息抜きに旧府城の西、五條港神農街へ学生を連れ出す。今回のスタジオのカウンターパートである成功大学の陳世明先生が木造の街屋(町家)が軒を揃える町並みと、5つの人工運河に商業ギルドが展開するかつての風景について解説してくださる。もうひとつの参加校・南華大学の陳正哲先生も一緒。海安路にて参加学生と教員の懇親会。(僕は日付かわって宿へ戻り“別働隊”から中間報告を受ける。)

8日は午前中に成功大学都市計画学科との合同ワークショップを開催中のワシントン大学のメンバーとの交流会。その後、各スタジオを廻って昨日の中間報告会を踏まえつつ基本的なダイレクションのぶれがないように指導。さらに夕方から11時まで再び各スタジオを廻る。模型をつくりアクソメやパースを描くといった三次元的なチェックとデザインをささっとやらないと事が進まないのに、とくに明治側の手が動かないのには苛立つ    と言いつつも大いに期待しています。

個人的にはこういう短期決戦のデザインワークショップは初めてですし、英語で指導・講評するのはしんどいですが、いや面白い。学生たちも頑張っています。

2010/08/07

デザインWS台南2010・続

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2日目のピンナップ・レヴューの様子。サーヴェイがかなり進んできています。課題は台南市のダウンタウンのリジェネレーション。サブテーマは下記の3種類(タイトルとキーワード)で、それぞれ2グループずつ、計6つの台・日混成チームが取り組んでいます。上の写真は trail のグループ。発表も講評ももちろん英語。昨日のレヴューは4時間ほどやりました。今日は中間報告会の予定。

1) trail: networking the alleys through blocks, micro open spaces, small buildings along the alleys

2) area: re-editing the cultural asset zone, designing complex facilities and open spaces,

3) prototype: proposing the next generation of urban building, outside and inside the blocks



ところで台南では別のグループも活動しているようです。

何だかすごく楽しげです。

彼らのブログへのリンク →その1その2その3その4

2010/08/05

台南でデザイン・ワークショップはじまる:明治大学大学院設計スタジオ3 台南2010 + 成功大学・南華大学

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8月3日、大学院生を連れて台南に到着。ホスト校・国立成功大学の宿舎に。今回の参加大学は、成功大学・南華大学・明治大学の3校、約35名。4日、対象地区を歩き、6チームに分かれる。教員も全員揃った。明日5日がオープニングで10日に成果発表会が予定されている。随時報告します。

2010/07/13

建築設計2もいよいよ佳境です。

2年生前期の建築設計2。第2課題は明治大学生田キャンパス正門横のコンテクストを読み解き、ギャラリーを中心とするプログラムをそこに展開して学生の集まる活気あふれる場を創出せよ、という課題。8人の教員(専任2名・非常勤6名)がそれぞれ二十数名の学生をもつ体制で指導していて、今日はスタジオ別の最終講評会。僕のスタジオでは先日の新建築住宅特集の取材でお世話になった峯田建さん(スタジオ・アーキファーム)にゲスト・クリティックをお願いした。振り返ってみるとかなり難易度の高い課題で(僕がつくったので若干反省中)、講師の先生方は張り切っておられたが、2年生にはやはり厳しかったかもしれない。でも皆かなり頑張っていると思う。峯田さんには的確なコメントをたくさんいただき、たぶん学生以上に僕が勉強になった。学生たちはきっと来週の提出までにきっともう一歩ディベロップしてくれると確信してるぞ。終了後は8人の教員とゲストの方々が生田駅前の居酒屋で盛り上がった。講師やゲストをお願いした方々がお互いに様々な関係でつながっているのに驚く。僕は明治3年目だけれど、今年の建築設計2はほんとに楽しい。講師の先生方に感謝。

2010/03/29

国際デザインスタジオの準備のため台南に来ています。

P3301050*写真は成功大学キャンパス。すばらしー。

3月29日。明治大学大学院建築学専攻の設計スタジオ3(海外スタジオ)の準備会議・対象地調査のため、教員6名で台南に来ています。今日は朝4:30起床。9:40成田発の便にて台北(桃園空港)。高鉄(台湾新幹線)にて台南。ホテルチェックイン後、台湾都市の断片的レクチャーをしながら街を散歩。カウンターパートの都市計画系の先生方と打合せ+会食。海南路を歩いた後ホテルに戻る。


P330105230日は陳世明先生に1日お付き合いいただく。まず孔廟文化園区とその周辺の巷道(路地)ネットワークを歩く。『彰化』で考えた都市組織の二重性とそれを埋め合わせていく微分的あるいは日常的ですらある時間のありようを台南でもあらためて実感。同行の先生方にも台湾都市の面白さが伝わる(だって面白いですもんね)。いろいろテーマが見えてくる。成功大学キャンパスへ移動し、大学会館にて建築系の先生方と食事。充実したキャンパス施設や設計実習風景を見学させていただく。つづいて五條港エリアへ移動し、まちづくり組織の理事長さん宅を訪問。夜は台南庶民料理をいただく。きわめて濃密な調査と意見交換ができた1日だった。

31日朝。これから帰国の途に着きます(→日付変わる前に帰宅しました)。ご協力いただいた台南の皆様に心より感謝します(!)