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a_matsumotoの日々徒然

2015-03-13

ブランドとマーケティングの狭間で――VAIOスマホは何を間違えたのか?

ほぼ半年ぶりの更新です。ジャーナリストブロガーへの道は遠く険しいものがあります。

さて、昨日すっかり炎上してしまいましたが、当日の記者会見、その後行われたニコ生でも(司会を務められた石野さんはすごく頑張っておられましたが)その本質は明らかになってなかったと思いましたので、簡単に。

記者会見の時、「ど真ん中を狙った」として示された図がこれでした。(週アスPLUSさんのページから引用)

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出典:『VAIO Phone VA-10J』発表! 発売は3月20日 VAIOスマホ発表会 リアルタイム更新【更新終了】 - 週アスPLUS http://weekly.ascii.jp/elem/000/000/313/313973/

この構図そのものに異論は少ないはずですし、MVNO事業者としての日本通信がこのカテゴリに製品が、それも日本メーカーの製品が欲しかったことは非常に良く分かります。しかし、果たして新生VAIOとしてはどうであったか?

ここでこの図を切り出して、横向きにしてみましょう。

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その上で、マーケティングの世界で頻繁に引き合いに出される例の有名なキャズム理論の図を見てください。(すみません、ちょっと及川さんのブログから孫引き)

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出典:はてなFirefox濃度が高いという仮説 - Nothing ventured, nothing gained. http://takoratta.hatenablog.com/entry/20060619/1150676854

で、上の図と下の図を頭の中で重ねあわせてください。

いかがでしょう?日本通信さんが示した図はあくまでSIMフリー市場を示しているので、微妙にまた切り口が異なるのですが、彼らが考えるストライクゾーン=マジョリティを狙って放った球であることは良く分かります。

一方、VAIO社が「ジムからガンダムへ」と究極を目指して開発されたVAIO Zはまさに、イノベーターアーリーアダプターを狙い撃ったものでした。私自身もいまこの記事をZで書いていますが、キータッチの反応も、各種操作の応答速度も、筐体の剛性も何もかも素晴らしいと思います。

Appleマーケティングでもよく指摘されるように、イノベーターアーリーアダプター層が製品を熱心に支持して、あとに続くマジョリティ層に「布教」するからこそ、製品としてのヒットが生まれます。(もちろんマジョリティ層に対する「安心感」の演出は別途必要です=Apple CareやGenius Bar等)デジタル時代にあって、お店の前にあれだけ行列をさせるのも、その構図をよく理解しているからと言えるでしょう。

翻ってVAIOは、改めてこの層へのアピールの第一弾が(おそらく)成功したばかりです。そのことをもって、凡庸なスマホVAIOのロゴを冠したからといって、イノベーターアーリーアダプター層が熱心に布教するはずもありません。むしろ私も含めて彼らはそっぽを向き、マジョリティ層も、「なんだか良い評判があまり聞こえてこないな」という反応しかしようがなくなります。VAIOと名乗った途端に、比較対象はいわゆる格安エントリー機ではなく、販売単価が高いことでも注目*1を集めるハイエンドVAIO PCが比較対象になるのです。(この点には別の商機もあると思いますが、それは今は置いておきます)

このVAIOスマホ、1月にはこのような報道もありました。例の「箱だけ会見」のときですね。

参考:日本通信VAIOスマホのパッケージを初公開。2月の発売に向け準備は順調 - PC Watch http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20150130_686152.html

これ良く読むと、「設計変更を余儀なくされ」という話のあとに、日本通信としての業績見通しが示されています。おそらくこのあたりがターニングポイントであったのでしょう。

このディール、日本通信としてはあまり失うものがありません。日本の著名メーカーの名を冠したミッドレンジのスマホは、確かに彼らにとってのストライクゾーンど真ん中であったでしょう。「日本メーカー、あのVAIO日本通信と協業した。製品単価も十分に確保している、だから他のメーカーも参加して欲しい」といった趣旨の発言がニコ生でもありました。

しかしVAIO社にとってはどうでしょうか?会見後の囲みでは「これからの取り組みにも注目して欲しい」と苦しい回答が続きましたが、率直にいって、自らのブランド価値を理解していたのか、それをどうすれば育んで行くことができるのか、スマホの分野において本気で考え取り組んでいたのか、大きな疑問が残ります。

ELUGAと変わらない端末を選択せざるを得ないなら、VAIOのブランドは冠せない、ODMになるのはやむを得ないにしても、ブランドの名にふさわしい価値を備えた端末の選定や設計に時間を掛けるべきだ――そう主張できる立場にあったのは、VAIO社の他ありません。あるいは、VAIOのブランドを冠さず、他のブランドを日本通信と協力して仕立て衣装としてまとわせる、といった別の選択肢もあったはずです。

独立して、いろいろと厳しい局面があるのは重々想像ができるのですが、それでもイノベーターアーリーアダプター層とブランドとの信頼関係を大切にして欲しかった。がっかりされるうちが花です。次の一手で真価が問われると思います。

キャズム

キャズム

#2015/03/13 19:51 少し文章を直して自分のTweetを追加しました。

*1VAIO Z、13型ノートで断トツの平均単価に 〜量販店での販売開始も、数量を追わない姿勢は変わらず - PC Watch http://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/20150310_691995.html

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