a_sue’s diary

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『宇宙暮らしのススメ』 野田篤司 あさりよしとお 学習研究社

買ったのはここ
さくっと読了。興味深い。
宇宙ってどんなところか、宇宙空間で起きる事象の話、そして人類が宇宙に出て行くべきだという話、目指すべきは小惑星という話など、ご本人のブログに時々書かれていたことを整理発展させた内容ですね。
マツドサイエンティスト・研究日誌


宇宙についての知識はそれなりに持ち合わせていたつもりだったけど、この本を読んでいて初めて、宇宙機で上に上がったときに壁の向こうが真空の空間である恐ろしさを実感した気がする。どこを読んでてそう感じたか、読了日から時間がたっちゃったので(これを書いているのは7/25)忘れたけど。
第二章の「人工衛星はブレーキをかけると、より前に進む」という話は知らなかった。ちょうど「機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編」を見たこともあって、衛星軌道上での戦いにこの現象がどう影響するかきちんと考証すると面白いかもと思っちゃったりして。劇場版ではカットされてるけど、TVシリーズの時には衛星軌道に上がったホワイトベースを出てうしろから追ってくる敵に向かって加速しているときに「スピードを上げすぎると地球に落ちるから気をつけてください」と言うセリフを、それ以上の説明なしに言ってたのが思い出されますね。これ子供にはわからんだろうと思いましたよ。ひょっとしてあのシーンは、後ろに向かわずに前に向かって加速して、その結果として高い軌道に移って後ろにいる敵のとこまで来てから減速して軌道を合わせるというのが正解だったのかも。いや、TVでそこまでやられるとさすがについて行けないわ。


で、第三章ですよ。地球上にはいずれ住みきれなくなるから宇宙に出て行くべき。地球を出てどこに行くか。他の恒星系の地球型惑星に出て行くのはまだずっと先の話。だからまず太陽系の中で考える。月や火星に行くことのデメリット。月には人間が生活していくための水がなく、火星はそこを拠点に宇宙に出るには強力なロケットが必要。要するに重力の井戸の底である地球からせっかく上に出たのに、なぜ別の重力の井戸の底に降りるのかって話ですね。
そこで浮上してくるターゲットが小惑星小惑星に穴を掘って暮らすメリットを説く。そこからなら蒸気ロケットで他の小惑星にわたれる。太陽からの距離(高さ)が同じくらいのところに小惑星がたくさんあるから、そこを渡るエネルギーはそんなに大きくないと。
そこでの暮らしの様子を描いてあって、ある小惑星である程度の基盤を築いたら別の小惑星に移民する。そうやって太陽系全体に広がっていく。ちょっと幌馬車隊で西部を目指したアメリカの西部開拓時代を思い出すような話。実際それと同じイメージなのだろうなぁ。
宇宙に住んで、野田さんはいろいろやりたいことがある。でも、他の人はどうなんだろう。宇宙でやりたいことがある人ばかりがまず小惑星にいって、生活環境の基盤を作る。食糧を自給する農場を作り、工場を作って工業製品を製造する。その前に鉱物資源を精錬する工場からか。そういう作業を分担しながら、自由な時間にやりたかった研究をする。最初に行く人たちはモチベーションが高いからいいのかな。で、そこで生まれてしまったらそういうもんだと思うから大丈夫なんだろか。それがいやだと思っても逃げ場はないわけだけど。
最初に始める時点で、ある程度の人数は必要だし、ある程度の設備も必要。それを小惑星まで送り込むハードルは低くないし、定期便を送れるとも思えないから、最初に送る物資の量は相当なものじゃなかろうか。現在の技術の延長で可能とは言っても、まだまだ大変そうだ。
そして何よりも、小惑星に住むと、外は空気がない宇宙なのだ。上で書いたように、この年になって初めてその状況が怖いと感じちゃったので、ちょっといやかも。普通の人間にとっては、移民する先は地球と同じような環境であって欲しい。たとえそれが合理性を欠く判断であっても、重力の井戸の底の方が落ち着くんだ。
そんなことを思わない世代が出てきたときに初めて小惑星移民が可能になるのかも知れない。
といいながら、高速な通信回線さえ確保されていれば、どこに住んでても普段の生活はあまり変わらなかったりして。


というような、宇宙移民についてかなり具体的なイメージを考えさせてもらえて面白かった。

宇宙暮らしのススメ

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