a_sue’s diary

a_sue の日記 はてなブログ版

『詩羽(しいは)のいる街』 山本弘 角川文庫 角川書店

買ったのはここ
持ってる人と必要としてる人の間をつなぐ存在の話。
僕は基本的に物を作る立場の人間なので、金融系の金を転がして収入を得る人たちに対して違和感があるし、有り体に言えば「何も生み出さないくせに」という気持ちがある。さらにいえば「何も生み出さないくせに製造業より高い給料もらいやがって」という気持ちが強くある。
で、この作品のヒロインである詩羽は、お金を介さずに人が生み出した価値を必要としてる人に仲介することで生活してる。
それが本だったり、農作物だったり、賞味期限切れのものだったり、もっと違うものだったりするのだけど。
それって金融と何が違うんだろう。
必要としてる人のところにあまってるひとのものを供給する。
あまってる人の金を、金が必要な人に供給する。それが金融。
金じゃないのがこの本の世界。
と考えると、実はすごく普通なのだよね。
でも、この本の世界では、使い切れないほどのものを所有することは出来ないし、そんなことしても何の意味もない。金融の世界では使いきれないほどの金を手に入れる人がいる。そのあたりにほんとの違いがあるのだろうな。きちんと分析できないけど。
今の日本は、戦後アメリカから入ってきた価値観が正義になっちゃってるところにひずみがある。日本本来の価値観はそれと違うんだもの。
それはさておき、作中で登場人物に作者の自説を語らせるのは、それに賛成でもあまり気持ちよくないと思う。

詩羽のいる街 (角川文庫)

詩羽のいる街 (角川文庫)