Hatena::ブログ(Diary)

開発日記 Technolog-ist このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-02-28

「学問」という産業

大学の存在意義を考えるの続きと言ってもいい話であるが、これは追記ではなく独立したエントリとして述べておきたかったので書く。


なかの人から見た大学と大学院がクソな理由

教員をしていると常々思いますが、本当の意味で社会から必要とされていない研究は研究とは呼べません。その意味で全ての学術研究は何らかの社会的意義があり、社会的なコスト負担を伴って推進されるべきものです。ただし、その性質上そのリターンの回収が困難なので税金を使って基礎研究をやる必要がある。つまり公共財的な性質を持っているというだけの話ではないかと最近思うようになりました。

ものすごく共感。これはその通りであると思う。


その点では、大学の教員も立派な普通の職業であり、大学も1つの産業セクターであることは間違いないです。そのために、少なくとも自分が価値あると思っている研究を推進するために、世の中の大学教員は(自分のポストも含めて)必要な資源(金、人、もの)をかき集めて成果を出すために必死になっているのです。公的な資金を使う事が多いというだけで、本質的な構造はビジネスと変わってないのです。その意味では、博士課程は研究者のための職業予備校みたいなものです(余談1)。

大学という場所が、あるいは研究をするという行為がひとつの産業セクターになるというのは非常に納得できる話だし、将来もそうであって欲しいと思う。しかし、「博士課程は研究者のための職業予備校みたいなものです」というのはいただけない。“研究者のための職業予備校”は修士課程であるべきで、博士課程の学生は一人前の研究員であるべきである。博士課程には、年齢でいうと(浪人も留年もなしで)25〜27歳の人が所属しており、同世代で民間企業に就職した人は早ければ昇進しているかもしれない。そんな中で“就職予備校”に通うというのはモチベーションが続かないし、事実、博士課程の不人気はそこに起因しているとも言える。


そのように書くとまるで私が学問を貶めているかのように思うかもしれませんが、もちろん人類の利用できる知識、認識を増加させる学問という行為はかけがえのないもので、かつ人間にとって根源的な欲求であると思っています。そのおかげで貧困をはじめとした様々な社会的問題を解決してきたのが人間の歴史だと思っています。


しかし、その一方で、何が何でも学問こそが唯一の価値であり、その他の様々な産業セクターより優れているという考え方は私は持ちません。小売業も金融業もそれぞれ社会で固有の価値を持っています。それと同じようなレベルの産業セクターだと思っています。もっとも、このような認識を一般の大学人は認めにくいでしょう。それはどの産業セクターも同じだと思いますが、自分たちのやっていることは他と比較して特別な価値があると考えているものです。

だいたい納得。でも、やっぱり「学問」という産業セクターは特殊だと思う。特殊だからこそ、これまで僕はすべてのエントリで「ビジネスゲーム」と「サイエンスゲーム」そ区別してきた。両者は圧倒的にルールが違うのだ。むしろ、税金を使って運営されているという点において、行政のほうがルールが似ている*1


問題点は…

「学問」という産業セクターにおける問題点は以下だと思う。

(1) 修士課程がビジネスとサイエンスで揺れ動く人のためのモラトリアムとなっており、「研究職のための就職予備校」としての機能を果たしていない。

(2) 博士課程が“学生”扱いであり、社会的な生活をおくるに足る給与が支払われない。

(3) そもそも国民にとって大学は教育機関であり、「大学が研究機関である」という意識が低い。

(4) (3)の結果、「研究機関としての大学」に税金が投じられることに対する抵抗がある。国民にとっても、国民の票を獲得したい議員にとっても。*2


安倍内閣福田内閣が短命に終わり、麻生内閣も虫の息と言わざるを得ない昨今の政界の状況を見ても、短期的な結果を求めすぎるあまり、長期的な施策を落ち着いてうつことができなくなっているように感じる。

経済政策に関してはよくわからないので墓穴を掘らないためにも突っ込んだ言及は控えるが、少なくとも科学技術研究に関しては、今年納めた税金でおこなった研究の成果が来年役に立つことなんてないわけだし、将来への投資として、もっと落ち着いて研究できる仕組みを整備して欲しいものである。


(注)

偉そうに書きましたが、筆者は博士号・修士号はおろか、学士号すら未修得です。

「若造が偉そうに言ってんじゃねえよ!」という方はぜひコメント、トラバをいただければ幸いです。

*1文部科学省行政ゲームのプレイヤーであることを考えると、サイエンス行政ゲームの一部だと考えることもできるが…

*2:聞いた話だが、日本の大学は建物や設備などにお金が使われるが、海外では修士・博士課程の研究員に対する人件費として多くのお金が使われるらしい。建物や設備は目に見えるし、わかりやすいからだろうか。

投稿したコメントは管理者が承認するまで公開されません。

スパム対策のためのダミーです。もし見えても何も入力しないでください
ゲスト


画像認証

トラックバック - http://d.hatena.ne.jp/a_suenami/20090228/1235833974