商業施設調査―イオンモール秋田ー その1:店舗の概要と都市の中の位置づけ

こんにちは。安部井です。

先週ビザの申請を代行業者に頼みました。順調に行けば来週半ばには手元にビザ付きのパスポートが届く予定です。無事取れることを祈るのみです。

さて、商業施設の調査ですが、私は地元にある『イオンモール秋田』について分析し、報告していきたいと思います。1回目の今回は店舗の概要、及び都市の中の位置づけについて考察しました。



1.『イオンモール秋田』の概要
イオンモール秋田』は秋田新都心開発整備事業の中核商業施設として秋田県秋田市御所野の「御所野ニュータウン」内に所在する秋田県最大規模のショッピングセンターです。以下に店舗の概要をまとめました。

概要
名称:イオンモール秋田
所在地:〒010-1413 秋田県秋田市御所野地蔵田1丁目1番1号
開業日:1993年9月10日
施設所有者:イオンモール株式会社
施設管理者:イオンモール株式会社 営業本部 東日本営繕部
敷地面積:133,000㎡
商業施設面積:67,000㎡
中核店舗:イオン御所野店
店舗数:AEONと171の専門店
営業時間:店舗により異なる
駐車台数:3,800台
最寄駅:JR四ツ小屋駅(徒歩10分)
最寄I.C:秋田自動車道 秋田南I.C(車で5分) 日本海東北自動車道 秋田空港I.C(車で15分)



2.都市の中での建物の位置づけ

2-1.秋田市中心市街地と『イオンモール秋田』の関係

イオンモール秋田』は秋田市の郊外「御所野ニュータウン」の一角にあります。1997年に、秋田県で最初につくられたイオンモールです。
「御所野ニュータウン」に『イオンモール秋田』ができた経緯について説明します。
1990年代、秋田市では2000年代の市の人口を40万人と構想していました。この人口増の受け皿がニュータウンの建設という形で望まれ、その候補地として御所野に白羽の矢が立ちました。御所野は当時建設が進められていた秋田自動車道秋田市の玄関口の予定となる地域でもあり、この交通の便のよさから県と市によって工業・流通の新たな拠点となる秋田テクノポリスが計画され、その中核として職住近接型のニュータウン「御所野ニュータウン」が整備されるに至りました。ニュータウンには大規模な商業用地が誘致され、イオン興産(現在のイオンモール)が出店を決めました。1993年、「御所野ニュータウン」の中心に『イオン秋田ショッピングセンター』(現在の『イオンモール秋田』)が開業し、それ以降、秋田市の新たな商業中心として機能し始めました。2006年には隣接して『フレスポ御所野』もオープンし、現在の御所野地区は巨大な商業集積となっています。

一方、『イオン秋田ショッピングセンター』の開業によって都市の構造も次第に変化していきました。特に大きな変化は、1990年代初頭から衰退が始まっていた秋田市中心市街地の空洞化が急速に進んだことです。当時、秋田県最大の売り場面積をもっていた『木内デパート』の縮小や、『セントラルデパート』の閉店、2009年には秋田駅前の一等地にあった『イトーヨーカドー秋田店』が閉店しました。

ちょっと気になったので、秋田駅前の公示地価の推移がどうなっているのか見てみました。下図は、秋田駅前の一等地(『イトーヨーカドー秋田店』があった土地)の公示価格の推移を示したものです。秋田駅前の土地は『イオンモール秋田』が開業した1993年以降下がり始め、18年連続で下落傾向にあることがわかりました。18年間の公示価格の下落率は-0.869%にも達し、地価差額は-1,702,000(円/㎡)になりました。『イオンモール秋田』の開業と秋田市中心市街地の価値が低下したこととの相関が示唆されます。


   


2-2.なぜ「御所野ニュータウン」に建てたのか

イオンが大規模ショッピングセンターを建てる立地として望ましいのは、①人口が集積している都市の郊外で、且つ、②交通の便が良いところではないかと思います。

①の理由は、商圏人口が多い方がより儲けられることと、郊外は土地が安いので、広大な敷地を必要とするイオンモールにとって採算を取り易いからです。
②の理由は、イオンが車の利用客をターゲットにしているからです。すなわち、幹線道路などの交通量の多い道路に近接しているほうが客を取り込み易いからです。

「御所野ニュータウン」は秋田市街から約10km離れた郊外にあります。また、秋田市街と秋田空港の中間地点に位置しています。秋田自動車道秋田南I.Cにも近接し、交通の便がとてもよい場所です。イオンがこの場所に出店を決めたのは、御所野の地理的特徴とイオン側の望む地理的な条件が合致したからではないかと思います。



3.交通・インフラについて

イオンモール秋田』は、秋田市周辺のみならず、秋田県全域や山形県庄内地方からも来客があり、商圏が広域であることが特徴です。したがって、ここを訪れる人の大多数が車を利用します。しかし、周辺道路が渋滞することは滅多にありません。その理由として考えられることをいくつか挙げたいと思います。

3-1.各方面へのアクセスルートが分散している

下図は『イオンモール秋田』から各方面へのアクセスのルートを示したものです。能代や大館といった秋田県北部の地域から訪れる人は、主に①のルート(秋田自動車道「秋田南IC」→国道13号線ニュータウン道路)を利用します。大仙や横手といった秋田県南の地域から訪れる人は、主に②のルート(秋田自動車道「秋田南IC」→国道13号線ニュータウン道路)を利用します。由利本荘山形県庄内地方から訪れる人は、主に③のルート(国道7号線→県道)を利用します。秋田市内から訪れる人は、主に④のルート(市内各道路→国道13号線→県道)を利用します。
このように『イオンモール秋田』を起点として各方面へのアクセスのルートが分かれていることが、スムーズなアクセスを可能にする一つの要因ではないかと思います。



3-2.周辺に他の目的がない(目的地が『イオンモール秋田』しかない)

イオンモール秋田』周辺に、他に行く目的となる施設が無いことも、渋滞が起こらない理由の一つだと考えられます。そのため、各アクセスルートを走るほぼすべての車が『イオンモール秋田』に流れていきます。途中で右左折する車もありません。また、周辺は歩行者もほとんど歩いていません。駐車場を出入りする際も、歩行者が妨げとなって流れが滞ることもありません。

3-3.I.Cとの距離

下図は『イオンモール秋田』と『イオンモール盛岡』周辺の地図を比較したものです。
左が秋田、右が盛岡です。



イオンモール盛岡』の周辺を何度か通ったことがありますが、しばしば渋滞していたのを記憶しています。幹線道路に面した郊外という似たような立地ですが、秋田と盛岡を比較すると、I.Cとの距離が異なることがわかりました。『イオンモール秋田』は最寄りのI.Cから約2.0km離れているのに対して、『イオンモール盛岡』は0.2kmしか離れていません。商圏人口の違いや駐車台数の絶対数、幹線道路の交通量が異なるので一概には言えませんが、I.Cとの距離感も考慮すべき要素であることが窺えました。

このように見ていくと、車のアクセス性が良いことが『イオンモール秋田』の特徴ではないかと思いました。では、なぜ車のアクセス性が良いのか。推察になりますが「御所野ニュータウン」の事業に県や市が協力していることが大きな理由ではないかと思っています。すなわち、県や市が関与すると道路計画がリンクしてくるからです。

私の通っている大学は秋田県由利本荘市という秋田市から約40km離れた場所にあり、『イオンモール秋田』へは車で小一時間程度かかります。しかしそれでも、私も含め、周りの人たちも高い頻度でわざわざ出かけます。車でのアクセスに対して心理的な抵抗感を覚える人は少ないような気がします。



以上で1回目の報告を終わります。
今回は、①『イオンモール秋田』の概要と、②都市の中での建物の位置づけ、③交通・インフラ、の3点について、分析と考察を行いました。
次回は、建物のプログラムと平面構成について報告をしたいと思います。