「群馬県甘楽郡の古民家現地再生」【連載第2回】=調査と、評価、判断

古民家の再生は、何と言っても最初の作業は、現況調査です。
調査は、しかし、毎回同じ項目同じ内容ではありません。再生の方向、目的の定め方によって、調査の中身がかなり違ってきます。
今回は、建物の骨組みを残し、将来住宅へと再生するための中間段階まで、手を入れ、可能性を確認することが目的ですから、調査や現況判断もそれに沿ったものとなります。
古民家再生では、特に、重要なのが、建具です。すべての建具が創建当初のまま、という例はあまりありませんが、古い建具がたくさん残されているほど、特に現地再生(住む家族が、再生の前後で変わらない場合)の場合は、意義が大きいと考えます。
次の図面が、当初の現地建物の平面図(略図)です。建具は、細かく区別して、番号を振り、一面ずつ写真をとり、寸法をとり、調書にします。
この建具たちは、一旦、敷地内のどこか、あるいは工務店さんの倉庫に、濡れないように保管され、建物が再生されたあと、修復されて、また設置されることになります。

以下に、保存を決めた建具のうち、いくつかを写真とともに、その特徴などをご紹介します。
先ず、玄関です。


これが、外観と内観です。
建具自体は、千本格子の建物に見合った標準的なタイプの玄関戸です。おそらく50年くらい前に入れ替えられた、新しいガラス戸だと思われます。その前は、おそらく、大きな一枚板戸と、内側のくぐり戸つき障子の組み合わせであったろうと想像されます。
趣のある、欄間付きです。この玄関戸と欄間は、そのままの位置で修復して再利用する方針としました。建て付け調整や、金物、鍵の新規取付け、ガラス(一部が割れている)の入れ替えなどは、当然工事の範囲で行います。

次は、内部の何種類かの建具です。先ず、

これは、「猫間障子」といいます。ガラスが建具に使われるようになって以降、日本で考案された障子ですから、それほど古い歴史があるわけではありません。しかし、明治時代のガラスは、まだ磨きガラスの時代で、気泡などが入っており、大変趣き深いものがあります。


襖ですが、これは、何度か更新されているようで古いものではありません。ただ、襖の「引き手」は、古いものは手作りのもので大変良いものが残されている場合があり、建具自体は処分しても金物は、注意深く判断する必要があります。


これは、「中貫戸(なかぬきど)」といいます。中段に、小型の障子が入っていることが多く、その組子(桟の木組み)のデザインによっては、大変良いものがあります。


これは書院の障子です。書院は、建物の中でも最も精度を上げる場所で、障子も大変精密なものが多く、また、その建物の特徴を代表するようなデザインのものが多いと考えていいと思います。


「帯戸」です。上下にはめ込まれている板は、古い時代には大変貴重なものです。薄い板を制作することが、昔は大変な技術を要したということですから、一枚板(巾約900ミリ)のものは大変価値あるものです。この建物では、何枚かの板を組み合わせてあります。塗りは着色漆です。


ガラス戸ですが、これは、すべて戦後の新しい建具だと考えられます。1階、2階に多く作られていますが、時代は、数回に分かれているようでした。今回の再生にも、保存の良いものはそのまま活かそうという考えです。但し、2階には、今回は、床は作りませんから、メンテのための何らかの仕組みを用意しておかなければならない、という予見は、当時持ちました。

再生に使用しない建具も、すべて「保存」の対象として、保存する予定です。