パーフェクトキス 桑島由一

パーフェクトキス (MF文庫 ダ・ヴィンチ く 2-1)

パーフェクトキス (MF文庫 ダ・ヴィンチ く 2-1)

神さま家族などで有名なラノベ作家桑島由一の作品です。ほとんど詩といっても良い内容ですが、高尚だとか意味不明だとか、そういう印象はありません。大切な気持ちを思い出させる作品だと僕は思います。

文学でいうなら太宰治とかそのへんの現代版をイメージしてもらえればいいのかもしれません。生活的にはダメダメの人が描かれています。でもそんなダメな人が、本当に大切にしたいことを嘘にまみれさせながら守っていったり失っていったりする様は、なかなか感動をそそるものがあります。

僕は6年前ぐらいにこういった価値観からは距離を置こうと決めたんですが、今振り返ってみると非常に懐かしくてしんみりしちゃいます。

人を選ぶ作品だと思いますが、多くの作者と年齢が近い方が共感できる内容かと。

はやくいって サタミシュウ

はやくいって (角川文庫)

はやくいって (角川文庫)

私の奴隷になりなさい”から続くSM青春小説の4作目です。

一応前作のお前次第で大まかな話は終わってまして、本作は前3作に出てきた登場人物の過去と未来を短編形式で語っていきます。

私の奴隷になりなさい”および”ご主人様と呼ばせてください”が本当におもしろい話ですので、その惰性で3,4巻もあっさり読めてしまいます。

人への気遣いなどが緻密に書かれていて、SM小説でありながら、巷の恋愛小説などより心の強い結びつきがうまく表現されているかもしれませんね。目新しいカテゴリーの話でした。

ほうかご百物語 1-4 峰守ひろかず

ほうかご百物語 (電撃文庫) ほうかご百物語〈2〉 (電撃文庫) ほうかご百物語〈3〉 (電撃文庫) ほうかご百物語〈4〉 (電撃文庫)

もともとは幻想遊戯さんが薦めてて、それを紅茶さんも薦めてた形になるのかな。そんな事情で読んでみました。妖怪のイタチさんたちで繰り広げられる妖怪コメディです。

イタチさんを褒める言葉としてピュアかわいいという言葉が帯などで使われていますがまさにその通りって感じです。いまどきこんな純情な娘さんラノベでもレアですw

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 川原礫

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈1〉黒雪姫の帰還 (電撃文庫)

いわゆるゲームが得意な少年がその特技を生かして、女の子をゲットしたり、成功をおさめたり…というオーソドックスな話なんですが、その使い古された筋にして非常にあたらしさを感じさせる内容でした。

というのも、主人公にデブを採用したりと、コンプレックスがかなりストレートに描かれていることが新しい。主人公がいじめられたりしているわけですが、それを人にいいたくない、ましてやかなり友人だと思っているような人間には言えないという気持ちに共感してしまいました。その主人公のゲームの腕を生かして勝つところなんかも非常に描写やアイデアが丁寧で、状況がすごく分かりやすかったです。バトルもののの小説で読んでも状況がぜんぜん分からないときってたまにあるんですが、これはすごくよく分かりました。ゲームと物語の関係として、実は物語における戦闘シーンはゲームの言葉を用いてしまったほうが効率よく伝わるかもしませんね。そんなことを思ってしまいました。

大変おもしろかったですね。

ビター・マイ・スウィート シリーズ 2作  森田季節

ベネズエラ・ビター・マイ・スウィート (MF文庫J) プリンセス・ビター・マイ・スウィート (MF文庫J)

日常にちょっぴり非日常の隠し味が効いている良作です。ライトノベルサイト杯で好成績を収めていたので読んでみました。

特に一冊目ベネズエラ・ビター・マイ・スウィートでは、一人称による語りが非常にうまくて、ちょっとひねた学生がほんとによく表現されていました。僕はそこを読んだだけでファンになってしまいましたね。

2作目のプリンセス・ビター・マイ・スウィートもそれに引き続く話で大変面白いです。最初にも述べましたが、恋人や友人関係における平凡かつ根本的な話題を取り扱いつつも、非日常をちょっとうそを、混ぜることによって、鮮やかに登場人物たちの気持ちを表現していると感じました。

HURTLESS/HURTFUL 清水マリコ

Hurtless/hurtful (MF文庫 J し 2-7)

Hurtless/hurtful (MF文庫 J し 2-7)

嘘シリーズの清水マリコ*1の新作です。

清水マリコは少年や少女の嘘とか秘密とか罪とかそういったものを描くのが上手いですね。今回もなかなかにそこに踏み込んだ話ですよ。