BALDRSKY Dive1, Dive2

BALDRSKY Dive1

BALDRSKY Dive1 "LostMemory" 通常版

BALDRSKY Dive2

BALDRSKY Dive2 "RECORDARE" 初回版


BALDRSKY Dive1 "LostMemory",BALDRSKY Dive2 "RECORDARE"、読了しました。

このゲームはエロゲにしては珍しい、ロボットもののアクションゲームです。ストーリー部分は普通のノベルゲームのように進むのですが、戦闘ごとにアクションゲームになります。上のムービーをみると誤解するかもしれませんが、実際のアクションは3Dではなく斜め上からみた2Dです。

あなたのための物語を読んだせいで個人的にSF熱が高まっているのですが、このバルドスカイの設定もなかなかすばらしいくて感心しています。

バルドスカイではバーチャルリアリティのシステムが発達しており、ロボットでの戦闘もこのシステム上で行われます。この世界ではAIが人間とは別種の思考形態をもつ知的生命体として取り扱われており、そのAIが人間を観測することで人間にとって公平な仮想世界を作り出しています*1

自分の恋人が最悪な形で失われてしまった”灰色のクリスマス”の真相を追っていくうちに、いろいろな真実が徐々に明らかにされるのですが、伏線がよく張られていて読んで飽きない作りです。ただ、個人的には最初にクリアするレイン(Dive1の表紙の人)が一番好きなので、ヒロインの魅力での引っ張りは弱く感じてしまいました。まぁ空も良いですけどね(Dive 2の表紙の人)。

このバルドスカイがバルドシリーズの何作目なのかは分からないのですが、シリーズの他の作品ではバルドフォースEXEをやっています*2。遊んだのがだいぶ前で記憶があいまいなのですが、たぶんサイバーグノーシス主義とかそういう話題が出てくることは共通していたような。普通のキリスト教グノーシス主義は、この世はデミウルゴスという悪魔が作った地獄で、どっかに神様がいる精神的な意味での天国があるとかいう思想なんですが、サイバーグノーシス主義っていうのはバーチャルリアリティの世界こそが天国みたいな思想です。

リアルvs仮想という意味の対立は、オタクには共感が得られやすいかもしれません。現実世界で虐げられていて、二次元美少女に逃避するみたいな感じで。Dive 2初回版の特典にスタッフ対談が載っていますが、その中でも”絶対会えない理想の女の子とSF的なギミックを使って会う”ということが企画の初期段階から意識されていると書かれていました。

ただこういったイデオロギーは少々古臭く、2010年の今となってはあんまりオタクの実存に関わる問題ではなくなってきてしまっているような感じもします。バブルのころのように経済が豊かならば、仮想に逃避する生き方も許容されるのかもしれませんが、不況の世では生産性がない人を養う余裕がなくなり、どうしてもリアルを基盤に生きていかざるを得ない社会情勢になるからでしょう。同じような社会構造はこのバルドスカイでも描かれていますね。もしかしたら美少女ゲームというものの勢いが昔ほどないのはこういった事情によるものかもしれません。夢の中に逃げ込む話よりは過酷な現実と戦うタイプのフィクションのほうが、今の世のニーズに答えやすいという理屈は確かにあるような。

なんか話があさっての方向に向かってしまいましたがそろそそろまとめましょう。このバルドスカイは2009年発売のエロゲの中でももっとも気合と労力がかかっている作品なんではないかと思います。緻密な伏線回収とアクション部分の調整など普通のエロゲの予算とは桁違いなのではないでしょうか。Dive1+Dive2がある分、2009年でもっとも値段が高いエロゲになってしまってはいますが、それだけお金を払う価値のある作品です。

*1:たぶん。書き始めてみるとこういう理解でいいのか疑問に思えてきてしまった。。。

*2:BALDR FORCE EXE GIGA - ブレーキをかけながらアクセルを踏み込む