Hatena::ブログ(Diary)

アセトアミノフェンの気ままな日常

2015-12-30

今年も間もなく終わりです(科学ニュースリンク)

サイエンス系の総集編記事があちこちで。




ところで、Springer 祭りは終わったようだ。なんだったのだろう…

Springerから本が色々無料DLできるようになったらしい
2004年以前?のものが可能らしい、何故かは不明(知ってる人教えてください) link.springer でtwitterを検索すると色々な本の情報が手に入ります。

僕は間に合ったので大分ダウンロードできた。








あちこちブログなどでも取り上げられていたのだが、どうも数学・物理・情報の人が TL で騒いでいた印象。化学・生物界隈の人は、情報が伝わっていても大して興味がない(あるいは以前から当然だった?)のか、それともそもそも情報にありつけていないのかすら謎だった。一時は Twitter のトレンドに Springer が入るほどで、世界中で最低でも3日間にわたって大量ダウンロードが相次いでいたはずだ。



このお祭りに関する Springer からの公式発表が全く見当たらないまま終わってしまった。何かの手違いだったのか、年末の大放出サービスだったのか。

2015-11-24

インタラクティブな分子模型をシェアする

久々に「化学と JavaScript」関連情報。海外のブログより。

Quick way to share interactive molecular structures and animations
The University of Copenhagen の Jan Jensen 氏 (@janhjensen) のブログ記事。

元ネタは @gyges01 さんのツイートで、これは「任意のファイルを JSmol で表示できるウェブサイト」を利用した SNS での分子模型シェアの試み。




@gyges01 さんの紹介を日本語にすると:

  1. 好きな場所に cml, smol, pdb など分子の立体模型を表すファイルをアップロードする(既に Web 上に置かれているならそれも流用可)
  2. ファイルの直ダウンロードリンクhttp://chemapps.stolaf.edu/jmol/jmol.php?source=リンク先 という書式で SNS で投稿
  3. すると、ブラウザ上で JSmol が起動して分子モデルが表示される。

これを画面上右クリックして出てくるメニューを使って interactive に操作し、もともとファイルに埋め込まれているアニメーション情報を起動するというもの。とりあえず GIF に変換したもの*1
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@janhjensen さんの試みは、JSmol Script を書いてたとえば .xyz ファイルに保存し、JSmol 起動と同時に自動で実行させるというもの。JSmol がスクリプトを解釈して一発で実行してくれるので便利。僕もやってみた。



GIF アニメに変換した結果。
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このブログでは便宜上 GIF アニメを表示したが、JSmol での表示のほうはインタラクティブに操作できるので楽しい。元記事には最初「DropBox のリンクではできない」と書いてあったのだが、できたよと Reply で教えたところ即取り入れられた。Copenhagen と Tokyo でも、そして面識はなくても、瞬時にやりとりできるのはやっぱり凄い。

追記 (2015-11-30):メインブログでは実際の量子化学計算から一連の作業を紹介。

*1QuickTime Player で「画面収録」したものを ffmpeg で GIF アニメに変換。ちょっと見づらかったので ImageMagick を使って数フレーム分削除。

2015-11-22

雑誌の購読料高騰・日本発ジャーナルの課題

ケムステの記事などで最近出てきた「日本発ジャーナルの認知度を高めたいという話」と、論文誌の購読料が高騰しているという話。これが現実である。





ケムステの記事が書かれた背景は、スタッフなので内部の掲示板で議論していたのを知っているから解っているつもりである。ジャーナルの認知度を上げたい化学会会長と直接やりとりしたケムステ代表の双方の考えが、(たとえ背景を知らない人であっても)あの記事からなら伝わるだろうと思う名記事だと思う。だけど現実には難しい問題を抱えているわけで、議論を呼ぶことで何か糸口を見つけられないかという模索の段階なのだろう。少なくとも内容を読めば「IF を上げたい? ならあなたの論文を全部そこに出せば?」で一蹴できないはずなんだけどな… 今後注目。

2015-11-15

サイエンスアゴラ2015に行きました(続)

昨日の続き。

東京大学大学院数理科学研究科「五感で感じる産学連携 視覚 - 文字が傾いて見える錯視のなぞにせまる」(新井仁之教授)

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「夏ワナー」と繰り返し書かれただけの文字列が、なんだか傾いて見える。このような錯視を「文字列傾斜錯視」と名付けて、数学的に錯視をコントロールしようという研究。「錯視の科学館」というサイトにコンテンツがたくさんある。錯視の研究は人の脳による視覚情報処理の解明にも役立ち、例えば「任意の画像をあたかも動いて見えるような錯視画像に変換する技術」や「ぼやけた画像をデジタル処理して鮮明にする」などの応用も考えられているそうだ。

  • 文字列傾斜錯視自動生成ソフトの実演もあったが、ランダムな文字ではなかなか錯視っぽくならなかった。カタカナがどうも文字列傾斜錯視になりやすいようだ。
  • 組版好き・フォント好きとしては錯視になりやすいフォントを探してみたくなったりする。「錯視の科学館」ではMS ゴシックを使っているが、ほかのフォントではどうなるか気になるところである。

ソラオト「観てみよう! とても不思議な声の世界

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来場者の声を録音して分析、声の高さや母音と子音などを観察する体験型実験。ひとつは、いわゆる「回文」(しんぶんし・たけやぶやけた)に関する実験。日本語で良く知られている回文は文字の配列に基づくものだが、母音や子音に分けてローマ字で書くと回文ではない。それを録音して逆再生することで確認し、逆に逆再生で自然になるような例を発音してみるなどの体験。もうひとつは、声の複雑な波形をフーリエ変換してピーク周波数成分を取り出したり、徐々に成分を増やしていってどこまでいくと「人間らしい声」(音色)になるか調べる体験(上図は適当なものがなかったので「音声を加工してみよう!」図5.13から拝借)。

  • 男性の声では、最も低い周波数成分が 100 Hz 前後になるが、女性の声では 250 Hz あたりになるのだそう。これがどうも耳で聞こえる「音の高さ」と近いような気がする。
  • しかしピーク周波数は必ずしも耳で聞こえる「音の高さ」とは一致せず、僕の場合は(自分の声はだいたい 125 Hz くらいだと思っていたのだが)ピーク周波数は 1000 Hz あたりにあって驚いた。人間の耳がどの音の高さを認識しているのかという点に興味を持った。
  • 「赤坂サカス」→「うさかさかさか」(笑)

ケムステ出張版「広がる化学の世界

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われらがケムステ*1。和光純薬から提供の「【光る!】鈴木-宮浦クロスカップリング反応体験キット2」と、超低密度かつ高い可視光透過率の「スーパーエアロゲル」がメイン。

鈴木-宮浦クロスカップリングは Pd 触媒がカギとなる有機ホウ素化合物と有機ハロゲン化合物のカップリング反応で、ビアリール骨格の化合物を合成するために使われる。条件が比較的温和で、サイエンスアゴラのような不特定多数の人が訪れる会場でも簡単に“溶液を混ぜるだけ”で実演できるほど。様々な有機ホウ素化合物を反応に用いることができる汎用性、工業化の容易さから種々のホウ素化合物が既に市販されている。今回のものはその中でも「目で見て反応が分かる」ようなキットとして和光純薬から販売されているもの。蛍光性を持った分子が生成したことをブラックライトを当てて確認する。しかも一方はソルバトクロミズムを示し、反応液にヘキサンを加えることで蛍光色が変わるという性質もある。

  • 代表の山口先生は今回初めてのサイエンスアゴラ会場入り。僕は化学会などに所属していないため、今回が初対面。スタッフですと声をかけて驚かれた。研究成果が出ても分野が違うので、学会発表などでも絶対に会う機会がないと思うので逢えてよかった。
  • ケムステノベルティグッズもちゃっかりいただいた。ケムステロゴ入りフリクションボールペン・卓上時計・付箋紙・お土産冊子クリアファイル付でトートバックに入れていただいた。ありがとうございました(^^)

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*1:このサブブログを読んでいる方からすると TeX の記事が多すぎて忘れられていそうですが、実はケムステスタッフとして記事を数本投稿していますよ! 最近忙しくて書けていないけど…

2015-11-14

サイエンスアゴラ2015に行きました

今年はめずらしく予定が空いていたので行けた。

サイエンスアゴラ2015
サイエンスアゴラは、あらゆる人に開かれた科学と社会をつなぐ広場の総称です。この広場は、異なる分野、セクター、年代、国籍を超えた関係者を結んで私たちが主体的に推進する個々の活動の場です。この広場に集まる私たちは多様な価値観を認め合いながら力を合わせてこれからの科学とともにある社会をつくります。




というわけで、記憶の範囲でいくつか紹介。

理研仁科加速器研究センター「3個目の113番元素の合成を新たな崩壊経路で確認」(森田浩介准主任研究員)

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Zn(原子番号30・質量数70)を光速の10%まで加速させ、標的となる Bi(原子番号83・質量数209)に照射して、原子番号113・質量数278の元素を合成したという有名な成果。新元素の合成を証明するために重要な「崩壊連鎖で既知核に到達するかどうか」という指標が、3回目にしてかなり信頼性の高いものになったという。114番と116番は既に発見が認められて IUPAC の周期表にそれぞれフレロビウム・リバモリウムと命名されているが、113番元素は未認定である。仮に理研の発見が正式に認められれば命名権が与えられ、周期表に初めて日本発の名前が入ることになると期待されている。

  • そもそも元素を合成しておいて「新元素を発見」という言い方はどうなのだろうと思うが、専門外なので気にしないことにする。
  • なんで30+83でないといけないのかよくわからなかった。聞いてみると「どちらもよくありふれた元素である必要があるので、一方が重すぎて半減期の短い元素になってしまうとそれがそもそも合成対象になってしまうので不利。だからといって両方を同程度の質量数の元素にしてしまうと今度はビームにする元素が加速しづらくなってしまい、融合もしづらくなる」とのこと。いろいろ制約があるのね…
  • 9年で400兆回の衝突実験を行い、たった3個だけしか確認されていない。サイエンスの探求心と執念が感じられる。原子核物理学で理論上予測されている「安定の島」が実在するのかどうかも気になるところである。

日本原子力研究開発機構の「見て触れて学べる放射線ものづくり - 放射線で加工した樹脂が学校教材に

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放射線橋かけ技術を活用した形状記憶樹脂の実演。原子力機構が開発した「放射線橋かけ技術」は、生分解性樹脂であるポリカプロラクトンに放射線を照射することでラジカル反応を起こさせて架橋するというもの。これにより樹脂に形状記憶性が生まれ、架橋前は引き延ばすと二度と元に戻らないのに対して、架橋後は室温で固まっているものが温水に浸すだけで元の形に戻る。これは学校用実験教材としてサンルックスが販売開始しており、中学・高校用の放射線教材として活用できるようになっている。

  • 照射時間を変えると架橋量が変化する*1。放射線の照射によってラジカル反応が進むが、これは架橋反応とダメージを受けた鎖が切れる反応の競合であるため、照射時間が長すぎると今度は切れてズタズタになる方向に進む。照射時間が程よいときに形状記憶性が生まれ、短時間なら軟らかく伸縮性に富み、長時間なら硬くもろくなって力を入れると切れやすくなる。
  • 放射線照射は品種改良などにおける遺伝子の誘発変異に非常によく用いられている手段である*2。植物の品種改良などの研究成果も報告されていた。
  • 学校用実験教材の試供品(未照射・照射済各1本)をもらえた。家でも遊んでくださいということだな(^^)

日本原子力研究開発機構の「海水中のリチウム資源を回収する革新的な元素分離技術」(星野毅研究副主幹)

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海水中には大量の Na+ イオンや Cl- イオンが溶けているわけだが、その数万分の一の濃度の Li+ イオンが溶けている。その Li+ だけを選択的に透過する NASICON 型結晶構造のセラミックスを開発し、Li+ の抽出に成功したのだという。濃度勾配に従って Li+ が NASICON 構造に含有された Li+ を玉突き式に押し出して*3、高濃度側(海水やにがりなど)から低濃度側(純水)に出てくるので、電気を使わずむしろ発電できるという。

  • 濃度勾配で取り出すということは Li+ の抽出は海水中の濃度で頭打ちになるわけだよな(プレスリリースによると3日間で海水に含まれるリチウムのうち最大約7%を回収)。そんな低濃度では使い物にならないのでそこから濃縮しなければならず、電気を使うのではなかろうか…?
  • その電気はたぶん今発電した電気を使うか外から加えるのだよな… 一応「使う分を自分で発電するのでゼロエミッション」的なことを言っていた気はするが、ホントだろうか?
  • とはいえプレスリリースは技術系メディアで大きく取り上げられていて、概ね企業からも「電気を少し使ってでもリチウムを取り出せるのは素晴らしい」と好評だという。現状の課題はセラミックスがまだ高価であること。電池に応用できるかどうかがカギのようだ。

続く

*1:これを実演してくれた方(学生?)に質問したところ答えられずに上の人を呼んできたので少し驚いた。そのおかげでディープな話を聞けたのでよかった。

*2:遺伝学の研究初期にショウジョウバエに X 線を照射すると高確率で突然変異体が生じることが判明した。自然の中から偶然見つけるしかなかった変異体を人工的に作り出すことができたことで遺伝学が飛躍的に進歩したことはあまりにも有名である。

*3:なんか記憶ではこのプレスリリースも参考資料にあがっていた気がする。そちらは論文になっている(Nature Materials)。