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Active Galactic : 11次元と自然科学と拷問的日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2008-03-29 LHCとストレンジレットとブラックホール訴訟

米国でLHCの運用禁止を求める訴訟、ブラックホール生成実験は安全性が確認されていない

CERN、LHCの運用で地球が崩壊するというのはまったくナンセンス

陽子は通常、アップとダウンのクォークから構成されているが、原告らはLHCでの実験ではアップ、ダウンとストレンジから成る異質のストレンジレット(Strangelet)と呼ばれる陽子を生成。このストレンジレットは近くに存在する物質を取り込みながら成長することによって地球をも飲み込むブラックホールとなる可能性があり、LHCでの実験は改めて専門家による安全性の再確認が必要だと主張している。

ゴミ共が・・・と一瞬思ったが、ニヨニヨがとまらない。裁判プロセスは科学プロセスとは違うし、ハワイは楽しい判決が出易いことで一部には知られているようだがどうなるんだろうね。疑似科学批判も訴訟リスクがある時代だし、安易に政治闘争の次元に降りていくのは健全な方法とは思えないが、いつかは誰かが起こしたことだろう。

LHCでは実際に、極小ブラックホールの生成実験が予定されている。しかし、LHCによってミニ・ブラックホールが生成できたとしてもそのミニ・ブラックホールは、理論上はホーキング放射によって直ぐに消滅することなども予想されており、実験そのものには危険性はないとする考えが今のところ、大勢を占めている。

ただし、一部では実験の危険性を指摘する声なども上がっていた。

原告らと同じ主張は少数派となるが、一部の研究者の間でも提起されていた。

一部の研究者って誰だろう、学生かな。適当にググった雰囲気でつくった記者の脳内研究者説に一票いれておく。割合が0.1%以下でも「一部の研究者」ではあるので、私が知らないだけかもしれない。それにしてもこの文章の原因が記者にあるのか原告にあるのかは知らないが、ストレンジ粒子やストレンジレットを何だと思っているのかと小一時間問い詰めたい。宇宙から降り注ぐストレンジレットが世界を滅ぼすとかSF風味で想像を掻き立てられるよね。「ダークマターの正体は活動銀河核によって宇宙に撒き散らされたストレンジレットに接触してベコベコに爆縮したクォーク星の残骸やったんやー。」とかなんとか。

いちおう大本営発表風味になるが、LHCと同等以上の高エネルギー粒子は自然界にあふれており、LHCでブラックホールが作られるなら、自然界でも日常的に大量生成されている。マイクロブラックホールが一瞬で崩壊せずに地球を飲み込むならば、とっくに地球は終了してますよと。宇宙で起こっている激しい現象と比べればLHCは線香花火のようなもの。

(追記)

  1. ブラックホールやストレンジレットが地球を云々みたいな抗議は既にRHICなど他の加速器でも行われている恒例行事。今にはじまったことではない。
  2. LHCブラックホール発見は素粒子研究者によるオッズだと15倍くらいになっているそうだ。この倍率だとどっちに掛けた方が得かは微妙なところだが、夢のある方に掛けておこう。宇宙線超新星からは極めて厳しいリミットが付けられており、LHCでの生成はやや絶望的。理論的にも生成可能条件はかなり厳しい。
  3. ブラックホールが生成されるかと、それが危険かはまた別の話。宇宙がメチャクチャになっていないことからしても、理論的な側面からしてもマイクロブラックホールは安全だと考えられている。「絶対に安全か」みたいな話は、「明日地球が突然爆発しないと絶対に言い切れるのか」と同じで無意味な質問だ。「生成したブラックホール地球規模の大惨事を起こすか」についてはオッズが100万倍を超えたら記念に1000円ぐらい掛けておこう。2000円を失うのは悔しいから。
  4. 因みにブラックホールが蒸発する時間スケールは光の早さで飛んでも原子核の直径の1/1000すら進めないほどの一瞬。ちょっとした小惑星ぐらいの重さのブラックホール(でも原子より小さい)ですら、原爆並みのエネルギー流出がある。それに対して恒星質量級ブラックホールは数百万分の1ケルビンぐらいで、宇宙年齢よりはるかに長い時間が必要になる。
  5. ブラックホールが簡単に蒸発しない(長生きするケース)や蒸発しないケースを考えても、観測的な制約から地球に急性的な影響を及ぼすのは難しい。たとえば月や白色矮星という高密度天体を何億年も高エネルギー宇宙線が叩いている訳だけど、生成ブラックホールが蒸発せずに留まり白色矮星を飲み込んでしまったケースは確認されていない。仮にマイクロブラックホールが蒸発しなかったとしてもその影響は小さいと考えられる。
  6. LHCの中では一番のキワモノであり予算獲得宣伝の為だけにあるようなブラックホール実験ばかりが喰いつきがよくて泣いた。語られるのはせいぜいSUSY(超対称性)やHiggs止まりですよね。QGPやb-phys/CPのことも忘れないであげてください。LHCではもっと地味で泥臭いけど物理学上重要な実験は沢山あるよ。

※食うひとびと

22:17 |  ※食うひとびとを含むブックマーク  ※食うひとびとのブックマークコメント

もう大分になるが自宅のゴハンが美味しくない。「サトウのごはん」のほうが遥かにマシ(といってもサトウのごはんはかなりクオリティの高い部類に入るが)、QOLを大幅に下げるゆゆしき事態だ。水につける時間を調整し、この米なら大丈夫という一品で試してみたがダメみたい。炊飯器が悪いという結論に達する。

とはいえ炊飯器はオカルトの跋扈する魔界、オーディオオカルトほど酷くはないけど何から手をつけていいものやら。

admadm 2008/03/30 23:43 つ飯盒

active_galacticactive_galactic 2008/03/31 21:20 飯盒はチート。

とおりすがり。とおりすがり。 2008/04/03 20:47 いきなり明日地球が突然爆発する確率が二倍に増えてしまうのに、実験が必要なの?

active_galacticactive_galactic 2008/04/05 11:55 こんにちは、「とおりすがり。」さん

確かに、パワプロのダイジョーブ博士って期待値以上に失敗している気がしますよね。あ、ネタではなく本気で言っている場合はすみません。その場合は、2倍という数値の有効桁数と導出方法を含めて適宜。

hirotahirota 2008/04/17 14:51 ご飯を炊くのは、なべでガスコンロを使ってます。(30分間目を離せないが、他人が炊飯器で炊いたのより美味い)
米は高いのも試してみたけど違いが分からなかったので、今は一番安いのを食ってます。(そのほうがコクがあって美味いような気もする)

正確に入れたつもりなのに「入力された文字列が違います」が出るのはナゼ?

active_galacticactive_galactic 2008/05/01 03:58 ガス炊飯とは本格的ですね。手間を考えると中々手が出せそうにありません。

>>正確に入れたつもりなのに「入力された文字列が違います」が出るのはナゼ?

CAPTCHAの文字については、はてなのシステムですし、私個人ではなんとも判断し難いです。とりあえず、6桁の16進数であることに注意するくらいしか思いつかないです。

ksiamxksiamx 2008/07/23 17:25 今頃で申し訳ないのですがLHCと宇宙線ではイベント数が違うような気がするのですが?
そこのところはどうなのでしょうか??

active_galacticactive_galactic 2008/07/27 09:27 一見すると超高エネルギー宇宙線イベントは滅多に起きないのに対して、LHCは凄まじく高密度のビームのように見えます。しかし、高エネルギーイベントの近接という点ではむしろ逆でしょう。

加速器のビームは、陽子やそれを構成する素粒子の断面積からみれば、恐ろしいほどスカスカです。個々の陽子にとっては、ちょっと軌道を曲げられる程度のゆるい衝突ですら、宝くじに当たるようなレアな体験です。まして、ブラックホールが生み出されうるほどの激しい衝突となると非常に条件が制約されます。個々の衝突イベントは十分にセパレートされています。

一方、宇宙線は1次粒子の頻度こそ小さいものの、一回の衝突で膨大な数の超高エネルギーイベントを起こします。LHCと違い、散乱生成された2次粒子や3次粒子ですらブラックホールが生成可能なレベルのエネルギーを有しています。もし長生きするのであれば、膨大な量のブラックホールがシャワーのように乱れ飛ぶことになるでしょう。そして、衝突するターゲットはLHCビームより高密度であることがしばしばです。

ksiamxksiamx 2008/08/06 22:22 宇宙線でできるブラックホールは地球外に飛んでいき、LHCでできるブラックホールは地球にたまると聞きました。それについてはどうなんでしょうか?

active_galacticactive_galactic 2008/08/08 10:55 宇宙線とLHCで生成されるブラックホールはともに準光速で地球からの脱出速度より十分速いとはいえ、様々な偶然が重なることで、地球に対してほとんど静止した(秒速10km以下)ものがごく偶に発生します。典型的な宇宙線事象がΓ>1000と強くブーストしているのに対し、LHCは十分光速に近いものの比較的のろのろ動きます。天体の重力と物質による捕獲率を各イベントベースで見るならば、LHCの方が高いと推測できるでしょう。(ブラックホールの生成数自体は自然界の方が圧倒的に大きいです。)

ただ、ブラックホールが長寿命で且つ地球程度の弱い重力と低密度の天体でブラックホールが止められ蓄積されるとすると、より強大な重力と物質量を有する太陽や中性子星などの安定的な存在と矛盾が生じてしまいます。

名無し名無し 2008/08/08 18:44 危険ではないと?

active_galacticactive_galactic 2008/08/09 21:43 そうなりますね。マイクロブラックホールのリスクは十分に小さいです。

名無し名無し 2008/08/09 23:31 >ブラックホールが長寿命で且つ地球程度の弱い重力と低密度の天体でブラックホールが止められ蓄積されるとすると、より強大な重力と物質量を有する太陽や中性子星などの安定的な存在と矛盾が生じてしまいます。

どうしてでしょうか?太陽内部ではLHCなんか目じゃないエネルギーでハドロン衝突がしていると?

active_galacticactive_galactic 2008/08/10 20:26 太陽を貫通してブラックホールが脱出することは、地球を貫通して脱出するよりもかなり難しいです。地球と比べて大量の物質の壁に阻まれるだけでなく、脱出速度も大きくなります。また、中心付近は100g/cc以上の高密度状態であり、表面で生成し中心方向に向かったMBHはここを抜ける必要があります。それだけでは不安が残りますが、太陽に代表される恒星はその末期において高密度のコアを形成します。 NSなどには遙かに劣るものの、ちょっとしたコンパクトスターがあるようなものです。ただ、蛇足というかあまり適切な例ではないかもしれません。天体によるブラックホールの捕獲能力および長期的な影響については、白色矮星や中性子星といったコンパクトスターでの議論が実質的に決めています。

太陽中心の温度についてですが、現在考えているエネルギーと比較する限りでは絶対零度に近似できる極寒の世界です。通常の恒星は超新星におけるブラックホール形成過程のような極めて特殊な状況を除き、10京Kのエネルギースケールに入ることはありません。

プランク温度(10^32K) >> GUT?(10^29K) >> 宇宙線(10^25K)@Lab系 >>>> LHC(10^17K) >>> 太陽中心(10^7K) >> 液体ヘリウム(10^0K)

名無し名無し 2009/01/12 12:20 >白色矮星を飲み込んでしまったケースは確認されていない。
宇宙にある白色矮星1000個のうち1個が1億年前にすでに消えていても分からないんじゃ?