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Active Galactic : 11次元と自然科学と拷問的日常 このページをアンテナに追加 RSSフィード

2009-10-04

宇宙戦艦はなぜ白い

18:37 |  宇宙戦艦はなぜ白いを含むブックマーク  宇宙戦艦はなぜ白いのブックマークコメント

SFに出て来る純白の宇宙戦艦って、カラフル兵士なみに違和感ある。なんでそんな目立つ色なの?見つけてほしいの?的になりたいの?映像表現と大人の事情だから不問なの?そんな風に突っかかった年頃があったような気がするが、懐かしすぎて何歳のころだったかすら思い出せない。

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黒い宇宙船(左)と、白い宇宙船(右):左の輪郭はイメージ。

上の画像(左)では輪郭をつけているが、黒い宇宙船は宇宙空間に完全に溶け込んでしまう。輪郭線を取り払ってしまえばただの何も無い空間だ。

作品空間でのご都合設定ならともかく、現実の延長線上としての軍用システムが迷彩を意識しないとは考えがたい。ただ黒く塗るだけでなく、レーダー波吸収構造から液体ヘリウムによる表面冷却まで、あらゆる手を使って検出を逃れようとしても不思議ではない。

でも、リアルで黒い宇宙船なんて聞かないよね

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現実世界で軌道上にある宇宙船人工衛星はことごとく真っ白だったり金ぴかで、いかにも光を反射しそうなものばかりだ。国際宇宙ステーションスペースシャトルだけでなく、軍用の偵察衛星でも(ステルス化の試みはあるようだが知られている限りは)その傾向は変わらない。

現代の宇宙船は極限までの軽量化を要求されており、荷物になる塗料が理由もなく塗られることはない。にもかかわらず、宇宙船が白くあるいは金属光沢を帯びているのにはそれだけの理由がある。

魔法瓶の中の戦争

宇宙船の色は「熱処理」に制約される。宇宙は真空だ。この巨大な魔法瓶は容易に熱を通さない。そこには対流や媒質伝熱がなく放射冷却のみが語り合う場所だ。

真空という断熱領域に囲まれ、太陽からぐるぐる片面ローストされる宇宙船は、自作PCどころではない熱設計が要求される。ジリジリされている側は非常な高温になる一方で、影になる部分は極低温、軌道を周回して姿勢が変わるたびに熱勾配が急激に変化する。またエネルギー生成機関を用いれば熱が内部にこもる。

黒か白か

宇宙船で熱処理は相当深刻な問題で、外部からの熱に対する黒い宇宙船の抵抗力は白にくらべて圧倒的に弱い。核ないしそれ以上の火力が飛び交うような戦場を想定すれば、あるいは軍用レーザーの照射に対して、黒い壁面はガソリンをかぶったブタのようなもの。

現代の技術では(少なくとも太陽近傍で)「黒」は無駄にコストが掛かるだけだし、将来にわたっても「白」が適切な選択肢でありつづけるかもしれない。*1

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ペイロードベイを開放して放熱しているスペースシャトル、軌道上では開けっ放し。

そもそも宇宙船の探知距離は?

宇宙戦艦を黒く!」と言っていたのはステルスの為だが、宇宙空間における物体のセンシングについてはどの距離スケールが想定されるだろう。

レーダー波は距離の二乗で拡散し、ターゲットからの反射波も距離の二乗で拡散するので、信号は距離の4乗で弱くなる。地球から月までの距離を探知するレーダーは10000kmのレンジを有した大型レーダーの200万倍の出力が要求され、1天文単位なら5京倍のパワーが必要になる。地上と宇宙ではノイズレベルが違うとはいえ、将来的にもアクティブな探知方法は惑星などの拠点近傍に限定される。*2

光学による全天監視

より遠くの物体の検出は太陽を光源とする。

可視・赤外による監視については、天体宇宙船を検出するには分解能より明るさが重要で*3、観測者(地球)や太陽から離れると急速に暗くなる。例えば、地球宇宙船と太陽が正三角形を描く位置関係で、宇宙船の1000mの球ぐらいの大きさでそこそこ光を反射する素材でできていたとして20等星ぐらいの明るさになる。20等星は位置さえ分かれば大口径望遠鏡の集光力で長時間露光すれば十分に検出可能だが、大口径望遠鏡の視野は伸ばした腕の先においたゴマ粒みたいなもので、どこにあるかあらかじめわかっていないかぎり使えない。地球近傍天体(NEO)の探査には中口径で視野の広い望遠鏡が使われるがそれでも一回の走査に数日かかる。リアルタイムの監視には多数の望遠鏡によるネットワークが必要で、連携が乱れれば視界はほぼ失われる。

100mの宇宙船になると表面積は1/100になり、対策されるとさらに暗くなる。宇宙船は太陽からの距離の二乗で暗くなり、冥王星以遠では最大級の矮惑星ですら検出困難になる。現代の技術では直径1kmのNEOを検出するのですら苦労しており、小惑星が見つかってから数日で地球をニアミスなんてのはよくあることだ。仮に今、火星あたりに宇宙人の大艦隊が集結していたとしても人類は気づかないだろう。

将来的には検出器の感度は上がっていくが、隠匿や妨害技術も向上する*4。100mクラスで0.0X天文単位、数メートルで地球-月ぐらいという検知距離はそれほど変わらないのではと予想。せいぜい桁がすこし動くぐらいだろう。宇宙には基本本的に遮蔽物が無いので最大レンジの何かが検出してしまえば、あとはデータリンクなりなんなりで。

*1:鏡面状の巨大な日傘を使って一方向だけに太陽光を反射するだとか、アブレーションで何とかするだとか色々と手段はありそうだけど、細かくなってしまうのでこの辺で

*2:例えば、惑星探査機の類は、向こうからアンテナで信号を返してくれるからこそ探知できる。

*3:分解能は仮に0.1秒角の分解能を実現したとして100kmで5cm、月で180m、1天文単位で70kmぐらいになる。それより小さなものは光を放っていたとしても点になる。

*4:大口径望遠鏡レーザーを照射されるなんて考えただけでも恐ろしい。

MathusalaMathusala 2009/10/05 06:02 http://science6.2ch.net/test/read.cgi/sky/1094957659/355

ガンダムのスペースコロニーは幅6.4キロ、長さ34キロの円筒形で、月と同じ軌道にある。

縦から見た場合、
3.2÷380000の答えの逆正接×2=視直径0度0分3.47秒の円。

横から見た場合、
3.2÷380000の答えの逆正弦×2=視直径0度0分3.47秒
17÷380000の答えの逆正接×2=視直径0度0分18.46秒
つまり3.47秒×18.46秒の長方形。

こんな小さいの見えないよ。

という書き込みがあります。
その後、
>>355金星や木星よりもはるかにでかく見えるわけだが
という書き込みがありました。

kiryukiryu 2009/10/05 13:28 確かに熱を拡散させる意味と
映画で言う黒に対する白の色の見映えの好さです。
確かに映像確認は映画のようでは無理ですがセンスを変えれば可能です。
つまり、探知を(量子)コンピューターと人につなげればいいと思います。
操縦は基本的にはフルオートの上で人が微妙を超高速で気楽に運転できればいいと思います。
実際の探知は光などに影響する私たちが知っている物質ですが
研究では光の他にも様々なスピードの波長がありそれらが
一つの場所から届く時間のシンクロとなっていて
それらを現在開発中の量子(波動)コンピューターを使い
高速に計算して運転までコントロールしていきます。
簡素にいうとそのようなことでしょう。

active_galacticactive_galactic 2009/10/06 14:25 木星も金星もスペースコロニーも視直径は小さく、大きさを知るには望遠鏡なり干渉計が必要です。ただどれも明るいので、肉眼ですら容易に見つけることができます。

k87p561k87p561 2009/10/06 21:52 ご無沙汰しております。 素粒子の件ではお世話になりました。

ところで、

> レーダー波は距離の二乗で拡散し、ターゲットからの反射波も距離の二乗で拡散するので、信号は距離の4乗で弱くなる。

とありますが、これがちょっと分かりませんでした。
発信源とターゲット間の距離をLとすれば、レーダー波の往復する距離は2Lなので、
(2L)^2 = 4L^2
つまりレーダー波の減衰量は(係数は異なるものの)やはり距離の2乗に反比例するのであって、「距離の4乗」云々は勘違いなのではないかと。
ターゲットで吸収・散乱される分、反射波の電力は相当弱くなることには変わりありませんが。

nucnuc 2009/10/06 23:21 横からで申し訳ありませんが、
ターゲットがとっても大きな平面鏡であれば2乗ですが、十分小さいならば散乱なので4乗で正しいと思います。

k87p561k87p561 2009/10/08 22:04 > nuc さん

なるほど、(L^2)^2 = L^4 ということですね。
あとは自分で調べてみます。
どうもありがとうございました。

すがりすがり 2009/10/12 19:56 マスエフェクトというゲームの中で見れる設定でこういうの詳しく書いてありましたね。
宇宙における戦闘は熱の与え合いになるので、いかに放熱するかが生命線だとか。

active_galacticactive_galactic 2009/10/18 23:27 「攻撃力」「命中率」と並んで「放熱性」というパラメタが入ったゲームははじめてみました。こんなものもあるんですね。

小実昌小実昌 2009/12/28 01:07 エイリアンに出てくる宇宙船は真っ黒です。真っ白になったのは、2001年宇宙の旅からではないでしょうか。