アクチュアリー座談会(2)(於:数学セミナー)

日本評論社の「数学セミナー
http://www.nippyo.co.jp/magazine/5203.html
http://www.nippyo.co.jp/magazine/5214.html
で2回にわたり「アクチュアリー座談会」が掲載されたのですが、ここではその2回目の記事のうち「アクチュアリー採用」に関係する部分を御紹介いたします。


1回目の記事については id:ttrr さんが纏められています。
http://d.hatena.ne.jp/ttrr/20100129/1264701195

また、ここでご紹介した以外にも仕事内容、アクチュアリー試験アクチュアリーを目指す人々へのアドバイスなどがありますのでご興味をもたれた方は書店等で本誌をご覧になることをお勧めいたします。


◎座談会参加者
Iさん:国内大手生保(いわゆる漢字生保)、正会員、2003年入社、理系院卒
Kさん:外資系生保、研究会員、2009年入社、文系院卒
Yさん:国内大手損保の子会社生保、研究会員、2009年入社、理系学部卒
司会:黒田耕嗣 先生( http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090929 等をご参照ください。)


(以下「さん」を省略します)

アクチュアリーの採用試験の内容
I:数学の筆記試験→面接。数学の筆記試験は微分積分線形代数*1の初歩。大学入試のような問題もあり。
K:アクチュアリー試験の数学を少し簡単にした問題。線形代数*2微分積分の基本的な問題が多数。筆記試験で落とされる人はあまりいない*3のでそれ以降が勝負
Y:総合職採用も受けた(Yさんの会社は「アクチュアリー採用」という枠はなく総合職採用)ので数学だけではなく国語などの試験も。内容は就職対策本レベル。アクチュアリー採用の問題はアクチュアリー試験の数学を簡単にした試験から線形代数*4までいろいろ


○採用の権限
K:数理が採用者の決定。意思決定が早い
I:人事が主幹だが、最終面接まではアクチュアリーも深く関与。最後に人事面接。
Y:採用は人事だけ。総合職採用なので数理は全く出ず。


○採用活動の時期
Y:4月の頭
K:2月末。1月末に試験があった会社もある。*5生保の採用が2〜3月で終わり3月末〜4月に損保の大手が採用
I:3月中旬。アクチュアリー職は総合職より1カ月くらい早い印象


○文系・理系、学部卒・院卒
K:文系からアクチュアリーを目指すならば厳しいことを覚悟。「文系出身でなぜ?」という話になるので、確たる目的と理由+数学1科目が必要。(Kさんは2科目あったが)それでも冷たい風を感じたこともある。入社後であれば文系、理系という区別はまったくない
Y:「学部卒」という面で違った目でみられたことがある。2科目でやっと対等と感じた。
I:結果的に院卒が多い。理系だと院まで行く人が相対的に多いためだと思う。
K:(Kさんのところは)全員院卒であった。


上記を読んだ私の「感想」を申し上げます。


1.最近は3年から受験可能なので1〜2科目合格科目がある人が多いようです。合格科目数は当然あったほうがよいのですが、試験がよくできれば合格科目数がなくても合格できると考えます。

2.いわゆる「文系」出身者に厳しい会社があるのは仕方のないことかも知れませんが、強い意欲と能力(要するに理系教養程度の数学の基礎力)を示せば道は開けてくると思います。Kさんのおっしゃるように入社後は無関係です。(ちなみに2次試験は数学はほぼ無関係になり文章を書く勝負になります)

3.私見で恐縮ですが、院・学部の区別は上記の文系・理系の区別よりもっと弱いものだと考えます。ちなみに、私が関与した例では、筆記試験では、皆様の力が発揮できるような*6出題を心がけ、また、合格科目数、文系・理系、学部・院無関係に筆記試験でふるわなかった方にはお引き取り頂きました。(最終決定は人事にあったので、最後ではそういう要素が加味されていたかも知れませんが…)

4.アクチュアリー採用の場合、もちろん面接等もありますが、筆記試験の出来(+合格科目数)が大きく左右することは間違いないところだと思います。そういう点では、通常の「就活」に比べ決定プロセスが明確になっている部分があると言えると考えます(「試験が出来なかった人を通さない」という意味で)。


それでは皆様のご健闘をお祈り申し上げます。

*1:原文ママ。私は「線型」派です

*2:同上

*3:筆記試験で多くの方にお引き取り頂いた例もあるので要注意です。

*4:同上

*5:twitterによると来週試験の会社もあるそうです。 http://twitter.com/masu_mi/status/8317946971

*6:つまり、仮にもアクチュアリー試験数科目に合格している人が数多く受験者にいらっしゃる試験であり、満点に近い方が続出しないように