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アクチュアリー試験数学の研究



 アクチュアリー試験
 (社団法人日本アクチュアリー会資格試験、アク試験)
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2010-10-27 年金数理のご質問

平成19年度資格試験問題集の年金数理の問題1(8)についてブログの読者の方からご質問を受けたので、ご質問者の許可を得て掲載いたします。

私は年金数理の専門家ではないのでその点はご容赦ください。


問題の概要とご質問者のご質問内容は次のとおりです。


(問題の概要)

ある年度の年金制度の諸数値が以下のとおりであった時、この年度の差損益として正しいものを選べ

期初責任準備金 2000 期末責任準備金 2300

期初過去勤務債務 500 

標準保険料 (年一回期初払い) 400 給付(年一回期末払い) 300

予定利率 5.5% 実際利回り 7.5%

過去勤務債務償却方法及び償却割合 初期過去勤務の30%を償却(年一回期初払い)


(ご質問内容)

問題では予定利率5.5%と実際利回り7.5%があります。実際利回りで

(1500+400+150)*1.075−300=1903.75

として期末積立金を求めています。

同じようにして予定利率で

(1500+400+150)*1.055−300=1862.75

とすることができないのはなぜですか?答えを見ると予定利率の場合では期末積立金は1930.75とならなければなりません。

問題に載ってある「ある年度の年金制度の諸数値」は実際利回りで運用した時の値なのですか。

今回は保険料期初払いで給付期末払いなので利率の違いにより

(1500+400+150)*1.055−B=1930.75

と給付額が実際利回りの場合と予定利率の場合では異なるのですか。

予定利率の場合では

B=232となってしまいます。

答えでは予定利率の場合で

(500−150)*1.055

と期末債務を求めていますが、同じように

(500−150)*1.075

と実際利回りの場合でも求めることができないのはなぜでしょうか?


年金数理、特にこのような年金財政を考える問題については、基本的な簿記・会計の知識が前提になっていると考えられます。

もちろん、「会計・経済投資理論」に合格するよりもずっと初歩的な知識で十分です。

それについては、例えば会計の入門書等で補ってください。


以下基本的な簿記・会計の知識はあるという前提ですすめます。


(1)期初時点((標準)保険料収入・過去勤務債務償却前)の貸借対照表は次のようになります。

資産)1,500負債)責任準備金 2,000
(純資産) △500

資産の1,500は、

2,000(責任準備金)−500(過去勤務債務)=1,500

として算出されるものです。

つまり、500の分だけ債務超過であり、それが正しくここでいう「過去勤務債務」です。


(2)標準保険料収入・過去勤務債務償却直後の貸借対照表は次のようになります。

資産)2,050負債)責任準備金 2,400
(純資産) △350

まず、過去勤務債務の500の30%を償却するので特別保険料

500×30%=150

であり、資産

1,500+400(標準保険料)+150(特別保険料)=2,050となります。

このうち標準保険料400は将来の年金の給付原資にあてるべきもの年金契約者に対する債務を負ったことになり、責任準備金(負債)の増加につながります。

特別保険料は過去勤務債務(マイナスの純資産)の埋め合わせに使われるので責任準備金の増加にはつながりません。


(3)「差損益」を聞かれているのですが、「差損益」とはどのようなものかを改めて振り返っておきます。

保険では三利源で捉えることとされています。

死差損益(損保では「危険差損益」):予定される死亡率(事故発生率)等と実際の死亡率(事故発生率)等の差により生じる損益

利差損益:予定利率と実際の利回りとの差により生じる損益

費差損益:予定事業費と実際の事業費の差により生じる損益

この問題では、

(a)利差損益

(b)利差損益以外の差損益

を考えることになります。

(b)は、予定利率以外の基礎率(加入者数、昇給率、脱退率etc)が予定と違っていたことによる差損益です。具体的には予定どおりであったときの責任準備金と実際の責任準備金との差異を求めます。


(4)まず、利差損益ですが、

期初(標準保険料収入・過去勤務債務償却直後)の資産2,050

×(実際の利回り7.5%−予定利率5.5%)

=41

となります。


(5)次に利差損益以外の差損益の方ですが、予定どおり推移した場合の期末の責任準備金を求めます。

「予定どおりの推移」、利率も予定利率を使います。*1

保険料導入直後の責任準備金は2,400だったので、年金を支払う直前には、

2,400×1.055=2,532

になります。

年金300を払うことは、年金契約者に対する債務(の一部)を履行したことになるのでその分負債(責任準備金)が減少します。したがって、

2,532−300=2,232となります。

これと期末の実際の責任準備金2,300との差は

2,232-2,300=△68

です。これがマイナスというのは予定より債務が膨らんだことになるので、「差損」となります。


(6)したがって、(4)の利差益と(5)のそれ以外の差損を通算して

41−68=△27

が答えとなります。


責任準備金については、

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100109

もご参照ください。

*1:責任準備金を予定利率で評価することを暗黙のうちに仮定していますが、実は責任準備金のこのような評価方法自体について議論のあるところです(例えば、s_iwkさんのブログ http://iwk.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-4688.html 等ご参照)ここでは、「(現在のところ)責任準備金は、予定利率で評価」という整理をします。

peace7peace7 2012/08/22 02:15 勉強になります・・・。

peace7peace7 2012/08/22 02:15 勉強になります・・・。

2010-10-17 アクチュアリー就職・転職活動としての論文投稿・発表

少し前にTwitterで書いたのですが


もとの質問は次のとおりでした。

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1047696260

現在,大学4年で数学科で勉強しています。

来年からは,大学院修士課程で2年間さらに数学を勉強するつもりです。

大学院卒業後は,銀行,証券,保険などの金融関係の仕事に就きたいと思っているのですが,

就職の際に有利になる資格はありますか?

アクチュアリーの資格も考えたのですが,1年や2年で取れる資格ではないので諦めました。

金融商品の開発などに興味があるのですが,何かありますか?


これを見た第一印象は、

これから大学院数学を更に勉強しようとしているのに、その数学を生かすことを第一義としたほうがよりよいと思う

ということでした。


資格についてですが、青木理音(@)さんが、

http://rionaoki.net/2009/11/1317

で、資格を取るメリットとして、

シグナリング

・独占利潤

を挙げられています。

保険アクチュアリーの場合は、「独占利潤」はほぼない*1ので、アクチュアリー」という資格にメリットがあるとすれば「シグナリングという点です。

アクチュアリー試験の場合は、幸か不幸か受験者数、合格者数とも他の資格に比べて少ないので、その点にシグナリング効果があるとも考えられます。


ところが、アクチュアリー(及びそれを目指す方)にとって、アクチュアリー(の科目合格)以上に強力なシグナリング効果のある資格を探すのが容易なことではありません

例えば、損害保険会社に入社すると、損害保険の代理店資格、(子会社や関連会社の)生命保険の募集人資格、証券外務員資格等を取得することになります。また、他にも自己啓発として様々な資格の取得が「推奨」されます。生命保険会社や信託銀行でも同様だと思われます。

したがって、アクチュアリー候補生)を採用する職場に対して

「1年や2年で取れる資格」

ではシグナリング効果は極めて乏しいのではないかと懸念されます。

もっとも、司法試験公認会計士試験、税理士試験等であればアクチュアリー試験と同等以上のシグナリング効果があると思われますが、それらの資格を「1年や2年で取」るのは容易なことではないのではないかと考えられます。


これからアクチュアリー候補生)として就職活動(または転職活動)をされる方はアクチュアリー以外の資格を考えるくらいであれば、

論文を作ってアクチュアリージャーナル・会報への投稿・年次大会での発表

等をお勧めします。


数学では(それ以外でも?)修士課程での研究論文が学術誌(英文)に掲載されることは少ないのではないかと考えますが、アクチュアリージャーナルや会報に(日本語の)論文を掲載することはそれよりはずっとハードルが低いです。(いわゆる査読がありません。)

それでいて、学生さん・院生さんで投稿・発表している人などまずいない*2ので、もし掲載・発表されれば他の方との差別化を図る意味で大いに有効だと考えます。

しかも、(私も今さらながら気付いたのですが、)

アクチュアリージャーナルについては、会員でなくても投稿可能

です。(実際に会員でない方の寄稿が掲載されています。)


会報への論文投稿や年次大会での発表は会員でないと投稿できないですが*3、要項は

http://www.actuaries.jp/info/ronbunboshu_H22.pdf

のとおりです。

(年次大会は11月なので、発表の受け付けはもう締め切られていますが、論文自体は年中募集中です)

アクチュアリージャーナル自体は、会員限定への配布*4なので、原稿の募集要項の転載は見送りますが*5、ご興味のある方は

actuary_math@yahoo.co.jp

に御連絡くだされば、お知らせいたします。

*1保険会社の保険計理人はアクチュアリー正会員であることが必要条件ですが、それは通常ベテランアクチュアリーがなるので、就活等とはほぼ無縁です。年金数理人の場合は、独占業務があるので若干異なると思いますが。

*2:残念ながら各会社に所属する会員の投稿も…

*3:年次大会では会員でないと思われる方が発表者になっていることもあります。会員と共同であれば可能なのかもしれません。

*4ISSNは1343-6554です。国立国会図書館にあることは確認しました。

*5:上記のとおり会員限定配布なので、「会員内外を問わない」という情報を、会員以外の方が目にする機会は極端に少ないですが…

丈太郎丈太郎 2011/08/09 00:52 初めまして。外部から転職を考えている簿記1級持ちです。
気になったので質問させていただきます。

> もっとも、司法試験、公認会計士試験、税理士試験等であればアクチュアリー試験と同等以上のシグナリング効果があると思われます

この場合のシグナリング効果というのは、次のうちどちらを示しているということなんでしょうか?
(1)難関試験に合格できるという能力
(2)資格試験合格によって証明された知識

(2)だったとすると、これらの資格の具体的にどういう知識がアクチュアリーをする上で役に立ち、評価されるんでしょうか?
しかも、同等「以上」ということは、アクチュアリー試験合格よりもむしろこれらの資格のほうが評価される場合もあるということでしょうか?

2010-10-14 平均・分散の推定(損保数理の問題から)

今日は、読者の方(以下「Aさん」と表記します。)からのいただいた損保数理の問題(平成17年度の損保数理の問題1の(5))に関連し、

平均・分散の推定

というテーマで考えてみます。


問題は次のとおりです。(過去問題集からの引用)

ある保険のポートフォリオが、次のとおり与えられているものとする。

(i)*1被保険者のクレーム件数はポアソン分布に従う。

(ii)被保険者ごとに被保険者のクレーム件数の平均は異なる値をとる。

(iii)1,000人の被保険者を無作為に抽出したところ、各被保険者ごと*2のクレーム件数は下表のとおりであった。

クレーム件数n012345
被保険者数f_n512307123411161,000

(iv)クレーム額の平均は1,500、分散は6,750,000である。

(v)クレーム額とクレーム件数は、互いに独立である。

(vi)95%の確率でクレーム総額が上下5%以内に入る場合に全信頼度を与える。

なお、

¥frac{1}{¥sqrt{2¥pi}}¥int_0^{1.96}¥exp¥left(¥frac{-x^2}{2}¥right)dx=0.475

とする。

このとき、クレーム総額の期待値に全信頼度を与えるために必要な被保険者数を、次の選択肢の中から選ぶとして、そのうちで最も小さいものはどれか。

(A)1,000

(B)3,000

(C)5,000

(D)7,000

(E)9,000

(F)11,000

(G)13,000

(H)15,000


解答では、

クレーム件数をN、クレーム額をX、クレーム総額をSとして、

E(S)=E(N)E(X)=¥frac{0 ¥times 512+1 ¥times 307+ ¥cdots 5 ¥times 6}{1,000} ¥times 1,500=1,125

V(S)=E(N)V(X)+V(N)E(X)^2 *3

=0.75 ¥times 6,750,000+¥left(¥frac{0^2 ¥times 512+1^2 ¥times 307+ ¥cdots 5^2 ¥times 6}{1,000} -0.75 ¥right)¥times 1,500^2=7,158,375

としたあとで、

n ¥ge ¥left( ¥frac{1.96}{0.05}¥right)^2 ¥cdot ¥frac{V(S)}{¥{E(S)¥}^2}=8,691

としています。


Aさんは、次のようなご質問をされました。

ここで私が答えを見ても理解できなかったことがあります。

クレーム件数をN、クレーム額をX、クレーム総額をSとおいています。

E(N)とV(N)を1000人の被保険者を無作為に抽出した標本から求めています。

この無作為に抽出した値は標本平均と標本分散になるのではないですか?

E(N)とV(N)は母平均と母分散でこの問題のクレーム額の母平均、母分散ように与えられるものかまたは、被保険者数を無限大にして近づけるものではないのですか?


Aさんのご質問にはない点ですが、この問題では、

「被保険者のクレーム件数はポアソン分布に従う。」という部分は問題を解くのに直接関係ない

ということに注意しなければなりません。

実際、個別の被保険者のクレーム分布がどうであろうと、そのパラメーターが一定でない(何らかの分布に従う)のであれば、全体のクレーム件数の分布は別の分布になります。

(例えば、パラメーターがガンマ分布に従う場合は、全体の件数の分布は負の二項分布になります。もちろん、パラメーターの分布が与えられていないにで負の二項分布になるという保証もありません。)

もちろん損保(だけではなく生保も年金もそうでしょうが)の実務では、膨大な情報の中から不要な情報を捨て、必要な情報のみを選び取る能力が必要ですが、それを「損保数理」の試験として課することが適当かどうかは議論の余地があると思います。


さて、Aさんのご質問に戻ると、

まず、

(1)クレーム件数の平均と分散であるE(N)とV(N)は、1,000件の抽出データ(標本)からの「推定」値なのですが、問題文では、どのように推定すべきかその方法が明記されていないし、解答では、E(N)やV(N)を推定したという事実が明記されていない

点がポイントだと考えられます。

もっとも推定量の計算方法としては、教科書(平成21年7月改訂版)の0-21ページには

a.モーメント法

b.最尤法

しか明記されておらず、b.最尤法は使えない(Nの分布の情報が与えられていないので)ので、

「当然モーメント法を使うべきだ」

というのが暗黙の前提となっているのかも知れません

次のポイントとして、

(2)モーメント法を使うとして

E(N)の推定値を標本平均とすることは自然としても、

V(N)の推定値は標本分散とするか、標本不偏分散とするか?

という点があります。


例えば、

X_1,X_2, ¥cdots ,X_nが独立に平均¥mu、分散¥sigma^2(共に未知)の正規分布に従うn個の確率変数とするとき、

標本分散

S^2=¥frac{(X_1-M)^2+(X_2-M)^2+ ¥cdots +(X_n-M)^2}{n}

は、分散¥sigma^2の最尤推定量ですが、不偏推定量ではありません。

(例えば、

http://actuary.upthx.net/pukiwiki/index.php?1.1.2.2.1.%B3%C6%CA%AC%C9%DB%A4%CE%B4%D8%B7%B8

御参照)


より一般には次のことが言えます。

(命題)

X_1,X_2, ¥cdots ,X_nを平均¥mu、分散¥sigma^2の独立同分布に従うn個の確率変数とする、

このとき、

標本平均

M=¥frac{X_1+X_2+ ¥cdots +X_n}{n}

標本分散

S^2=¥frac{(X_1-M)^2+(X_2-M)^2+ ¥cdots +(X_n-M)^2}{n}

とおくとき、

E(M)=¥mu

E(S^2)=¥frac{(n-1)¥sigma^2}{n}

つまり、

標本不偏分散

U^2=¥frac{(X_1-M)^2+(X_2-M)^2+ ¥cdots +(X_n-M)^2}{n-1}=¥frac{nS^2}{n-1}

¥sigma^2不偏推定量 

(証明は最後にいたします。)


この問題では、V(N)の推定値を標本分散(分母が1,000)をそのまま採用するのか、標本不偏分散(分母が999)を採用するのかがポイントになります。

もっとも、実務上は、標本数が多ければ、標本分散としても標本不偏分散としても結果の数値に大きな変動がなく*4、標本分散を使うことも少なくないのですが*5、解答例のように、

いきなり注釈もつけずに、標本平均・標本分散を元の分布の平均・分散とし、かつ標本不偏分散に言及しないとAさんのような混乱を来す可能性も懸念される

ところではないかとも考えられます。


上記の命題の証明はそれほど難しいものではないですが、それを掲載して本稿を終わることにします。


(証明)

(a)標本平均

E(M)=¥frac{E(X_1)+E(X_2)+ ¥cdots +E(X_n)}{n}=¥frac{n¥mu}{n}=¥mu

(b)標本分散

iに対して、

X’_i=X_i-¥mu

M’=¥frac{X’_1+X’_2+ ¥cdots +X’_n}{n}=M-¥mu

とおくと、

E(X’_i)=E(M’)=0

であり、

また、

E(X’_i^2)=V(X’_i)=V(X_i)=¥sigma^2


X_1-M=X’_1-M’

=¥frac{n-1}{n}X’_1-¥frac{1}{n}X’_2-¥cdots-¥frac{1}{n}X’_n

(X_1-M)^2

=¥frac{(n-1)^2}{n^2}X’_1^2+¥frac{1}{n^2}X’_2^2+¥cdots+¥frac{1}{n^2}X’_n^2+¥sum_{1 ¥le i<j ¥le n}¥alpha_{i,j}X’_iX’_j

(ただし

¥alpha_{1,j}=-¥frac{2(n-1)}{n^2}

¥alpha_{i,j}=¥frac{2}{n^2} ¥, (i>1)

これより、

E¥{(X_1-M)^2¥}

=E¥left(¥frac{(n-1)^2}{n^2}X’_1^2+¥frac{1}{n^2}X’_2^2+¥cdots+¥frac{1}{n^2}X’_n^2¥right)(∵E(X’_iX’_j)=E(X’_i)E(X’_j)=0

=¥left(¥frac{(n-1)^2}{n^2}+¥frac{n-1}{n^2}¥right)¥sigma^2

=¥frac{(n-1)¥sigma^2}{n}

E(S^2)=¥frac{(n-1)¥sigma^2}{n}¥cdot¥frac{n}{n}=¥frac{(n-1)¥sigma^2}{n}…(証明終)

*1:もともとは丸数字だったのですが、機種依存文字のため(i)〜(xi)としました。

*2:原文まま

*3:原文ではV(S)=E(N)V(X)^2+V(N)E(X)^2となっていますが、V(X)^2V(X)の誤植ではないかと考えられます。

*4:本問でも、標本分散だと答えが8,691となるとこころ、標本不偏分散だと8,694であり、もちろん結果の選択肢に影響はしない

*5:例題で学ぶ損保数理(isbn:4320017358)の例題17でモーメント法による推定を行っていますが、ここでは標本分散をもとの分布の分散の推定値として採用しています

2010-08-21 アクチュアリー試験2科目目の選択について

今日は、 Schmuller ( @ )さんから

というTweetをもらったことをきっかけに、同じように迷われている方もいらっしゃるのではないかと考え、

アクチュアリー試験2科目目の選択

について、上記のTweetへの回答という形で書いてみようと思います。


まず、前

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20090827

にも言いましたが、

アクチュアリー試験の受験は、

1年に1〜2科目程度が基本

だと考えています。

特に社会人の場合は、1年2科目でもかなり(勉強時間の確保が)厳しいです。

Schmullerさんの場合は、大学3年生ということで社会人よりは余裕はあると思いますが、それでも数学にある程度手ごたえがないのであれば*12科目目を考える前に数学に全力投球されることをお奨めします。


数学には手ごたえがあるという前提で、その上でその2科目目を生保数理か損保数理のどちらにするかですが、

今年最初の受験であれば生保数理がいい

のではないかと思います。

2つの科目を比較すると

(1)生保数理と損保数理のうち、数学と親和性の高いのは損保数理です。

(2)ただし、損保数理の合格率は、下の表のように、過去5年間の合格率は1年(36.7%)を除いて10%前後となっており、「運」の要素もある科目になっているとも考えられます。

<表>年度別一次試験合格率(合格者数÷出席者数*2
科目20052006200720082009
数学7.2%10.6%41.8%22.8%18.9%
生保数理10.2%11.0%38.7%21.9%21.5%
損保数理9.9%11.9%13.1%36.6%10.5%
年金数理18.9%11.9%52.0%18.1%11.6%
会経投23.0%15.3%24.8%27.1%15.1%

(出典:各年度のアクチュアリージャーナルより筆者算出)

(3)参考図書その他についても、昔から試験科目になっている生保数理の方が充実していると考えます。

(4)損保数理は、去年から教科書改訂で、試験範囲が拡大してますます難しく*3なっています。


もっとも相性もあると考えられるので、過去問題集等で両方の問題を眺めてみてから考えられるのも一法かと考えます。


http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20091120

等もご参考にしてください。

*1:もちろん、「今受験しても合格できる」程度である必要はないですが。

*2:受験申込して会場に来なかった方は含まれていません。

*3:これまでの日本の実務でほとんど扱われてこなかったような概念も、含まれています。

2010-07-08 アクチュアリー(試験)と大学院

今日は

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100615

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100626

でご質問された高校生の方からのご質問と回答です。



これを基に

アクチュアリー(試験)と大学院

について考えてみたいと思います。

まず私自身は大学院に行かずにすぐに就職したので、そのことは念頭においてお読みくださるようお願いします。

また、以下保険数理を念頭に置いて話しますが、年金数理でも同様だと思います。


結論だけ先に申し上げると(突き放したような言い方になって申し訳ありませんが)

「どちらも可」

ということになります。


1.「大学の3年からであり、学部卒で就職するとしたら、就職までに受験できる機会は1回」ということと、大学院修士課程に進学すればこれが(最大)3回になることは、間違いないところです。


2.ただし、

大学院で学んだことが、アクチュアリー試験受験のための知識の増加に必ずしも直結するとは限らない

と考えます。

反論があるかも知れませんが、日本の大学でActuarial Science(「保険(年金)数理」)を研究されている先生方は、ほとんどいないであるといってよいと考えます。

金融工学や確率過程論等を研究されている先生方は少なくないのですが、金融工学と保険数理は重なっている部分もあれば全く異質な部分もあると考えます。)

金融工学等の知識は、アクチュアリーの業務にも損にはならないですが、それは保険(年金)数理業務のすべてではないし、試験にも直結しないものでもあります。

ましてや、金融工学や確率(過程)論等と関係ない純粋数学経済学の、特に大学院で研究されるような内容は、アクチュアリー試験にはほとんど無縁と考えられた方が無難でしょう。ほとんどの先生方は、もちろんアクチュアリーとか全く意識せずにご自身のご興味の赴くままに研究をされているのだと考えます。

今までこのブログでは何度か述べているのですが、

(日本の)アクチュアリー試験に必要な数学力は、大学2年くらいまでの微積分、線型代数

であり、

大学院のカリキュラムではない

ことに留意する必要があります。

そのため(理系の)大学院を修了された方でも、アクチュアリー採用の試験でこれらの必要な数学力をクリアしていない(ためお引き取り頂いた)方はいくらでもいらっしゃいます。


3.時間についてですが、一般的にいうと、大学院生の研究時間<会社員の就業時間という不等式は成り立つと思いますが、特に保険会社等に入社したてのころは、アクチュアリー会の講座等の勉強の機会を与えてくれたり、試験前の仕事量を減らしてくれたりするなどそれなりの配慮をされることが少なくありません。


4.念のために申し上げますと、「アクチュアリーになるのに大学院はいらない」というつもりはありません

http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100626

でも書いたこととも重なるのですが、大学院にいながらでないとなかなか学べない事項は存在します。

もちろん、大学院に行かずに早めに「会社」に出る*1ことによって得るものもあると考えます。

結局、

大学院か会社かの選択というのは、経済学部か数学科かの選択のようなもの

で、大学4年間で学ぶ経済学(又は数学)に飽き足りないのであれば、大学院に進んでさらに究めるのも一法だし、保険会社信託銀行、コンサル等)に就職して実務の中で学びたいということであれば早くに「会社」に出ることもまた一法だと考えます。


5.最後に、受験機会に関連して申し上げますと、(大学1年〜3年までの)3年かけて準備すれば、受験機会が1回であっても1〜2科目合格することは十分可能であると考えます。

ところで、

(1)3年次に合格科目がなくても、あるいは受けていなくても、アクチュアリー採用される可能性も
(2)アクチュアリー採用されなくても(一般の社員として入社しても)アクチュアリー採用より先にアクチュアリー正会員になることも

はたまた

(3)新卒で入った会社では芽が出なくても転職で逆転することも*2

全部起こり得る(実際に起こっている)ことなのです。


6.以上をまとめると

大学院に行くかどうかは、アクチュアリー試験合格の有利不利ではなく、自分の興味に従って決まればよい

と考えます。

(大変失礼な書き方になるかも知れませんが、)今の時点で考えてもしょうがない(3年後興味が変わる可能性のほうが大きいです)ので、大学3年になって改めて考えればよいのではないでしょうか。

以上

*1:「社会に出る」という表現が取られることが多いとは思いますがここではあえてこのように記すことにします。

*2http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100319http://d.hatena.ne.jp/actuary_math/20100322