もしかしたら、助け舟など出さずとも

ちゃんと対応してくれるだろう、と多くの人が信頼していたのかもしれません。残念ながら、そういう人たちからの信頼よりも大切な何かがあったということなのでしょう。

切込隊長
 たぶん、町山氏指摘の通り「とにかく、唐沢はバレた時点でさっと盗用を認めて、自分の責任で回収などの後始末をすれば、これほどみっともないことにはならなかったはず」というのに加えて、同じテーマで新書で五冊六冊出す方法論でやろうとして引くに引けなくなって、掛け金が上がってしまったため勝負から降りられない唐沢俊一氏に、現状で誰一人まともな人が助け舟を出していない状況について鑑賞するべきなのかとさえ思います。
http://kirik.tea-nifty.com/diary/2007/07/post_c222.html


まっとうな「助け舟」はネット上には表れないと思います隊長殿。以下は、実名もしくは筆名の人たちによる公開されたご意見であります。

町山智浩
 唐沢俊一もどう見ても他人のサイトからコピーしたのをちょこっといじっただけなんだから、さっと謝罪すればよかったのに「参考にした」だけとか言って突っ張るからみっともない。

http://d.hatena.ne.jp/TomoMachi/20070611

大森望
狂乱西葛西日記■2007年06月14日 週刊新潮唐沢俊一盗作疑惑記事の謎

 ぶっちゃけ、「コピペした他人のテキストをちょこちょこいじってそのまま自分の本に使った」という話なんだから、全力で謝罪する以外の選択肢はないと思うんだけどなあ。むしろ、最初から過剰なくらい大げさに謝ってしまうと一瞬で鎮静化するのに。ただちに絶版・回収を宣言したほうが圧倒的にラクだったんじゃ……。まあ、そうもいかない事情があるんでしょうが、こういう凡ミスが生じた経緯についても、その後の対応についても謎が多いことである。
http://www.ltokyo.com/ohmori/ (←今のところ。)

竹熊健太郎
ブログ主の告発とK氏の釈明を読む限り、K氏が剽窃(ひょうせつ)・盗用した疑いは濃厚であり、この件に関して氏を擁護することはできない。(略)
この問題は版元を交渉窓口に現在も続いているが、今のところブログ主は裁判まで起こす意思はないようだ。K氏が誠意ある対応を貫くなら、早晩解決するだろうと思われる。
http://www.sankei.co.jp/culture/enterme/070614/ent070614000.htm

藤岡真
(たくさんある中から、あえて2007年7月12日の短い記述を。)

唐沢俊一謝れば済む問題だと思う(私見)。さっさと謝りなさい。それ以外になにがあるというのだ。
http://www.fujiokashin.com/criticism/4.html (←今のところ。)

ここに引用した皆さんは「盗用を認めて全力で謝りなさい」という助言をされているようです。なぜ「盗用を認める」ことが重要なのかは別の人が教えてくれました。

大屋雄裕
しかし筆者氏が求めていたのは財産的被害に対する補償ではないのであって、それはこの金額の提示に対して筆者氏が慰謝料支払自体を断っていることからもわかるだろう。そこで求められているのは記述が誰のものかについて正当に表明せよという名誉の救済なのであって、そうなると面子の代金として20万はいかにも安いという話になる。
(略)カネのためではなく自らの人格の表現として作品・記述を公開する人が増えてきており、かつそこで公開された記述に対する権利侵害が問題になるようになってきている。その場合に注意しなくてはならないのはこれらの人々の著作行為がカネ目当てではないことで、むしろ適切なクレジットがなされるなら別にカネなど要らないと思っている人も多い。その場合、問題になるのはカネが適切に払われたかどうかではなく事前の本人の了解があったか否か、適切な氏名・出所表示がなされたかどうかということだろう。もちろん救済としても金銭の支払ではなく、本人の同意取得・クレジットの表示を適切にやり直すことが求められる。著作権をめぐる紛争の対象は財産権から人格権に移ってきている。このように自分の記述・名誉・人格が適切に尊重されることを重視するという立場から見た場合には、逆に筆者氏の感覚が当然なのであって幻冬舎けしからんという話にもなるだろう。だがそこで問題視される対応が従来のカネの問題の処理としてはごく普通だというのはすでに述べたところである。結局ここでは求めるもの・尊重すべき価値の違う主体同士が衝突しており、それが混乱の原因だと思うわけである。
http://www.axis-cafe.net/weblog/t-ohya/archives/000450.html#more

お金じゃないんだ、名誉の問題なんだよ。ということですね。印象的なのが「求めるもの・尊重すべき価値の違う主体同士が衝突」というフレーズです。おおやさんは、出版社が話をお金で済まそうとしていることについておっしゃっているのでしょうが、実はそれ以前に価値の違う主体がぶつかり合っていたのではないかと私は思います。ぶっちゃけ、名誉より別のものが大事、な人がいたのではないかと。別の人の意見をきいてみます。

大石英司
 この件に関しては、編集部との板挟みにも遭っただろうしで、唐沢氏も気の毒だなと、少し同情しています。(略)
 ただ私が表現者として辛いなと思うのは、そういう事件が起こったことを何ヶ月間もサイト上で晒せ、という部分は、一件何気ないように思えるけれど、表現するということで商売している立場では、やっぱり辛いですよ。それはもう「私は盗み癖があります」という看板を掲げてスーパーの前に立てと言われているようなものですから。
http://eiji.txt-nifty.com/diary/2007/07/post_47c3.html

私はこれを「表現者としての名誉の問題で、長く晒し者になるのは辛かろう」と受け取りました(まあ、単純に「商売に差し支えるから辛い」とも読めるんですけどね)。でも。

大石英司
 唐沢さんの件で、唐沢氏側の見解がサイトにアップされたみたいですね。みたい……、というのは、実は唐沢氏のサイト自体にはアクセスしてません。この問題を扱ったいろんなブロガーが転載したものをつなぎ合わせて読んでいるだけです。なぜ直接そこに行かないかというと、あまりに痛々しいから。
 ぶっちゃけ、それはサブカルホープとしてどうなの? としか思えないテキストなのですが。もしそれが唐沢氏の本心だとしたら、起こるべくして起きた事件としか思えない。
http://eiji.txt-nifty.com/diary/2007/08/post_8b33.html

いろんなひとがいろんなところで突っ込みを入れまくっているのでここでは繰り返しませんが、この「唐沢氏側の見解」はあんまりです。一見、自分の名誉を保つために盗用を否定しているように見えますが、誰も納得しない論理では名誉は守られるどころか地に落ちるだろうということに唐沢さんが気付かないとは思えないのです。つまり、名誉より大事な何かを守っているのではないかと私は考えるのです。
漫棚通信さんの名誉を回復するためには、唐沢さんは盗用を認めることによって自分の名誉の一部を捨てなければなりませんでした。しかし唐沢さんは、どうせ捨てなければならない名誉を、違う方法で捨ててしまいました。残念ながら、もう漫棚通信さんに償うことはできません。

※8月3日追記
上記は唐沢さんに対し不当な非難であったと思い直しました。
「記述が誰のものかについて正当に表明せよという名誉の救済」というおおやさんの指摘について、当初唐沢さんは

【ご報告(6/5)】
悪意または盗用という意はまったくありませんが、山川惣治『サンナイン』のストーリィ紹介に関し、当サイトの紹介を大いに参考にさせていただいたことは事実ですし、ある作品のストーリィを紹介するという性格上、参考にさせていただいたサイトとの記述の非常な類似のあることも事実です。
http://www.tobunken.com/news/index.html

として、記述は唐沢さん自身のものであり漫棚通信さんの記述は参考にしただけであると主張していました。しかし、8月1日の投稿では、

【『新・UFO入門』 交渉の経緯について(一部訂正)】
今回の原稿の当該部分の掲載については、(略)手元にコピーし、メモしておいた漫棚通信氏のサイトの文章を、(略)掲載する形になってしまったものです。
http://www.tobunken.com/news/index.html

と、明確に漫棚通信さんの記述であることを認めていらっしゃいます。その記述が改変されていること、及びその理由を説明しようとする見苦しい言い訳があるために、この一番大切なポイントが見えにくくなっていることが問題であるとは思いますが、「記述が誰のものかについて正当に表明せよという名誉の救済」については実施されているのではないでしょうか(それが「達成」されているかどうかは漫棚通信さんが判断されることだと思います)。よって私の上記主張は、「見苦しい言い訳によって捨てなくてもよい名誉を捨ててしまった唐沢さんは、漫棚通信さんに償ったはずの自らの名誉の価値を貶めてしまいました」と訂正させていただきたいと思います。
※8月3日追記ここまで


初手から助言などしない人たちもいました。きっとこの人たちが正しかったのでしょう。

渡辺電機(株)
それはさておき、「盗作」騒動に対する唐沢兄の対応はさすがに素早いものがありましたが、原典を読まずに孫引きでシッタカ書いていたという恥ずかしい事実は消しようもなく、どうすんのかなあ。まあ、どうもしないだろうな。相手が小物でよかったねという話で終わるのだろうな。この世に正義なんてありません。
http://yaplog.jp/denki/archive/523

村崎百郎
大本営発狂 電波妄想戦記 2007年8月1日15時31分)

オレとしても、ここで自ら対談を打ち切るよりも、今後も毎月、唐沢氏の味方面して対談に行って「よっ!肚をくくって極悪人ロードまっしぐらとは天晴れですな!」「裁判マダ〜?」「傍聴行くよ、傍聴。応援しねえけど(笑)」「このさい裁判前に痴漢でもやって現行犯逮捕されて、今から刑務所慣れしといた方がいいんじゃね?」などと、面と向かってネチネチとイヤミをかます方が面白いし、何より話題の事件の当事者から直接、騒動の最新情報を聞いて楽しめる役得は捨てがたい(笑)。(略)ってことで、心ある読者諸君は、今後は「社会派くんがゆく!」と書いているのを見たら、心の目で「ドロボーくんがゆく!」とルビをふって読んどくよーに(アナル)。
http://data-house.oc.to/users/100/diary/history.html

村崎さんは本当に楽しそうです。ということは本当に激怒しているということなのではないかと私は思います。


さて、もはや唐沢さんは漫棚通信さんに償うべき名誉をお持ちではありません。唐沢さんは、自らの名誉を捨てて漫棚通信さんの名誉を回復されようとしています。漫棚通信さんが早くそのことに気づかれて、唐沢さんを信頼していた過去の自分への嫌悪を脱し、「春の日差しにきらめく清流の如き爽やかな心地」にたどり着かれるとよろしいのですが。Amen.&南無大師遍照金剛