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銀河孤児亭

2015-07-03

トイ・ストーリーが描き続けた「アイデンティティの喪失と獲得」


トイ・ストーリー3」が放送されたので、ちょっと折角なので公開当時に書いた感想を、多少加筆修正してアップしておく。


 トイ・ストーリーとは基本的にアイデンティティの喪失と獲得」を描き続けてきた映画だ。

  第一作でその「喪失と獲得」の役を担ったのはスペースレンジャー・バズ・ライトイヤーだ。彼は自分を本物の「宇宙の戦士」だと思い込んでおり、視聴者からすれば道化のようなポジションのキャラクターだ。その一方で物語世界の中では最新の大人気オモチャとしてウッディにかわりオモチャらの持ち主であるアンディの一番のお気に入りの座につき、それと同時にオモチャ達の中でもリーダー的な存在となる。自分の正体について思い違いをしたままで。
 しかし物語の中、バズは期せずして自分が大量生産の玩具に過ぎない事を知り絶望する。自暴自棄となったバズは叫ぶ。
「私は一体どこの誰なんだ!?」
  そんな「オモチャでしかない事の悲しさ」に絶望したバズが、最後には「オモチャである事の幸せ」を獲得するというのが第一作「トイ・ストーリー」の物語だ。

 その「オモチャである事の幸せ」をバズに教えたのが他でもない主人公のウッディなのだが、第二作において今度はそのウッディのアイデンティティが揺らぐ。
 「トイ・ストーリー2」では、オモチャであるが故のトラウマを抱えたプロスペクタージェシーという二人(二体?)のキャラクターが登場する。老人キャラクターのプロスペクターは、過去に店頭で惨めに売れ残り、値下げやワゴンの投げ売りを経てプライドをズタズタにされながら、一度も誰からも所有されずに今まで生きてきたオモチャだ。一方でジェシーの場合は、かつてはエミリーという名の少女にお気に入りのオモチャとして大事にされていたが、そのエミリーも成長とともにいつしか自分の存在を忘れ去っていき、そして最後には捨てられる、という過去を持つ。
 自身がオモチャである事に誇りを持っていたウッディは、全てのオモチャがその幸せを手に入れられる訳ではない事、そして今自分が享受している幸せも、いつかは失う事が約束されている事を知った訳だ。自分が今いる楽園があくまで期限付きであるという現実を突きつけられたウッディは、プレミア付きのオモチャとして博物館でキレイに大事に保管される事を一度は選択する。
 しかし救出に現れたバズ達の説得によって、ウッディは自分の持ち主、アンディのもとに帰る事を決意する。自分のアイデンティティが、誇りの在処が、「プレミア品であること」なんかでは無く「アンディのお気に入りのオモチャであること」にあるのだと思い出したからだ。
 いずれ終わってしまう楽園に、それでも最後まで、自分が必要とされる限り残る事を決めたのだ。

 そしてシリーズ完結編である「トイ・ストーリー3」では、2で示されたオモチャとアンディとの別れが実際に描かれる。
 冒頭からして既に前二作からレギュラーキャラは半減しており、残されたウッディ達とて何年も遊ばれていないという設定だ。そしてアンディは大学入学のため遂に家を出て行く。予定されていた楽園終焉を目前にしてオモチャ達は右往左往し、予期せぬトラブルにも見舞われながら彼らは映画としての冒険活劇を繰り広げる。
 「3」の中で、ウッディは何度も「俺はアンディのオモチャだ!」と口にする。捨てられたと思い込んだ他のオモチャ達はアンディの家を脱走し、保育園に新たな居場所を見出すが、しかしウッディだけは「家に帰ろう。アンディの判断に身を任せよう」と皆に語りかける。何故か?
「俺達がアンディのオモチャだからだ!」
 物語の最後で、ウッディ達は近所の女の子の元へとアンディの手で引き渡される事となる。それはウッディがアンディにひっそりと働きかけた事によって引き起こされた結果だった。自分一人だけはアンディの手元に残されるはずだったウッディは、自分の意思によりアンディとの別れを選んだ。ウッディは、大人となったアンディにノスタルジーで所有されるのではなく、新たな子供の元で遊ばれる事を選んだのだ。
 そして、最後の別れの刹那、オモチャ達はアンディと共に奇跡のような一時を過ごす。一連のラストシーンを見ながら、私は3Dメガネの裏でボロボロ涙をこぼしていた。


という訳でこんなにキレイな、完璧と言っても良い終わり方をしたトイ・ストーリーですが、はてさて「4」では一体どんな物語を見せてくれるのか。楽しみなような、不安なような。

(ところで、第一作ではウッディがアンディのお気に入りの座をバズに奪われるってのがもう1つの「アイデンティティの喪失と獲得」に対応してて、それが「古いオモチャが新しいオモチャに取って代わられる」という意味で、トイ・ストーリーで一貫して描かれたもう一つの大きなテーマ「時間の残酷さ」を表してるんだよねって話を、上手く入れたかったんだけど無理だったんだよねー。とちょっとだけ弁解しておく)
(ンで今夜久しぶりにトイ・ストーリー3見たんだけど、「仲間達と共にある」というのもテーマの1つとして機能してるね。前見た時はあんまりそういうふうには見てなかったわ)