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September 19(Sun), 2010

オードリー若林の目標設定の妙技

かなり昔になるのですが、未来創造堂というTV番組(2009年7月31日放送回)にオードリーが出演していました。その中で、若林が現在のオードリーのスタイルを確立するきっかけについて、彼の好きな岡本太郎と関連づけて語っていました。その若林の発想が非常に実用的で、独創的であったので紹介しようと思います。


以下のサイトに、会話の起こしが載っていましたので引用します(読みやすいよう語尾・句読点など一部改訂)。

若林 「岡本太郎さんの太陽の塔なんですけど、なんで好きかっていうと、太陽の塔を作るいきさつがすごい好き。僕ら、ずーっと7年ぐらいウケなかったんですよ、全く。笑わそうと頑張ってるのに全然ウケなくて、頭が変になってきちゃって、6年間スベり続けてると。その時ちょうど岡本太郎さんの本とか、美術館とかに興味を持ち始めて。

 太陽の塔を造ったいきさつが、進歩と調和っていう大阪万博のテーマで、岡本太郎さんがオブジェを作ろうとしてたんですけど、「逆に調和と真逆のものを造ってやろうということで、太陽の塔が上から睨みつけているものを、調和と真逆のものを造ったんですよ」って本に書いてたんです。

 『伝わらないものをやれ』っていうのを、岡本太郎さんの本で読んで。僕、すごい感化されちゃって。ウケない事を作ればいいんだと思って、春日に「ちょっと太陽の塔みたいな立ち方をしてくれ」って頼んだんですよ。

 笑わそうと思ったら、ホントに難しいんですけど、岡本太郎さんはちょっと見る人がイラっとするような、なんだこれは!って思うものをつくろうとするっていうのを本に書いてたんで、イラっとさそうと思ったら、すごく簡単なんですよね。すっごいイライラしてるんですよね、お客さん。

 ライブの出待ちって『面白かったです』っていうために待つんですけど、俺らは、文句いう出待ちの人がいっぱいいたんですよ」

木梨 『ふざけんなよ!って?』

若林 「そうなんですよ、『私達お金払ってライブに来てるんですけど、ゆっくり出てきて、見下ろされて、 ヘッ てやられると、馬鹿にされてる気がするんですけど』って言われて、でも僕はそうしようと思ってたんで、シメシメと思いながら」


この映像を見たとき、若林は本当に頭の良い芸人さんなんだと思いました。このお客さんを「笑わせる」ことから「イラッとさせる」ことへの目標の転換は、彼らを成長させることになります。


笑わせることの難しさ

お笑いライブという場面で、人を笑わせることは非常に難しい技術です。日常会話の中で、気の知れた仲間を笑わせるのとは、わけが違います。「おもしろいこと」が当然期待されるときに、観客を引き込み、集中させ、抑揚・テンポを考えながら、相手の予測を裏切って、『オモシロイ』という感情を引き起こす。これは大変なことです。さらに、お笑いライブを見に来るのは、目の肥えている人々です。

クラスの中でおもしろいとされるレベルの人間がお笑いライブでお客さんを笑わせるというのは、リトルリーグの4番打者実業団野球のエースの球を打てと要求するようなものです。日常でのおもしろさと、お笑い芸人として笑いを取ることにはそれぐらいのギャップがあります。ここで、そのギャップをどう埋めるかということを考える必要に迫られるのです。


若林がやったこと「他人の気持ちに影響を与える力」を手に入れる

若林がやったこと。それは、「まず人の感情に影響を与える力」を得ることだったんだと思います。自分のやるネタと、観客のリアクションをつなぐ、つながりがあるのだと身をもって体験する。ステージ上で行うアクションが、観客の感情に語りかけることができれば、それが「おもしろい」というものでなくても1つの力を習得したことになります。なにをやっても響かない状態で同じことを繰り返すのとは、雲泥の差があります。

確かに相手を怒らせる状態で止まってしまっては意味がありませんが、彼らは影響を与える気持ちを「怒り」から「おもしろい」というものへとシフトさせていったのです。このウケるためのクッションとしての、「イラつき」を誘う練習。このクッションをおけたことの意味は非常に大きいと思われます。それが、ネタを修正・最適化し、ウケをとることへ繋がっていったのです。


目標設定の重要性

こういう形での目標・方針の転換は、イチロー打率よりも、ヒット数を気にするということと共通しています。打率を目標としてしまうと、チャレンジしてヒットを打つことよりも、打率を落とさないためにミスをしないことが重要になってしまう。それが結果としてパフォーマンスを低下させる。そのため、ヒット数を目標にすることで積極的に打席に立ち、自分のパフォーマンスを向上させる。このように、どういった目標に向かって努力するかということはパフォーマンスに直結します。

その意味で、オードリーが選択した「方針」は理にかなっており、実用的なものであったといえます。



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本エントリーをガジェット通信さんへ寄稿いたしました。