色ロッド

昨日は色カレットのチャージについて書きました。
原料が「ボツ作品」だったという衝撃的な事実を告白してしまったので、ついでに、「色ガラス」についてもう少し説明しておきたいと思います。
規模の大きい工場の場合、熔解炉で独自の色ガラスを溶かしている場合が多いのですが、北工房のような規模の小さいスタジオは、一般的に、色のロッド(棒)をメーカーから購入して使っています。
棒状の色ガラスを生産しているメーカーは何社かあるのですが、いずれも、アメリカやドイツなど海外の企業です。
長年に培ったノウハウがあるのでしょう。国産品はまだまだ同等に使えるレベルにありません。
北工房も「クーグラー」をメインに使っているのですが、それなりの量を消費するので、ドイツから直接輸入しています。
といっても、発注や整理をしてくれるのは本家のスタッフの皆さんですが。(いつもお世話さまです)
船便で送られてくる段ボール箱には、長さ30cm、直径3cmほどのロッドが、おが屑の緩衝材に埋もれて詰められています。
ドイツならではの環境対策なのでしょうか。昔はこの国も、リンゴを「もみ殻」に詰めて送っていました。
天然素材の緩衝材には、何とも言えない「ぬくもり」があります。
北工房も、米農家からもみ殻を無償でもらってきて梱包材に使ってみようと思っているのですが、だめでしょうか。
うまくいけば、ミラーマット代をまるまる浮かすことができます。
ではなくて、今流行のエコに貢献できます。
さて、このロッド。
いったいどのようにして使うのでしょうか。
それをこれから簡単にご説明します。
まず、タガネで小さな欠片に割って専用の電気炉に入ます。
ほどよい温度になった欠片を、吹き竿の先端に引っつけ、つるんと溶かした後に、ポット(坩堝)の中の「透きガラス」を巻きつけます。
つまり、色は、作品のいちばん内側に入っているだけなのです。
これを内被せといいます。
この作品を見ていただければ一目瞭然でしょう。
しかし、こんなふうに薄く吹いたものでは、内側に色があるのか、それとも、色がついたガラスをポットから巻いて使っているのかよくわからなくなります。
北工房の作品は、昨日の色カレットを使ったブルーグレー以外は、すべて内被せによって色を出しています。
絵の具のように色々あるなら、どんな色だって自由に使えるのだろう、と思われるかもしれませんが、実はそれほど簡単なことではありません。
透きガラスとの相性というものがあります。
相性とは「膨張率」のことです。
透きガラスは、色ロッドの膨張率に合わせて調合されているのですが、どうしても完全なものにはなりません。
合う色と合わない色があるのです。
特別な事情がないかぎり、合わない色を無理に使う理由はありません。
膨張率の制約があり、そこに、ガラス作品を愛好する方々の嗜好という「神の選択」を経たものが、北工房が使用している「色」ということになるのでしょうか。
「この色が好きだから」とか「酒杯はこの色に限る。そこは絶対に譲れぬ」とか「今年はこの色が流行するらしい」といったような素朴な理由で色が選ばれているわけではないということをご理解いただけたなら、このテキストを入力した甲斐があったというものです。