Bi-Bo-6

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日常のあれこれ

ハングオーバー!!!最後の反省会 - トッド・フィリップス監督

"The Hangover PartⅢ"
2013年/アメリカ/英語



キャッチコピーはさしずめ『下ネタは世界をひとつにする』か。
以下ネタバレ含。










★---
ハングオーバーは、3作とも観ています。
今回も、前作『国境を超える』編でR-18版を上映していたTOHOシネマズ六本木にて。


ばーっと感想書きます。


まず出だし、バンコクの刑務所からチャウが逃げ出すシーンの描写。
音楽や画角もろもろ、レ・ミゼへのオマージュかな?と思った。
(ちなみにここで一瞬アランぽいひげもじゃのおじさんが画面内にいたのだけど
 あれは本人のカメオ的な出演だったり・・してるといいな。ただ、気のせいかもしれない)
そしてポスターの裏に穴を掘る描写で思い出したのは『ショーシャンクの空に』、
地下水路をたどる描写はどこかしら『ハリーポッターと秘密の部屋』的。
どちらも逃亡劇ではポピュラーなアクションだと思うから、上記の作品を意識しているかはわからないが。
音楽がすごく荘厳なんだよね。観客に「今回は違うのかも」と期待させるだけの効果は充分にある。


キリン・よき伴侶・ニューホライズン、と小ネタを散らしながら、
一行はダグを取り戻すためにチャウとチェイスを始める。
前半はなにかと「命の危険」を感じさせる描写が多かったように思う。
マーシャルがかなりの強面ってことで、ずっと銃構えてたもんね。
このターンは少々"教育的(ニューホライズンの辺りね)"というか、「ただの真人間が犯罪に巻き込まれそうになってる」って印象。
ドキドキはあるけどワクワクはないかなぁ。
ちなみに「パズ友」「ネトゲで知り合った」って翻訳、素敵でした。


その後は車飛ばしてメキシコでチャウに会う。
これは全編通して言えることだけど空撮多すぎ。
「3人がしゃべる・叫ぶ・アクションする」か「移動してる」描写しかないものだから、
つまりセリフが無いシーンはほとんど空撮と言っても過言ではない印象。
とはいえあんまり時間に追われてるという印象もなかったので
追いかけっこ的な緊迫感はなかったね。
(明朝6時に高台で・・って話はあったけど、すぐにチャウを見つけたからか3人がそれを急ぐようなセリフはほとんどない)


「チャウの家」に侵入するシーンは今回のキラーシーンのひとつ。
スチュとチャウっていう2人だけで話が進むのが良い。
スチュに関しては薬品を買いに来た時の演技もすごく良かった。
アランといるとどうしても「笑いを分からない優等生」という印象に引っ張られてしまうけど、
私はスチュの「何気ない所作によるボケ」がすごく好きでした。リアクション芸の一種かもしれない。
金塊を運んだ後ドアを閉められてしまうシーンでは、「フィルさん、あなたハンマーは?」って誰しもが思ったことでしょう。


つぎはラスベガスでのシーン。
ここでやっと一話のテンションに帰ってきた。
テンションっていうのは、画面の色彩感覚的なものかな。バンコクもケバかったよね。
前半は砂埃にまみれてるシーンの連続だったから、画面的にあまりギャグっぽくならなかったのも大きい。
シーザーズ・パレス!ここはフィルが「頭の切れるただのイケメン」になるところ。
その身のこなし…トム・クルーズさんでは…?という。
シーツでベランダに降りるシーンはお約束とはいえ、とてもわくわくしました。
アランの「危機一髪」は、ワイヤー感が残っていたのが惜しい。
室内では、チャウが女の子はべらしてる描写があるかな?と思ったけどそういうのもない。
流れとしては腰振ってそうなんだけど、セクシャルな表現はほぼなし。
今回、全編を通して思ったことはギャグが弱いということ。
トーリー上の人物が固定されすぎていて、ボケの幅が狭いってことかな。
バンコク編はタトゥとか屋台とか僧侶との絡みが最高だったから。


今回の映画では、スチュが電話しながらリムジンでチェイスするシーンが一番好き。
ここでもリアクション芸が冴えてる。


最後、高台でチャウが復活するところ、
アランが金塊の袋を運び出すときに一瞬トランクを見つめるカットがあるんだよね。
私はこれで「きた。絶対チャウを移動させてるはず」って思ってしまったんだけど、
初見で回収できる伏線という意味で、ナイスフラグかもしれません。


アランとおばはん(仮)との恋模様も素敵。
照れとかそういうものがなくてふたりともまさに目がハートで、素晴らしいと思う。
恋模様→結婚式という流れの中でアランが真人間に戻るわけだけど
このラストの「救われた」感、シリーズの完結編としてとても優秀!



評価の低さとは裏腹に、破格の予算がかけられてたっていうのが一番のギャグになってしまった作品でした。*

プラチナデータ - 大友啓史監督

"プラチナデータ"
2013年/日本/日本語

プラチナデータ (幻冬舎文庫)

プラチナデータ (幻冬舎文庫)


東野圭吾原作。原作未読。
近未来を舞台にしたサスペンス・アクション。

品川駅前とか上野のコリアンタウンでの街頭アクションが見応えあります。

他に特徴的なのは、「長回し」。役者さんたちの呼吸を感じ取れたのが良かった。
(フレームインのタイミングだったり画角なんかでは演者がアイディアを出すことも多かったらしい)


タイトルバックの、「国民のDNAを集めて、整理して、解析してまーす」という映像がとてもかっこよかった。
よくよく調べると、製紙工場の中に実際にDNA鑑定用の機材を積んで稼働させながら撮影したとか。
やはりリアルの上に立つリアリティに偽りなしといったところ。
ここの部分は監督も話していたように、
見ている人たちがすんなりと「自分ゴトのように」物語へ入り込むためのブリッジという役割を見事に果たしていたように感じます。



トーリーはツッコミどころ、多いかもね。
倫理観への理知的な問いよりも、情緒的な切り口から考えさせようとする内容だと思う。
DNAや優生学という題材を扱いつつも、わりと大衆向けに「ねぇねぇこれってヒドくなーい?」という投げかけ。


保奈美さんの「ワルママ」っぷりは、観終わった後からじわりじわりと来ます。
優しく、理想主義的であり、母性によって暴走してしまう女性…という人物には近年あまり出会ったことがなくとても新鮮でした。


二宮さんの演技が繊細だという評判も多いのだけど、それ以外にも
テンポとか間の取り方にどこか声優的な要素を感じる。(そういえば『鉄コン』をやってた記憶)
神楽とリュウがグラデーション状に共存している姿や、水原希子さんとの空気感も安定しています。
いっちゃん最初の「鑑定結果お披露目会」のセリフがもっとちゃきちゃきしていたらいいなーなんて思いつつ
それでも、本当に、本当に素敵なお芝居だったと思う。


豊川さんはすごくワイルドで、「動ける刑事」の様相を呈していた。
一見するとITに疎そうな古風な風貌なんだけど、捜査の過程では彼もタブレットを使っていたのが印象的だった。
浅間と神楽/リュウの演技は、すごく演者さん同士がなついているんだろうなあっていうくらい、仲の良さを感じる空気感。
前半でさえ、お互いが鼻につく間柄だったけれど結構はやい段階から解けてしまうので、二人並んでると半ば親子みたいになってた気がする。
そういった人物の心境の変化にもあまりエグい描写をしていないことで、ドライなエンタメに仕上がっているようにも思う。
(それを言うと、さっき述べた保奈美さん、水原希子さん、杏さんらの演技には
 女性らしいウェットさがあって、ちょうどバランスが良かったようにも思う)



思い返してちょっとさみしいのは、「印象的なせりふ」が少ないことかな。
そもそもがアクション:サスペンス=6:4、しかも原作モノってこともあるけれど、
「この愛さえも、DNAで決まるのか」といったような煽りコピーがあるのであれば
もうちょっと主人公たちの主張(彼らは上記の問いに対してどう思ってるのか、そうではないのか)をおりまぜてもらいたかった。
その意味では、肝心のメッセージの部分が観賞者にまるなげな感じがします。
とはいえ、監督自ら「日本映画なのでやはりそこは余韻を残した終わり方になるだろう」と話していた通り、
締めきらない、結ばずに幕が降りるラストも本作品のこだわりのひとつなのかもしれない。
(原作は未読ですが、神楽が処罰を受けるシーンもあるそうなので、映画の展開とは違う)


ロケ地、セット、演者のアクション、視覚効果、それぞれに対する非常に細かいこだわりの積み重ねで成り立っていた134分。
「繊細かつ大胆」という言葉を体現した映像作品になっているのではないでしょうか。*

ストロベリーナイト - 佐藤祐市監督

"ストロベリーナイト"
2012年/日本/日本語


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プラチナデータ』と2本立て公開。(三軒茶屋中央劇場)


なかなかにダークで後味の悪さがこの作品の醍醐味か。
姫川こと竹内結子、かっこいい。マル、癖がある。
大沢たかおはこういう「冷徹だけどやたらと紳士的」という二面性のある役がよくハマる気がする。


映画ながらテレビドラマの拡大版という位置づけ。
とはいえ、近年のドラマにありがちな説明的な表現はできるだけ排除して、
映画として観賞者がいろいろと想像できるような作品作りにこだわったという。
テンポはよく脚本も詰まっていて、時間の割に内容が非常に濃い印象です。
なかなかに真っ黒で真っ赤な描写が多いけれどこれが女性脚本だと言うから驚き。
暴力はあまりなかったけど、全編文字通り「赤」でびびる。