趣味は読書の弊害

 私の趣味は読書だ。

 先週の土曜日「週刊フジテレビ批評」という番組を見ていると目黒孝二さんがゲストで出演されていた。
 目黒さんは作家として活躍する一方で「本の雑誌」という雑誌も編集されている。
 本を紹介、批評される仕事なので当然ながらたくさんの本を読んでおられる。

 その中で自分は本を読むのが遅い、だから、人が読まない時間に読むとおっしゃっていた。
 これが、いかに努力しているかという話ではなく、いかに自分が駄目人間かという話につながったのが面白い。
 生活の時間も家族と過ごす時間も全部本を読むのに使ってしまう、というのだから・・・

 
 この人はもう仕事になっているから別に構わない。
 しかし、趣味は読書というのはどうだろう。
 賢そうな趣味だし、学校の面接や就職活動では大いに有利だろう。
 しかし、私の場合、だいたい読んでいる本が大半は殺人を題材にしたものや、道徳的によろしくないものばかりなので果たしてほめられたものかどうか。
 
 昔からあまり印象が良くなかった。
 私は幼少の頃、ある事情で数年歩けなかったので本を読むことしかやることがなかった。
 その後、歩けるようになっても外に出ようとせず家の中で本を読んでいたので親に心配された。
 「外に出て遊ぶ」のが模範的な子供だったので、学校の先生にも受けが良くなかった。
 友達にも「よくそんな本を読む暇があるね」と言われてきた。
 自分でも病気だと思う。
 何もしていない時間というのがいらいらする。
 外出して本を忘れたことに気づくとパニック状態に襲われる。
 
 それにあまり人と共有できない趣味でもある。
 初対面の男性が「絶対に面白い」と薦めてくれた本を読んで驚いた。
 ゲームの中に入り込み、遭難して人肉を食べるような話だったからだ。
 どういう意図があって薦めてくれたのかいまだによく分からない。

 また、あこがれの先輩が薦めてくれた本を読んでがっかりしたこともある。
 男に付き従い、従属するような女性たちの生き方を「美徳」と描いた本だったからだ。 
 
 私も妹にある本の姉妹の描かれ方に自分たちと似たものを感じて感動したので薦めたことがある。
 「まったく面白くなかった」と言われて随分がっかりしたものだ。

 他人の受けもよくないし、コミュニケーションもできずなんだか役に立たない趣味だ。
 趣味なんて大半はそんなものかもしれないので、別にいいけど。