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まったく異なる運命を生かされている男女の生を交差させる力が、この世を縦に横に走りぬけていると思えないかしら。男女をみちびきあわせるのは、その力の意志ではないのかしら。いいえ、私が招かれているのは、あなたの部屋ではなくて。この異性の内面に隠されている目に見えない部屋ではないのかしら。そのような印象が絶えまなく私をかすめてすぎるの。その感覚に貫かれるがままに揺らされている、私自身の現在を忘却に沈ませないために書きとめさせて。いいえ、私の予定しなかった線上の思いがけない出会いだったと書きとめさせて。運命の線上に置かれている必然に、どうして個人の能力が気がつけるのかしら。このような言葉のならびを白紙のうえに置かせている異性の力を私に意識させて。私の生きる方向を、この異性が思いださせるの。いいえ、思いだせるような予感が、この異性の方向から私に、さしこまれてくるの、と言いかえさせて。

ひとりの異性に私を結びつける力、その牽引の強さ。いえ、その力は何と呼ばれるのかしら。「神のような」という形容にも収まりきらない力が、この世を貫きとおっていないかしら。その力にあらがうすべを私は知らないの、とあなたに言わせて。いいえ、あらがえばあらがうほど、その力に深く沈められると言わせて。逆らいがたい力が錯綜していないかしら。男女を引き合わせるのは、その力ではないのかしら。高まる気分が私に言わせるの。ひとりの異性に私の心を強固に結びつけさせて。その異性から力が私に流れこむの、と言わせて。その力に私を結びつけさせて。いいえ、あなたから私の心を離させて。この強力な牽引に抵抗できない、と言わせて。ひとりの異性が私の心に置かれていることの、戸惑い。なぜ、その存在を心から追いだせないのかしら。この引力。手をゆるめない力はどこから来るのかしら。この力に深入りしていかずにいられない。いいえ異性の精神に深入りしていかずにいられないの。

いつ異性のひらく世界に沈めるのかしら。魅了されているの、その世界に登場する人たちに。ひとりひとりの個性に。その世界を出現させている異性の精神に、強く惹きつけられている、この場所から告白させて。とてもとても惹きつけられている、その吸引の力に抗えない、とあなたに言わせて。はやく、その世界に沈みたい、と願望だけを心に持ちはこばされている私の現在があるの。ひとつの精神にすでに強力に私自身が結びつけられているの。異性の自我に惹きつけられている、と言わせて。その魅力に抗えない、と私に認めさせて。異性の魅力と異性の生きる世界の魅力との、二重の牽引の力に全身をつかまれているの。いいえ、このように惹きつけられることが私の運命だった、と幻想に私を傾かせて。

「異性の精神にはやく私を沈みこませて。はやく私を沈みこませて」私自身のこえの幻聴に昼も夜もさらされているの。いいえ、沈められるときを辛抱づよく待たされているの。異性の精神に深く深く沈むのは私の強い強い喜びだと言わせて。いいえ、飲酒の効果も及ばない熾烈な快楽だと言わせて。その快楽に沈められる一瞬を、その一瞬だけを待っているの。意外かしら、このような切望が私のペンの下から現れるのは。いいえ不安かしら。生の果てまで続くかもしれない私との別れの予感に脅かされているかしら。ひとつの精神に招かれている、という印象を否定することができない、と私に言わせて。いえ、この深い牽引の力にあらがうことが私にむずかしい、と言わせて。

私を揺らす力を意識させて。この感覚だけを意識させて。いいえ、この力の波動は誰から来るのかしら。誰の意志を私は知覚しているのかしら。誰の力を享楽しているのかしら。たえまなく私を揺らしているような力がないかしら。「それはユキエさんの妄想」あなたは言うかしら。いいえ、妄想と異性の指摘する脳のはたらきが、私の根源を活発にさせるのなら、積極的に私を妄想の世界にかかわらせて。いいえ異性の世界にかかわらせて。膨大な言葉の海に投身するように私を、そこに深く沈ませて。そこへ沈むことが私に求められていないかしら、いいえ、そのように生きることをうながされている、そのような気分にたえまなく急きたてられているの。なぜ、その力に私が抗えると言うのかしら。ひとつの精神に私を結びつけさせて。結びつけられるように異性の内面に深入りさせて。深入りすることが、この年齢を生きる私の、運命だったと言わせて。

フェルトマンユキエ