『過去の自分との対話』 No.3714

しばらくじーっと見つめていた
あのときのこころがそのまま映し出されたキャンバス
なんて偏狭だったんだろう
閉塞していて独りよがりで欲望が全面に出ている
これで精一杯だったんだ
そのため見えてなかったんだな 
自分の奥のほんとうのことが きみは
二十数年前に描いた絵が語る

 

ぼくはじっくり かつての自分を見つめる
そしてきみに今のおもいを語りかける
点で否定し 線で肯定しながら
白で重ねる 過去と現在を重ねる
語り合う過去と現在(いま)

描くうちに少しずつ
また新たな自分が再生してきた

 

 

 

 

 

 

 

 

『過去の自分との対話』 No.3714

しばらくじーっと見つめていた
あのときのこころがそのまま映し出されたキャンバス
なんて偏狭だったんだろう
閉塞していて独りよがりで欲望が全面に出ている
これで精一杯だったんだ
そのため見えてなかったんだな 
自分の奥のほんとうのことが きみは
二十数年前に描いた絵が語る

 

ぼくはじっくり かつての自分を見つめる
そしてきみに今のおもいを語りかける
点で否定し 線で肯定しながら
白で重ねる 過去と現在を重ねる
語り合う過去と現在(いま)

描くうちに少しずつ
また新たな自分が再生してきた

 

 

 

 

 

 

 

 

『帰宅』 No.3711

    
この春から夏、夏から秋、そして秋から冬にかけて
都会は灰色で 憂鬱だ
みんなマスクをしてうつうつと歩いている

 

この院内では誰もが脅え、警戒して
いつもの声を発せず目だけがキョロキョロ動く
その目は多忙を極め優しく血走っている

 

所々、門が閉ざされ どこへ行っても疑心暗鬼
ヒトは殻に閉じこもり 心に鬼や虚無をかかえ 沈んでいる
ウィルスは賢明だ

 

ぼくは都会から遠くはなれて
里山で木々の間からもれくる木漏れ日を見ている

漏れ来る光の奥へもぐる
奥へ奥へ
すると、ボーッと浮かび上がる
あなたが
まぎれもないぼくのだいすきな あ な た
 が

  ・・・  飛び散る断 片

 

初冬。
今夜は底からひんやりとして
ほんに星がきれい
深海の底の 宙の果ての 暴発するちいさなちいさな火の玉の中の
内なるくにから 再びあなたはやって来て

 

通り過ぎる

 

いったい ヒトはどこから来て どこへ行くのだろう
ヒトビトはわからない まったくてんで
人新世の  世はさむ く  う つ ろ
この星には過剰なほどヒトがウヨウヨいるというのに
欲望が丸出しで争いが好きなヒトが
あらゆる生命を食い尽くそうと・・・
ヒトはどこへ行くのだろう
いったいぜんたい

 

 すれちがいざま
          あなたはフッと あたたかい昊の吐息
   固唾をのむ    ぼく
 一瞬
   ほんのいっしゅん  何かを感じ  て
 消え   た

 

何だったんだろう
生と死、地と天、いのち、無、またたく星、あるいはその 間 ・・・・・
大事なだいじなこと・・・・・伝えたいこと・・・・・

 

  そのあと
    残り香でこころがあたたかく ふくらんで

   とにかく生きているんだよね
     生きるって ・・・

 

ぼくは佇むばかり
世界のちっぽけな片隅で
ただ ただ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『秋、海からの返事』 No.3708

秋の日のどこからか
返事がやってきた

 

ひろい海にぶらりぶらりと漂っていた詩の入った壜を 
どこの浜辺で見つけられたのか
どなたさまか拾ってくださった

 

  ぼくのある詩を読んで
  「涙が出ました」 
  とツィッターでの嬉しいお返事

 

この世界で たった一人の方が
ぼくの書いた拙い詩を読んで
泣いてくださった

 

からっぽの部屋の窓から見る
夜空に一点鈍く光る星

 

飲む酒美味しく
しあわせを独り占めする秋の夜長

 

 

   ***************

 


 『あのとき(時代)』 No.3707

 

あのとき
ぼくらは暗かった
しかし貧しさと暗さのなかで
希望があった 根拠のない希望が

 

あのとき
ぼくらは汚くあった
見せかけできれいに整えられたものに
わけもわからず反を唱えた

 

あのとき この列島では 
ぼくらサピエンス繁殖期の真っ最中
盲目的で失敗ばかりしていた

 

あのとき
ゆるやかな時代の中で
ぼくらは外へ外へ

 

急激なスピードで進んでいる今
内に病をかかえ 内にこもりだす

 

いま、
自分の内に「あの時代」が再び
育ち出した

 

 

       ************

 


『10年先』 No.3706

 

さあ、どうなるのかしら
かなり変わっているような気がします

 

崩れる、どんどん崩れる
価値観が崩れて行って劇的な変化が訪れる
かもしれないよ
ひょっとして

 

コロナでもこれだけ変わってしまったし
地震がもっと変えるだろうね

 

煩わしいのはもうイヤ
自分を抑えに抑えて生きたくはないわ

 

責任はとらないんですよ 過去も今も
この国では
破局が起こっても

 

どこかからおこって こうなってしまったという
天変地異的な破局にしてしまう
敗北の裏側にある打算

 

顔色を伺いながら
上ばかり見る

自分を盛っているんだねあの人
盛っても盛っても バカが際立ってるよ

 

 

 

 

 

 

 

『みそしる』 No.3705

睡眠から逃れて
ぼくは遠い果ての旅に出た
果てしない青空に
ポカンと 鍋
が浮いている
道連れだ と言うと
ポカリポカリ 流れ出し
流れに流れて

 

秋が落ちている
ぼくはそれを踏んで
台所という駅に辿り着き 青空の鍋で
みそしるをつくる
朝はまだ来ない

 

みそしるはクツクツクツと音を立てている
最後にコマツナを入れなければ

 

旅はいつまでも続く
じつにいろんなことがあったもんだ
ひとは誠実にならなければ
ならない

 

秋がむっくり起き上がって
ヤア と言う
ぼくも反射的にあいさつをする
ヤア
秋はそのまま旅に加わる
まだ青い柿をかじりながら軽い約束を交わして
さあ、再び出かけよう
あのきらめく旅に ネギは笑う
ぼくは誠実ではない

 

青空に大きな穴が開き
もうもうと
吸い寄せる湯気と台所とぼくと

 

みそしるができた

 

 

        ***********

 

アウトプット』 No.3704

 

たまりにたまっていた
ものが
あるひ あるとき
あるひとによって
プチュー!!
とプッシュされた

 

出るわ出るわ
ワーー すごい
インプットばかりのあのときは
いったいなんだったんだ!


才能はかくして
発見される

 

 

 

 

 

 

 

 

『ほんまもん』 No.3703

通の人たちから ものを見ると
それが いいもの かどうか がわかる

 

大多数のいっぱんの人には全くわからなくても
わかる人にはわかる

 

ものをジ―ーッと見る目と
ものとの長いつきあいと
奥の深みから
ものを見ると 観える人には観える

 

それが
ほんまもんかどうか
観える

 

ぼくはそれを極めたいのだが
修行が足りなく観えない
未だ   わからない 
途上 を 歩 い て い る

 

 

 

 

 

 

 

『里山の音楽会』 No.3702

緑、緑、緑の
里山の中で
子どもやおとなたちが
三十数人、集い
里山の音楽会をする

 

歌声は歩き、走り、はずむ
三味線、太鼓が鳴って踊りだす
ギターの美しい調べはうっとり
山中に音楽は響き
流れる

 

ああ、楽しい
子どももおとなもおおはしゃぎ
笑顔、笑顔、笑顔

 

青空のぞき
うろこ雲が流れ出す
美しい調べとともに

 

青空と音楽と笑顔は
里山にとけこむ