新作能『リリウム』(仮題) 準備稿 [新作能『リリウム(仮題)』][モーニング娘。]
●配役●
シテ……リコリス(シルベチカの執心の思念体) ツレ……シルベチカの亡霊 ワキ……旅の修道士
●分類・季節●
四番目。執心物。太鼓入り。一場。場所・元療養所(クラン)の庭。季節・不明。
●装束附●
シテ……面・泥眼。 着付・鱗箔。色大口(緋色でない)。長絹・白に限る(ツユ) 腰帯。鬘(スベラカシ)
ツレ……面・小面。着付・摺箔。襟・赤。色大口(緋色) 長絹 白に限る(ツユ。シテと同じ)。腰帯。鬘。鬘帯(またはシテと同じくスベラカシ)
ワキ……大口僧の形。ロザリオを掛け、唐傘を持つ。
●概略●
(1)旅の修道士が雨の降り続く森のなかで道に迷っていると、急に広場のように開けていて、噴水があり、花園も設えてあるような場所に入り込む。花園には、百合・椿・紫蘭・竜胆・薔薇・桜など、四季折々の花々が今を盛りと咲き乱れている。不思議に思った修道士は花園に近い大樹の木陰で雨宿りをすることにする。
(2)修道士が花を眺めながら雨宿りをしていると、花園の奥から白いドレスを身にまとった少女が現れ、花園の前でうずくまり、さめざめと泣く。
(3)修道士に声を掛けられた少女は驚くが、修道士と知ると駆け寄って「罪を助けて給え」と泣き伏す。
(4)少女は「自分はシルベチカと言って、今は庭だけになってしまったここ、繭期のヴァンプ(吸血鬼)のための療養所(クラン)の住人の亡霊だが、このクランを造り、ヴァンプのなかから適切であると思われる少女を選び、自分と同じトランプ(永遠の命を持つ吸血鬼)にせんと数々の繭期の少女の血を弄ぶ"ファルス"と名乗る少年から逃れようと、学舎の尖塔に逃れたが叶わず、やむなく塔から身を投げて自殺した。心残りは恋人であるキャメリアに何も告げられなかったことで、それが執心で天国に導かれずにいる。何とぞ助けて給え」と語る。
(5)シルベチカがさめざめと告解(こくかい。罪を懺悔して神の助けを乞う行為)していると、森の木々の奥からシルベチカを呼ぶ声がする。シルベチカが焦燥の色を隠せないのを修道士が怪訝に思っていると、いつの間にかシルベチカに後ろに、影とも幻ともなく髪の毛を振り乱した恐ろしげな表情の少女が寄り添っている。
(6)修道士は何事かとシルベチカに問うと、シルベチカの後ろの少女が「自分はリコリス。ただキャメリアと添い遂げることだけが生き甲斐だったのに、この女が身投げしてしまったばかりにそれが叶わず、今はただその責めをこの女の亡魂に科し、二人でこの無明の闇に遊んでいるのだ」と言い、修道士に迅く立ち去れと訴える。
(7)修道士は、ファルスの脅威から逃れてただキャメリアと添い遂げたいシルベチカの気持ちの思念体がリコリスであると看破。二人同時に告解しなければ救われないと二人にクランでの生活を物語るように奨める。
(8)いつもと変わらず、何も変化のない学舎と寮の往復。シルベチカが異変に気付いたことを語ると、リコリスは激昂してシルベチカを責め立て、花園の中に放り込むと、自分もまたその中に飛び込んだ。あとはただシルベチカのすすり泣く声と、絶対に止むことのない雨の音が聞こえるばかりだった。
●便覧●
(1)囃子、地謡。座に付くと「一声」で脇、唐傘を開き持ち登場。常座で次第を謡う。名乗り、道行のあと正先を向き、花園を見つける下り。「あの木の下(もと)へ」と脇座に座る。傘は地謡が引く。
(2)一声コス。ツレ出。一の松で謡い、正中まで進み出て座り、泣く型。
(3)ワキ、ツレと問答。ツレ、ワキの方へ進み出て合掌。しさって大小前で泣く型。
(4)ツレの語り。
(5)シテ、呼び掛け出。一の松にて謡いの後、初同。「隠れ鬼とは面白し」と柱巻きの型などあって大小前へ。
(6)シテ、名乗り、語りとあって、ワキと問答。
(7)二人立って大小前の左右に立ち、サシを謡い、クセ、序ノ舞と相舞。
(8)上げ和歌。脇に駆け寄るツレを後ろから袖にすがり、引き離して橋掛りへ追い立てるシテ。ツレはそのまま走るように幕屋へ。シテは舞台一巡の後、一の松で袖を被って留め。(天狗モノの如く)
●解説●
物語は、『リリウム』の結末から数百年後の未来。
ファルスが去り、リリー以外のすべての「繭期のヴァンプ」が死んで、そのリリーもどこへともなく去った*1あと、館も雨に朽ちて跡形もなくなり、ただ永遠の花が咲く花園のだけが残ったクランの跡地。
としました。
実際の能だと、平家物語における合戦の跡地だったり、源氏物語に登場する明石や宇治などの旧跡という位置付け。
そこを旅の僧侶が訪れる、というのを修道士に変えたと。
※画像は能『八島』(観世流で『屋島』)のイメージ。向かって右の旅の僧侶たちが八島の合戦の跡地を訪れると、そこに漁夫が現れる、というくだり。
新作能だと、これまでの能の構造をけっこう変えて変則的な演出がなされることが多かったのですが、今回の『リリウム』はできる限り、古典的な能のフォーマットを生かした演出にしようと思っています。
あと、ネックになっているのは、この感じだとシルベチカが本当にツレ(脇役)でいいのか? というのはあります。
でも、能にするになら、執心が凝り固まって一つの人格をなし、それがリコリスと名乗って生霊のようにシルベチカに取り憑いている姿を想像すると、やっぱりリコリスのほうがシテ(主人公)になるんじゃないかと。
とりあえずこれで進めてみます。
また、二年後。(こらこら)
*1:と舞台の結末では思われるので、そうしますが
概略と便覧がとりあえず完成? (笑)[新作能『リリウム(仮題)』][モーニング娘。]
えー。わからない人に、まずはこちら↓をどうぞ。
※第一回 → http://d.hatena.ne.jp/aizenmyouou/20151019/1445267895
※第二回 → http://d.hatena.ne.jp/aizenmyouou/20161116
と。まーざっと三年がかりの企画となってきています(もっとかかりますがwww)『リリウム 〜少女純潔歌劇〜』を能にしてみよう、という企画です。
能もドラマですから、脚本と演出が必要。
概要は、「あらすじ」のようなものだと考えてください。
便覧は、舞台に携わる人間のすべてがこの舞台がどういう進行になるかを把握するための進行表のようなもので、内容に応じて出演者のある程度の動きが記されています。
これができれば、あとは、詞章の制作(台本の作成)と、囃子の割り付け(音楽の割り振り。鼓や笛など)ができればある程度は完成。
わたくしは囃子の専門家でないので、詞章の制作までとなりますが、それが完成するまでにはずいぶんな道のりをまた歩むことになるでしょう。(笑)
でも、「スノー」を演じた和田彩花さんがご卒業なさるので、それまでには何とかしたい、かな?*1
*1:もっと自信ありげに言わないか。
■
本日、5月27日午後11時30分より、インターネットラジオサイト・ねとらじにおいて、ラジオ放送を致します。
青島&コブラの『月刊 お笑い・エンタメ時評!!!』 第五十七回
〜〜当世アイドル論考「道重さゆみと嗣永桃子」特集〜〜
と題しまして、ついに再生した元モーニング娘。リーダー・道重さゆみと、それに入れ替わるように引退していく元Berryz工房、現カントリー・ガールズの嗣永桃子を、喩え芸の限りを尽くして語りつくすことで、現代におけるアイドルというもののあり方について世に問うてみたいと思います。
道重さんは再生してはいるものの、あまり露出はしていません。
音楽番組でのインタビューがあるのみ。
舞台で扱われている楽曲が配信になったくらい。
SAYUMINGLANDOLL〜再生〜オリジナルサウンドトラック
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これからも過分な活躍はないかもしれません。小国寡民がしっくりくるのではないでしょうか。
自分のペースで、上善水の如く流れに身を任せる境地に至ったのでしょう。
嗣永さんは、自分の最後の花道を飾るべく、自分でいろいろと企画をしているようです。
野外ライブをしない主義だったアップフロントを動かし、Buono!(ボーノ)のラストライブでは一切泣かず、
忙しい中それでも昼の情報番組に出演し続ける。まさに烈火のごとき活躍。
後輩の指導はまるで弟子を育てる落語家の様であり、無茶振りに全く答えられなかった森戸知沙希をここまで成長させました。
水の人、火の人、それぞれの特徴を論じられればと思います。
月刊佐藤優樹 マンスリーまーちゃん
今回のまーちゃんは、ついに、工藤遥ちゃんとのコンビで、配信限定ながらも楽曲をリリースの一報を。
軽妙で、まるでNHK『みんなのうた』を彷彿とさせますが、ビッグバンドジャスのゆたかなスウィングでまったく飽きることなく聞けます。
これも編曲の妙かなと思っていたら、「編曲・渡部チェル」!!
思わず、果てしなき黄金時代を思い出して涙が流れましたよ……。
って、だれだか知らない????
これ↑でも聴いて、勉強しやがれ!!!!!!!!!!!!!!
そして、モーニング娘。12期メンバーフィーチャーのこのコーナー!
尾 形 降 臨 !
今回の「はーちん」こと、尾形春水ちゃんは、先月取りこぼしてました、FMフジでの『モーニング娘。のモーニングダイアリー』が放送開始の件。
出しゃばらず小っちゃく突っ込む、なかなか二十歳前の女の子のできる業ではありません。
牧野真莉愛ちゃんのグラビア展開にも注目です。
そして。まさかの天下分け目となってしまったこのコーナー!
ハロプロ研修生をただいま解析中!
今回は、今月初めに行われた、ハロプロ研修生公開実力テストにおいて、波乱の展開があったことを取り上げます。
会場は中野サンプラザ。
来場者による投票によって、548票を獲得した段原瑠々がグランプリを獲得。二位の川村文乃に300票近くを引き離しての堂々の二度目の受賞となった。
ここで、イレギュラーなことが起こる。
アップフロント社長の西口猛氏(↑サムネの向かって右)が突然登場。前例にないことで、会場全体が騒然となる中、発表がなされた。
あらたな演劇女子部とは違うセクションの設立。そこに高瀬くるみ、清野桃々姫の配属。
段原瑠々、川村文乃、一岡玲奈のハロプロメンバー昇進。
サンプラザの会議室での責任者会議でゲリラ的に決まったことだった。
《今回のトピックス》
・モーニング娘。とアンジュルムが、六本木ニコファーレでの「アソビスタ・アイドル生合戦」において対決。結果はアンジュルムが勝利。
五時間にわたっての大熱戦だったわけですが、結果はまーちゃんが奇跡を起こしまくるという、やっぱりそうかというオチ。(笑)
・モーニング娘。×マルコメの、「モーニングみそ汁」問題について。
ついにセット通販が開始。
これで、供給が元からなかった地方にも渡ることになったわけですが、なんだか朝三暮四だとは思いませんか。
・モーニング娘。から、工藤遥が卒業を発表。2017年秋ツアーファイナルに。
女優の道を目指すとか。
・モーニング娘。譜久村聖、小田さくら、工藤遥がそれぞれインフルエンザに感染。岡山公演が中止に。
文句ひとつ言わずに岡山観光を楽しんだモーヲタは伊達に20年の月日を娘。のために使っていないなと。(笑)
武道館公演は終始HAPPYのうちに終了した模様。
炭酸ミルクティ
@Milk_tea_Soda
武道館まーちゃん挨拶 類は友を呼ぶって言うじゃないですか。優樹のことをバカって言う人がバカだし、優樹が音楽が好きって言ったらみんなも好きだし、モーニング娘。が好き!って言ったらみーんなも好きだし!!類は友を呼ぶって実感した公演でした!
2017年05月26日 20:18
しみずん
@shimizun_musume
武道館挨拶。ふくちゃん続き「みずきが初めて武道館に立ったのは15歳で、あれから5年、何回も武道館に立たせて貰ってますが、私たち13人の結果として、武道館に立っていると思いたいです。過去のモーニング娘。には負けないぞ!」これでこそ娘。リーダー! #morningmusume17
2017年05月27日 00:30
・アンジュルムが、7月のロッキンオンジャパンフェス(ひたちなか市)への参加が決定。
完全に℃−uteの後継ぎとなってしまいました。
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末満健一作『TRAMP』シリーズの第四弾。『グランギニョル』にも出演が決定。『リリウム』に引き続き繭期の少女を演じます。
・Juice=Juice宮本佳林が、「南波一海のアイドル三十六房『ハロプロスッペシャル』」に出演。
ハロプロ スッペシャ~ル ~ハロー! プロジェクト×CDジャーナルの全インタビューを集めちゃいました! ~ (CDジャーナルムック)
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4000円もして、広辞苑のように分厚い、ハロプロアイドルへのインタビュームック。この刊行記念のWebTV番組に登場したのは、Juice=Juiceの宮本佳林。
インタビュー記事のおまけとして、ハロプロ関連の漫画を描いている、なかGさんの「ハロプロメンバーを描くときのイラスト講座」は本当にためになりました。(わたくしは書かないけど←)
とくに、宮本佳林ちゃん←と、ハロプロ研修生・川村文乃ちゃん→の描き分け講座は面白かった。(※1時間19分15秒〜)
理路整然と語りだすなかGさん、「佳林ちゃんを映せ」と叫ぶ視聴者、音楽出版社刊『CDジャーナル』の川上編集長が持参のワインをがぶ飲みして泥酔する有様、困惑のなか明確な理論に驚く佳林ちゃん。すべてがカオス。(笑)
・Juice=Juiceが新曲をドロップ。
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テレビ出演してしまうと、なんか違う感覚が。(笑)
・こぶしファクトリーの春ツアー、佐賀公演の模様をレポート。
貴重な体験をしてしまいました。
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『シャララ……』のほうは、王道アイドルスカ。上手く育ってほしいです。
・こぶしファクトリーの映画『JKニンジャガールズ』のPR動画がアップ。
ちょっと何言ってるかわかんないです……。
つばきつくばMC図にした pic.twitter.com/bBzfku6CKs
— hachi (@harui309) 2017年4月30日
レポート宜しくお願い致します。
・つばきファクトリーのリーダー、山岸理子が写真集をドロップ。
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こんなに背徳感をもって写真集を見たのも久しぶりだと思います。
間違いなく、歴代ハロプロメンバーのなかでも珠玉の一作。
・アップアップガールズ(仮)から、仙石みなみと佐藤綾乃が卒業。
仙石は女優を目指すことのこと。佐藤綾乃は引退してこれからの進展を決めるとのこと。
元SMAPとの共演も果たすなど、ようやく世間から認められてきた感じの中でのソチ儀容は押し息もしますが、応援したいとも思っております。
新曲もドロップです。
- アーティスト: アップアップガールズ(仮)
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・映画『キングコング:髑髏島の巨神』感想。
久しぶりに頭を空っぽにして見られる楽しい映画でした。
とりあえず、ハリウッド版キングギドラに期待かな。(笑)
・映画『哭聲 / コクソン』の批評
一度、『美しきシモネタ』のほうで「韓国エログロ映画」特殊をしたときに取り上げた、ナ・ホンジン監督の最新作。とにかくも一回見ただけでは訳が分からない。
ただただ、痛烈なトラウマが残る映画でした。(笑)
(百八軒レコメンド)
吉川友『さよなら、スタンダード』
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サビのファルセットは見事。
吉川友のシングルの中でも屈指のお気に入り曲となりました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ご視聴の際は、ねとらじのホームページへアクセス→右上の「番組検索」から「青島玄武」と入力→「play」をクリックで、iTunesやWindowsメディアプレイヤーなどが自動的に立ち上がり、ご視聴いただけるようになります。
今回も、わが朋友にして、心の相棒。昭和プロレスライターにして、ブログ『コブラ塾』塾長・コブラさんと一緒にお送りいたします。
また、ご感想・ご意見は、掲示板にお願いいたします。
以上、何卒宜しくお願い申し上げます。
どこを切り取るか。
『リリウム』を能にしようという時に、一番最初に思ったのは
ということから始まったというのは、前回のブログで書いたと思います。
※能『二人静』のイメージ写真。
静御前の亡霊を慰めるために静の衣装を身にまとった吉野の里の女。(右) それに寄り添うように立つ静御前の霊。(左)
※『二輪咲き』のイメージ写真。シルベチカ(左)に寄り添うように立つリコリス(右)。
この『二輪咲き』は『リリウム』本編の前日譚として描かれているため、シルベチカはまだ生前の姿。
リコリスは彼女に憑りついた想念なので、まさしく、吉野の里の女(生者)に憑りついた静御前の霊(死者)のように感じました。
先述したとおり、これを能にしたいと思いますと、能『経政』のように、生前の姿よりも、死霊として夢か幻と出現したほうが能にしやすいので、シルベチカは死んだあとに亡霊として現れた、とした方が都合がいいですね。
そこで思いつくのが、死後も小野小町に憑りつき、彼女の死後も地獄の果てまで追いかけて行った深草少将の怨霊を描いた、能『通小町』です。
※能『通小町』のイメージ写真。
小野小町の亡霊(右)に、死後もなお憑りつく深草少将(左)
小野小町は絶世の美女として名高く、多くの貴公子が求婚したが彼女は全く意に介さない。
深草少将は地位も名誉も才覚さえも備える貴公子として、何としてでもこの美女を我が物にしたいと言い寄るが、これも小町は突っぱねてしまう。
何とかと食い下がる少将に、小町は「ならば明日から百日百晩、ここへ通い続けてください」というと、それくらいのことと少将は毎晩彼女のもとに通い続けた。
はじめは精一杯のおしゃれで通ったが、悪天候やら自分の都合やらでなかなかままならず、下人の様な恰好になっていったが、それでも通い続けた。
そして、満願の百夜目。ふたたび考えられる限りのおしゃれで臨んだが、途中、雪に足を取られて崖から落下。ついに命果ててしまった。
これがいわゆる「深草少将の百夜(ももや)通い」という有名な説話で、これをもとに能が作られているわけですが、能の方では、小野小町の死後、その亡霊に憑りついた深草少将の怨霊が、双方とも成仏できないまま京都郊外の市原野に地縛霊として留まっていたのを、あたりをたまたま通りかかった僧の授戒によって両人ともに菩提が成就したという内容になっています。
この深草少将の粘着質なところが自分に似てるなと思って、わたくし、Twitterの自己紹介画面のヘッダーにしているくらい(笑)なのですが、もし、シルベチカが死んだ後でも、リコリスがずっとそばに寄り添っているのではないかと考えると、リコリスと深草少将がオーバーラップするんですよ。
ですから、舞台も、『リリウム』本編の中で語るのではなくて、本編からグッと後世に、10000年の後。クランも朽ちてなくなり、ただ庭師が育てた庭だけが名残をとどめているというような設定にしたほうが面白いと思うんですね。
能では『通小町』のように「その現場近くをたまたま通りかかる僧侶」が脇役として登場することが多いので、ここでは西洋風に「修道士が通りかかる」ということにしましょう。
むろん、何のきっかけもなく通りかかるのはおかしいので、『リリウム』の設定になぞらえて、「ヴァンプの群れが暴れて壊滅寸前の村があって、その救援に向かうのに近道をする森の中でたまたま見つけた」というのはどうでしょうか。
『リリウム』の世界観も尊重しながら、能の世界に引き込めると思います。
次回は、これらを踏まえて、大まかなプロットの構成に進みたいと思います。
能はどうやって作られるのか。
自分としては、『リリウム』の内容がそのまま能になるとは思えません。
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内容が複雑ですし、一部を切り取るにも、どこを切り取ったらいいかがわかりません。
能と同じ生死がテーマの重い内容ですが、これをそのままというのは能のスタイルとしてどうかと思っちゃいます。
能のスタイルというと、既存のあるストーリー、たとえば『源氏物語』や『平家物語』などの小説・説話や日本各地に伝わる伝承などをもとに、だいたいその後日談的なものを、オリジナルストーリーとしてなぞらえるものがほとんどです。
たとえば『経政(つねまさ)』という能。主人公は平経正(たいらのつねまさ)で、平家の公達。平経盛の長男。悪名郄き平清盛の甥にあたります。
史書によれば、一ノ谷の合戦に参戦し、源氏・川越重房の軍勢に討ち取られたとありますが、能で劇化された内容はそこにありません。
『平家物語』に、経正は「青山(せいざん)」という琵琶を天皇家から拝領され、仁和寺の門跡*1覚性入道親王の御前で弾いていたとあります。
能ではそこに取材し、経正が討ち死にしたと聞いた仁和寺の僧・行慶僧都が、経正の霊を弔っていると、そこに夢か幻のように経正の亡霊が表れ、生前の自分を思い出すかのように舞を舞い、やがて修羅道の苦しみから逃れるように消えていく、というような内容にアレンジがしてあります。
※能『経政』のイメージ写真。
烏帽子と太刀の他は能装束。甲冑姿の武者を記号化したもの。
また、『野守」という能では、古今集にある
箸鷹の野守の鏡得てしがな思ひ思はずよそながら見ん 詠み人知らず
という歌を世阿弥が取材し、着想を得たものと言われます。
この歌は、雄略天皇が春日の森に鷹狩をした折り、肝心の鷹が行方不明になったのを探すと、森の奥の池に鷹の姿が映っているのを発見したことにちなんで詠まれたもので、以来この池を「野守の鏡池」というようになったそうです。
能『野守』ではこの池を、地獄の鬼が持つ「浄玻璃の鏡」になぞらえて、物語が展開していきます。
※能『野守』のイメージ写真。地獄の鬼が、鏡を捧げ持っている。
ざっくり言うと、物語のある一場面をちょっと切り取って、アレンジし、一つの演劇作品に押し広げていくというのが能の作り方です。
すなわち、能こそ「コミケ文化=二次制作文化」の元祖の様な存在と言っていいでしょう。
はじめに。
まー。「やる」と言って、一年以上ほったらかしにするなんて、外道の仕業にしか思えないのですが。(笑)
その間に、ハロプロでは誰かがやめて、誰かが入って、いろいろあったりしました。(ざっくりしてんな)
こちらとしては、「『秋元康の殺し方』なんて、ブログのサブタイトルどうなのよ?」とかいわれて、ちょっとした風刺の入る隙間を許さない日本社会そのものに辟易してしまったりしたッス……。*1
ともかくも、能『リリウム』は絶対に実現したいものの一つであることは間違いありません。
ちょっとずつ構想を披露したいと思っています。
今回は、概略について。
*1:つまりね。ネットで『秋元康を殺す』と言ってしまうのはバカだけど、『秋元康の殺し方』はある意味『ドラゴンの倒し方教えます』的な荒唐無稽さがあるわけよ。モーヲタはAKB48に「国民的アイドル」の座を明け渡してしまって久しいんだけど、日夜ネット上で「AKB48より売れるにはこうしたほうがいい」とか、絵に描いた餅で満足している。でも、真実それだけでいいのかという疑問があって、決定打がないんじゃないのかという揶揄の意味が一つ。あとは、あまりにも巨人化するAKSの経営では、伝統そのものを支え切れなくなって自滅するんじゃないのという風刺の意味が一つ。あとは惹句としてインパクトのあるタイトルにしたかったというのが一つ。(笑)
はじめに。〜〜動機とか言いわけとか。(笑)〜〜
2014年6月。われわれモーニング娘。ファン・ハロープロジェクトのファンと、演劇ファンに衝撃を与えた舞台作品がありました。
それが、『LILIUM -リリウム 少女純潔歌劇-』です。
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※これから一連のお話は、このDVDを見ていないとわからないことだらけだと思います。その点、ご留意のほどを。(^^;)
Twitter上では、初日の公演が終了するや否や、すでにネタバレを含んだ感想が滝の如く流れ落ち、賛否両論、喧々諤々、異口同音、付和雷同、大器晩成と、非常に閉じた空間の中で様々に熱い熱い激論が交わされ、まるでそのタイムラインだけ真っ赤に溶けた銅を湛えた溶鉱炉のような有様でした。
同年9月、DVD化されて舞台を観に行けなかった層にも映像が届くと、さらにその溶鉱炉は奈良の大仏をもう二〜三体は鋳造しかねないほどにフル稼働して、劇作家・末満健一の迸る才能に誰もが畏敬の念を払わずにはいられなかったのです。
そのころから、わたくしは彼のその才能に根差すものに、日本の古典芸能があるのではないかと疑ってきました。
「『リリウム』の主題って、能と同じ生老病死じゃないの?」感じたので、是非ともシルベチカをシテにした能にさせてください。お願いします。(;・∀・)
って、書いたこともありました。
そしたら、今年の9月1日。BS-TBS開局15周年記念シリーズとして、その一つに『リリウム感謝祭』なるものがあり、『リリウム』の承前となる新作短編演劇『二輪咲き』が上演され、それまで謎とされていた部分が視覚化されたのみならず、さらに謎が謎を呼ぶ展開となり、また多くの『リリウム』ファン(というしかないクラスタが、この一年で構成されてしまった)が、「続編はいつだ?!」と騒ぎ始めてしまう始末……。
末満さんのTwitterでは、『リリウム』の次回作は『雪月花』となる旨が語られているため、おそらくはその方向になると思われます。
と。ここで引っかかるのが、伝統芸能ヲタク。(笑)
『雪月花』も、豊臣秀吉が愛用した能面の「小面(こおもて)」『雪』『月』『花』の三面にちなむものと思われます。
※画像は龍右衛門作『雪』の小面
で。肝心の『二輪咲き』の内容なのですが、『リリウム』冒頭で独唱するシルベチカ(cast・小田さくら)が主役で、彼女が学塔から身投げして果てる以前のお話。
シルベチカには、リコリスという彼女にしか見えない人格化された想念があって、シルベチカがクランの仲間たちと遊んでいるとき以外は、常にリコリスが付きまとい、クランの仲間たちと離れ離れにして彼女の精神を崩落させようとしているという内容になっていたようです。(ここは観ていないので、何とも言えないけど、多くの人の現場レポートを読んでそう思った)
わたくしここでも、Twitter上でつぶやきました。(2015年9月1日)
レポートを見た印象だと、能『二人静』の翻案かな、と思いました。シルベチカが、ツレ・里の女で、リコリスが、シテ・静御前の亡霊。
静御前の亡霊が里の女を操っていながら、自分も霊体を現してともに依りそう姿に、シルベチカとリコリスが重なりました。
このときは確証はなかったのですが、リプライももらって、話は盛り上がりました。
まー。その時の話で終わればよかったのですが、これがどうにもこうにもいかなくなってしまいましたとさ。(笑)
作者の末満健一さんの書き下ろしで、12月19〜20日大阪で公演する、Patch stage vol.7『幽悲伝』のキャラクター「黄泉人(よもつひと)」のイメージ写真が公開されたのですが、それを見てびっくり!
これ、まんまやん!(笑)
しかもですよ。Patch stage vol.3『白浪クインテット』は、「志ら浪」と筆で書かれた唐傘を、五人の若者が担いで登場する……、これって歌舞伎『青砥稿花紅彩画』(あおとぞうしはなのにしきえ)から『白浪五人男』の一下りですよ。
上図・『白浪五人男』の浮世絵。下図は『白浪クインテット』
イメージはほぼ同じ。*1
あなた、これ。確信犯でしょ? (笑)
ということで、末満さん。こんなブログを読んでらっしゃらないかもしれませんが、こんな伝統芸能ヲタクなわたくしに『リリウム』なんて見せちゃったのが運の尽き。(こらこら)
謹んで、二次創作をさせていただきます。
だからといって、漫画にしたり、小説書いたりと、コミケ文化に足を突っ込もうとするんじゃありません。
新作能『リリウム』(仮題)、始動!
いやいや、本気ですよ。
こちとら、そっちの世界に足突っ込んでる人間なもので。(笑)
止めるんなら、今のうちですよ〜〜〜。(^^;)
*1:調べましたが、役名もその通りでした。http://www.watanabepro.co.jp/information/patchstage_shiranami.html