六重罪の誹謗正法について/Where the Hell is Matt?

協会HPの掲示板に「六重罪」についての質問があった。

質問要旨:藤本晃『悟りの階梯』で六重罪(父殺し、母殺し、阿羅漢殺し、サンガの和合を破る、ブッダの身体に傷を負わす、誹謗正法)を知った。このうち誹謗正法が分からない。「真理の法則(因果法則や善悪の業果など)の否定」となっているが、普段真面目に生活している人が「悪いことをしてもバレなきゃ大丈夫。今だけ楽しく好き勝手に生きよう!」ということを話しただけで地獄落ちなのか? 自分も友人とそういう話をしたことがある。また、仏教のことをよく知らず知ったかぶって、仏教についてネットに書き込みをした。これも誹謗正法か? 最近は気をつけているが、自分は地獄に落ちるのか? 瞑想をしてもしょうがないのか? 恐怖を感じた。わかる人がいれば説明してほしい。 地獄落ちが確定の人はどう生きるべきなのか?

悟りの階梯―テーラワーダ仏教が明かす悟りの構造

悟りの階梯―テーラワーダ仏教が明かす悟りの構造

『悟りの階梯』いい本なんだけど、迫真の書きっぷりにそんな心配をする人もいるのだな……。以下、僕のコメント。

著者の方からコメントあるかもしれませんが、スレを表に出すため書き込みします。
 
誹謗正法で地獄行き、という場合、思想家の旗を立てて真っ向から因果法則を否定したり、お釈迦様の教えを貶めたりして、その言説でたくさんの人を導き、その邪見のままで死ぬことでしょう。
 
曖昧に生きている人が雰囲気で「悪いことしたって大丈夫だよ」とか「やっちゃえ」とか言うのは、別に誰でもやってる愚かな行為です(悪行為には違いありませんが)。ふつうに生きて地獄行きというような、反社会的カルト宗教のような教えは仏教と無関係です。
 
六重罪の項目は、どちらかというと、「プロの宗教家」への戒めだと僕は思います。
 
ブッダに危害を加えた例はダイバダッタさんが有名です。昔からインドでも中国でも日本でも、一般人がお坊さんを殺すより、お坊さん同士の嫉妬で、お坊さんが他のお坊さんに毒を盛ったり、お寺を放火したり、という事件が多かったのです。(戦争などは別)
 
ブッダの教えを何としても潰してやると意気込む、因縁否定論のライバル宗教もありました。また、たくさんの「部派仏教」「宗派仏教」があったことで分かるように、宗派を分裂させて自分の旗を立てようというお坊さんも少なくありませんでした。
 
そういうプロに対して、「おめーら、調子に乗ってると地獄に落ちるぞ、ごら!」と戒める要素が強かったのではないかと思います。父殺し・母殺しは、それくらい重い罪、というアクセントでしょう。あるいは重罪を犯して、処罰から逃れるために「偽装出家」した輩(律蔵に記録があります)へのけん制でしょう。
 
それで後世になるとプロの宗教家が自分を棚に上げて信者を脅すために、教えを利用するようになる。それってまたよくあることです。
 
在家仏教徒は、三宝に帰依して五戒を守って明るく生きれば別に地獄に落ちることはないでしょうし、仏教徒でなくても、社会的責任を立派に果たしてまじめに生活する人は、いとも簡単に天界に生まれると、経典(相応部など)にあります。
 
もちろん、六重罪に書かれた項目が重罪であることは事実です。でも人は滅多に父母を殺しませんし、阿羅漢を殺しません。ブッダはいないので、傷つけられません。プロの宗教家・思想家でないかぎり、サンガを破ったり、正法誹謗の論陣を張ることはありません。
 
というわけで、あまり深刻にならず明るく生活してほしいと願います。お幸せでありますように。
 
追伸:付け加えれば父を殺して母まで殺そうとしたケースで有名なのは、ビンビサーラ王の息子のアジャセ(アジャータサットゥ)王です。為政者の間では、父殺しは普通にありました(現代でも自分の父母を殺すのは、たいてい王様のように育てられた子供ですね。)。
 
それから、為政者が気まぐれで「宗教弾圧」することもありました。事業好きの政治家が、偉そうに「宗教改革」と称してサンガに手を突っ込むこともありました。そう考えると、六重罪は為政者への戒めでもありますね。まぁ、政治家が狂うとそんな脅しは通用しないのは、ミャンマーチベットの例を見ればわかりますが……。
 
また、殺人を修行とするカルト宗教を実践していたアングリマーラも、母を殺しそうになったところで、ブッダに止められました。宗教でマインドコントロールされると、どんな罪でも犯してしまいます。一般庶民がいわゆる「宗教」を怖がるのも、そのヤバさが肌で分かっているからでしょう。
 
ですから、父母殺しについても、「プロの宗教家への戒め」と解釈して悪くないと思います。

別に南伝大蔵経を調べなおして書いたわけではないが、まぁ当たらずとも遠からずという自負はある。

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Where the Hell is Matt? (2008)

こころ和む、胸が熱くなる動画。詳しくは以下のリンク先記事をご覧ください(高画質の映像もあります)。


〜生きとし生けるものが幸せでありますように〜