インドの仏教徒人口/現代宗教〈2009〉


Wikipediaの「インドの仏教 >>4.5 現在」の項目をちょこっと編集した。以前の版はインド政府の統計資料を持ち出して、佐々井秀嶺師らが主張する「一億人を超えている」説を全否定していたので、一億人説を復活させるとともに、最近読んだ『現代宗教〈2009〉変革期のアジアと宗教asin:4870236311』に載っていた信徒の実数を2000万人とする説も載せておいた。

現代宗教〈2009〉変革期のアジアと宗教

現代宗教〈2009〉変革期のアジアと宗教

ちなみに『現代宗教〈2009〉変革期のアジアと宗教』は、少々固いけど読み応えのある記事が多かった。主要目次は以下の通り。編者の財団法人国際宗教研究所HPに飛べば、目次のほかに内容見本が読める。

【対談】中村哲・金子昭・島薗進 「草の根から見るアジア」
渡辺雅子 「アジアの人道問題への日本宗教の取り組み――WCRP・ACRPの場合」
ランジャナ・ムコパディヤーヤ 「社会参加仏教(エンゲイジド・ブッディズム)――アジア仏教徒の社会的行動そして日本仏教の可能性」
ダンカン・ウィリアムズ(訳・堀江宗正) 「ハイブリッドな日本とグローバル時代における宗教」
【対談】川並宏子・馬島浄圭・川橋範子 「仏教を開くアジアの女性たち」
田中雅一 「スリランカの民族紛争――その宗教的位相」
西井凉子 「「他者」をめぐる考察――南タイにおけるムスリムと仏教徒の関係から」
山下明子 「インドの宗教・社会統合・ジェンダー――ダリッド女性の解放運動の視座から」
鈴木正崇 「宗教演劇から世界遺産へ――南インド・ケーララのクーリヤーッタム」
【随筆】町田宗鳳 「カリスマからスピリチュアリティーへ」
宮田義矢 「中華民国期における新宗教の動向――第二の赤十字を目指した世界紅卍字会」
菅浩二 「「神社跡地」とみたま送り――台湾と日本の狭間の、ある心霊主義的事例」
香山洋人 「アジアの神学としての民衆神学の課題――民族主義から脱植民地主義へ」
滝澤克彦 「モンゴルの民主化とキリスト教」
2008年の宗教動向
  【国内】塚田穂高 「現代日本における宗教性の行方――社会問題化する宗教、靖国神社問題、宗教の「社会貢献」の一年から」
  【海外】大澤広嗣 「ボーダーレス時代の現代宗教問題」

「【対談】川並宏子・馬島浄圭・川橋範子 「仏教を開くアジアの女性たち」」は社会参画仏教の女性研究者・活動家の対談なのだが、欧米人の「尼僧」たちが、アジア仏教徒の女性たちを露骨を見下して「指導」したがることに対する反発が炸裂していてびっくりした。よっぽど酷いんだろうな、これは。


他にも、「【対談】中村哲・金子昭・島薗進「草の根から見るアジア」」では、一応洗礼を受けているが自分のルーツは論語教育だとゆうペシャワール会中村哲氏と、台湾のカリスマ尼僧が指導する仏教ボランティア団体「慈済会」を研究した金子昭氏が、宗教からめて国際支援について語り合っているのだが、中村氏の一言ひとことがいい味を出していた。

島薗 アフガニスタンにおいて、西洋のNGO団体とは違うやり方で活動していこうと先生が思われたのはいつ頃からでしょうか?
中村 普通は何年かでみんな帰っていきます。この人たちはどうも違うのではないか、ということは、やっぱり長くなればなるほど思います。転々としない、ということが私たちの固い方針なんです。というのも、話題性があるところにみんな集中するんですね。ところが話題性がなくなってしまうと、そこに問題が残っていてもみんな引揚げて行って、次はカンボジアソマリアというように移っていく。私はそれが一番嫌でした。だから国際支援という言葉自体、私は嫌いなんですよ。地域と結ばれたんだから、そこでじっとやらなきゃというスタンスを少しづつみんなにわかってもらおう。そうするとこの人たちは他の団体と違うんだ、うちのふるさとのために一緒に働いてくれる人だと認めてくれるようになるんですね。そこにいくまで年月がかかる、ということでしょう。
 だから正直言って、NGOだとか国際援助の見本みたいに我々は言われていますけれども、私が知っているのは九州とアフガニスタン東部しかないんです。他のところは知らないけれども、とにかくここについてはこうだと言える、というのはありますよ。

……か、かっこいいぜ中村さん。

あとは上記のインド仏教徒の信徒数推計が出ていた山下明子「インドの宗教・社会統合・ジェンダー――ダリッド女性の解放運動の視座から」は佐々井秀嶺師のインド仏教復興運動の背景を理解するためにはぜひ読んで欲しいレポート。LTTEにキリスト教徒がけっこう絡んでいたことをおずおずと書いている田中雅一「スリランカの民族紛争――その宗教的位相」や、モンゴルで勢力拡大中の福音派キリスト教会の布教戦略をレポートした滝澤克彦「モンゴルの民主化とキリスト教」など、読み方を工夫すればたくさん情報の取れる論考(所詮は論文調なので、あまり期待して読むと、できの悪い三題噺を聴かされているようで腹が立ってくるかもしれない……)が揃っていた。アジアの宗教は、仏教を中心にして、いま熱いです。



オマケ:佐々井秀嶺師の鶴見総持寺講演会(2009年6月4日)のひとコマ。


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