*「ふっかつのじゅもんがちがいます。」withぬこ このページをアンテナに追加 RSSフィード

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2010-02-13

#kindlejp AmazonがKindleを無料で配る理由 またはiPad vs Kindleという構図が誤っているのはなぜか。

ミクロ経済学的な分析で、「何が起きるのか」を予想するのはそれほど難しくはない。難しいのは「それはいつ起きるのか?」だ。

勝ち負けは存在するけどデバイスとしての良し悪しとかそういうレベルじゃない。

Amazonはコンテンツが売れりゃあいいんだから、本当は端末はなんでもいいし、Kindleなんか無料で配りたいんだよ。

Appleはデバイスが売れりゃあいいんだから、本当はコンテンツはなんでもいいし、音楽やアプリや本なんて無料で配りたいんだよ。

「Apple iPadがAmazon Kindleに勝つ10の理由」についてのブクマ

いずれAmazonはKindleを無料で配るだろうと予想していたが、これほど早いとは思わなかった。Amazon.comのプライム会員向けにKindleを無料で提供することにしたらしい。

こうなるのだと予想することは難しくはない。電子書籍リーダーと電子書籍コンテンツはお互いに非常にわかりやすい補完財だからだ。補完財について知りたい人はジョエルスポルスキーからの手紙でも読むといい。もっと詳しく知りたい人はミクロ経済学の良質な教科書を読もう。

Amazonは電子書籍コンテンツの流通を牛耳ることで利益を得たいのだ。そのためには電子書籍リーダーは安ければ安い方ほどいい。またコンテンツとプラットフォームは鶏と卵の関係で、十分たくさんのユーザがいなければコンテンツホルダはそこにコンテンツを流通させたいなどとは思うはずはなく、十分たくさんのコンテンツがなければユーザはそのプラットフォームを選択したいと思うはずはない。だから、Amazonが出版社とハードな交渉をする一方で、究極的にはエントリモデルのKindleを無料で配りたくなるのは必然なのだ。

そして一方でAmazonは電子書籍リーダー市場を独占する必要はない。それがAmazonフォーマットの書籍を読める限りにおいて、消費者が多様な電子書籍リーダーを選択できることはAmazonにとって望ましいのだ。KindleのEインクのディスプレイは書籍を読むには非常によいものなのだが、それを貧相だと感じるヤッピーがいるのも事実で、そういう人たちがiPadのようなハイエンドの端末を選択できることはベゾズにとって望むところに違いない。

逆にiPadを売りたいジョブズとしては究極的には出版社が窒息しない程度にコンテンツが安い方がいい。しかしAmazonへの牽制球として、iBooksストアでは出版社が価格を決めていいことにしてしまった。本来はコンテンツをコモディティにしてしまいたかったはずが、価格決定権を手放してしまったのだ。一方でベゾズの方はというとKindleを無料にしてしまった。ここからジョブズがどういう手にでるのか。これは難しい。

おそらくベゾズが最も嫌がる戦術は、iPadからKindleを締め出すこと、つまりKindle for iPhoneやKindle for iPadをAppストアから追い出すことだが、それは一方でiPadの魅力を削ぐ結果になる。Appleにとってはコンテンツで儲ける必要はないので、iPad上で読めるコンテンツの選択肢が豊富な方が良いのだ。他にありそうなのは、電子書籍リーダーという文脈をone of themにしてしまうことだ。ジョブズ:「Kindleだって?本を読むだけの端末だろ?それよりこの新型iPadを見てくれ!信じられないくらい画期的だ!音楽も、Webも、動画を見るのにも最高の端末だ。もちろんAmazonの本を読むのにもKindleよりもずっと素晴らしい。だがそもそも人々は本など読まないだろう?」とか。


もうわかったと思うが、ガジェットとしてのiPad vs Kindleなどという戦いは存在しないのだ。Apple vs Amazonという戦いは存在する。それは、端末とコンテンツが、互いに互いをコモディティにしようという戦いだ。どちらが勝つのか?現時点では僕には分からない。