上信鉱山(ロウ石山)の状況



上信鉱山(ロウ石山)は、2005年3月にインタープリター会初期の頃に下見に行ったっきりだったが、下谷彰一課長が「今、みんなで何とかしないと手遅れになる」と仰るので、私も視察調査についていかせていただいた。


5年前は宮沢沿いに上って行けたのだが、その道はもう薮化してしまっていて、一段上にある作業用の林道を歩いていく。しかしここももうかなり笹が蔓延っている。


 


「あそこだ」と言われたが、すぐにはわからない。ここを開放するには、きちんとした登山道の整備が必要だ。


そして2基の焼成炉が。この位置からでは変わらない、あのときのままに見える。


 


おっ、薮の中にナラタケが…


足元には当時の焼成鉱石が転がっている。これもどこかに保管しておきたい。
説明をする下谷課長。左の焼成炉は鉄鋼製の箍(バンド)が外れているが、これは5年前と変わらない。


 


しかし上を見上げると、目地の部分から潅木が発生していて、すでに目地にクラックが生じている。確かに、これは5年前には気がつかなかった。


 


横に回ると、倒れそうなアカマツが一本。しかし5年前は、倒れそうな樹は他に何本もあったような気がする。
上からの眺めもまた良い。あの窓から、操業当時はロウ石とコークスを交互に入れ、蓋をして焼成したのだ。


 


焼成路のかなり高い部分にも、潅木が発生している。こういった、焼成炉の倒壊につながるような、危険な灌木やアカマツを、何とかみんなで除去しようと、下谷彰一観光商工課長が立ち上がってくれた。私もぜひお手伝いしたいと思っている。


 


【上信鉱山の大まかな歩み】

  • 昭和15年(1940)、干俣の干川石蔵氏が炭窯造成中にろう石の鉱床を発見。“ろう石山”と名づけられ10人程による小規模な採掘が行なわれた。
  • 昭和16年、太平洋戦争が勃発。アルミニウム合金の原料になるとされ、平成18年、“軍需産業”の指定を受け、“上信鉱山”として国家政策の一環として発掘されることになる。
  • 昭和19年頃には従業員250人が民家に入る。干俣は空前の賑わいとなった。
  • 鉱石は山元→(索道)→仁田沢→(トラック)→芦生田→(草軽電鉄)→軽井沢へと出荷されたが、採掘量が年間15,000トンに達し、山元から芦生田まで新たな索道と新設鉄道による輸送が計画され、大規模な工事が行なわれた。
  • 昭和20年(1945)、終戦により索道も鉄道も稼動せずに廃棄解体、上信鉱山も会社が解散。
  • 昭和22年〜23年、大阪窯業の福井博士が鉱石を分析。焼成により1,750℃まで耐火度を上げることに成功。現地を視察し開発の価値ありと判断した。
  • 昭和28年、小渕光平元代議士が弟と共に福井博士を訪ね、再開発のために協力を求める。
  • 昭和29年、光山電化工業−上信鉱山所として開設。
  • 昭和32年、シャフトキルンと呼ばれる竪型焼成炉が完成、運転開始。
  • 昭和33年、小渕光平代議士死亡。日本鋼管(株)などに納入する注文書が届き、焼成炉はフル稼働となる。
  • 昭和38年、火災で事務所を焼失、死者も出る。鉱脈も尽きかけていたので閉山とした。4年間の最盛期間に高収益をあげた奇跡的な例。


この上信鉱山は、今後、以下のような活用法が考えられる。

  • 地域の近代文化遺産として
    • 登録有形文化財に指定?
      • 世に出せば観光名所となる
      • 野外学習で学生を連れてきて地域の歴史を学ばせる
  • エコツアーの訪問散策地として
    • エコツアーとは、自然・歴史・文化など地域固有の資源を生かした観光を成立させること(地域資源の保護+観光業の成立+地域振興の融合)
  • 山岳縦走ツアーから近代文化遺産めぐりツアーへ
    • さらに北には浦倉鉱山跡(チャツボミゴケ群生地)、小串鉱山などの優れた文化遺産が存在する。やがてはそれらを繋ぎ、一日かけてハイキングできる文化遺産めぐりコース策定の可能性
  • ウォーキングコース中の見所としての可能性
    • バラギ湖、湖畔の湯、干俣親水公園、展望の良いキャベツ畑などを周遊できるウォーキングコースの策定


 


最後に、先日、プレゼンテーションした内容の一部を紹介する。
バラギ高原ウオーキングコースは、上信鉱山跡がウオーキングというよりハイキング以上の覚悟が必要なので、参加者にあらかじめ説明が必要かも。


嬬恋近代遺産めぐりツアーは、スノーシューで可能かもしれない…が、かなり距離があると思われる。下りならまだしも、下から上りで攻められるかどうか…。私はこの冬に3つの鉱山跡をスノーシューで踏破してみたいと思っている。


念のために申し上げておくが、これはあくまでも将来的な構想で、進めることができるかどうかも定かではない。できれば、浅間・吾妻エコツーリズム協会のエコツアー商品の一つとして発表できればこの上ない。


干俣親水公園



10月7日には、藤岡総合病院の看護師さん達の研修会で、野生きのこイベントを実施することになっている。


いくつかの会場を検討中だが、そのうちの一つがここ、干俣親水公園。


 


公衆トイレがしっかりしていることと、きのこ料理を食べられる東屋もしっかりしている。ここは住民の利用も少なく、ひっそりとしている。賑やかにやっても迷惑にならなそう。かなり利用しやすそうだ。



ただし、飲用水がない。でも、名水「干俣のしみず」までそう遠くもないし、あの水で料理できれば、なお喜ばれると思う。あとは近場できのこが採れるかどうかかな。