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樹の声が聞こえる このページをアンテナに追加 RSSフィード

2012-03-01

Gallery and Essay コーナーの移行について

*☆★ お知らせ ★☆*


これまでご好評いただいておりました Gallery and Essay

のコーナーですが、以降は以下のサイトで更新していくことにいたしました。


浅間・吾妻エコツーリズム協会 エコツアー 体験イベント 実施アルバム

http://aaes.heteml.jp/album/


以前の詩的なタッチではなく、より「赤木道紘ライフスタイルの実際」という内容になっていますが、最近の動向がお分かりいただけると思います。こちらのサイトもぜひご覧になってくださいませ。


今後ともご愛顧を宜しくお願いいたします。

2009-10-11

Sanctuary


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きのこ狩りに、森の奥深くに入った。

ここは戦後の拡大造林期にも手がつけられなかった急崖の岩場。むせ返るような動物たちの匂い。そして気配――

森の生き物達の聖域 ― Sanctuary


「あなたの森を通りますよ」


番頭のミズナラ巨木に挨拶をして、少しの間、森を彷徨わさせてもらった。森の生き物たちは私たちに、いろんな音を聞かせてみたり、香りでつつみこんでみたり、美しい色彩や逞しい立ち姿を見せつけたりしていた。ここでは、関わってきたものことに対しては、必ず何かを返してやることに決まっているからだ。

きのこ篭は空のまま山を降りることになったが、心はすっかり満たされていた。


生命と生命の関係の蓄積が流れる深い森の中。その関係に触れ、感じ、気配に身をゆだねることを、“深山の霊気に打たれる”とも言う。


森との関係を呼び覚まし、生命の記憶深いところで静かに揺らいでいられるところ、

そこが Sanctuary

2009-06-23

草軽電鉄駅舎跡と桜並木


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1909年の開業から1962年までの約半世紀間、日本を代表する避暑地・軽井沢と、日本を代表する温泉地・草津温泉とを結んでいた草軽電気鉄道、略して草軽電鉄。山岳地帯を走る鉄道なのにトンネルがなく、急カーブやスイッチバックがいくつもあり、55.5キロを走破するのに3時間近くもかかったという。


夏には窓がないサマーオープンカーが走り、高原の風を頬で受けながら「カブト虫」に引かれるその姿は、一帯の風物詩であった。もしこの鉄道が今でも残っていたら、夢の高原列車として、観光の目玉になっただろう…と、半世紀を経た今も、廃線を惜しむ声は後を絶たない。


友人に案内され、路線跡をたどって二度上駅跡を訪ねた。手入れをしていない路線跡は薮化が進み、森林へと戻るのは時間の問題であろう。

駅舎の屋根が半分土に埋もれてしまっているところに出て、そこが二度上駅だったということを確認した。スイッチバックの跡をなんとなく確認して、目の前にあった桜の大木に挨拶をして帰ろうとしたら、桜が私のことを引き止めた。


『もう行くんですか?私たちはここにいますよ』


周囲を見渡したら、他にも桜が何本かあった。ここは駅舎から続く桜並木道だったのだ。

半世紀前までは毎年、春になると大勢の花見客で賑わっていた。酒をひっくり返されて飲みたくもない酒を浴びせられることもしばしば。それでも、桜はうれしかった。人と寄り添って生きていくことができてうれしかった。たくさんの出会いと別れ、再会も祝福も見てきた。自分の存在で場を演出することができて誇らしかった。


やがて時流の変遷によって人は動き去ったが、桜は動くことができない。でも待つことはできる。50年でも、100年でも。

私が来るのを待っていてくれたのか。先月会いに来れなくてすまなかった。あなたのことを皆に紹介しよう。そして桜の咲く頃、もう一度会いに来よう。きっと約束しよう。

2009-04-04

木の声が聞こえる


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万座カラマツ天然母樹林で、通直な幹のカラマツでは最大のカラマツ、偉大〔おおい〕なる母の木。こまくさ園元館主の干川文次さんの手記にこうある。


“昭和37年ドイツのショハー(R.Schober)博士がカラマツの母樹を見に来たとき、一本の大きい木の下に行き木肌に手をかけ、懐かしそうに見上げ、「この母樹の種がドイツでは生育が良いので、その母樹を見に来たのだ」と満足そうな顔をした…”


種の採取は木材の利用を見越し、通直な幹の木から採取されることが多い。手記にはどのカラマツとは書いていなかったけれども、私たちには木の声が聞こえた。このカラマツこそが、世界に行ったカラマツだ。海を渡ってドイツにも。この木を別名“ショハーの木”という。


人の身体の声が聞こえるセラピストさん。…触れてみてください。ほら、声が聞こえるでしょう?だって私たちは同じ細胞から分かれた兄弟ですから。そして何億年もの間、助け合ってきたことを思い出したでしょう?


触れれば、相手の声は、心は伝わってきますよね。木も人も、同じように。

2009-01-10

マザーツリーの森へ


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私たちの母なる森へようこそ。よくいらっしゃいました。

この森を歩いてきて、風景が私に教えてくれたこと、樹木たちが私に語ってくれたことを、少しばかりお聞かせいたします。


驚くようなお話もいたします。残念なお話もいたします。そして中には、胸がいっぱいになるような、あたたかいお話もお聞かせできることでしょう。


私は他の森のことはよくわかりませんが、この森のことなら、なんとなくわかるのです。


なぜなら私は、世界中の森のことを理解しようとすることは、そう重要ではないと思っているからです。際限のないことを追求するより、自分にとって身近な地域を、身の丈に合った方法で観察するほうが、自分の小さな器をよりいっぱいにできると知っているからです。


この森で出会う一本の樹は、それぞれ何百年もの歴史を持っていて、もし本当に深く理解しようとしたら、たとえ一本の樹だけでも、私の一生をもってしても難しいでしょう。


私の人生で出会うことができた、かけがえのないマザーツリー達。彼女らが考えていることをお聞かせいたしましょう。

他の森ではてんでダメですが、この森に流れている意識のことだけは解かりますので。

2009-01-02

インタープリターのいる風景


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嬬恋村の山村集落、三原にお客様をご案内する機会があった。

現地でいろいろ聞き込み調査をしているうちに、「先生」と呼ばれる土地の長老が特別ゲストで登場し、この集落のお話をしてくれることになった。


見晴らしのいい場所で、長老にバトンタッチ。


三原の街は歴史も見どころもたくさんあり、人々はとても気さくだった。何より古き良きものを守っていこうとする気概があった。散策していていつまでも飽きなかった。

でも、一番良かったことは、素晴らしいインタープリターがいたことだった。

この集落が持っている記憶を、命の限り伝えようとする人がいた。


長老がインタープリテーションするこの風景を、いつまでも見ていたいと思う。

ひょんなことで登場することになったが、それではとてももったいない。


それくらい、彼の姿はかけがえのないものだった。風景よりも、もっと。

2008-11-28

太融寺の巳さん


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20年前、夜の街で一人の若者が行き詰っていた。

ある日若者は「もし私が死んでも、誰も悲しまないんじゃないか、誰も気づかないんじゃないか」と嘆き、その地を護っているイチョウの樹の枝を折った。


それからというもの、若者にはろくな事が起こらなかった。いつしかその地を追われ、逃げ出すように山奥に篭ってしまった。

長い年月が流れ、若者は中年男となり、どういうわけか樹を護ることを始めていた。そして因縁のイチョウの樹と再会を果たした。

イチョウの樹をぐるっとまわった男は、見つけた古傷にそっと手をやり、早く良くなる様に祈った。


伐ろうとした者全てを変死させたという大阪市太融寺の御神木、龍王大神。


でもあの時、世界で一番ちっぽけな存在だった私にチャンスをくれた。再会した日、お参りしていた他の人に尋ねてみた。すると、その人もこの樹への態度を改めた人だった。

変わることを知っていたのか、それとも変わらせてくれたのか。


古い地元の人が「巳さん」と呼ぶこの御神木には、蛇が巻き付き、樹を守っているそうだ。まわった時に裏側で見つけたあのアロエは、きっと町内会の方が植えているのだろう。御神木の脇に生えたアロエはさぞかし薬効高いことだろう。


アロエの薬効で病気が治った子供たちが、やがて大人になり、そうしてこのイチョウの樹はいつまでも護られていくんだろう。巳さんもたいそう喜んで、この町に災いが起こらないようにいつも見守っているのだろう。


そうやって、私のことも救ってくれた。夜の闇にのまれそうになっていた私のことも。

2008-11-11

風の通り道


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万座から車で20分。標高1,827mの毛無峠。


視界いっぱいに広がる矮小低木の群落は、まるで標高2,500mの高山帯にでもいるかのような錯覚を起こす。この風景を偽高山帯という。風衝地のため森林が成立できないのだ。


付近には縄文初期の石器が出土する洞窟群があり、この谷では1万年前にヒトが行き来していたことを最近知った。


気の遠くなるほど昔から、この谷では風が吹き続け、山をえぐり、特出した風景を造った。風は植物の種を運び、渡り鳥や渡り蝶までが風に乗りこの谷を通った。


そして、人間もこの谷を通っていった。風に導かれてここを通っていった。

2008-11-07

神様


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この秋、軽井沢でインタープリテーションする機会があった。

依頼先のお庭が、苔むしていてとても綺麗だったので、予定には無かった“お庭を観る時間”をつくってもらった。


観れば観るほど不思議なお庭。色とりどりのきのこ、たくさんの大きな樹、そしてふわふわして緑鮮やかな苔のじゅうたん。なのにどうしてこのお庭には、こんなに元気がないんだろう。

あ、見つけた。そっぽ向いちゃってるお庭の神様。こりゃあ、よっぽど磨いてあげないといけないな。

2008-09-09

真珠ガンピ


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センジュガンピの種を採りに、沢に入った。

鬱蒼とした深い沢筋が大好きなこの花は、目が覚めるような純白の花をつける。きっと、薄暗い林内ではこの色が一番目立つのだろう。うまく育てれば一年目で花がつき、育てる楽しみもあるいい花だ。


帰り道、藪の中で遅咲きの花を見かけた。なんていう鮮やかな白さか。先が裂けた花弁が、人が両手を広げているようで、色と相まってかやたら神聖に見える。


夜空で純白に輝くおとめ座一等星スピカを真珠星という。センジュガンピの名の由来は日光の千手が浜にたくさんあるから…らしいが、この花は真珠ガンピとつけた方が良かったんじゃないかな。