2006-03-24
■シリアスゲームの行く末は。
意外にもスルーされてるニュースなようなのだけど、ボクはこれを読んだとき「ついに来たか・・・!」と思った。
スクウェア・エニックスと学研、シリアスゲーム事業で提携。専門の新会社「SGラボ」を設立
株式会社スクウェア・エニックスと株式会社学習研究社(学研)は、シリアスゲームの販売・開発において業務提携を行なうことと、シリアスゲームを専門に扱う共同出資会社、株式会社SGラボ(エスジーラボ)を5月1日に設立することを発表した。
遠藤氏からは学研側の視点から、「学研が進めているクロスメディア戦略の中で、学研が持っていない表現メディアとしてのゲームの世界で、強力なパートナーが必要になっていた。スクウェア・エニックスさんは、ユーザーインターフェイスの設計、キャラクタデザイン、クロスプラットフォーム、オンラインゲームなどで卓越した技能を持っている」と提携の理由が説明された。
なぜに「やっぱり」と思ったかというと、今まで割と両分野は特別協力的な関係のないまま独自に歩んできたようだけど、大局的に見ると教育という分野とエンターテイメントという分野はコンピュータの発展によって確実に距離が縮んできていると感じていたから。 具体的には既に何年も前から、中学や高校の英語の聞き取り訓練等で、よりインタラクティブなアプローチになってきてる。 もちろんそれは、一人一人にネイティブな英語をしゃべって会話してくれる先生がついてくれるのが一番いい。でもそれではあまりにもコストがかかりすぎる。だから、個別のときはAV装置の整った教室でテープやビデオを使って各々勉強していた。それももう今は個人毎にPCが備わっていて、exeファイルにしろフラッシュにしろ、よりインタラクティブに進行できるようになってきている。
やはり自分の発信に対して反応が返ってくるほうが、興味を持ちやすいし、集中できる。 学習の基本は反復である以上、「何度もやってみたい」と思わせるような仕組みでなければ一発屋なのだ。投げっぱなしジャーマンだ。
これはボク自身の経験の話でもあるのだが、小さい頃からゲームをやってた人にとって、歴史(日本史)という科目で登場する人物でよく馴染みがあるのはやはり戦国時代の頃の人々だろうし、あるいは中国史だと三国時代だろう。つまりボクのようなゲーム世代の人間にとっては、もっとも自分に影響のあった歴史の先生は光栄なのだ。信長の野望や三国志をプレイしてきた人ならばまず間違いないはず。 もちろん、どちらもゲームの題材になりやすい素材(世界情勢)であったわけで、とりわけ光栄が教育の一環としてアプローチしたわけではないと思う。でも結果としては。それらのゲームをやった人達にとっては、武将の名前どころか、どのあたりの国にどれだけの兵力や財力でもって存在してたのかさえ記憶してる人も少なくないはず。 結果的に勉強の役に立てばスバラシイ。
もう一つ例を挙げると、かつてPCソフトではあまり日本に翻訳される事はなかったので、原版のまま遊ぶ事が多かった。もちろんその際、パッケージや説明書はもちろん、中に出てくる登場人物名や会話内容やら何から何まで英語だったりしたわけだ。片っ端から辞書引いて遊んだ。それで覚えた英単語や英熟語は結構あるはずだ。洋ゲーが好きだった人は同じ経験をしてきてるはずだと思う。
つまり、既に「これはシリアスゲームですよ」という看板ひっさげて作る以前から、既にゲームによって「勉強」するという事はあったと。 そういう意味では、この提携は「遅い」とも言える。「やっと」というべきか。
ただ、この提携が成功するかどうかのキーが二つある。
一つは設計、もう一つはバランス。
設計がキーだということを少し説明すると、以前ボク自身のエントリーでゲームのインターフェースは優れていると書いたが、それはその一つのゲームという閉じた存在であるからこそ。 多くのゲームはそのユーザビリティはスバラシイが、ポータビリティを考慮しないで済んでるという面がある。 もし、データの継ぎ足しが可能(例えば英単語を後から追加できたり)であるようなものの場合、パッケージゲームのノウハウしかない場合はとまどうかも知れない。データが可変の場合のファイルシステム、サーチアルゴリズムなどは、データ不変の場合とは最適な方法が違う。
コレに関してはとてもうまく説明してるところがある。是非ご一読を。
僕ももともとゲーム技術業界(そんな業界あるのか?)にいましたから、ゲームを作るときにどれだけ高度で網羅的な技術と知識が要求されるのかは知っているつもりです。
ただ、最近はそれも変わってきてるかな、と思うようになりました。
たとえばOSの基本中の基本であるファイルシステムのような機能について、ゲームはどこまで進歩的な考え方をもっているのかというと、ほとんどそんなものは必要としないし持ってもいないのです。
それは当然といえば当然で、ゲームにおいてファイルとは、ゲームを構成するリソースの塊にすぎないからです。
そしてそれは存在理由もその目的もそれが作られる以前からハッキリしていて、分類したりあとから探したりする必要が全くないのです。
ただ、今回の学研とスクウェア・エニックスの提携に関して言うならば、この問題は大したものではないだろう。上に挙げたshi3zさんも書いているが、スクウェアはリソースの再利用化、効率化を計り、労働集約的な従来の業界のやり方をいち早く抜け出した企業の一つ。ネットゲームも多く開発販売しており、データ可変のノウハウがある。
そしてもう一つのバランスという問題。これはどこまでゲームで、どこまで教育なのかという事。エンターテイメントとしての演出を、どこまで盛り込むべきなのか、である。
例えばそのゲームの中でキャラクター間で交わされる会話一つにしても、もしゲームの題材が史実のものであるなら、本当に有った内容であるのかどうか。英語であるなら、それは正しい表現であるのかどうか。(ハリウッド映画など見ても分かるように、必ずしも「良い」英語表現ばかりで構成されてはいない)
しかし、もちろんマジメ一本筋の内容では、つまらない。やはりキャラを立たすためには、面白い会話だって必要だ。どこまで脚色するのか。これは細心の注意が必要なところだろう。さすがに戦国BASARAのように伊達政宗にAre you ready, guys?なんて言わせられないんじゃないかと。
何にせよ、どういうゲームを作るかに寄る。と言ってしまうのは少し乱暴かもしれないけど。
「教育の皮をかぶったゲーム」とするなら「もっと脳を鍛える大人のDSトレーニング」みたいなカジュアルゲームになるだろうし、「ゲームの皮をかぶった教育」ならば光栄の歴史シミュレーションみたいなコアゲームになるかもしれない。
単純に、源氏物語でFF作ったらどーなるのかなあとか、ベトナム戦争でフロントミッション作ったらどうなるのかなあ、なんて考えただけでも少し楽しくなってしまうのはボクだけなのかしら。(しかしドラクエはドラクエにしかならない気がする)
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追記 03-25:
satoshiさんが関連の有るエントリを書かれていたので。
スクエニ、松下電器の「Tナビ」向けにカジュアルゲームなどを提供
キングタム・ハーツII、ファイナル・ファンタジーXIIなど超大作と比べたら、業界へのインパクトもファンの反応も微々たるものだが、実は「ゲーム業界の抱えるジレンマ」を乗り切るためにこれからスクエニが(そしてたぶん他のゲームメーカーも)着手するリスクヘッジ戦略の一つであるという意味ではとても重要な意味を持つ、「明日のための一手」である。
今、ゲーム業界が目を向けるべきところは、次世代ゲーム端末やゲーマーたちではない。本当に目を向けるべきところは、ゲームをしない人たち、ゲーム端末を買うことを考えもしない人たち、テレビ・携帯などのゲーム端末ではない端末である。そういったゲームをしない人たちに対して、今までの「ゲーム端末向けのゲーム」とは違う形で、どんなエンターテイメントを提供すべきか、どんなビジネスを展開すべきかを真剣に考えるべき時代が来ているのである。
学研との提携と時期を同じくしてこういった方針の発表をしているあたり、スクエニは直近ではなくロングスパンで先を見据えているのだろう。なにしろ大作や続きモノを出すある意味ベタな展開をしていたスクエニである以上、これら発表された今後の舵取りは内部的に多かれ少なかれ反発がありそうなのは想像できる。
それでも、感動させる大作はシリアスゲームでも実現できると思う。事実は小説よりも奇なりなんていうように、史実上の出来事だけでも多いにエンターテイメントとして整形できるはずだし、そういうモノは既にいくつかあるはず。
もちろん、業界のリーダーであるスクエニが、次世代機に対してコア・ゲーマーが期待するような超大作を作るのを辞める必要は全くない。ただし、リーダーであるが故にこそ、資金的に余裕のある今だからこそ、きちんと時代の変わり目を読み、カジュアルゲーム、シリアスゲーム、非ゲーム端末向けのゲームサービス、といった今までとは大きく異なる方向でのビジネスにおいてもリーダーシップをとって市場を開拓して行く立場を採るべきなのである。そういうことをしない企業は、次の時代のリーダーにはなれない。
これを読んだときに思い出したのが、FF XIが発売されて1年も経ってない頃の、どこかで読んだ開発者インタビュー。その当時、日本ではネットゲーム、特にMMORPGといえば海外ゲームのしかもPCゲームしかない状態で、コンソール機でネットゲームやる人というのはあまりにも少なく、とてもビジネスとして成り立たない状態だった。たしかPSOでさえ、その開発費とサーバ等設備費用をペイするのに3年ぐらいかかったとかなんとか。 そしてFFXIはMMOであるため、MOであるPSOよりも規模の大きな設備が必要で、先行投資はそうとうなものだったはず。 到底、スクエニのような大企業でない限り手を付けることもできない事業だった。たしかそのインタビューの中で、「これはパイ自体を大きくするという意味合いもあるんですよ」と言っていたと記憶してる。採算云々もあるけど、日本におけるネットゲーム人口を増やそうというわけだ。 日本は今もそうだけど、やはりコンソール(ゲーム機)市場がゲームの中では圧倒的であるため、いくらPCゲームで優秀なネットゲームを生み出してもなかなか広くは浸透していかない。そこで、コンソールのしかもFFというタイトルで始めたという事で、結果としてはご覧の通り、成功といえる。 ボク自身、FF XIは3年ぐらいプレイさせてもらったし、不満こそいろいろあったが、素晴らしいデキだったと思う。
今もなお、こういう事をやってのけられる体力、開発力が備わっている企業なんだなあ、と今回の発表を見て改めて感じた。
なんだか褒めすぎなのでどこかで落とそうかと思ったのだけど、やめておきます。(笑)
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