835溝口敦・荒井香織編著『ノンフィクションの「巨人」佐野眞一が殺したジャーナリズム――大手出版社が沈黙しつづける盗用・剽窃問題の真相――』

書誌情報:宝島社,239頁,本体価格1,143円,2013年5月6日発行

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佐野眞一著『だれが「本」を殺すのか』を評したとき(関連エントリー参照),大宅賞受賞作家に値しない盗用・剽窃があると本書にも登場する某氏から聞かされていた。だから佐野眞一本は注意して読んできたつもりだが,『週刊朝日』連載記事「ハシシタ 奴の本性」が問題となった昨年もさもありなんと思っていた。
それを機にネットメディア『ガジェット通信』12回の連載「佐野眞一氏の『パクリ疑惑』に迫る」での検証をふまえ,佐野作品のパロディでもってノンフィクション界の「巨人」どころか「虚人」であるとし,さらに「シンイチ 奴の本性」を暴き,本を殺す真犯人を名指している。
「ハシシタ」問題から一気に噴き出した佐野の盗用・剽窃問題(「文壇史上最大の盗用・剽窃問題」164ページ)は数々のベストセラー本を出してきた佐野本人と出版メディアへの挑戦状である。盗用・剽窃が事実としたら文筆を生業にしている作家にとっては死活問題である。大学教員の場合なら示談から懲戒免職まで幅があるものの研究者としては信用を失墜させる。それほど大きな問題がようやく陽の目を見たことになる。