1161諸田實著『「新聞」で読む黒船前夜の世界』

書誌情報:日本経済評論社,ix+241頁,本体価格6,500年,2015年5月15日発行

「新聞」で読む黒船前夜の世界

「新聞」で読む黒船前夜の世界

  • 作者:諸田 實
  • 発売日: 2015/05/21
  • メディア: 単行本

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「新聞」とは国民経済学者フリードリッヒ・リストが編集した『関税同盟新聞』(1843-49年)で南ドイツのアウクスブルクで発行された週刊新聞である。関税同盟(ドイツ)が目指す英国からの自立による経済発展のための貿易政策を主張すべく発行され,6年半通算339号,5,916ページに及んでいる。あの「ひげ文字」で印刷されている。
著者はこの『関税同盟新聞』(および世界中の新聞や雑誌からとった「雑録」)から貿易,商船隊と艦隊,植民(国外移住),鉄道と運河,郵便と電信,英国の農業革命,産業社会,物価と消費,市民生活や発明・発見などを紹介している。対象はあくまで『関税同盟新聞』だが,「雑録」を通して当時の社会と世相を知る貴重な証言ともなっている。
アヘン戦争(1840-42年)後の清について経済・貿易状況については,リストの関心も高く彼自身の論文や英仏の新聞・雑誌からの記事も多い。また,当時,西インド,ブラジルと並んでコーヒーの原産地だったオランダ領ジャワ島(「オランダ政府の強制栽培制度」)の記事もある。